廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

ジャック・ティーガーデンを見直す

2020年02月22日 | Jazz LP (Verve)

Jack Teagarden / Mis'ry And The Blues  ( 米 Verve V-8416 )


これぞジャズ!という傑作である。どうして誰も褒めない? こういう古風な音楽はもう誰も聴かないのだろうか。

この「見直す」シリーズは、言うまでもなくすべて安レコ。順番に800円、1,600円、1,550円、このティーガーデンは850円。レコードなんて1円でも
安いほうがいいに決まっている。ジャケットにドリルホールがあったって、安くて盤がきれいならオールオッケー。

安レコは宝の山である。ここには未知なる名盤がたくさん眠っている。そして、この積み上げられた安レコの山を掘るというのは、同時に自分の中の
どこかで眠っている未知なる感性を掘り起こす行為でもある。掘り続けた末に手にすることができたお気に入りのレコードとは、それらはつまり
自分の心の一部なのだ。

このレコードはトロンボーンやスイングのコーナーではなく、Male Vocal のコーナーに入れるべきレコード。ティーガーデンが全面で歌っている。
トロンボーンはオブリガートがメインだ。ティーガーデンの歌は、ネイティブアメリカンと白人のハーフである彼の外見の印象そのままである。
この顔からしか出てこない歌声だよなあと思う。あまり歌い過ぎないところがいい。ひとくさりサラっと歌って、あとは上質な演奏に任せる。
哀感漂う、イマドキの言葉で言うところの"エモい"音楽。陽が傾き、黄金色に染まった風景の中を家路に着くような雰囲気が濃厚だ。

ニューオーリンズ、デキシーランド、スイング、このあたりの正確な境目は私にはイマイチ判然としないけれど、このアルバムは1961年のシカゴで
録音されていて、さすがに垢抜けて洗練されている。夕暮れの風景を想起させる音楽だけど、それは田舎の風景ではなく、街中の風景だ。
そして、それはヨーロッパの街並みや日本の街並みにはまったくそぐわない。アメリカの風景のなかでしか存在しえない音楽だと思う。
そういうアメリカの良心のような音楽が全編に渡ってバッチリと刻まれている。レコードの音質も極めてよく、音楽を生々しく再現してくれる。

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