黒古一夫BLOG

文学と徒然なる日常を綴ったBLOG

いよいよ、牙を剥き出しに

2009-07-31 11:28:25 | 近況
 今、どんな新聞を開いても、またテレビのワイドショーなどを見ていても、来る8月31日に行われる衆議院議員選挙のことやそれに関係する各党のマニフェストのことがメインの話題になっているが、それはそれで「政権交代」が実現しそうな状況を踏まえた結果として、僕らもそれらの「情報」をよく吟味して投票行動に繋げるべきなのだろう。
 しかし、そんな選挙に関わる喧噪を尻目に、昨日の新聞に割と大きなスペースで報じられながら、テレビ屋ラジオなどでは(僕が知る限り)一切振れられなかった話題がある。それは、陸上自衛隊に「総司令部」のような機関が創設され、それに伴って全体の部隊配置にも幾分かの変更が行われた、というものであった。僕は軍隊組織については詳しいことを知らないので詳述はできないが、新聞記事に拠れば、戦前の「大本営」のようなもので、この組織は自衛隊の前身である警察予備隊が創設されて以来の自衛隊関係者(軍事を重要視する政治家も含む)の「悲願」であったそうで、にもかかわらず、これまで創設されなかったのは、自衛隊を存続させるための「方便」であった「シビリアン・コントロール」に遠慮した結果であったという。
 それなのに、いよいよ政権を民主党に譲るかも知れないという土壇場になって、どさくさ紛れに「大本営=総司令部」を創設してしまった(してしまおうと画策した結果)という印象しか持てないが、これが「郵政選挙」の結果衆議院議員の3分の2の結果であるとしたら、小泉郵政改革とはなんであったのか、改めて考えなければ行けないのではないか、と思う。あの「ワン・フレーズ・ポリテック」と言われた小泉政治がアメリカの「新自由主義」を模倣した「ネオ・ファシズム」(ネオ・ナショナリズム)であることは繰り返しこの欄で書いてきたが、小泉に次ぐ安倍、そして(福田をまたいで)麻生首相と続く保守政権の「危うさ」も、今回の陸自における「総司令部=大本営」創設によって極まった、と言えるかも知れない。
「仮想敵国・北朝鮮」の脅威を前面に押し出しつつ、その裏で「軍事大国化」(今でも相当の軍事大国なのに)への道を歩み続ける「日本」。
 果たしてそのような「危険な道」に未来はあるのか? 東アジア、あるいはロシアを含んだ極東地域で、日本の「軍事力」はどのような位置にあるのか、一国内で考えるのではなく、近隣諸国間の関係性の中で日本(の軍事力)を見た場合、特に戦前の「大本営」を思わせるような組織を、国民の多くが知らないまま、軍隊(自衛隊)と政府の一部で創設を決定してしまったという事態に関して、他国はどのように思うか? 海自(陸自も)が「海賊対策」という名目で遙かアフリカのソマリア沖まで出動している今、近隣諸国は日本への警戒心を強めるのではないか。
 偏狭なナショナリズムが「悲劇」しか生まないことは、先のアジア・太平洋戦争の経験から日本人の誰もが知っていると思うのだが、戦後も64年、哀しいかな、様々なことが「風化」してしまっているのも現実。そんな状態を見透かしたように、ナショナリスト(ファシスト)たちがいよいよ牙をむきだしてきた。僕らは、どのように対処したらいいのか。
 悲惨な歴史を繰り返さないために、ここはゆっくりみんなで考えるべきなのだろう。幸い、「ヒロシマ・ナガサキ」デーはもうすぐだし、「8月15日・敗戦記念日」ももうすぐ来る。1年に1度でもいいから、歴史を振り返り、現在を凝視し、未来について考えをめぐらす時間を持ちたいものである。