スペースエイジデザインの影響を受けたパタパタ時計付き白黒テレビだが情報は少なくwebでもほとんどヒットしない。発売は1970年代で製造は今はない三洋電機で国内ではSANYO T500Dプロト、海外ではOEMでGE(General Electric) BA1202 VYという名称で発売された。パタパタ時計は電源周波数で50Hz(未確認)と60Hzが用意されVHFとUHFに対応し外部アンテナ端子以外でも両方のアンテナが本体に付属する。 質感が高く優雅で美しいデザインはデスクトップ、ベッドサイドでとても映える。
GE BA1202 VY
上面にスピーカーがあるのでやはり45年分の埃が積もっている。。ブラウン管の電子銃あたりはとても細く衝撃には気をつけたい。機械時計のムーブメントが占める部分が大きい。
ロッドアンテナ周辺の破損部分は接着補強とパーツを削って再生した。
日米のVHFアナログTVchの周波数はこのようになっていた(単位はMHz)。
共通の周波数chは4ch、映像周波数と音声周波数の差は4.5MHzで同じ、UHF帯も同一(だと思う)。国内のRFコンバーターは2chに変換するものが多いがこれでは米国のテレビには対応できない。したがってRFコンバーターを使用して視聴するには米国製品専用品か広範囲の周波数に可変出力できるものを用意する必要がある。
これは以前購入した「digital full band modulator」でAV入力をVHFからUHFまで広範囲に変換できる。また簡易のSGや映像周波数と音声周波数の差の変更も4.5MHz〜6.5MHzできて信号の強度も2段階という優れもの。アリババでは2000円以下で入手できそうだが現在Amazonでも購入可。
SANYO T500D プロト
SANYO(三洋電機)はすでにPanasonicに吸収されたが現役時代は優れたデザインの製品を多く発表していた。今まで手元にあったブラウン管テレビで最も美しいと思っているのがこの製品
8inchカラーテレビでグリーンのほかアイボリーも確認している。液晶テレビはほぼ同じ形状になるがブラウン管製品は多様。
T500Dを企画したのはSANYOなのかGEなのかは不明だがOEMだけと思っていた製品が「T500Dプロト」として国内販売されていた。60Hzの時計は動作するが残念ながらテレビは動作しない。回路図は入手できず資料はGEのボディ裏に貼ってある部品配置図だけ。
まず電源電圧を測ると7V程度と低い。コンセントを差し込むと100Vの時計は動くがトランスにも通電されるのはアラームが電子音だからだがスイッチがOFFでもテレビの定電圧回路も通電されている事がわかった。定電圧回路を探るとTrは無事のようだがツェナーダイオードが昇天していた。
手持ちと交換すると幸いにも電圧調整ができるようになり12Vに設定した。しかしまだラスターは出ない。水平偏向出力を見ると時々波形が現れるがしばらくすると突然消えてしまう。発振回路はIC化されている。
このICを叩いたりすると状況が変化する事がわかった。基板にハンダつけされているのでハンダコテを当ててみるが変化なし。仕方ないので周囲のコンデンサーを交換してみた。
しかし状況は変わらず。そこでICを外して足を確認して再度装着してみると出画するようになった。
やれやれと安堵して組み上げて地デジチューナーからRF変換して鑑賞していたがスイッチを入れて時間が経過すると画面が不安定になりそのうち突然真っ暗になる。やはり完治していないがしばらくしてスイッチを入れると回復している。
ここまでの対応で3日ほどかかっている。原因はICそのものなのか周囲の部品なのかトランジスターの不良なのかもわからずに困ってしまった。該当のICはLD3080でSANYO独自のものだが一応米国から入手はできそう。しかし送料の方が高く部品単価の約10倍する。それでも入手できれば、、と注文したら、、即日paypalで返金されて在庫切れか(説明なし)。もう少し値の張る違う所に注文しなおした。水平偏向の発振はドライブTrからの帰還が関係している可能性もあるのでこのTrの不良もあるかもしれないと再度分解して作動しながらドライバーの柄で叩き回ってみたがICを叩いた時に波形が乱れるのでやはりここか。。しかし今となっては無事にICが入手できるのかが最重要になってしまった。現代の電気製品が修理できないのも専用のIC,LSIが使用されているためで供給が途絶えるとよほどの熱意がなければゴミになってしまう。
注文先は米国にあるBDEnterprisesで注文してから10日位で年末には届いていたらしい。注文後に何の連絡もなかったのでちょっと心配していたのだが到着時の年末年始は不在だったので確認するまでしばらくかかった。webを検索したがもう在庫は見当たらず今後は入手困難かもしれない。
価格は$12.75 送料は$20.15だった。早速取り替えて通電してみる
幸い機能は回復した。交換前はラスターも出なかったが安定して動作している様子。コンデンサー類の交換は偏向回路周囲だけ行ったが支障はなさそうでしばらくこのままとします。UHFの室内アンテナが付属しているがもちろん出番はない。
今回は幸運にも絶版ICを入手して再生できたが通常は回路図がないとまったくお手上げで部品を叩き周って故障箇所を判断するという荒技だった。基板の品位は高く部品点数も少ないなどやはりマイクロテレビの時代とはかなり異なっていた。半導体製品では中途半端に新しいと再生不能になる危険が高まる。技術力があればディスクリートに置き換えたりするのだろうがかなりの熱意が必要でそこまで魅力的な製品か否かが判断基準となりそう。
お読みいただきありがとうございました。
その後50HzのT500Dプロトも確認しました。