廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

行き着いた先の傑作

2018年10月13日 | Jazz LP (Argo)

Sonny Stitt / S/T  ( 米 Argo LP 629 )


ヴァーヴやルーストは一通り聴いたがどれもピンとこず、自分にはスティットは合わないままなのかと諦めかけていたところでこれに行き着いた。
これはとてもいい。

バックのラムゼイ・ルイス・トリオとの融合感が高くて、ゆったりと伸びやかに吹いている。 隅々まで神経が行き届いていて、とても丁寧なプレイだ。
アルトとテナーを持ち替えながらの演奏だけど、テナーになっても技術的に落ちないので、全体に統一感がある。 楽器がよく鳴っていて、音もきれいだ。

それに、他のレーベルでの演奏よりも落ち着きがあるに感じる。 バラードを演奏しているわけではないのに、そういう音楽を聴いているような感覚に
なってくる。 録音時のスティットの心持ちがそういう感じだったのだろう、それが演奏を通して聴き手に伝わってくるようだ。

それに何より、このレコードは音が抜群にいい。 アーゴでこんなに楽器の音が輝かしい張りと音色で鳴るものは他にあまり記憶にない。 程よい残響感が
空間を上手く演出していて、演奏が生々しい。 こういう音で聴けば、ジャズという音楽の良さがより一層よくわかる。

演奏の質自体はルースト時代とは変わってはいないけれど、再生時の音場感が演奏の微妙なニュアンスを浮かび上がらせて聴き手の心を動かすことがあって、
このアーゴ盤にはそういうところが顕著だ。 ルースト盤では音圧はあるけれど平面的で一本調子に聴こえた演奏が、こちらはもっと自然な感じで楽しめる。 
廃盤価格としてはルースト盤の1/4であるアーゴ盤の方が圧倒的に感動が大きいのだから、中古レコードというのはいくつになっても難しい。


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