salt&pepper days 

ともすれば、子どもとの時間に埋もれそうな日々。でもやりたいことは他にもいっぱい。刺激を求めて悪あがき中。

本の感想・会社員も悪くない?

2007-05-25 01:59:26 | 本・雑誌
思い出の多い・少ないや、内容の良し悪しに関わらず
今の自分の考え方の多くを作っているのは
学生時代の経験よりも、会社員時代だと思う。

もちろん、育った家庭環境や
学生時代に経験したこと、人間関係、友人関係の影響もあるけれど
一番大きいのは、仕事を通して感じたり悟ったことではないか、と。

な~んて、たかだか7年ちょっとの会社員生活と
その後の超マイペースフリーでの仕事で
悟ったものなんて、なんぼのもんかい、と思われそうだけど
「濃さ」が違うんだよなー、学生時代とは。
挫折したり、いい気になったり
苦しかったり楽しかったり
素晴らしい人に会えたり、顔も見たくない人に会ったり
そこで自分が感じたことや、見てきたものを考えると
就職してよかった、と思う。

なぜ、あらためてそんなことを思ったかというと
糸山秋子さんの『沖で待つ』(文芸春秋)を読んだから。
(糸山さんの「糸」は、正確には糸がふたつ並ぶ字)

この作品は、新入社員として同じ土地に配属された
女性主人公と、男性の同僚を軸に、周囲の人たちや
主人公の年代特有の悲哀みたいなものが、出ている。

就職して3年目くらいまでの、自分の気持ちの変化と
重なることが多くて、ちょっとせつなくなる。
こんな同僚との関係、うらやましい。
「同志」だよね。
異性ならでは、なのかな。

数年後、転勤でそれぞれ働く場所が変わってから
再会した主人公と同僚が、バーで奇妙な「約束」をしたあたりから
話のトーンが一気にたそがれてくる、というか
ラストに向かって、「ああ、そっちへ行かないで」みたいな
傷みを帯びてくる。

といっても、ラストの展開は、作品のしょっぱなで
明かされてはいるんだけど。

糸山さんは、好きな作家のひとり。
この人が書く女の人は、「男らしくて」カッコいいなあ。
男っぽいとも、姉御とも違う
「男気」のある、女の人。

表題作と一緒に掲載の『勤労感謝の日』も
女性と仕事が題材。
今の自分と立場は違うけれど
気持ちが入り込んでしまう作品でした。


職人の技

2007-05-22 01:59:19 | 出来事
先週末で終わってしまったのですが
三軒茶屋のキャロットタワーで
「活版再生展」を見てきました。

今やDTP(デスクトップパブリッシング)が当たり前の時代ですが
昔は原稿の通りに、鉛の活字の型をひとつひとつ拾って
文章を組んでいた。
だけど、スピードでいえばDTPには敵わず
時代の流れとともに、活版印刷は衰退し・・・
という現実を踏まえ、この展示会では
「活版の文字の美」や、職人さんの「いい仕事」ぶりを
広く知ってもらおうではないか、という前向きな趣旨。

廃業してしまう印刷所もある一方で
活版にこだわるデザイナーや
その作品も紹介されていた。
職人技にも思えるベテラン写植屋さんの仕事ぶりも
映像で見ることができて
今や活版は「アート」なのだなあ、と思う。

文字や活字は伝達ツールではあるけれど
そこにこもっている「思い」や「熱」みたいなものって
感じとれるものなのだと思う。
パソコンやメールの恩恵は、ものすごく受けているけれど
スピードと合理性だけの仕事、人とのやりとりは
ともすれば心が荒む、ということも感じている。

元々編集をしていたのに、活版については勉強不足。
職人さんたちの、丁寧で真面目な作業によって守られているものに
もっと触れてみたいと、あらためて感じた日でした。



読んだ本・踏切が趣味!?

2007-05-12 23:50:17 | 本・雑誌
風邪をひいて寝込んだ。
昼夜なく寝ていたら、へんな時間に目が覚めて
眠れなくなった。
熱もひいていたので、読書。

『踏切趣味』(石田千・著 筑摩書房)

読みかけの本が、この本でよかった。
まるで梅干おかゆのように
弱ってる心と体にじんわり、しみこむ。

踏切のある町へでかけて行き
踏切を観察し、歩幅で長さをはかり
その町の空気を感じながら
一句詠む…。

石田さんって…踏切好きなんですか!?
俳句をされていることは
これまで読んだエッセイで知っていたけれど
あっちの町、こっちの町へと出かけては
踏切を題材に詠むとは!

