salt&pepper days 

ともすれば、子どもとの時間に埋もれそうな日々。でもやりたいことは他にもいっぱい。刺激を求めて悪あがき中。

本の感想・男のロマン?

2008-02-26 00:07:29 | 本・雑誌
ちょっと間があきましたね。

緑茶がぶ飲みをさぼっていたら
ビタミン不足で風邪ひいて、ダウンしてました。

熱出して寝込みながらも
これで堂々と本を読む時間ができたと
心のどこかでほくそ笑む私。

読んだ本は
『アフリカの絵本・(上)(下)』(伊集院静・著 講談社)

ちょっと乱暴な説明ですが
破天荒な男性編集者が、仕事でアフリカへ行き
“自分探し”に、本格的に目覚めていく話。

実際の30代半ば男性っていうと
どこかで「こんなはずじゃなかった」とか
「俺の人生、これでいいのか」と思いながらも
現実に押し流されている人が多いような。
仕事や家庭がらみで「こうなりたい」という
ビジョンは描けても
それらと関係ないところで、どれだけ夢を語れるか。

だからこの主人公のように
自分探しや夢を語ってしまう人に対し
違和感のようなものを覚えなくもなかった。
しかも、その夢が壮大だし。
ユメミルユメオ、あるいはモラトリアムといってしまえば
それまでだけど
ありかなしかといえば、ありだな、とも思う。

語れるなら、語ればいい。
それができる人生は、素晴らしい。

主人公は、いろんな人の夢や人生を巻き込みながら
ひとつの「絵」を織り成していく。
もはや彼自身の自己実現なんてレベルではなく
そこには苦しみも生まれるけれど
そういう生き方しかできない人は、確かにいる。

男女差で言いたくはないけれど
これだけ大きなスケールで夢を語り、動けるのは
やはり男の人なのかなあ。
男のほうが夢見がちで
女のほうが計算づくで、現実的なのか。
いや、そうともいえない…と思いつつ
やはりこの手の話の主人公は
男の人のほうがおさまりがいいな、と思ってしまいました。

夢を見たい人、ロマンを感じたい人には
おすすめできる本だと思います。

本の感想・「物語」を持つこと

2008-02-10 01:42:18 | 本・雑誌
読みかけで、なかなか進めなかった本を
やっと読み終えた。

『犬のしっぽを撫でながら』(小川洋子・著 集英社)

前回に続いて、小川洋子さんの本です。
今回は、エッセイ。

映画にもなった『博士の愛した数式』を書くにあたり
小川さん自身が、どんなふうに「数字」に魅せられていったか、
(小川さんて、てっきり理系の方だと思っていたら
バリバリ文系だったんですねー)
小説を書くことに対する思いや、アンネ・フランクをめぐる旅、
子どもの頃の家族や友達の記憶、
愛する阪神タイガースへの思いなどを、たっぷり読める。

対象への「熱い思い」が、決して暑苦しくない。
感情的にならず穏やかだけど、強い愛情を感じる。

この人は、常に「物語」を感じて生きているのだなあと思う。
自分の中にある物語、そして、日々の其処此処にある物語を。
それを感じることは、すごく心豊かなこと。
特別な出来事がだけが「物語」になるのではなく
人やもの、すべてに物語は存在すると、改めて思う。

喜びや痛みややるせなさ、そういったものたちを
心に連れてくるものすべてが、
ひとつひとつは小さくても、物語になり得る。
それらに向き合うことで、小川さんの小説が生まれるんだな、とも思う。

向き合うことは苦しいときもあるけれど
心を研ぎ澄まし、日々を丁寧に見つめることで
いろんな物語をたくさん感じて
自分自身もまた、物語を紡いでいけるんだなあ、と思うと
ありふれた毎日も、ままならないあれやこれやも、
とても大切に思えてくる、そんな本です。