切腹を命じられ、命を区切られた戸田秋谷は、それでも毅然と
して残された日々を、己の心の向かうところが志しとし、それが
果たされるのであれば、命を絶たれることも恐れない。清廉で
凛とした生きざまに圧倒された。
武士の生きざま、人と人とのそして家族の絆、変わらぬ友情を
静寂な山間の風景とともに描いている。
秋谷の息子・郁太郎と百姓の倅・源吉の友情に胸を打たれる。
家族思いで健気な源吉であったが命を絶たれてしまう。そんな
源吉に、秋谷は「まことに武士(もののふ)も及ばぬ覚悟だ」と
つぶやいて合掌する。 ここでは涙があふれて止まらなかった。
読み終えて、しばらく心のふるえを抑えることができなかった。
本当に読んでよかった、感動の時代小説である。