廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

苦く複雑な後味

2015年05月24日 | Jazz LP (Verve)

Charlie Parker / Bird And Diz  ( Mercury MG C-512 )


ノーマン・グランツが1950年にお膳立てした同窓会セッションですが、これがどうにもつまらない。 

要因は色々ありますが、まずガレスピーの演奏の退屈さには心底辟易させられます。 パーカーの相棒だったお蔭で誰も表立っては言わないけれど、
この人のトランペット演奏に存在意義なんてあるんだろうか、といつも思います。 パーカーがこの人と組んだのは、42年当時に自分が音楽に求めた
スピードについてこられるトランぺッターが他にいなかったことや、自分が思いついたフレーズをガレスピーが採譜してくれたからです。

この人は人柄が良くて、パーカーの身の回りの細々した世話を焼いてくれたし、自分には特に才能があるわけではなかったことを自覚していて、
事あるごとにパーカーを持ち上げてみせた。 パーカーは仲間を大事にする人だったので、彼との友情は最後まで続きました。 そのお蔭でこの
セッションも実現しましたが、サヴォイ時代よりもトランぺットの腕前は格段に上がったけど演奏の音楽的な感動のなさは更に際立ってしまっています。

次に、ここではモンクがピアノを弾いていますが、これがモンクらしからぬ普通のバップピアノに終始していること。 相手が誰であろうが、それが
いつであろうが、頑なに我が道を行った人がさすがにパーカーにだけは遠慮しています。 そして、これが非常に凡庸で冴えない演奏です。 
ピアノの音の粒立ちの鋭さは素晴らしいけれど、これをブラインドで聴いてモンクだとわかる人はおそらくいないはずです。

そういう中でパーカーの演奏だけが唯一屹立していますが、サヴォイセッションの曲では6~7割をパーカーが演奏していたのがここでは2~3割しか
聴けず、これがつまらなさの一番の原因です。 アルトの音やフレーズも間延びしていて、サヴォイの時の前乗りではなく後乗りに変わってしまっています。

この時期、パーカーの見た目は10歳老けて見えたそうだし、お金を得るために仕事は断らずに何でも引き受けていたようですから、もう何でもよかった
んでしょう。 当時フランスに移住していたケニー・クラークから「アメリカにいるのはゆっくりと自殺するようなものだ」と欧州に来るよう強く勧められて
いたにも関わらず、アメリカに残り、まもなく短い生涯を終えてしまうわけですが、あの時本当に欧州に行ってしまっていればレコードは残らなかった
でしょうから、現代の私たちには苦く複雑な想いがします。



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