あたしの名前は・・・まだないって、漱石先生お書きになったところの猫ちゃんみたいに
言いたいのだけど、あるわ。「マリ」って名前のシーズー犬よ。 よろしくね。
兄弟は4人、じゃなかった4匹。ほかの兄弟はどうしたかって? 知らないわ。
だって、まだママの所に居たかったのに、小さな箱に入れられて、ここのおウチに連れて来
られちゃったのですもの。
夜遅くだったのよ、着いたのは。けれど、ここんちのママは起きてて、
「エーッ、可愛い子って、この子なの?」
「そうだよ。可愛いだろ?」
そう、ここのおウチの大きいお兄ちゃんが、あたしを連れて来たのよ。お友達の、本当のあ
たしのママのところから。
来る前に、そのお兄ちゃんが、おウチに電話してたのよ。
「俺の隣りに可愛い子がいるんだけど、連れてっていいかなあ?」
ってね。そしたら、お兄ちゃんのママが、いいわよ、いいわよ。グラタンしかないけどって、
言ったんだって。あたしはまだ何にも固形物なんて食べられないのにね。
「おい、行こ!良かったねぇ」
って。可愛い子って、なかなか結婚する気配もないお兄ちゃんだったから、ママは勝手に勘違い
してたみたいよ、未来のお嫁さんかって。 でもね、あたしを一目見たときから、
「ン~~、な~んて可愛い子なのこの子は」
って、1日に何回言うかしら、状態に陥ってしまったママだし、パパなんか、あたしを呼ぶのに
「マジ~~~!」
よ。ここんちのお兄ちゃんたちは、みんなパパの独自な呼び方で呼ばれてたんだって、小さい時に。
それでもって、あたしはず~っと「マジ~~」か「マッジちゃん」
てことになったのよ。 まあ、「マ」がつくから許したげるわ。
ここんちの家族は、全員あたしに参ってるけど、1人、ううん、1匹だけ、いやらしい目で見る
のがいるのよ。 ウン、女。これが怖いんだなぁ。 猫よ。それも、気性が激しい事で有名な、
アメリカン・ショートヘアのあの猫が。 大きいお兄ちゃんたら何考えてるのかしら? この猫も
お兄ちゃんが連れてきたんだって。でもね、本当はすっごく可哀想な猫なのよ。
まだまだママのおっぱいがいるっていう時に、引き離されちゃったものだから、いっつも怯えて、
危害を加えられるって、思い込んじゃったのね。誰であっても、手を出したり、近づいたりしたら、
「ハー!」
って威嚇、全身の毛を逆立てて、怒る。それでもそれを無視されたら、もう、タダじゃあ済ませない、
引っかく、噛み付くの実力行使に出る、凶暴猫がいたのよねえ。その猫の名前は、見るからに気が
強そうだってことで、「ジョディ」。アメリカの女優の名前からとってつけたんですって。
だからね、そのジョディにしたら、面白くないが3乗くらいの気分だったって思うわ。
あたしは、ホントのママが恋しい時があって、やっぱりちょっと寂しい。しょうがないからジョディ
に相手をしてもらおうかなあって、近づいたらもう、ジョディはパニックよ。
「なによ!近寄らないでよ!可愛がられてるからって、そうそう何でも思う通りにいくなんて思った
ら大間違いなんだっておさえたげるわよ!わかってんの!?」
って、もう、思い出しても身の毛がよだつくらいの剣幕で脅すのよ。オ~~コワ!
そうして、こうして、月日は流れ、今じゃ、時々ニアミスって感じの距離にお互いがいる。大きな
進歩なのよ、そう思うでしょう?家族は、ベタベタしなくても(ママはベッタベタだけど、あたし
に)自分がラク~~に要られる空間がなきゃいけないのよ、おウチの中に。疎外感を感じちゃいけ
ない。それで、ジョディは見るともなく、シラ~って観察してたのね。
「フ~~ン、あんなに触られても、抱っこされても、大丈夫なんだ」
ってね。そこまで到達するのに数年かかったって言うじゃない。可哀想にねえ。
でも、猫って勝手な生き物で、群れないし、媚びを売ったりなんて、絶対しないから、ここんちの
家族との関わり方に、ジョディなりの納得はしたらしいけど、だからって、主導権は渡さないのよ。
気分が向いた時にだけ、ママの足にスリスリするだけ。あとは、お肉やお魚の臭いに、怒られても
怒られても、盗ろうとするのよ。あたし? ウン、すっごくそそられる匂いなんだけど、誰もそう
いうのはくれないから、どんな味がするのだか、知らないわ。
それで、家族の愛を独り占めって、自他ともに認めるあたしの位置なんだけど、ジョディと追いか
けっこをすると(そこまでの仲になったのよ)、もう、悔しい~~!
