Decca Decolaがお嫁入り

やっとこさ入手したDecca Decolaの整備記録

EMT928 について

2017-10-24 06:23:21 | EMT

 EMT社のレコードプレーヤーはEMT927とEMT930が特に有名だがいずれもアイドラードライブで、世界のレコードプレーヤーのメカニズムの変遷に合わせてその後異なる方式の製品が開発された。しかしあまりに前者が偉大だったために影が薄いのも事実でそのうちに肝心のレコード再生がブロードキャストの現場から消滅したことで余計にその感が強い。またEMTはこのころ技術面、流通面でThorens,Studer,Revox社と連携を強めていて1968年発表されたEMT928はThorens TD125をリファインした製品。EMTとThorensのレコードプレーヤーは西ドイツのラールにある両社が共同出資していた「ラール精密工業」で生産されていた。プロユースの製品はEMTが、コンシューマユースの製品はThorensが扱っていたため両社は競合しなかったとされる。Wilhelm Franz氏は1971年に58歳で逝去したがEMT928は氏が関わった最後のレコードプレーヤーと言われている(設計者は別人だが)



 EMT928最大の特徴は「安い」事で1975年の河村電気研究所のカタログでは¥650,000(EMT930は¥950,000 EMT927は¥1,200,000)しかしやっぱり庶民には縁のない世界でオーディオが憧憬の対象だったまだ夢多き時代。(それにしてもその後のEMT927の高騰には驚く)
 駆動方法はベルトドライブでイコライザー内蔵、アームはEMT929でカートリッジはTSD15専用(しかし78回転もある)クイックスタート付きでメカニズムは以前とは全く変わったが頭出しの原理などは同じでマークも同様(だが78回転マークは消えている)。またマークの位置もEMT930よりは離れていて定速に至るまでの時間はEMT930よりもかかったことが伺える。駆動は3相シンクロナスモーターで3波はオペアンプのウイーンブリッジ発振回路とトランジスターのコンプリ増幅回路で発生させている。モーターのドライブ基板には調整用の半固定ボリュームが多数配置されていてプロユースにしてはこの半固定ボリュームの品質が悪く故障の原因となっているように思う。重量のあるボードはThorens 124でおなじみの(?)「マッシュルーム」でフローティングされていてまさにThorens流でベルトドライブの採用とともにS/Nと廉価性を追求した現れと思われます。Thorens TD125との細かな違いはあるらしい(所有したことがないのでよくわからない)がモーターの規模に応じた駆動方法もそうだが個人的にはドライブベルトがとても気になる。残念ながらEMT純正ベルトは入手できていないが硬く伸びない材質で糸ドライブに近い感覚だったかと思う。(以前「MICRO社」で似た材質のベルトを扱っていたように記憶する) EMT928で通常のゴムベルトとの違いを馴染みのお店で架け替えて聴き比べたことがあったのだがその違いに驚いた(だと思うけど)店主はEMT928の話になると必ずその時の話をしていた。モーターの性状が現れやすいと思うし一面アイドラードライブに近い性質を持つようにも思う。EMTはその後「Technics SP-10」に触発されてダイレクトドライブへと移行していく一方でThorensは最後までベルトドライブにこだわった。ブロードキャストの送り出しを考えればDDに勝るものは無いと思うが趣味の世界ではそうではなかったし鉄塊のようなベースのプレーヤーが流行ってもThorensのフローティングは変わらなかった。




















 EMT928 その1
 

 電源スイッチは中央にあるレバー

 3段階で左からOFF、中央は電源ONでスタンバイ(ターンテーブルはブレーキがかかっている)右は回転。白いボタンは勢い余ってOFFにならないようにするためのストッパーでホントにOFFにするときはボタンを押しながらレバーを左にスライドさせる。頭出しの方法は如何に?
 
 サブターンテーブルのブレーキはこの小屋の中にある。また電源が入るとEMTロゴが美しく点灯する。スピード切り替えレバーの隣のボタンを押すとEMT930と同様にレコード盤面を照らす。 

 久しぶりに通電するとこのブレーキが上手くいかない。グリスが固着しているらしくまた調整がずれていて中途半端に接触している。とりあえず当たらないようにブレーキユニットを移動させて聴いてみる。。EMT930stとカートリッジとアームは共通でメカニズムとフォノイコが異なるわけだがやはり出てくる音も若干異なる様子でレンジが狭くて丸いという印象。しかし聴いているうちに次第に落ち着いてきた。
 LP数枚聴いていると変化は感じるがやはり最初の印象は残る。メカニカルなS/Nは良好で(今まで聴いていた)EMT930stよりも優秀(アイドラーのせいかもしれないので個体差かもしれない)。ボリュームを上げると少しハムが聞こえるが不具合なのかは不明。インシュレーターはかなりへたっている様子だがこの状態でも耐振動は良好でケースの足が効果的な様子。この足は軟性のゴムでいい感じです。音の変化はまだありそうだしイコライザーの点検は必要だとしてその他に気のついた点としては
 ・クイックスタートが機能しない。ソレノイドは動いているが肝心なサブテーブルが停止しない。遅延回路など信号のコントロールはできている。
 ・アームリフターの動きが乱暴でエレガントでは無い。調整は効くのだろうか?
 ・速度の調節ボリュームがスムースでは無い
 ・前面にあるイコライザーの操作ボードでカーブの切り替えスイッチが接触が悪く大きなノイズがでる。
 ・スピンドルの注油は行なっていない。

