Decca Decolaがお嫁入り

やっとこさ入手したDecca Decolaの整備記録

Western Electric WE143A について

2016-10-02 14:15:25 | Western Electric

 Western Electric最後期のアンプWE143は1947年にWE142と同時に発表された。WE142はプッシュプル、WE143はパラプッシュプルアンプで各々型名末尾にA〜Dが付けられたヴァリエーションがある。「A」はベーシックなモデル。「B」はオンボードに「141A」プリアンプ(618B-6J7-6SN7)を組み合わせたもの。「C」はマイクトランス618Dを組み合わせたもの、「D」は141Aとマイクトランス両方を搭載したもの。WE143の使用球は6SN7x4本、6L6/350Bx4本、5R4GYx2本、OC3/VR105。1947年から1958年まで製造された。


      
 資料がぼけぼけですみません。WE143は長い間メインのメインアンプとして使っておりました。入力トランス無しのハイインピーダンス受け、6L6にて。他の業務機と聞き比べをしましたが上まわるものは現れませんでした。大きなアンプですが音は繊細でかつスピーカーをしっかりと制御します。余分な音を出さない、ツヤがあって品格を感じる音、粗野な感じは全く無い。「やっぱりオーディオはアンプかもしれない」と当時思わされた。面白いのはWEのパーツは出力トランスだけで、電源トランスとチョークコイルはトライアッド製。真空管はすべて社外品でした。第2次世界大戦直後のアンプです。トランスが優れていたのは当然としてもその技術力には驚かされる。
 回路は2段増幅後位相反転、やはりWE140Aのように上プレートと下グリッドがコンデンサーで直結されている。(この位相反転回路は杉井真人氏によるとWEの資料で(未確認)「パラフェイズ・アンプリファイアー」と称されるオートバランス型の変形でWE140Aと共通との事です)その後カソードフォロアーで終段をドライブする。電源は両波整流管2本を使った豪華なもの、またチョークはメインと定電圧放電管後にもありスクリーングリッドに繋がる。バイアスに6SN7を1本使っていて「スイッチを入れるときはこの位置にあるように」というcautionがある。これを守らないと貴重な350Bがお陀仏になります。(実際8本がダメになった状況を見たことがあります。)全体に物量を投入したゴージャスなもの。

 拙宅のWE143はかなり状態が悪く、メインテナンスを必要としていました。入手してから15年程度経過していますが当時から何回か手を入れています。ここ数年は寝ていましたので久しぶりに(忘れていることも多いと思う)整備してみることにします。
 当時問題だと思った記憶を辿ると、、コンデンサー周りの配線に苦労していた、複合抵抗は断線していたので外部に追加している。入力tubeにはシールドケースを被せている。しかし同じラックに組むと原因不明のハムが発生するので左右分けている。定電圧放電管が点滅することがあった。裏板(ラックではパネル)が無いのでなんとかしたい、、など。


 WE143A その1


 
 銘板は「A」は水貼り、「B」〜「D」は金属板


 
 1951年6月8日の印が入ったコンデンサー。この年のアンプではないかと思われます。



 

 
 久々に火を入れてみるもなんの問題もなく動作する。ちょっとくたびれたJBL L75 メヌエットがしっかり鳴ります。S/Nも良好。なぜレーシングしてなかったか忘れたが一応手入れが済んでそのままだったのかもしれない。

 コンデンサ周りは分かりづらい。オリジナルの配置 メモが出てきたのでとりあえず清書しておきます。しかし現物を確認するとコンデンサーの容量、耐圧が異なっていてこの図は不正確でした。アンプも途中変更があったのかもしれない。杉井氏によるとコンデンサーの配置、トランス類がリードタイプから端子タイプに変更されたなど。特にチョーク直後の80μFのシリーズ接続は負担が大きく複合コンデンサーよりも単体の方が管理しやすかったので無いかと思われます。

 定電圧放電管の発振は原因がわからずに悩みました。放電管を通過する電流が少ない場合に発振するらしいのでスクリーングリッド電流が少ないのが原因と思われましたがなかなか改善しません。現在アースに落ちているコンデンサー両端に100kΩの抵抗を接続することで回避しています。

 WE143A その2





 ほとんど一緒です。こちらも定電圧放電管が発振するようになってしまいました。

 コンデンサーに100KΩをパラ接続しています。
 こちらの個体はチョークコイルが線タイプですのでその1より古いと思われます。確かに電源トランスがそうであれば故障時の取り替えは大変だ。



 久々にステレオで鳴りました、50W X 2の真空管アンプ、数年ぶり。大きな問題は出なくってほっとする。やはり結構な発熱でおまけに独特の匂い(!)もする。盛夏ではムリです。

 瀕死の重傷だったJBL L75 メヌエットが元気に歌いだす。やっぱりアンプは大事です。

 しばらく聴いていたが片chがすこしビビってきた。またやはり音色が揃わないのが気になって手持ちの「JBL LE8」と交換してみた。同じ顔が4個並んで成り立つデザインというのはわかっていますが、これはこれでアリのような気も、、。
 音は、、「JBL LE8」は「JBL LE8T」に比べて軽々と音が出る。薄い音味、艶、深みは感じられない。「JBL LE8T」は唯一無二なスピーカーだと思うが「JBL LE8」は国産でも似たのがありそうな音。やはり「メヌエット」では生きないのかもしれない。拙宅の「JBL ミニゴン」にも入ってますが最初はそれはひどい音でした。現在は「JBL SA660」を繋いで常用していますがようやく聴ける音になってきた感じです。見た目より難しいユニットなのかもしれない。

 「やっぱりおかしい」と気付いたのは家族の「臭う」という声から。はじめは久しぶりの稼働で積もった埃でも焦げてるのだろうと思っていたが片chの発熱がもう一方と比べて違いすぎる。あわてて終段のバイアスを測定するとなんとプラス(!!)これは、、調べるとカソードフォロワーに接続する6SN7整流のマイナスの電位が来ていない。配線がはずれていました。まったく危機一髪とはこのことで、この一件で製品寿命に影響が出ないことを祈るのみです。両chとも出力されていてたので気づくのが遅れた。もうすこしでトランス、終段真空管がお陀仏でした。


 シャーシ裏のシールド板は前オーナーがメッシュ板で作られていた。外注で新たに製作しようと思っていましたが気が変わって周囲の修正のみでこのまま行くことにします。理由は塗装に自信がなかったため。面積のある平面を違和感なく塗るのは素人には高いハードルです。
 しばらくぶりの「WE143A」でしたがやはりいいアンプだと思います。私にとって今の所ベストな。


 お読みいただきありがとうございました。