ジョディったら、ピョンピョンピョーンと、タンスの上に上って、
「どうしたの?追っかけていらっしゃいな」
なのよ。あたしも、時々、自分が犬だってことを忘れて、ピョーンてやっちゃうのよ。上手くいく
わけないじゃない。ドサッよ。すると、そういう時に限って、必ずパパかママが見てて、
「アハハハ・・・・、ざ~んねんでした。マリは犬でしたねぇ」
って、大喜びしてるのよ~~~!クヤシイ!!
それでね、お掃除する時、ママは、座布団をソファの上に重ねて、掃除機をかけるの。それで、思
いついてね。ピョンて、ソファくらいは上がれるから、ついでにその積み重ねられた座布団まで、
ピョーンて。気分よかったぁ~。
なんとかと煙は高い所へ上がりたがるって、言うけど、上から見下ろすって、なかなかの気分よ。
ウチの家族全員、あたしにメロメロで、な~んでも言う事を聞いてくれそうで、ソファの上の座布
団に鎮座ましましているあたしは、ちょっと粋がってるおあ姐さん。女牢名主って、思っちゃった
のよ。けど、あれって何が?どこから?って言うものじゃあない、にじみ出てくるものがなきゃな
れないみたいだから、やっぱりそれはジョディに譲る事にして、あたしはいつまでも可愛い姫でい
ることにしよう!ってね。
でも、やっぱりどっか憧れるなぁ牢名主って。変な犬?だって飼主が変なんだも~~ん。
終
言いたいのだけど、あるわ。「マリ」って名前のシーズー犬よ。 よろしくね。
兄弟は4人、じゃなかった4匹。ほかの兄弟はどうしたかって? 知らないわ。
だって、まだママの所に居たかったのに、小さな箱に入れられて、ここのおウチに連れて来
られちゃったのですもの。
夜遅くだったのよ、着いたのは。けれど、ここんちのママは起きてて、
「エーッ、可愛い子って、この子なの?」
「そうだよ。可愛いだろ?」
そう、ここのおウチの大きいお兄ちゃんが、あたしを連れて来たのよ。お友達の、本当のあ
たしのママのところから。
来る前に、そのお兄ちゃんが、おウチに電話してたのよ。
「俺の隣りに可愛い子がいるんだけど、連れてっていいかなあ?」
ってね。そしたら、お兄ちゃんのママが、いいわよ、いいわよ。グラタンしかないけどって、
言ったんだって。あたしはまだ何にも固形物なんて食べられないのにね。
「おい、行こ!良かったねぇ」
って。可愛い子って、なかなか結婚する気配もないお兄ちゃんだったから、ママは勝手に勘違い
してたみたいよ、未来のお嫁さんかって。 でもね、あたしを一目見たときから、
「ン~~、な~んて可愛い子なのこの子は」
って、1日に何回言うかしら、状態に陥ってしまったママだし、パパなんか、あたしを呼ぶのに
「マジ~~~!」
よ。ここんちのお兄ちゃんたちは、みんなパパの独自な呼び方で呼ばれてたんだって、小さい時に。
それでもって、あたしはず~っと「マジ~~」か「マッジちゃん」
てことになったのよ。 まあ、「マ」がつくから許したげるわ。
ここんちの家族は、全員あたしに参ってるけど、1人、ううん、1匹だけ、いやらしい目で見る
のがいるのよ。 ウン、女。これが怖いんだなぁ。 猫よ。それも、気性が激しい事で有名な、
アメリカン・ショートヘアのあの猫が。 大きいお兄ちゃんたら何考えてるのかしら? この猫も
お兄ちゃんが連れてきたんだって。でもね、本当はすっごく可哀想な猫なのよ。
まだまだママのおっぱいがいるっていう時に、引き離されちゃったものだから、いっつも怯えて、
危害を加えられるって、思い込んじゃったのね。誰であっても、手を出したり、近づいたりしたら、
