廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

トリオレコードの真面目さ

2016年05月05日 | Jazz LP

Ted Curson / Fireball  ( 日 Trio Record PAP-9166 )


1979年にトリオレコードがニューヨークまで出向いて作った、どこまでも生真面目なレコード。 テッド・カーソンのトランペットによるピアノレス・トリオ
というから恐れ入る。 目の付け所が違うというか、発想力が違うというか。

ピアノが入らないことで大きく確保された空間の中で、テッド・カーソン、レイ・ドラモンド、ロイ・ヘインズの3人が対等互角な三角形で演奏している。
スパニッシュ・モードな曲やミッドナイト・ブルース風な曲、そして "ラウンド・ミッドナイト"など選曲も良く、惹き込まれる内容だ。
テッド・カーソンって、こんなにトランペットが上手かったっけ?と思わせるくらいよく歌い、音に張りがあり、音程も安定している。 
ドラモンドのベースやヘインズのドラムの音がこの時代の日本のレーベルに特有の腰高で浅い音の録音なのが気に入らないが、それでもカーソンの演奏が
あまりに見事なので、耳はそちらへと自然と集中する。 純粋に、演奏力で心を持って行かれてしまう、王道で主流派の佳作だ。

それにしても、この頃の日本のレコード会社は真面目に仕事をしてたんだなあ、と感心してしまう。 セールスのことを考えたらフレディ・ハバードとかに
なってもおかしくないのに、敢えてこの人を引っ張り出してきたところが、なんというか、マニアックだ。 とても売ることを考えていたとは思えない。
美人ピアニストに水着を着せたり、実力派女性アルト奏者にキテレツな格好をさせて"きゅるぴか~"などと言わせて売り出そうとするレコード会社や
芸能事務所が跋扈する今の日本からは考えられないことだ。

GWは連日暇なので渋谷のHMVへ1年振りくらいに行ってみたが、相変わらずここのジャズのレコードは汚くて高い。 DUに慣れた感覚で掘っていると、
とても買えるレコードはないのだ。 おそらく海外のレコードフェアのようなところで無造作に置かれた安いレコードを仕入れて来ているんだろう。
渋谷の街は人で溢れかえっているのに、ここでレコードを見ていたのは私1人だった。 そんな中で、これは600円でぽつんと転がっていた。



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« フリージャズへのマイルスか... | トップ | ヴェローナの怪人 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

Jazz LP」カテゴリの最新記事