 入手したのは随分以前で一通り整備したと思うがそれ以来稼働していなかったので色々と不具合が出てきている。掃除を兼ねて久しぶりに整備してみる。

 ライトとクイックスタートのメカニズムの入っている小屋の佇まいはEMT930のライトボックスに似ていてEMTのモニュメントにも見えないこともない。この小屋は2本のネジで内部のメカニズムに固定されているがボードからは少し浮いていて(0.5mm程度)余計な共振を起こさないように配慮されている。
 


 メカニズムを外してメンテする。ジョイントはボードの穴から覗けるし分解は易しいのでメンテナンスポイントかもしれない。
 モーター軸に直結されている駆動プーリーの直径は大きい。

 ベルトが外れないようにタル状になっている。分解してみると

 軸に強い負荷がかかった時にスリップする構造になっている。(クイックスタートの停止時にはスリップはしないと思う)上下にあるフェルトに上下のプラスチックパーツがスプリングで押し当てられてのフリクションで調節している。調節代はあるかは不明だが原理からフェルトの脱脂、スプリングを強くする(引っ張る!)などすればスリップの限界点が変化すると思われます。実際にこれで組んでみるとスリップはベルトとプーリーで発生していて脱脂してもダメなのでベルトは要交換であることがわかった。またサブテーブルの回転を止めるフェルトは消耗品でこれも要交換だが多分入手は困難なので自作する必要がある。この部分の材質は他に樹脂系の材料を使ったEMT928もあって試行錯誤が伺える。ここの信頼性が低ければ放送現場では使えない。

 instruction manualを見ると、このプーリー部(スリップクラッチとのこと)とモーターには注油は不要と強く書いてある。モーターの軸受けにはオイルレスメタルを使っているらしい。

 裏からネジ3ヶ所外してアーム周り、ライト周りを外すとボードが外せます。
 
 手前にある操作パネルを外すにはまずレバーを外さないと。引張ってもダメで裏から留めてあるネジを緩めます。思いっきり緩めても大丈夫でネジは抜け落ちません。また電源レバーロックのボタンは捻って外す。金属製で内側にネジが切ってあります。
 


 ネジ3ヶ所を外してようやくボードが外れた。メカニズムは堅牢でとても配慮されている。さすがに高級業務機だと感心する。
 これで速度調節ボリュームとストロボの鏡(一体になっている)を取り出せたのでまず鏡を磨いた。傷つけないように丁寧に。

 ボリュームはトラックコイン(勝手に命名)が回転しながら左右に移動するという独特なもの。ハトメ2個で留まっているのでドリルで揉んで外す。

 このパーツは分解ができる構造です。プラスチック3ヶ所で裏表がジョイントされている。分解すると

 こういう内部です。トラックコインはラック&ピニオンギアで中心部の左右に端子がありスプリングで裏表の金具に押し当てられている。金具の一方は抵抗帯なので位置によって抵抗値が変化する。抵抗値はトラックコインの位置で判断できる、という構造。

 このパーツはEMT928の最重要パーツと思います。既製品は見たことが無くスペシャルパーツだった可能性が高い。メインテナンスする場合は分解して内部を清掃して再度組み立てるわけだが気をつけないとスプリングが弾けて細かい部品がとばっちってエライ目に会います。会いました。
 部屋の隅々まで掃除して家族には褒められたのはよかった。。肝心の部品も見つかりました。ここを紛失、損傷すると完全修理は困難になる、、という意味で最重要パーツ。

 導通帯を磨いて抵抗帯を掃除して組み立ててトラックコインを移動させてみて抵抗値を測定してみると、、快調です。このチェックはアナログテスターに限る。鏡やプリズムも磨いてよく見えるようになって良かった。

 以前メンテナンスした時はケチってマッシュルームインシュレーターは使わなかった。自作した代用品。

 今見てもなかなかの力作(?)でも今回は素直に注文しました。安いところを探すがどこも大きな差がない。ほとんどレプリカだと思うが形は一緒でも構造が異なるものがあるらしい。ドイツなのでしばらくかかります。
 ベルトは国内調達だったので翌日に届いた。

 古いベルトを測定してちょっと小さい寸法なのを注文した。これで回転させるとまあ支障なく使えます。ただスリップクラッチは回転開始時には動作しないしターンテーブルの回転を止めてもスリップはベルトとの間に起こる。これは仕様とは異なっている動作かもしれない。以前は純正ベルトを使っていたのだが劣化のために交換した。当事モノが入手できても多分使えないだろうしもはや音質の比較はできないと思う。もちろんサイズが違うので使えないが以前に某オークションで「MICRO」社の糸ドライブターンテーブルのオプションとして発売されていた(記憶が定かでないが)伸展しないベルトが出品された時に沢山の入札があった事を思い出す。そのまま糸と取り替えられたのか?も不明。

