Stan Getz, The Kenny Clarke-Francy Boland Big Band / Change Of Scenes ( 独 Verve 2304 034 )
Gigi Campiって、欧州のノーマン・グランツだなあ、と事あるごとに思う。 音楽プロデューサーとは言え、根っこが興行師なのだ。 だから、こういう
レコードを作る。 アメリカから流出した多くのジャズミュージシャンの受け皿として作り上げたこのビッグ・バンドは異例の長い活動期間を誇った。
アメリカに戻ってもジャズの仕事は無い状態だったから、メンバーたちも前向きに活動したんだろう。 そういう彼らにいろんなレコーディングの機会を
用意して、質の高い作品を数多く残したこのプロデューサーは立派な仕事をした。
そんな中で、スタン・ゲッツを招いて共演させたこのアルバムは、バンドの作品としても、ゲッツの作品としても、素晴らしい傑作に仕上がっている。
ゲッツにはオケをバックにした作品がたくさんあるけれど、それらの中でもこれは "Focus" と並んで一、二位を争うクオリティーだ。
楽曲はすべてフランシー・ボラン作曲のオリジナルで、幻想的な雰囲気で統一されたスコアを楽団が非常に繊細且つダイナミックに演奏していく。
その中をゲッツのビッグ・トーンが鳴り響き、圧巻の音楽になっている。 ドイツの最高の録音技術で録られた音響も素晴らしく、すべてに圧倒される。
それにしても、スタン・ゲッツの柔軟性の高さには驚かされる。 こういうビッグバンドの中にいてもその音量の豊かさはダントツだし、スコアが指示する
抽象性にもきちんと応えることができる。 どこの国の音楽だろうと、いつの時代の音楽だろうと、この人には吹けない音楽などないのかもしれない。
この作品は1971年に録音されたが、翌72年にヴァーヴは独ポリドールに買収されてジャズ部門の新規制作は廃止になる。 その直前に欧州で制作された
ため、このレコードはアメリカでは制作・発売されなかった。 まあ、アメリカでは受けないだろうな、こういうハイブラウな音楽は。
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長年探していた本盤だったが、UK買付けロー・プライス品の山の中に独盤と英国盤の2つがあっけなく入っていた。 どちらも900円台だったが、その血統を
考えると独盤のほうが血筋が正しいような気がしたので、独盤を選んだ。 このロー・プライス・シリーズ、私には宝の山。