Thad Jones / The Jones Boys ( 米 Period SPL 1210 )
サド・ジョーンズ、ロナルド・ジョーンズの2人のトランペット、クインシー・ジョーンズのフリューゲル・ホーンという3管のフロントに、ジョーンズという
名前の3人のリズムセクションが揃った冗談のようなセッションで、偶然なのか、意図されたものなのかはよくわからない。ただ、ラッパが3本必要な
音楽をやっているわけではないので、少なくもフロントは冗談半分で揃えたような気がする。
聴いた印象ではワンホーンの音楽のように聴こえる。テーマ部でアンサンブルの箇所もあるけど、3人とも大人しい演奏だから重奏感は希薄だ。
特に、クインシーなんて別にいなくても何も問題ないような気がする。アレンジ感もなく、全体的にゆる~い音楽である。その中ではさすがに
サド・ジョーンズの演奏はしっかりとしていて、彼が主役を張っている。
いい意味で隙間が多く、サド・ジョーンズの明るい音色がよく映える、陽当たりのいい穏やかな午後の音楽だ。25年振りくらいに聴いたわけだけど、
当時の印象と何も変わらない。こういうのは如何にもサド・ジョーンズらしい。彼の他のリーダー作と同じ路線、同じ傾向の緩やかな音楽。
”パパ”・ジョーンズの古風なリズム感が音楽をよりマイルドにしている。
どんなジャンルの音楽にも、こういう地味で、マイナーで、それでいて趣味の良い作品はある。ジャズの深みにハマってしまった者のみが手にする
タイプのアルバムで、そういう人だけがこの内容に良さを感じることができるのではないか。高名な名盤群とは違うレイヤーでジャズという音楽を
支え、愛好家を惹きつけ続けた無数にある無名な作品群の中の1つ。そういう愛で方が相応しい。