 回転調整のボリュームを触ったので調整(アジャスト)が必要。トラックコインを中央にして各回転ごとにボードの半固定抵抗を回してストロボが止まるところに設定します。

 各回転ごとに4個、全部で12個ある半固定抵抗のうち「F」と書いてあるのをマイナスドライバーで回して設定する。回す時は丁寧に壊さないように。。ついでに接触不良が無くスムースに回転が変化するかチェックする。ここがダメだと部品交換を覚悟することになる。
 この個体は問題無いようです。

 ストロボパターンがくっきり見えて素直に嬉しい。50Hzと60Hzでプリズムの位置を動かして切り替えるのだが実際に窓から見て見えやすいところに微調整した方が良いです。ところで3種類の波を作っているのだから各々の周波数で発光させればストロボパターンは1種類で済んだのでは無いかと思うのがなぜだろうか。大人の事情か?

 ベルトを変えて聴いてみる。カートリッジの出力の配線が度重なる着脱で断線していたり、の修理で数時間費やした。やはりベルトの影響力は大きくかなり様子が違う。もっともノーサス状態なので以前と違うのは当然ですが。

 正常動作しているようだが12個のトリマーの設定が気になる。33 1/3、45、78の各回転ごとに4個の半固定ボリュームがある。
 
 前述のようにFが着いている回転数の数字は発振周波数調整用でマニュアルによればモーターの3波、S,R,Tの内のS端子に周波数カウンターを接続して 33 1/3は21.5Hz 45は29Hz 78は50Hz に調整する。オシロスコープで波形をモニターしながら行った。調整できないときは半固定ボリュームの不良を疑う。周波数カウンターはマルチテスターに内蔵されていてすこぶる便利。ついでに各端子の交流電圧を測定する。マニュアルによれば 33 1/3は5V 45は6V 78は8.5V になるようにSのトリマーを調節する。Sトリマーで出力電圧は変化するが残ったRとTトリーマーは何を調節するのだろうか?各々回しても出力電圧は変化しない。(発振回路の基礎を勉強していないので手探り状態だ。)がある部分で3波とも周波数が一致する。しかし出力電圧は完全には一致しない。ここは出力段のばらつきなのかもしれない。Sトリーマーで電圧を設定するとS端子のみならずRとT端子の電圧も同様に変化する。この状態でRとTトリマーを回すとモーターがカクカク言い始める。カクカクしないところは結構クリチカルでほぼ一点となるため必然的にポジションが決まる。。色々やってみたがどうもこの調整方法で問題なさそう。モーター軸に負荷をかけた時にも調整点がずれているとカクカク状態になるが調整が取れているポジションが一番トルクが強い。きちんと多現象オシロスコープを用いて各々120°の位相差である事を調整すべきだが前世紀の単現象オシロしかないのでこのあたりで妥協した。

 クイックスタートに備えてブレーキをかけてサブターンテーブルの回転をストップしている状態では回っているメインのプラッターとサブターンテーブルはスリップしている。しかし実際はメインのプラッターまで回転が止まってしまう事がある。チェックするとモーターの回転はつづいているのだがモーター軸とベルトで滑っている。交換した新品ベルトは古いベルトを計測してそれよりもちょっと小さなサイズの540mmだったがどうもこのサイズでも大きすぎたらしい。そんなにサイズは豊富では無いのだが再度探すと520mmというのが見つかったので改めて注文した。

 価格は540mmの3倍。品質が良いとも思えない。でも動作は良好で今後の交換は520mmのものにします!


 EMT928 その2
 「その1」との一番大きな違いはクイックスタートのブレーキの形。

 形はゴツく洗練されていない雰囲気でいかにも業務用。でもこちらの方が確実にストップする。ブレーキパットの材質は「その1」はフェルトだがこちらは樹脂製で両側に金具が張り出していて3点でサブテーブルを押さえつけている。また駆動のメカニズムも異なっており試行錯誤の跡がうかがえる。なぜEMT930stのような形状にしなかったのかだがすでに存在していたThorens製メインプラッターに後付けした苦肉の策だったようで、レコードのサイズからサブテーブルのハカマ部分を伸ばせないためにパットによる十分な圧接ができない。またベルトの滑りから確実なストップと起動が難しく特殊なベルトを採用したりトルクを増すために大型のモーターの採用や新設のドライブ回路などで対応している。しかし実際に使用してみるとクイックスタートの調整はクリチカルで信頼性は他のEMT製品と比較して低く業務用としては致命的だったと言わざるを得ない。またモーターのドライブ基板には多数のトリマーがあって長期使用の不安が残る。基板はモジュール化されていないので調子が悪ければ基板ごとの交換を求められたと想像する。事実「その2」のトリマーは2ヶ所交換しておりまた1ヶ所は分解整備で対応した。Thorens製品の流用に起因する弱点かと思うが製造のコストダウンを図って価格を抑えた割には一般人から見たらはまだまだ非常に高価で、1970年代のThorens125MKⅡの国内販売価格はアームなしで94,000円ほどなのに対してTSD15と929アーム、内臓イコライザーがあったとしても700,000円(1976年)はやっぱり厳しい値付けだったかと思う。当時一般にも販売されたらしいが個人で購入した人は皆無だっただろうし放送現場での評判はどうだったのだろうか?
 しかし悪いことばかりではなく現在入手できるEMT製品としては(その不人気が故に)かなりリーズナブルでしっかりと整備すれば十分に楽しめると思います。業務用ということで堅牢に設計、製作された部分もありそれらは確実に再生音に反映される。特にTSD15を使用する機器はコンプリートなEMT製品しか無いわけで。ただ状態の良い製品は少なくなっていると思います。