「ハー!」
って威嚇、全身の毛を逆立てて、怒る。それでもそれを無視されたら、もう、タダじゃあ済ませない、
引っかく、噛み付くの実力行使に出る、凶暴猫がいたのよねえ。その猫の名前は、見るからに気が
強そうだってことで、「ジョディ」。アメリカの女優の名前からとってつけたんですって。
だからね、そのジョディにしたら、面白くないが3乗くらいの気分だったって思うわ。
あたしは、ホントのママが恋しい時があって、やっぱりちょっと寂しい。しょうがないからジョディ
に相手をしてもらおうかなあって、近づいたらもう、ジョディはパニックよ。
「なによ!近寄らないでよ!可愛がられてるからって、そうそう何でも思う通りにいくなんて思った
ら大間違いなんだっておさえたげるわよ!わかってんの!?」
って、もう、思い出しても身の毛がよだつくらいの剣幕で脅すのよ。オ~~コワ!
そうして、こうして、月日は流れ、今じゃ、時々ニアミスって感じの距離にお互いがいる。大きな
進歩なのよ、そう思うでしょう?家族は、ベタベタしなくても(ママはベッタベタだけど、あたし
に)自分がラク~~に要られる空間がなきゃいけないのよ、おウチの中に。疎外感を感じちゃいけ
ない。それで、ジョディは見るともなく、シラ~って観察してたのね。
「フ~~ン、あんなに触られても、抱っこされても、大丈夫なんだ」
ってね。そこまで到達するのに数年かかったって言うじゃない。可哀想にねえ。
でも、猫って勝手な生き物で、群れないし、媚びを売ったりなんて、絶対しないから、ここんちの
家族との関わり方に、ジョディなりの納得はしたらしいけど、だからって、主導権は渡さないのよ。
気分が向いた時にだけ、ママの足にスリスリするだけ。あとは、お肉やお魚の臭いに、怒られても
怒られても、盗ろうとするのよ。あたし? ウン、すっごくそそられる匂いなんだけど、誰もそう
いうのはくれないから、どんな味がするのだか、知らないわ。
それで、家族の愛を独り占めって、自他ともに認めるあたしの位置なんだけど、ジョディと追いか
けっこをすると(そこまでの仲になったのよ)、もう、悔しい~~!
ジョディったら、ピョンピョンピョーンと、タンスの上に上って、
「どうしたの?追っかけていらっしゃいな」
なのよ。あたしも、時々、自分が犬だってことを忘れて、ピョーンてやっちゃうのよ。上手くいく
わけないじゃない。ドサッよ。すると、そういう時に限って、必ずパパかママが見てて、
「アハハハ・・・・、ざ~んねんでした。マリは犬でしたねぇ」
って、大喜びしてるのよ~~~!クヤシイ!!
それでね、お掃除する時、ママは、座布団をソファの上に重ねて、掃除機をかけるの。それで、思
いついてね。ピョンて、ソファくらいは上がれるから、ついでにその積み重ねられた座布団まで、
ピョーンて。気分よかったぁ~。
なんとかと煙は高い所へ上がりたがるって、言うけど、上から見下ろすって、なかなかの気分よ。
ウチの家族全員、あたしにメロメロで、な~んでも言う事を聞いてくれそうで、ソファの上の座布
団に鎮座ましましているあたしは、ちょっと粋がってるおあ姐さん。女牢名主って、思っちゃった
のよ。けど、あれって何が?どこから?って言うものじゃあない、にじみ出てくるものがなきゃな
れないみたいだから、やっぱりそれはジョディに譲る事にして、あたしはいつまでも可愛い姫でい
ることにしよう!ってね。
でも、やっぱりどっか憧れるなぁ牢名主って。変な犬?だって飼主が変なんだも~~ん。
終