廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

秋吉敏子の貴重な50年代ライヴ

2024年02月18日 | Jazz LP (Verve)

Toshiko Akiyoshi & Leon Sash / At Newport  ( 米 Verve Records MG V-8236 )


ジョージ・ウェインによって1954年に始められたニューポート・ジャズ・フェスティヴァルは現在も続いているのだから驚かされる。真夏の野外で
催されるというのは我々の凝り固まったジャズというイメージには凡そ合わないが、アメリカはそういう価値観ではないのだろう。当時としては
画期的だったようで、1958年には「真夏の夜のジャズ」として映画化もされる。原題には "Night" という単語はなく、「或る夏の日」というのが
正確な訳になる。

ノーマン・グランツの秘蔵っ子だった秋吉敏子もピアノ・トリオとして出演しており、その様子がこのレコードに収められている。写真で見ると
和装だったようで、真夏の野外なのに何とも気の毒なことだが、映画の中に出てくる観客はあまり暑そうな様子はなく、中には上着を着ている
人も多くいるから、日本にような蒸し暑さはなかったのかもしれない。

可愛らしい声で曲名を紹介しながら演奏しているところは生真面目な日本人らしいが、その演奏は骨太なもので、当時の彼女の演奏スタイルが
よくわかる内容となっている。彼女の演奏を聴いていると、ジャズというのは1音1音に思いを込めて演奏する音楽なんだなということを思い
知らされる。そういう音と音の無数の繋がりが大きなうねりとなって聴き手の心を揺さぶるのだ。50年代の彼女の演奏が聴けるレコードは
さほど多く残っているわけではないから、これは重要な一枚と言える。

ヴァーブのこのシリーズには裏面のレオン・サッシュのようにこのレーベルでは他には聴けない多くのアーティストの演奏が含まれていて、
そのどれもが貴重な記録となっている。ドナルド・バードのジャズ・ラボとセシル・テイラーの演奏が含まれたものがよく知られているが、
それ以外の組み合わせも面白く聴くことができる。



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