 「その2」のスピード微調整のトラックコインボリュームは以前分解整備したことがあってすでにカシメからネジ止めに変更してある。今回ボリュームの両端の接触が悪くなったようなので再度分解整備した。

 このパーツも代替えが見当たらないのでちゃっちい割に貴重品です。
 「その2」は「Decca」のアームとカートリッジを載せています。メインプラッターは鉄製らしく磁性体なので本来はDeccaのカートリッジは使えないのですがサブターンテーブルが厚いので磁力の影響を受けないため問題なく使えますしアーム取り付け穴もほぼ一致します。


 Decca製品はハム対策が面倒ですが唯一無二の世界を持っている。。EMT928との相性は悪く無いと思います。Deccaのプレーヤーシステムは見たことがありませんがコラーロとの組み合わせが絵になのはやはりDecca Decolaの影響かと思います。拙ブログで紹介させてもらった時にも書きましたが整備したときはこのEMT928を基準に行いました。





 お読みいただきありがとうございました。


 追記 1
  クイックスタートの調整で休日が潰れてしまった。。ボードを10回は着脱したと思う。仮組みでは動作するのだがいざ組み立てると不安定になる。原因がわからないうちに夜になってしまった!どうにかまとまったが調整法を会得したわけではないので虚しさばかり残る。ケース(木製)に入れると再生音が変化する。やっぱりサスペンションが貧弱なので使用する環境でかなり変わってしまうと思います。この辺りはコンシューマー機器のよう。結局「その1」のクイックスタート機能は不安定で諦めてしまった。またヒマな時にチャレンジします。


 Wishbone Ash  Live Dates(英 1973)
 ウイッシュボーン アッシュは1970年代に活躍した英国を代表するギターサウンドグループ。同時代のギターキッズはこのバンドのコピーをした事が一度はあるかと思う。アンディ・パウエルとテッド・ターナーのツインリードギターの美しさは今聴きなおしても胸を熱くする。憧れて「ギブソン フライングV」を買ってしまったひともいたのではなかろうか。南部アメリカの雰囲気がプンプンの「オールマン ブラザーズバンド」はもちろん良かったが「やっぱりロックはイギリスだ〜!」と思わせた一枚(でも2枚組のライブ盤)。演奏の良さは当然だが録音も秀逸で(編集の手が入っていると思うが)繊細な部分までよく聞こえる。


 追記 2
  クイックスタートについては放送現場でもやはり問題があったようで1975年にEMTより調整についての解説が出たようです。
 



 



ALTEC A-333A について

2017-10-09 12:20:52 | ALTEC

 有名なALTEC回路の原典と言われるALTEC A-333Aは1951年頃に発表されたホームオーディオ機器で組み合わせるプリアンプはALTEC A-433A。




 裏蓋の裏に貼ってある回路図

 プリアンプのALTEC A-433Aは実物は見たことはないがアクリル板を用いた当時としては超スタイリッシュな造形。電源はALTEC A-333Aから供給され電源スイッチはプリアンプにあってもちろんモノラル構成。ALTEC A-333Aはとてもコンパクトにまとまった意匠で操作系、入出力はすべて前面で賄う。丈夫な構造のメッシュカバーで放熱対策も万全でとても使いやすそう。コンパクトな割に内部構成はわかりやすくアンプをひっくり返してもカバーのおかげで安定していてメンテナンスもとてもし易い。
 アルテック回路とは初段の5極管と直結の3極管を用いたPK分割の位相反転回路のことでとてもシンプルで故障が少ないと言われ高感度の近代管に多用された回路。位相反転回路はさまざまあるが比較した経験はなくここで優劣はエラソーに論ずることはできません。

 オークションで最近入手したアンプです。説明では不動とのことだったが電源、入出力を接続すると動作するようです。
 



 webに掲載されているオリジナルらしい画像と比較しても改造したと思われるところがかなり目につきます。
・カップリングコンデンサーがwestern electric製になっている。
・入力コンデンサーが取り払われている。
・外部出力電源コネクター2ヶ所がアルミ板で塞がれて各々入力端子と電源スイッチが新設されている。
・外部ACコンセントが未配線
・コードは各所でハンダこてによる焼け、トランス引き出し線の劣化(粉ふき)が認められる。
・ネジ類、ACコードの処理で品格を損ねて(?)いる。


