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今週拾った安レコたちにはテーマがある。 かつてCDで聴いて、音が悪くて投げ出してしまった音盤たち、というテーマである。
レコードで聴き直してみようと思ったまま長らく忘れていたが、偶然、目の前に揃って現れた。
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Enrico Pieranunzi / Deep Down ( 伊 Soul Note SN 1121 )
水も滴るようなピアノの美音が降り注ぐ。 部屋の中の空気がガラリと変わるのがはっきりとわかる。 これがあれば、空気清浄機なんていらないな。
マーク・ジョンソンのジャスト・インなリズムとラインがとても効いていて、演奏を格上げさせている。 "Antigny" "Evans Remembered" という
素晴らしいキラー・チューンに心から酔わされる。 後者では、3人の演奏にはもはやエヴァンス・トリオが乗り移っている。
とにかく、CDとは別次元の音である。 ピエラヌンツィのピアノの音の輝き、マークの太い低音、ジョーイの濡れたようなシンバル、どれをとっても
最高の美音で迫って来る。 この作品の真価が初めてわかった。
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Kenny Barron / 1 + 1 + 1 ( 米 Blackhawk Records BKH 5060L )
ベースとデュオで対話する作品で、ベース奏者はロン・カーターとマイケル・ムーアが分担して受け持つ。 マイケル・ムーアはとても好きな人。
ケニー・バロンは過去の偉人たちのいいところを全部1箇所に集めたような、隙1つない完成されたピアニストだ。 黙って拝聴すれば、それでいい。
こんなに素直にスタンダードを歌わせるピアニストは他にはあまりいないんじゃないだろうか。
ブラックホークというレーベルはゲッツのアルバムもそうだったけど、CDの音が私にはどうもダメなので、こうしてレコードで聴くしかない。
期待通りの伸びやかでとても自然な音が心地よい。 初めてまともにこの作品を聴いた気持ちになった。
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The Great Jazz Trio / At The Village Vanguard ( 日本 East Wind EW-8053 )
言うまでもなく、これがオリジナル。 昔からトニーのドラムスの音が凄いことで有名だ。 床が重低音で振動するのがわかる、甚だ近所迷惑な1枚。
でも、聴きどころはそれだけじゃない。 ハンク・ジョーンズの抑えの効いたピアノにも圧倒される。 ロン・カーターは相変わらず音程が悪いけど。
それでもやっぱり、トニーは最高のドラマーであることをこれが裏付ける。 この頃の日本のレーベルは企画・制作を乱発していたけど、その中には
最高のジャズを記録したものも確かにあるのだ。 クラウス・オガーマンが書いた名曲 "Favors" でのハンクの情感が切ない。
これもどういうわけかCDは音の粒度が粗く、興醒めする。 それがレコードだと自然な音場感で、とてもいい。 700円でこれが聴けるんだからなあ。
安レコの底ヂカラを改めて実感させられた3枚。 安レコにしか興味が無くなったせいで、レコード屋にいる時間が以前よりも長くなった。
物量の多さが桁違いだからだ。 結構疲れるけれど、それでもゴソゴソと探すのは楽しくて、あっという間に時間が過ぎている。