まろの公園ライフ

公園から世の中を見る

茨木のり子展

2014年05月16日 | 日記

世田谷文学館に行って来ました。
本当はゴールデンウィークに行く予定だったのですが
結局、仕事が片づかずに断念、やっと時間が出来たので再チャレンジです。

京王線の蘆花公園駅から歩いて5分。
ちょっとしたお屋敷町といった閑静な住宅街にあります。
訪れるのは初めてですねえ・・・

詩人の「茨木のり子展」です。
何事に対しても怠惰で向上心のない私を
いつも「ばかものよ」と叱咤してくれる母親のような人です。(笑)

茨木のり子は現代の女性詩人の中で最も人気のある一人です。
ご覧のように理知的な凛とした顔立ちで
晩年の向田邦子さんを思わせる雰囲気がありますね。

ちなみに展覧会のこのパンフレットは4種類あり
それぞれ表と裏に茨木さんのポートレート写真が印刷されていて
彼女の8つの表情を楽しめるようになっています。
なるほど、考えたなあ・・・



[詩の世界」をどうビジュアルに見せるのか・・・
それが一番の興味でしたが、その点でも結構面白かったです。
著作や書簡集、生原稿、詩が掲載された古い雑誌などの展示はもちろんですが
彼女が暮らした東伏見の「自宅」に徹底的にこだわって
そのディテールからから立ち上がって来る「生活感」のイメージが
詩の世界観とうまくリンクしているのが効果的でした。
書斎、蔵書類、食卓、寝室、愛用のカメラやメガネ、自慢の酒器や筆記用具・・・
その一つ一つが年代と愛情を感じさせて
彼女の人柄や醸し出す言葉と自然にオーバーラップして来るようでした。

皆さんは茨木さんのどの詩が好きですか?
朝日新聞の「天声人語」で「倚りかからず」が紹介されて以来
彼女の詩は大きな反響を呼び、詩の愛好家を越えて幅広く愛されるようになりました。

「わたしが一番きれいだったとき」「自分の感受性くらい」「六月」「汲む」など
誰もが一度は教科書で読んだことがあるのではないでしょうか。
私は「根府川の春」という詩が好きなのですが・・・

彼女の詩には何より「品格」がありますね。
それはとりもなおさず人間の「品格」に通じる訳ですが
最近の詩は、やたら難解なばかりで
温もりのあるキリッとした品格に欠けています。

写真仲間との交流も楽しいコーナーでした。
大岡信、川崎洋、寺山修司、谷川俊太郎、金子光晴・・・
実はこのパンフレット写真は谷川俊太郎さんが撮ったものなんですね。
そんな詩人仲間からも愛されながら・・・
茨木のりこさんは2006年、享年79歳で亡くなりました。

      いなくならない  谷川俊太郎

  あなたがいなくなったと知った朝
  二月の雨もよいの空の下
  庭の梅の木が小さな花をつけていた
  郵便がどさっと投げこまれ
  子どものむずかる声が聞こえ
  一日がはじまった

  あなたを失ったとは思っていません
  茨木さん
  悼むこともしたくない
  半世紀をこえるつきあいを
  いまさら絶つなんて無理ですよね
  からだがいなくなったって
  いなくならないあなたがいる
  いつか私が死んだあとも


  
思わず「図録」も買ってしまいました。
一頁、一頁、見ているだけで思いがあふれて来るようで
とっても、とっても、いい本です。
当分の間は「茨木のり子」にひたりきっていようと思います。

世田谷文学館、なかなかいいところです。
文学青年でなかったオジサンもやさしく迎えてくれました。

茨木さんの言葉は人を「鼓舞」するような不思議な力がありますね。
大いに奮い立って昼下がりの世田谷の街に
転がるように飛び出しました。(笑)