 など

 修復のメニューを考えると
・電源スイッチ、入力端子は変更せずに手直しして使用する。
・カップリングコンデンサーは基板に収まるものを入手、交換する。
・スイッチと入力プラグのアルミ板は少し手を入れて見た目を良くする。。
・こなを吹いているトランスのコードは養生してみる。被覆の荒れているのも同様に。
・ネジは適当なものを探して交換する。ネジ穴が広がってしまっているところはバランスが崩れないようにネジを切ったり削ったりして改造する。

 一番難しいのは適当なネジが揃うか、、です。またトランスからの引き出し線の劣化があり被覆が傷んでいるところは養生しないとシャーシに短絡してしまう恐れがあります。すでに養生が難しくなっている場合はトランスを分解してカバー内部で新たな線材と交換する場合もあります。今回は部分的な養生だけでことが足りそうです。

 外観と内部の修復、養生ができました。カップリングコンデンサーは諸事情で未だ発注できていません。
 
 将来ALTEC A-433Aが入手できた場合は何とかしてコネクターを探しましょう。単独使用ではこの方が(電源スイッチと入力ジャック付いてるので)使い勝手が良い。

 注文していたハーメチックコンデンサーが到着したので早速配線して音出ししてみます。入力から信号入れたのは初めてでアウトプットトランスがホントに生きてるか自信がなかったのでちょっとドキドキした。。
 
 コンデンサーは昨日の昼過ぎにスマホで注文して夕方に送金したのが翌日の午前の早い時間には到着したので(!)作業は昼過ぎには終わりました。全く日本の流通には感心するがそこまで速くなくってもいいですよ。迅速に発送してくれたバンテックさんにも感謝です。

 第一印象は「おとなしく優しい音」。コンデンサーが新品なのでこれから変化があるかと思うが家庭での再生を考慮した音とも言える。
 各部の電圧は正常範囲で交換したカップリングコンデンサーも漏れはありません。適当なプリアンプがなかったのでMacの出力を直接入力しての試聴。S/Nは良好でノーハムはやっぱりありがたいが入力感度は思ったより低い。定格では出力20W 周波数特性は20Hz〜20KHzが±1dBとなっている。測定はまた今度にしてしばらく聴いてみる。。
 
 そのうち家族から「雑音が聞こえる!」とクレームが出た。確かに何か異音が聞こえるので高域で発振してるのかと思ったらアンプ本体から発せられてる「ぴー」。慌てて蓋開けたら発信源は整流管5U4G。。ソケットと足を磨いても完全には治らない。仕方ないので手持ちの5U4GBに交換したら「ぴー」は消えてくれた。酷使された整流管の断末魔の悲鳴だったのかもしれない。
 そのほかは目立ったトラブルもなく聴いていると次第に音に勢いが乗ってくる。ちょっとぼやけていた輪郭がはっきりしてきて聴きやすくなってきた。相変わらず上品で優しい音だが情報量も不足はなく上質の音味だと思う。また安定動作が音にも現れていて業務機とはまた違った安心を感じる。これは回路だけでなくアンプの機械的な構造の堅牢さも関係あると思う。発熱もさほど多くないので2階建に積み重ねても特に問題なさそうでこれはスペースを取らなくてありがたい。

 ALTEC A-333Aの回路上の特徴は前述のようにALTEC回路の原典という他にもチョーク入力の平滑回路、終段のスクリーングリッドの安定化に定電圧放電管という豪華さでコンパクトではあるがが安易でない造りには好感が持てる。特にこの形状は魅力的でシャーシ構造、部品配置(ブロックケミコンは発熱体から一番離れていること、カソード抵抗はシャーシ上にスマートに配置しているなど)、内部配線(基板に部品配置しソケットにはごく短い裸線で繋ぐ)、入出力の処理(全て前面で行う)、などはアマチュアにも参考になりました。1951年という年代を考えてもとても完成度が高かったアンプだと思います。


 お読みいただきありがとうございました。


EMT139について(3)

2017-10-08 06:32:59 | EMT
 10月4日は映画「君の名は」では隕石が落ちた日。その日見上げた空

 その日の中秋の名月


 連休に備えてBMW R26にお伺いをたてる。「お出かけしてよろしいでしょうか?」

 『いいよ〜』とのことなのでちょっと近場を乗ってみると前輪とキャブレターの整備でとても乗りやすくスローも安定している。VESPAとTriumph T15はまだ寝ています。

 フラットアンプ部を測定してみると

 出力トランスの前までは両ch共に正常動作のようで左右の偏差はナシ。方形波を入れてトリマーコンデンサを調節してヒゲを少なくした。ところがトランスを通すと左右差が出る。歪率も出力電圧との関係は大幅に異なっている。波形は問題ないのでやはりトランスの規格が異なっている様子でこれは中間にあるゲインボリュームで一致させるしかなさそう。

 「ネコポス」で電解コンデンサーが届きました。小物部品は送料が安くて助かります。早速交換して聴いてみる。

 8μF 475Vで「tube amp doctor」と書いてある。この会社はドイツにあって楽器用のパーツを供給していて扱っている品目は結構多い。中身はどこで作られているかは不明だが「ドイツ製」ということだけで購入した。どのパーツもそうだがとにかく狭いスペースに並べているので代替え品はこのスペースに収まることが第一の条件となる。オリジナルでももう少し容量の大きなコンデンサーが使いたかったのだろうと思う。

