日本史学習拾遺

日本史よもやま話、授業の補足、学習方法

「約束」

2012-11-14 22:01:52 | 昭和時代
今日は、2年生の授業で「ライオン宰相」と呼ばれた浜口雄幸のビデオ(その時歴史が動いた)を見せていました。

浜口雄幸は、金解禁重要産業統制法などを実施した総理大臣です。折悪しく、世界恐慌の直後で、日本は深刻な昭和恐慌に陥りました。ロンドン海軍軍縮条約締結にあたっては、統帥権干犯問題も起こりました。そして、浜口首相は東京駅で狙撃され、数カ月後にその傷が元で亡くなります。

ビデオが始まって、「その時歴史が動いた」で毎回設定される「今日のその時」を松平さんが紹介したのを聞いて、
「今日じゃないか!」
と思わず声をあげました。「今日のその時」は、1930年11月14日だったのです。
ちょうど82年前の今日、浜口雄幸首相が東京駅で狙撃されたのでした。

去年の日本史Bで担当した2クラスにも、この浜口さんのビデオを見てもらいました。結構印象の強いビデオだったから覚えている人も多いと思います。今年の2年生も、後半あたりから特に、しんとして、番組に引き込まれていました。

浜口さんは、総理大臣になってから、いつ死んでもいいという覚悟で政治を行っていました。
浜口首相は、「国民との約束」をとても大切にしていたというエピソードがクローズアップされていました。番組の最後では、浜口首相の言葉として、浜口にとって政治は道楽だと言う者がいるが、政治は絶対に道楽であってははならない。真剣きわまりないものだ、道楽に堕落してしまったらその国はおしまいだ、という趣旨の言葉が語られました。

今の政治家は、国民との約束を守っていると言えるだろうか?命がけで政治をしているだろうか?そういったことを私も生徒に問いかけましたし、生徒の感想も、いつもにましてびっしり、考え深い感想が書かれていました。毎年感じますが、冬頃になると、(2年生の)生徒の感想も少し深みを増してきますね。
去年の生徒の皆さん(現3年生)も、このビデオの内容に心を動かされて、真摯な感想をたくさん書いてくれていました。
「ライオン宰相」覚えたよ、と後で言ってきた生徒もいました。

帰宅すると、21時のニュースで、何やら、野田総理が熱弁をふるっている。しかも「約束」という言葉を力説している。昼間は、民主党のふがいなさも頭によぎりましたが、野田さんも浜口さんのように、国会で真剣勝負しているようじゃないか、と思ってテレビの映像を見ました。国会解散の日程を言っている??16日?と、驚きました。
自民党総裁などとの党首討論でのやりとりの中で出てきた言葉で、ちょっと、売り言葉に買い言葉のような印象も受けましたが、解散の日は決まってしまったようで。
野田総理は「約束」を守る(議員の定数是正)、ということを、野党にも要求していたようです。

誠実で、正直で、約束を守る、これが政治家にとっても、政治家でなくても誰でも、最上の態度だと思います。そういう態度で仕事をしていれば、認めてくれる人もきっといるはずです。
今日の野田総理の映像は、いつもより、毅然として、懸命に政治家としての仕事をしているように見えました。
浜口さんのスピリットを、野田さんはどれだけご存知かわからないけれども、浜口首相狙撃事件のあったこの日、帰宅して映像を見て、少し、野田さんを見直しました。この先はわかりませんが。
今日、ビデオを見ていた時は、生徒たちは現代の政治家に失望していたかもしれませんが、夜にこの映像を見たら、現代の政治家も全く捨てたもんではないな、と思う生徒もいたかもしれないと思うほどです。

浜口首相は、撃たれた時、「男子の本懐だ」と言ったそうです。
新潮文庫に浜口総理を描いた『男子の本懐』(城山三郎著)があります。興味があったら、読んでみてください。

「約束」という言葉が耳に残った今日。「約束」を誠実に守れる人間でありたいと改めて思いました。