廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

黙って愛でていたいアルバム

2020年04月08日 | Jazz LP (Argo)

Art Farmer / Perception  ( 米 Argo LP-738 )


Argoレーベルのアート・ファーマーと言えば何と言っても "Art" があって、私も大好きなアルバムだけど、でも本音を言うとこの "Perception" の方が
ずっと身近な存在であり続けてきた。これは本当にアート・ファーマーらしい、奥ゆかしくて滋味溢れる静かなる傑作。
フリューゲルホーン1本で謳われる楽曲はどれも穏やかな表情をしている。柔らかい笑みに溢れていて、こんな幸福なアルバムが他にあるだろうか。

ハロルド・メイバーンらバックのピアノ・トリオも自己主張を抑えたデリケートなサポートに徹しており、ファーマーと見事な一体感を作っている。
とにかく全編に渡って優しい歌が溢れていて、こんなのはアート・ファーマーにしか作れない。

フリューゲルホーンをここまで前面に押し出して自在に操り、アルバムを作った例は他にはあまりないのではないだろうか。他のトランペット奏者も
この楽器を使うけれど、大抵は変化球としての位置付けで、アルバムにアクセントを付けるのが狙いだ。でも、ファーマーはこの楽器をメインにする
ことが多く、トランペットと同格で扱う。元々彼のトランペットの音色もくすんだトーンなので、時には聴き分けがつかなくなるくらいだ。
他の奏者が使うと鼻につくこともあるけれど、ファーマーの場合はあまりに同化していて、あざとさは全くない。

ケチを付けるところが何一つない、完璧なアルバムだと思うけれど、このアルバムは声高に称賛したくない。あくまで静かに、黙って愛でたい。
名盤100選にも載せたくない。そういうのは似つかわしくない。だから、これまでブログには載せなかったのだ。そういうタイプの作品だと思う。


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