 この状態でLPレコードを何枚か聴いてみたがおかしな挙動は現れない。久しぶりにケースに納めます。


 今回もなかなかの難儀でしたがなんとかまとまりました。感想としては
 ・2台あったので比較検討できた。1台だけでは正常動作か否かはわかりづらいのではないか
 ・微小な信号を扱うキカイはやはり難しい。ハム対策、測定など。
 ・パーツの大きさに制限がある。しかし最近のパーツは小型化傾向なのでなんとかなる。しかし見た目は何とかしたいところではある。
 ・コンデンサーにはやっぱり寿命がある。
 ・修復がいい加減だと音味に業務機の個性が薄れる気がする。
 ・ナット回しを使ってネジはしっかり締めよう(?)

 EMT139Bは品格を感じる魅力的な構成の装置だと思います。まずケースが決まってからの回路設計だったのではないかと思うが(全くの妄想)このケースの中に4球、チョークコイルやバリコン設置ではギリギリの大きさだったはず。EMT139stのようなステレオにするには同じ回路2セットはムリで回路構成を根本から変更する必要があったと思うし多分妥協した部分もあったのではないだろうか。改めて聴いてみると彫が深くて思わず「EMTらしい」という表現を使いたくなるようなとても魅力的な音。フォノイコライザーアンプやプリアンプ組み込みのフォノイコは星の数ほどだが業務用の管球式アンプはあまり見当たらない。カートリッジからの微弱信号を扱う場合は個人的にはソリッドステートアンプの方が総合的には優位ではないかと思ってましたが、よくできた設計でしっかりメンテナンスされたものであれば管球式も捨てがたい魅力があると改めて確認した。これはもう一部のマニアの世界で手間はかかるし面倒だが可愛いペットを飼うような気持ちで接したら楽しいかもしれない。


 お読みいただきありがとうございました。


 追記1
  ハンマートーン塗装をしていたEMT155のケースに中身を入れました。

 塗装してから1ヶ月は経過するが厚塗りしすぎてなかなか塗膜が硬化しなかったので様子を見ていた。やっぱり自家塗装は難しい。予算があれば大切なものは専門家に外注した方がよろしいです。私の場合は。

 追記2
  久しぶりにEMT155stを繋いでEMT139b X 2 と聴き比べてみる。

 EMT155stはやっぱりよくできていて安定感や聴いていての安心感はとても感じる。変な例えだがちょっとくらい針先にゴミクズがまとわりついていても平気で再生するような。EMT930stとの組み合わせでは通常の使用はこれで十分という気がする。EMT139との音味の違いはやっぱりあってEMT139の方が深く艶がありバイオリンなど弦楽器に特に差を感じる気がする。ただEMT155stは未メンテなので未だ厳密な比較はできない。今はおかしな挙動がないというレベルの試聴なのかもしれない。


EMT139について(2)

2017-10-07 01:45:59 | EMT

 ようやく電源ができたので本体の調整修理にかかります。現在の状態は
 1 左右の音量差がある
 2 左右の音質差(イコライズカーブの不揃いのような)がある。
 3 ハムバランサーが破損している。

 電源をもう少し手を入れる。(備忘録)
 ・ 初段EF804のヒーター回路を変更。12.6Vのセンタータップを利用して両波整流して固定抵抗(0.47Ω)を入れて電圧を合わせる。これでトランスの発熱がなお少なくなった。
 ・ A1(B電源の低い方)が高かったので挿入した抵抗を変更。回路図では5mAでA2に比べて35V低いので両ch共通抵抗で3.4KΩ位を挿入。
 ・ 通電直後のB電圧が400Vをオーバーすることから電解コンデンサーの耐圧をオーバーする。変更すること。
 ・ もう片chの初段のハムバランサーがやはり破損した。0.36Wの負荷が常にかかっている。ここは諦めて両chとも適当なものと交換することにします。

 整備は真空管のチェック、電解コンデンサー、回路図と配置図をプリントして直流、入力を入れて交流の測定値を書き込んでいく。
 



 部品の配置図があると回路図と照らし合わせることによって測定ポイントが見つけやすく点検は容易。今回は外部電源があるので楽だが通電しながらひっくり返さなくてはいけないので電源がない場合にはEMT930(機種は限られるが)やEMT927からの引き出し線が必要になる。(またこれらは当然1台搭載なので2台分の電力は賄えない)
 測定するとDC値についてはほぼ定格であったが入力トランスから1kHz 10mVの信号を入れてミニバルで測定すると、、入口でまずつまづく
 トランスはT94/2 なのだが(webより拝借)
  T94/2 (1 : 20)
  • Ratio of each transformer: 1 : 20
  • Input DC resistance of each transformer: 7,5 ohm
  • Cartridge Z for each transformer: < 40 ohm
  • Output DC resistance of each transformer: 500 ohm
  • Ouput load for each transformer: > 47 kohm
 昇圧比は1:20なので10mV入力すると2次側には200mV出力されるはずで回路図でもそうなっている。ところが実測で50mV。。これはどういうことか??ひょっとして違うのと置き換わっているのかと疑うも両chともT94/2。そこで1次側に20Ω程度の抵抗をパラに入れて10mVを加えるとほぼ200mVが出力された。よくわからないがこの状態でイコライザー部(前段)を測定すると各部定格値となっている。残留ノイズについてはハムバランサーの修復が終わったら測定するがケースを外すと手を近づけただけで針が振れて難儀そう。
 出力ボリューム以降の両chのゲイン差はある様子なのでここから診ていくことにします。


 酷いタコ足コード。前世紀の測定器たち。
 内部を見渡すと後段のトリマーとパラの抵抗2MΩに後付けの抵抗器がある。しかし外して測定すると断線していてとりあえず撤去となった。PP負帰還部。ひょっとしてコンデンサーか??
 
