salt&pepper days 

ともすれば、子どもとの時間に埋もれそうな日々。でもやりたいことは他にもいっぱい。刺激を求めて悪あがき中。

本の感想・頭と心は別、だけど

2009-12-22 01:09:21 | 本・雑誌
はるか昔、高校生のとき。

地学の時間…だったと思うんだけど
地学教室は3人がけの机で、出席順に3人ずつ座っていて
たまたま私は仲良しの子、二人と同じ机に。

先生がけっこうゆるーい感じだったのをいいことに
地学の時間は「おしゃべり時間」でもあった。

今でいう「恋バナ」をしていて
1人の友達が言った。

「結婚したら、他の人を好きになっちゃダメでしょ。
それって、なんかつまんないねー」

自分がどう答えたのか忘れたけれど
そのときの友達の口調や、教室の明るさを
今でもすごく覚えている。

たしか、「そんな先のこと、まだ心配もしてないけど…(笑)」
とかなんとか、答えたような、答えなかったような。
まあ、だいたいそんな気持ちだったと思う。


この本を読みながら、この友達の言葉を思い出しました。

『切羽へ』(井上荒野・著)

島で暮らす、夫のある養護教諭が
新任の男性教師に惹かれる。

彼のほうは、なんともとらえどころのないけれど
ふとした視線、態度にあふれてしまうものがある。

お互いにはっきりと口にしない、自覚自体も曖昧なのに
無意識ににじみ出る空気が、伝え合ってしまう。

恋、とはっきり言うよりも
思いを寄せる、そんな気持ち。
けれど、不確かなようで
間違うことなく相手に向かっている。

そんなふうに、惑い、はぐれそうになっている妻を
夫は感じている。
連れ戻すでもなく、突き放すでもなく。

どこかに行きたくて歩き出すけれど、行き止まる心。
どこにも行けない人たち。


話の舞台は、島。

そのことが、この人たちの関係を
成り立たせているようにも思う。

来るものは受け入れ、去るものを追わない
やさしさとあきらめが、作り出す空気。

答えを出し急がない、求めない関係。

大人の、静かな喜怒哀楽が流れる時間。

最初から最後まで
浮き足立つような気配、ざわめき、危うさが漂う
静かでいて濃厚な物語。


結婚していても心は自由で、縛ることはできない。
頭と心は別もの。

心に従って歩き出した先に、何を見るか。

希望的想像だけではもう、歩けないなあ。

それってやっばり
「なんかつまんないねー」ってことに
なるんでしょうかね。


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