Miles Davis / Collector's Items ( 米 Prestige Records PRLP7044 )
新年の縁起物、マイルス・デイヴィスである。この人の場合、何かそれくらいの理由を付けなければなかなかブログに書こうという気にならない。
特に、このアルバムのような誰からも顧みられないものになると尚更である。
A面は53年、B面は56年の録音でどちらもロリンズとの演奏だが、53年の方はパーカーがテナーを吹いて参加していることで知られている。
契約関係がなかったから、覆面ミュージシャンとしての参加になっている。テナーの音色はあまりパッとしない感じだが、吹いているフレーズが
如何にもパーカーらしいもので、サックス奏者には各々固有の言語があるのだということがよくわかる。
ただこの53年の方は音楽的に聴くべきところはないし、演奏も拙いレベルでわざわざレコードとして切るようなものではない。それがアルバム
タイトルの "Collector's Items" の意味なのだろう。これはマイルスがまだひよっこだった頃の姿の一コマだ。まるで、何かの拍子に物置の中から
出てきた、セピア色に退色した古い写真のようなもの。そういう一般的には商品価値のない、個人史のようなものまでが56年という時期に
こうして正規のアルバムとしてリリースされているところがマイルスのマイルスたる所以である。既にその時点で別格だったということだ。
一方で56年の演奏になると音楽の成熟度はグッと増す。マイルスらしい影が射すようになり、独特の陰影が刻み込まれる。ロリンズは完成の1歩
手前の段階だが、それでもロリンズでしかありえないフレーズを吹くようになっている。マイルスはミュートで演奏し、"In Your Own Sweet Way"
ではバラードのスタイルを確立しようとしている。
マイルスは自己のグループを結成するにあたり、ロリンズをテナーに迎えたかった。でも、ロリンズは固定のバンドに参加するのを好まず、
それは叶わなかった。もしマイルスの第一期クインテットがコルトレーンではなくロリンズだったら、ジャズ史はどうなっていただろう。
この演奏を聴いていると、そう考えずにはいられない。ロリンズがいるとさすがに音楽の安定感は揺るぎがなく、この布陣でバンドの音楽が
発展していたら・・・と考えるのは楽しい。そういう夢想をさせるところが、このレコードの一番の価値かもしれない。
ロリンズの軌跡を追うのは中々難しいかもなあという気もします。
この人はいろんな意味で一筋縄ではいかないところがあります。
線で見るより点で見る方がいいのかも、と思ったりします。
本年もルネさんの記事を楽しみにしております。
ロリンズがマイルスバンドに参加していたら…想像するだけでニヤつきますね。おそらくは二人とも方向性は変わらなかったのかな?とか思いますが、マイルスの歩みは速くなっていたのでは…とも。
相変わらず音楽センスなしの私ですが、昨秋にロリンズのRCA諸作を聴いてからやっと凄みに慄いた次第です。ルネさんが既述されていた「この人自身がジャズの最高傑作」とはまさにです。
今年はロリンズのディスコグラフィーを通してジャズ史の軸づくりを自分の中で構築してみようと考えております。
願わくば、もう少しルネさんによるロリンズ作品評を拝読したく思います。