いくつか、私も降りたことのある駅
しかも、渡ったこともあると思われる
踏切も登場した。
けれど、私がそこで目も向けなかったものが
石田さんの視界にはちゃんと入っていて
いつもながら、そのまなざしに感服。

なんでもない日常のうまみ、面白みが
ぎゅぎゅっと詰まった文章は
残りページが少なく、読み終わりに近くなるにつれ
もったいない、と思わされるのもいつものこと。

ありふれた景色が、素敵な色に染まって見える文章。

踏切は、車の運転をするようになってから
「怖い」存在。
ちゃんと一時停止、窓開けて、電車の音、警報機の音を聞いてって
教習所時代にうるさく言われ、もちろん守っているけど
踏切を渡るときは、なんか怖い。

以前、使っていた駅近くには
人も車も交通量の多い踏切があり
そこが「開かずの踏切」でもあった。
片方が行ったと思うと、すぐ反対から電車が来て
朝夕、急いでいるときはホント、イライラ。
踏切の脇に、地下道へ行ける階段があり
埒があかないときは、そっちへ駆け込み
反対側へと通路を走った。

たぶん石田さんは、開かずの踏切でも
じっくり待つんでしょうね。
電車の乗客を観察したり
一緒に待っている人々を眺めたりしながら。

そういう余裕に憧れます。


駒沢のカフェ大好き~

2007-05-09 00:57:43 | カフェ
世間がカフェカフェって大騒ぎになる前から
カフェ好きだったつもりなのだけど
いつしかカフェブームに飲み込まれて
私自身も浅はかな「似非カフェマニア」みたいな気分に
なりつつあった。

雑誌やネットのカフェ情報を参考にするけれど
自分の足でみつける、というのが理想。
カフェって、実際に行って、自分の肌で感じないと
合うかどうかわからない。

少し前に、ネットでも雑誌でも見ていなかった
気になるカフェ発見。
駒沢公園の通りへ曲がる手前、ビルの2階。
外から中の様子がわからず、怖くて入れず
通り過ぎること2回。
なんとなく店内が暗そうに見えて。
薄暗いカフェは嫌いじゃないけれど
なんとなーく「テクノっぽい雰囲気」(イメージ)を感じて
もしかしたら苦手かも、って思ってしまったのだ。

で、GW中、Kちんに付き合ってもらって
いざ、そのカフェへ!
Kちん、勇気をありがとう(??)!

大当たり~! でした。
KOMAICHI CAFE。

私ったら、名前も間違って覚えていた。
KOMACHI(小町)カフェだと思っていた。
駒一(駒沢1丁目)ね!

テーブルの間隔があるから
隣との距離も気にならないし
店内、おしゃれだけど気取りすぎず
遊び心が散りばめられていて楽しい。
イラストレーターさんの作品が置いてあったり。
流れていたピタゴラスイッチの映像、スタッフの方の趣味?
私も大好き。
(NHK教育テレビでやってる番組)

ケーキ、おいしかったです。
コマニ(駒沢2丁目?)ケーキ、マンゴー味のチーズケーキ。
大きくてびっくり。
生クリーム、アイス付き。
ありがちな、こじゃれてるだけの
ちまちまっとしたケーキじゃない。

お店の人も、適度に放っておいてくれる。
おしゃべりも詞書きも
お茶も食事もなんでもできそう。
オールマイティー感漂う、きちんとした店。
私たちは、Kちんの詞について
あれこれ話し合う…っていうか、言いたいこと言ってごめんね。
日本語って難しいわ。

わんちゃんOKのカフェみたい。
お行儀のよいわんこたちが、数匹。
うっ、うちのひよこ(娘)より、行儀がいいぞ。

駒沢にはもうひとつ、rice cafeという
好きなカフェがある。
ここは半地下で、手作りっぽい店内が落ちつく。
いい街だなあ、駒沢。


本の感想 ほしいものと引き換えに・・・

2007-05-04 23:05:43 | 本・雑誌
このG・W、何かとバタバタで
この1冊しか読めそうもないのですが
濃厚なものを、まったりと味わうことができました。

『誰よりも美しい妻』(井上荒野・マガジンハウス)

登場する「美しい妻」は、その美しさの奥深いところで
壊れている。
いるのかな、いるんだろうか、こういう人。
壊れているけど、強い人だとも思う。

絶対手に入れたいもの、それが
生身の人間だったとしたら
「わたしだけのものになった」って思うのは
恋愛初期や新婚のうち(そうとは限らないかもしれないけど)・・・?
まあ、そうは言わないけれど
常に「わたしだけのもの」と確信するのって、難しい気がする。

独占したいと思えば思うほど、不自由になってゆく心。
確信を求めれば求めるほど、自分が強くならなければならないのだと
思わされる。
「強く」というのは、ある意味、鈍感にもならなければならない。
目をつぶらねばならないことも、たくさんある、ということ。
相手を愛するほど、心は不自由になっていく皮肉。

それにしても井上荒野さんの話は
人のズルさや弱さがちゃんと描かれていて、おもしろい。
どんどん引き込まれる。
映画化されたらおもしろそう。
テレビドラマなら、昼ドラ系?
「妻」役は、あの人かなー、いや、いかにもすぎるか
なんて思い巡らせながら、読みました。

あとがきの「思わせぶりさ」がまた、素敵だなあ。
最後の最後まで、味わい尽くすことができました。