廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

アーゴ・レーベルの確かな視線、普通の素晴らしさ

2019年04月06日 | Jazz LP (Argo)

Kenny Burrell / A Night At The Vanguard  ( 米 Argo LP 655 )


昔のジャズ・ギターはフルアコを使い、エフェクターも通さずトレブルも絞って弾いたりアンプを使わずマイクで拾っていたので、ピアノや管楽器が入ると
ギターの音が埋没してしまう。 だから、こういうピアノレストリオの演奏で聴くのが理想的だ。 この時代に1曲を通して途切れることなく延々と
フレーズを紡ぎ、なめらかに流れるように音楽を創ったギタリストは他にはあまりいなかったように思う。 タル・ファーローも長距離走者的にギターを
弾き続ける人だが、余程弦高を高くして強いテンションにしていたのか音がブツブツと硬く途切れがちで、バレルとはタイプが全く違う。

ミュージシャンにとって、ライヴハウスで特に構えることもなく普段通りに演奏するのは当たり前の日常だったろう。 その何気ない日常を上手く切り取った
このアルバムはケニー・バレルの最良の姿を捉えている。 事前に入念に準備し、スタジオに入って打ち合わせやリハーサルをして録音するのもいいだろう。
でも、素の姿をありのまま楽しめるこういうアルバムはバレルのバップ期のアルバムの中では他にはあまり見られず、私にはこの時代のベストショットに
思えるのだ。

冒頭の "All Night Long" の何とカッコいいことか。 リチャード・デイヴィス、ロイ・ヘインズがバックというのも泣かせる。 濃厚な夜の雰囲気、
クラブの淡い熱気とくつろぎに満ちた様子、何もかもが理想的な塩梅で録られている。 アーゴ・レーベルの確かな目線があったからこそ生まれた
作品だと言っていい。 普通であることが、こんなにも素晴らしい。

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