廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

エリントンへの告白

2018年11月11日 | Jazz LP (Bethlehem)

Charlie Mingus / The Jazz Experiments Of Charlie Mingus  ( 米 Bethlehem BCP 65 )


ミンガスはサヴォイでの録音のすぐ後に、ジョン・ラ・ポータやテオ・マセロらを引き連れてピリオド・レーベルに同じようなコンセプトで10インチ2枚分の録音を行った。
その音源をベツレヘムが買い取り、リマスターして12インチとして切り直したのがこのアルバム。 再発かと侮るなかれ、これは恐ろしく音質がいい。
ピリオドの10インチは品質的に問題があることが多いし、きれいなものはもうあまり残っていないだろうから、これで聴くのが一番いいと思う。

ピリオド盤には "King Oliver" という変名で記載されていたサド・ジョーンズの伸びやかでノスタルジックなトランペットが全編を通じて非常に印象的だ。
更にチェロを1本入れて抒情的に弾かせていて、アルバム全体に郷愁感が色濃く漂う。 このアルバムを聴いてようやくわかったのは、ミンガスは結局のところ、
エリントンの音楽の "Reminiscent" な情感を自分の音楽を通して再現しようとしているのだ、ということだった。 いくらエリントンに心酔しているとは言え、
ここまでやるとこれはもう立派な愛の告白である。

この頃のテオ・マセロはいいサックス奏者だった。 音色は深く、幽玄な雰囲気で、ミンガスの音楽にはうってつけだ。 彼がこの中で果たす役割は大きく、
リードを取ること自体はあまりなくても、その深淵な音色を操ることでミンガスのコンセプトを確実に形にしていった。 この頃から既に誰かのために自身の才能を
使うことに長けていたのかもしれない。

サヴォイとこのピリオドの2つの録音はミンガス自身はどう思っていたのかはわからないけれど、私は圧巻の素晴らしい出来だと思っている。
デューク・エリントン本人には、彼の告白は届いたのだろうか?


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