廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

ゴールデン・ウィークの成果 ~その3~

2018年05月03日 | Jazz LP (Verve)

Bud Powell / Jazz Original  ( 米 Norgran MG N-1017 )


一口に稀少盤と言っても、縁のないレコードというのは人によってかなりバラつきがあるんじゃないだろうか。 「激レアだと言われてるけど、意外と簡単に
手に入った」とか、「珍しくないのに、中々買えない」とか、その内容は人によって違うはずで、その差分と差分を生む原因がきっと面白いんだろうと思う。

私にとってのバド・パウエルの1番の難関は、この "Jazz Original" だった。 目の前に現れるのはジャケットの表が無残にスレて、盤も傷だらけのものばかりで、
きっとこのレコードは私の手元にはやって来ないんだろうなと諦めていた1枚だった。 シナトラが歌う "Deep Night" が好きで、その曲が含まれるこのアルバムに
縁がないとは、なんてツイてないんだろうと思っていた。

ところがこの連休初日のセールでこれの美品が出るというので、普段はセール当日に店に行くことなんて決してないのに、今回だけは出かけることにした。
と言っても朝早くから並ぶ訳ではなく、渋谷に着いたのは13時半ごろ。 店内には客は誰もおらず、私一人だった。 本当に今日はセール初日か?
と思いながらも恐る恐る在庫をパタパタとめくっていくと、ありがたいことにちゃんと私が来るのを待っていてくれたのだ。 


1954~55年頃はパウエルの調子がかなり悪かった時期で、このアルバムを含めて、この時期にリリースされた演奏はどれもガタガタだ。 ここでもB面の
後半になるとパウエルの演奏は怪しくなってきて、最後の "How High The Moon" は打鍵すらままならない状態になっている。 ピアノでテーマを奏でる
というよりはダミ声でメロディーを歌って曲を進めているというほうが実態に近い。 普通のピアニストならこんなのは完全に没テイクだろうが、そこは
バド・パウエル、OKテイクになってしまう。

でも、別にそれでいいのだと思う。 4月なのに外は夏日で、汗をかきながらもこうしてわざわざ買いに来るくらい、パウエルのピアノが好きなのだ。
どんな演奏であっても、聴くことができればそれだけで嬉しい。


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