 いややっぱり違う。訳のわからんパーツを調べるには便利なツール。

 各段の電圧、波形を入れてオシロでモニターしながらミニバルで測定する。。

 しかしフォノイコ部でまたつまづく。電圧はDC,ACとも正常値なのだが片chの波形が

 正弦波が早い段でこうなる。。なぜだろう?真空管変えたり色々いじっても変わらず。。分かりません。。
 行き詰まってとりあえず中間の出力調整ボリュームから信号を取り出してレコード再生すると

 何の問題もなく(左右の偏差、イコライザーカーブの切り替え(ただしフィーリングで)ハムなどのノイズ)出力されてしばし聴き入る。よくわからんがとりあえずホッとする。。


  BILLY JOEL THE STRANGER (1977)
 ビリー・ジョエル 4枚目のアルバムで発売は40年前の1977年。全世界で1000万枚売れたらしい。タイトル曲は何かのCMで流れてたと思ったが調べるとHONDA CR-V。
 当時アルバムA面だけ繰り返して聴いていた。インパクトのあるカッコイイ曲は多感で軟弱な自分に大いに影響した。

 この状態でしばらく稼働させても問題は生じない(オシロの波形は気になるが)。やはりラインアンプ部の問題のよう。
 (ここから備忘録)
 何回か測定、試聴を繰り返すも原因がわからず苦労する。イコライザー部は正常動作だったようなので入力から信号を入れてフラットアンプ各部で測定するのだが時々おかしな挙動が現れる。測定値が一致しないなど。発振や真空管の不具合も疑ってかかるがなかなか原因がつかめず。連休初日の丸一日を費やしても改善しない。。3段増幅の2段目(ヘッドホンアンプの片方のECC82)のグリッド入力までは問題ないのだがこの段の増幅が上手くいかない。終段からPP負帰還がかかっていてトリマーコンデンサーが入っている。DC電圧も途中おかしかったが真空管を交換して解決したと思ったがやはりダメ。もっともこの段のカソードには回路図には点線でパスコンが入っていて(実際も入っている。また片chはこのパスコンはパラにコンデンサーが入っていて調整された跡がある)

 イコライザー部の出力は2.05Vになっているが出力ボリューム最大では1/2ECC82のグリッド電圧は記入された42mVにはならない。したがってこの段の電圧にボリュームもしくはオッシレーターの出力を調整する必要がある。
 この段のプレート部は0.68Vで実測(0.56V 0.72V) 次段の1/2ECC82のグリッドは420mV(350mV 450mV) この段のプレート部は260mV(90mV 210mV)で不一致。。

 入力から信号を入れて各部で波形を観察すると終段EF804出力のパラレルフィードの直流カットの1μFコンデンサの出力までは正常に出力されている。ところが出力トランスを介すると波形が乱れる。嫌な予感がするがとりあえず両chともトランスを下ろして各端子間のDCRとLを測定してみる。
 
 インダクタンスの測定は難しく測定器によってかなりの差異がある。

 最悪断線ではなさそうだが2個の2次側の測定値は明らかに異なっており異なるトランスのよう。片方には「BV2169」とあるがもう一方には無印。出力を取り出す端子を左右で違えてまた試聴すると左右差は減っているがまだ感じる。EMT139、EMT139A、EMT139Bの差はわからないが出力トランスの違いがあるのかもしれない。
 また測定してみましょう。

 一つわかったのはオッシレーター出力のアースはアンプに接地が必要だったということ。これで波形が安定してきたのでイコライザーアンプ部(ボリュームよりも前半)の周波数特性を測定してみます。イコライザーカーブはフラット(高域のみ)を入れて4種類になっている。もし銘柄が違っている場合はこのカーブも異なっている恐れがある。

 幸いに左右の差異は少なくイコライザーカーブも回路図通りの4種類だった。また左右の出力差もなくやはりイコライザー部には問題は認められない。
 そこでフラットアンプ部の測定を再度行うと名称シールのある方はフラットな特性で出力されている様子(また検証予定)だがシール無しの方はハイ下がりロー上がりのかなり歪んだ特性になっている。また各段測定してみましょう。。

 シール無しの特に1/2ECC82段で周波数特性が乱れる。終段プレートからのNFが怪しいと睨んで受動素子を測定すると0.5μFのMPコンの容量が激減していてアウト。
 
