廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

マックス・ローチという男

2019年03月03日 | Jazz LP (EmArcy / Mercury)

Max Roach +4 / On The Chicago Scene  ( 米 Emercy MG 36132 )


知れば知るほど嫌いになるのがマックス・ローチという男だが、そのレコードを無視できるかというとなかなかそうもいかない。 この男、なぜか共演者に
恵まれていて、レコードとしては聴かずに素通りすることができないのである。 幸いにもブラウニーとやった作品以外は安いので、気が向いた時などに
拾っているが、困ったことにドラムの箇所を除くと演奏がいいものがあったりする。 それらの中でやはり群を抜いているのが、ブッカー・リトルと
ジョージ・コールマンがいた時のアルバムだ。 この2人の優秀さにケチを付ける人はいないだろうけど、その2人が揃って聴けるというところにマックス・
ローチのアルバム群の重要な価値がある。 これが無ければ、私自身は決して手を出すことはなかった。

このアルバムは確かブッカー・リトルの初レコーディングアルバムだったはずで、ロリンズがローチのバンドを去る際にドーハムの後任として推薦した、
というような話だったと思う。 もともとはシカゴ音楽院でクラシックを学んでいた正統派だから、技術的には既に完成していた。 50年代の有名な
トランペッターたちの誰にも似ておらず、どちらかというと現代の演奏家たちに通じるスタイルをこの時期にやっていて、その超時代感が驚異だった。

ジョージ・コールマンもマイルスのバンドに入る前の演奏だが、既に最初の全盛期かと思わせるような素晴らしい演奏をしている。 強い音圧や息の長い
フレーズ感のような身体的な圧倒感はないけれど、魅力的な音色となめらかで上手いフレージングに惹きつけられる。

こうして絡み合いながらも交互に立ち現れてくる2管の演奏は素晴らしくてどんな名盤にも負けない出来だけれど、問題はマックス・ローチの平坦なドラム・
ソロが長々と続くパートが出てきて、急にシラケてしまうことだ。 あまりの居心地の悪さに「ドラム・ソロって音楽に必要ないよな?」と思ってしまう
けれど、よく考えるとそんなことはなくて、スティーヴ・ガッドのソロなら永遠に聴いていたいのだから、結局ローチのソロがつまらないだけなのだ。

この人は「歌うようなドラム」と称えられるそうだけれど、私はそう感じたことは1度もない。 のっぺりと平坦で無味乾燥なものにしか思えない。
生で聴けばもしかしたら違う印象なのかもしれないけれど、それは叶わないことであって、レコードで聴くしかない以上はその感想しか持ちようがない。
リズムキーパーとしてはタイトで優秀だと思うけれど、ソロに関しては正直言って要らない。 ただこのレコードは彼名義なのだから、これは我慢する
しかないのだ。 リトルとコールマンの素晴らしい演奏に接するための代償だと諦めて、渋々聴いている。

不可解な言動もいろいろあったりしてどうもいい印象が持てないが、少なくとも彼の周りには優れたミュージシャンが常時いたことは間違いない。
ドラムという楽器は他の楽器と比べてやる人が相対的に少なくて引く手あまただったという事情はあっただろうけど、それにしてもなぜこんなにも
リーダー作を多く持つことができたのかが不思議でならない。

でも、そうやって文句ばかり言いながらもこのアルバムは好きでよく聴いているのだから、俺は本当にマックス・ローチが嫌いなのか?という疑問も
出始めている。 イヤよイヤよも好きのうち、だったらどうしよう、嫌だなあ。

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