Gerald Wiggins / Around The World In 80 Days ( Specialty SP 2101 )
もう何年も長旅に出ていません。 若い頃は身軽な格好でいろんなところへ行きましたが、年を取るといろんな物事が見えてくるようになって、
旅先への興味が薄れてしまいます。 でも、今はもう仕事は若い人に任せているので、気忙しい日々も過去のものとなりつつあります。
まだまだ現実味はないにしても、それでもぼんやりと引退後のことを自然と考えるようにもなってきました。 そんな中でこのアルバムを聴くと、
久しく忘れていた旅への憧れのようなものがまた蘇ってきたりします。
ヴィクター・ヤングは最も好きな作曲家の1人で、この人の作った曲が音盤の中に入っていると嬉しくなりますが、このアルバムは全曲がこの人の曲で
固められているという、私には宝箱のようなアルバムです。 映画「80日間世界一周」のサントラをジェラルド・ウィギンスが見事に演奏しています。
映画の中ではうっとりと夢見るように演奏されたこの曲を、軽快なアップテンポでこれ以上はないほどスイングさせています。 ベースはブルーベック
カルテットのユージーン・ライト、ドラムはアート・テイタムとベン・ウェブスターのVerve録音などに参加したビル・ダグラスで、この3人の一体感は
ハンパない凄さです。 羽のように軽く、一糸乱れることなく進んでいく様は圧巻。 最高のピアノトリオの1つだと思います。
現代のピアノトリオはどうもあまり聴く気にはなれないのですが、こういう古い時代のものは何の不満もなく聴けるものが多いです。 稀少且つ高額で
知られる "Dizzy Atmosphere" を生んだ Specialty というマイナーレーベルにも関わらず、2千円も出せばお釣りが返ってくるような安レコですが、
内容は本当に素晴らしいです。