 喜び勇んで代替えを探すと出てきたのは大きなビタQ(スプラグ製)で0.47μF。何とか納めて測定するとほぼフラットな特性。
 
 早く気付けば良かったのだが(ゲイン差や周波数特性差などから)判明するまで数日(!)かかってしまった。。出力トランスの問題などに気を取られて、、だったがこのトランスも別条件でインダクタンスを測定するとまた異なるデータとなり結局DCRは一致していたという理由で元の結線に戻しています。ただトランス周りの配線の取り回しは左右共通に変更した。
 モノラルアンプ2台のステレオ構成、2台のうちの1台は銘柄が不明、などの条件も今回の混乱につながった。またtelefunken ECC82が1本故障していた。全く出力しない故障であれば判断は早いがゲインが低いなどはますます混乱に拍車をかける。今までメンテナンスの手が入っていなかったのは幸運で故障についても自然劣化に限定して考えられたのは良かった。

 左右chのNF素子の違いはあるが久々にフラットアンプを通して聴いてみると改めて感動してしまう。瑞々しさ、立体感、奥行き、細部の表現など申し分ない。機会があればMarantz 7cと比較試聴したいが各々の良さがあるという当たり前の結論になりそう。業務機は特徴的な冷徹さを持っているがアナログ再生という曖昧さが上手くカバーして趣味の領域にしっかりと食い込んでくれる。これだからアナログ再生はやめられない。 ここ数日の苦労が実って思わず興奮してしまった。

 破損したハムバランサー(直流、初段用)を交換します。入手したのは1個300円の激安品を4個購入(4個セットで売ってた)。届いたのをみると

 なんとも安っぽいのは価格を考えたら仕方ないしむしろよくこの価格でできるものだ。。でもこれは使いたくないなぁ。。分解すると

 パーツの数は多いが金属板などが薄いしプラスチックパーツも使われている。また固定する軸、ナットが大きいのでそのまま取り付けるには固定金具の穴を大きくしなくてはならない。
 再び本体から取り外したハムバランサー
 
 抵抗体を加工して移植することにします。

 そのままでは大きくて入らないので少し解いて切り詰めて金具の位置をずらして再固定して、、。おかげで100Ωが93Ωになった。外筒を小加工して取り付ける。
 

 向かって右側を交換しています。本体や取り付け金具を加工せずに済みました。もう片chも交換しました。

 プレーヤー内蔵の電源についてwebで偶然見つけた配線図ではやはり初段だけもう一段フィルター回路を通している。読み取りにくいが電圧が低いように見えるのが気になる。。

 注文してたコンデンサーが届いて左右ch共交換した。スプラグ製。

 これでようやくまともに音が出るようになった。残っているのは終段のプレートから一つ前段のプレートへの帰還のバリコントリーマの調整(「1978」と書いてある取り替えたコンデンサーの下にある)。これはどうやったらいいのだろうか?Marantzの後期のアンプにもNF調整用のトリーマーがあったがこのあたりは素人には敷居が高い。
 やっぱり歪率計の出番か?

 久しぶりの歪率計はNational VP-7702C  1970年代の測定器だが真空管機器の測定にはとても使いやすくベストセラーだった。シリーズ化されてこのVP-7702Cは最終型(だと思いますが)。低歪オッシレーターはmeguro製でこちらも使いやすい。
 入手した当時は喜んで一生懸命測定してたように思うがすっかり熱も冷めて使い方も忘れてしまった。マニュアルは幸いにもwebで入手できたのでお勉強し直してみる。

 向かって左部分の入力信号のレンジ切り替えと表示部分でメーターのフルスケールが300mVから100Vまでの6レンジ。針が緑の目盛り部分に来るように調節します。また1Vより少ない場合は測れる歪率に制約が出ます。出力側にミニバルがあるわけで私のように1台しかもってないヒトには助かる?


 向かって右側で適当にレンジ切り替えをして針を振らせて歪率が表示されます。右上下のダイヤルは基本波を取り除くフィルターで、例えば1kHzの歪率を測定するときは上下ダイヤルで1kHzに合わせればOK(写真の状態)。上ダイヤルはシールドケース内にバリコンが入っているらしい。

 早速「meouro LOW DISTORTION OSCILLATOR MCR-4021」を測ってみましょう。

 この発振器は1Hz〜110KHz 0〜+10dB だが0dB出力にして測定すると5Hz〜50kHzくらいまで安定して出力されます。100KHzでは0.3dB程度落ちるがオシロの波形は問題ない。
 歪率は0dB 1kHz で1.0V (0dBm) 0,001% 表示になっています。管球アンプには十分なスペックだが良い値を出すには測定する人の腕にかかっているらしい。。

 音出ししているうちに時々「ボッ、ボソッ」みたいな音が出だした。また左右の音量差も相変わらずある。はぐってみると
 
 イコライザー2段目のデカップリングコンデンサーの4μF 350Vがオモラシしている。結構漏れていて滴り落ちる電解液。これは要交換。やっぱり稼働させると色々と問題が発生する。
 部品が来るまで電源の修正

 安定するまでの間に400V近くまで電圧が上昇します。ようやく高耐圧のコンデンサーと交換した。