日本史学習拾遺

日本史よもやま話、授業の補足、学習方法

興福寺仏頭

2013-06-15 21:41:11 | 飛鳥時代
図書館に行く余裕もできて、本をできるかぎり読んでいます。

近所の図書館で見かけた、大学時代の恩師の本・・・青木和夫先生(故人)は、放送大学でも講師をしていた時期がありました。拝見したことはありませんでしたが。その時の、放送大学のテキストが、図書館の棚に並んでいたのです。

青木先生の講義は、一言一言が血となり肉となり・・・深い講義でした。放送大学のテキストといえども、きっと内容の濃いものだからこそ、図書館に置いてあるのだろうなと思ったりして。概説かなと思いながらも、何か、読んでみれば得るものがあるに違いない、と思って、他の本と一緒に借りてきました。

白鳳文化のページに、このような文章がありました。私の好きな仏像ベスト3の一つ、興福寺の仏頭(と薬師寺の薬師三尊)について。

「・・・衆生を広く救おうという大乗の誓願が、いや、ほんとうに救えるのだという確信となって、仏像に表現されているようにさえ思われる。心の美しい青年の容姿といったらよいかも知れない。人それぞれの好みもあるであろうが、薬師寺東院堂の聖観音、法隆寺の夢違(ゆめたがえ)観音をはじめ小金銅仏に至るまで、白鳳時代の諸像はみな晴朗である。
(青木和夫『日本古代史』放送大学教育振興会 p.67)

なるほど「晴朗」ですか・・・と感じ入りました。
先生の理知的な文章の中で、ここだけが情緒的な文章のような感じがします。もちろん、よく読めば、先生は、全体に、古代の人々の気持ちにまでわけ入って、時代を描き出してくださっているのですが。

薬師寺東塔なども含め、白鳳文化は私も好きなところです。ちょうど、卒業論文でも飛鳥・奈良時代、特に天武・持統天皇の時代を中心に取り上げました。

この白鳳文化に関する教科書の記述も面白いのです。

「律令国家が形成される時期の生気ある若々しい文化で・・・」

と、この教科書(山川出版社『詳説日本史B』ただし新課程のものではない)も妙に情緒的(主観的?)な表現なのです。でも私もそうだそうだ、と強く共感します。
さらに、

「彫刻では興福寺仏頭などがおおらかな表情を伝え、」

と、ここも「おおらか」などという形容をしています。
私がこの興福寺仏頭(もとは山田寺にあった 天武14年開眼)が好きなのは、高校時代に日本史の授業で見て、当時、この仏像によくにた顔・表情の同級生(女子)がいて、似た人がいるくらいだからとても写実的で、本当にのびやかでにこやかでいい表情だなと強い印象が残ったからです。

そして、仏像の表情には当時の時代の空気が反映されている、と私は思うのですが、この白鳳文化の時代、天武・持統天皇の時代は、これから律令に基づく国づくりをしていくぞーっというはりきった初々しい空気を感じて、とても好きです。青木先生の表現「晴朗」な空気があったのでしょう。
同じ表情の仏像を、今作ろうったって、作れる人はいないでしょう。

そういうわけで、青木先生の文章も、教科書も、白鳳文化の所は、ちょっと他とは違う雰囲気があって、面白いなと思うのです。

この興福寺の仏頭に、先日、帰りの電車の中で思いがけず出会いました!とろんとした目が一瞬大きく見開きました(笑)。

「興福寺創建1300年記念 国宝 興福寺仏頭展」が、東京藝術大学の美術館で、今年の9月3日(火)- 11月24日(日)まで開催されるそうです。

公式ホームページ
http://butto.exhn.jp/

その前売券の販売の広告でした。9月ですからまだまだ先です。奈良で見るのが一番いいですが、せっかく東京に来てくれるのなら、会いに行きたいですね。逆に、その時期奈良にいないわけだから、間違えて奈良に見に行ってがっかりしないようにしなければ。
もし、覚えていたら、東京に来る興福寺仏頭に、会いに行ってみてください。

「会いに行く」とか「奈良にいない」とか、思わず書いてしまうくらい、人格があると思わせるような、親しみを感じる仏像です。私も、会えば、何かしら心の中で話しかけています。前に、東京に来てくれたことがあったと思いますが・・・

私の好きな仏像ベスト3、と上に書きましたが、この興福寺仏頭の他には、広隆寺の弥勒菩薩(飛鳥文化の南梁様式)、それと仏像ではないかもしれませんが、興福寺の阿修羅像(天平文化)です。法隆寺の百済観音(飛鳥文化の南梁様式)のスタイルのよさも好きです。

青木先生の本から、ずいぶん長々と書いてしまいました。もう一つ、後日、別の記事を書こうかなと思います。

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