今週はCDの収穫はありませんでした。 ここのところ、空振りが続いています。 ダメな時はさっさと諦めて、じゃあレコードのほうはと覗いてみると、
いくつか探していたものが見つかったのでそちらをつまみました。
Stan Getz / Voyage ( Black・Hawk Records BKH 51101 )
近年のスタン・ゲッツ再評価の契機になったこの名盤はCDのマスタリングが悪くて、それがずっと不満でした(そう思っているのは私だけではないはず)。
リマスター盤が出るのを期待しているのですが、一向にその気配がない。 ならばレコードはどうなのかと思っていたところに、うまく出会いました。
こちらはとてもナチュラルな音場感で、非常にいいです。 初めてこの演奏の本当の素晴らしさに触れることができたような気がします。
晩年のレギュラーユニットとしてケニー・バロンと組めたのは、ゲッツにとっては何より幸せなことだったのではないでしょうか。
テナーサックスをなめらかに音の継ぎ目なく吹く技はここに極まり、アドリブラインのメロディアスさも究極の域であり、もはやこれが楽器の演奏である
という感覚は消え失せて、ただひたすら美しいメロディーが滾々と湧き出てくるのを固唾を呑んで見つめるだけです。
全体のサウンドも適度の浮遊感と極上の上質さが溢れていて、最高級のジャズを聴いた、という歓びだけが残ります。 本当に素晴らしい。
Kenny Barron / Scratch ( 西独 Enja 4092 )
ケニー・バロンの作品の中で、最も好きな盤です。 だから、レコードでも持っていたいと思っていたところに、これに出会いました。
これはもともとデジタル録音だし、エンヤはCD化が上手いレーベルなので、この作品はCDのほうがきれいな音です。 レコードは各楽器の音の線が太く、
どっしりとした演奏に聴こえます。 その違いを純粋に愉しめれば、私にはそれでいい。
全編がオリジナル作品で、1曲目と最後の曲はバロン風バド・パウエルという感じのビ・バップ調の曲でとても面白い。 特に1曲目はウン・ポコ・ロコを
意識した曲になっています。 そして、最大の聴き処はそれらの間に挟まれたバラードで、特に "Quiet Times" は秋の澄んだ青空を思わせるような
素晴らしい曲で、これが長年の愛聴曲になっています。
きちんと緩急をつけた内容になっているところが素晴らしいと思います。 これが全編きれいな曲ばかりだったら途中でダレてしまって、ここまで愛聴する
ことはなかった。 デイヴ・ホランド、ダニエル・ユメールの2人も当然ながら質の高い演奏をしていて、このアルバムには欠点が見つからない。
"Scratch" は85年、"Voyage" は86年の録音ですが、このあたりからちょうど主流派ジャズの復興が始まります。 ゲッツはもしかしたらバロンの
この作品を聴いていたのかもしれません。 そして、ビ・バップの精神を忘れないバロンの演奏を聴いて、パートナーに迎えようと思ったのかもしれない。
そんなことを考えながら、しみじみと長年の愛聴盤を改めて聴き直したのでした。
いくつか探していたものが見つかったのでそちらをつまみました。
Stan Getz / Voyage ( Black・Hawk Records BKH 51101 )
近年のスタン・ゲッツ再評価の契機になったこの名盤はCDのマスタリングが悪くて、それがずっと不満でした(そう思っているのは私だけではないはず)。
リマスター盤が出るのを期待しているのですが、一向にその気配がない。 ならばレコードはどうなのかと思っていたところに、うまく出会いました。
こちらはとてもナチュラルな音場感で、非常にいいです。 初めてこの演奏の本当の素晴らしさに触れることができたような気がします。
晩年のレギュラーユニットとしてケニー・バロンと組めたのは、ゲッツにとっては何より幸せなことだったのではないでしょうか。
テナーサックスをなめらかに音の継ぎ目なく吹く技はここに極まり、アドリブラインのメロディアスさも究極の域であり、もはやこれが楽器の演奏である
という感覚は消え失せて、ただひたすら美しいメロディーが滾々と湧き出てくるのを固唾を呑んで見つめるだけです。
全体のサウンドも適度の浮遊感と極上の上質さが溢れていて、最高級のジャズを聴いた、という歓びだけが残ります。 本当に素晴らしい。
Kenny Barron / Scratch ( 西独 Enja 4092 )
ケニー・バロンの作品の中で、最も好きな盤です。 だから、レコードでも持っていたいと思っていたところに、これに出会いました。
これはもともとデジタル録音だし、エンヤはCD化が上手いレーベルなので、この作品はCDのほうがきれいな音です。 レコードは各楽器の音の線が太く、
どっしりとした演奏に聴こえます。 その違いを純粋に愉しめれば、私にはそれでいい。
全編がオリジナル作品で、1曲目と最後の曲はバロン風バド・パウエルという感じのビ・バップ調の曲でとても面白い。 特に1曲目はウン・ポコ・ロコを
意識した曲になっています。 そして、最大の聴き処はそれらの間に挟まれたバラードで、特に "Quiet Times" は秋の澄んだ青空を思わせるような
素晴らしい曲で、これが長年の愛聴曲になっています。
きちんと緩急をつけた内容になっているところが素晴らしいと思います。 これが全編きれいな曲ばかりだったら途中でダレてしまって、ここまで愛聴する
ことはなかった。 デイヴ・ホランド、ダニエル・ユメールの2人も当然ながら質の高い演奏をしていて、このアルバムには欠点が見つからない。
"Scratch" は85年、"Voyage" は86年の録音ですが、このあたりからちょうど主流派ジャズの復興が始まります。 ゲッツはもしかしたらバロンの
この作品を聴いていたのかもしれません。 そして、ビ・バップの精神を忘れないバロンの演奏を聴いて、パートナーに迎えようと思ったのかもしれない。
そんなことを考えながら、しみじみと長年の愛聴盤を改めて聴き直したのでした。