廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

ビ・バップへの目配せ

2017年02月19日 | jazz LP (Atlantic)

Ornette Coleman / Change Of The Century  ( 米 Atlantic 1327 )


"来たるべきもの" が発表されて、ニューヨークを中心にして各地で騒ぎになっていた最中に録音されたアトランティック第2弾。 いろんな意味で相当
注目されていた作品だっただろうと思うけれど、前作はオーネットの作品の中ではかなりポップな(と言っていいだろう)作風だったのに対して、この
アルバムは本格的にジャズを演奏することに真剣に取り組んだ辛口な内容だ。 明らかにパーカーとディジーの演奏を意識していて、それが裏コンセプトに
なっているのは間違いない。

前作で見せた音楽の形式へのこだわりをここでは鮮やかに脱ぎ捨てて、楽曲の主題をすべて拭い去っている。 だから音楽はより抽象的になっている。
その中でオーネットはかなり力強くアルトを演奏していて、時にはパーカーのようにファットなトーンで、時にはドルフィーのように咆哮してみせる。
スピード感もあり、前作のどこか子供が遊んでいる時に見せるような遊戯感のようなものは今回は影を潜め、大人のジャズを聴かせてくれる。

このアルバムを聴いた後にパーカーのサヴォイのレコードを聴いてみると、この2つはさほど距離が離れていないということがよくわかる。 見かけ上の
形式は似ても似つかぬものではあるけれど、核心部分には共通したものがある。 オーネットの音楽には革新と保守の要素が必ず奇妙に同居していて、
それを感じ取ることができさえすればこの人への抵抗感は消える。 そういう意味では、このアルバムはジャズを演奏することによりこだわっているので、
そういうマーブルなブレンド感がくっきりとしている。

聴き終えた後に残る充実感は前作を上回る。 とにかく真面目に真剣に取り組んだ音楽で、後の彼の音楽の原石のようなラフカットされてざらりとした質感は
他ではなかなか聴けない。 折に触れてこういう音楽に接しておかないと、自分の中で上手く音楽への感性を維持し続けられないような気がするのだ。



コメント (2)
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