Decca Decolaがお嫁入り

やっとこさ入手したDecca Decolaの整備記録

EMT139について(4)

2017-12-18 12:02:10 | EMT

 海外オークションを見ていたら「壊れているEMT139」というのが出品されていた。入出力トランスは大丈夫(!)ということと値段交渉があったのでオファーしたら無事落札できた。送られて来たのをみると

 色々と交換してあってなんとか復活させようと(?)頑張ったことが伺える。。説明通り入出力トランスは無事のようだが配線が外してあるところを観察すると、、これは終段のチョークが怪しい。。
 
 やっぱり断線しています。これは確信犯だな。でも入出力トランスではないのだから説明には偽りはない。引き出し線周りをいじってなんとか復活できないか4時間ほどチャレンジしたがついにギブアップした。巻き直しすることに。
 
 線径をマイクロメーターで測定すると0.01mm。幸いに手持ちがあるが巻線機はない。ボビンは3分割でターン数は気が遠くなるくらいで(根性がないので)数えられないので目一杯巻くしかない。ボビンはボール紙で作ったもの。いつもの電動ドリルにスライダックの組み合わせでやってみましょ。

 スライダックのおかげで無段階で回転は制御できる。カウンターは無いので100ターンづつ「正」の字を書いていく。またワイヤーの横方向の送りもないのでここはフリーハンド。さてどれくらい巻けるものか。。

 久しぶりに誘われて夜釣りに行ってきました。ご同行の方は探り釣り、私はワーム投げて。途中で雪が舞うような寒さだった(でもここ数日ではまだ暖かい方)が釣果はさっぱりでなんとかガシラが1匹。

 小さいのは逃したが寒い夜釣りでしたが釣れなくても楽しいものです。

 巻き上がったのを測定するがEMT139Bのチョークトランスと比較しても全く足りないDCRとインダクタンス。頑張って6500回巻いたがこんなに違うものか、、とがっかりする。もう一度巻き替える根性は無かったので抵抗を入れてDCRをかさ上げしておく。

 またそのうちチャレンジしてみましょう。部品が揃わないので適当なパーツでとにかく結線して音出ししてみる。
 
 一応出力されるが細かい調整と部品の到着待ちです。

 表のプレートは「EMT 139」で「EMT139B」と比較すると内容は微妙に異なります。気づいたところは
 ・出力トランスの設置方法とワイヤーの引き出し。トランスそのものが異なるかは不明。
 ・プレートチョークの引き出し線
 ・バリコンとイコライザーカーブ切り替えスイッチを固定しているベーク板のネジ穴のザグリが無い。
 ・バリコンの側面のベーク板が無い(ここが一番わかりやすい)

 回路では
 ・初段EF804のヒーターのブリーダー抵抗が無い(EMT 139Bではフロントパネルの裏にある)
 ・終段EF804のスクリーングリッドへの抵抗器(75KΩ)が無い。(ただしこれは改造されていた可能性もある)
 ・イコライザー素子ボードの数値が全く異なる。(ここがハイライト)

 トランスの引き出し線が端子板に変わったのはトラブル対策からと思われます。故障したトランスの交換が容易にできる。とすればEMT139とEMT139Bの一番の違いはイコライザーカーブということになりそう。
 これは1963年11月の「EMt139B」のマニュアルの一部

 一見して違うのはトランスの向きやネジの頭などの上記の違いでこの図は多分「EMT 139」の流用と思われる。ただしイコライザー部分は書き換えられていて「EMT139B」のものになっている。
 回路図と照らし合わせてみてもとても整理されていてメンテナンスは容易。EMT139Bのイコライザー部分を抜き出してみると

 シャーシ上にこの部分のパーツが並んでいる。マルで囲まれた部品番号16から24と26。25が欠番。26は抵抗器のフラットポジションなのでここは元々はフラットではなくロールオフのコンデンサー25が入っていた、、のかもしれない。
 4段切り替えはターンオーバーは共通でロールオフのみ
  FLAT(0/318/3180μsec)
  BBC(25/〜)
  DIN78(50/〜)
  DIN33/45,RIAA,NAB(75/〜)

「EMT 139」のイコライザーカーブはどうなっているのかだが回路図やプレーヤー上の名板が見つからない。しかし「EMt139」は「EMT133」イコライザーの直系と思われるので参考にすると

 ダイヤルの切り替えは8段階だが表示は
  NAB
  CCIR
  AES
 になっている。

 代表的イコライザーカーブの一覧表を参考にするがEMT139BからEMT155stまでは全て共通のイコライザーカーブなのに対し、EMT139のみ異なる。web画像で名板が見当たらないところから製造期間は短かったのかもしれない。

 宅配で注文してたパーツが届いたので早速部品交換した。

 これで音出ししてみると。。

 ローカットフィルターのバリコンを回すと「バリバリ」の爆音が出る。早速分解して取り外す。
 


 全体にかなり汚れていたので時間をかけて掃除をしてたのですが埃がバリコンの羽にもしっかりこびりついている。羽を痛めないように注意して掃除してまた組んでみたら爆音は解消してくれた。ついでにイコライザー素子のボードを裏から見て接続を調べて数値とともに書き出してみた。しかし??の回路。どうなっているのだろう。。

 しばらく稼働させていたら問題が出た。
 初段のデカップリングコンデンサーが吹き出した。

 ピンボケですが。ちょっとEF804のプレート電圧が高いのも気になる。とりあえず交換して

 
 やはり終段のEF804のスクリーングリッドの電圧が高いのはおかしい。配線はオリジナルのように見えるがEMT139Bの回路に変更することにした。EMT139Bの回路図から終段の全電流は7.7mA 内Isgは3.0mA。変更後の実測では全電流 7.5mA Isg1.7mA 。まあいいような気がする。。プレートチョークが不完全なので負荷抵抗値はテキトーだったが辻褄は合っているような。。
 EF804の規格表を見ると最大規格を大きく(2倍程度)超過していることが分かった。これは一体どういうことか?チョーク負荷なら許されるのだろうか?いやそんなことはないと思うが、、。業務機が規格を無視した設計をしているとは思われない。謎です。
 ここで特性を測定してみる。EMT139Bとの比較になるがまず無歪みの1KHz出力はEMT139は11.0V EMT139Bは13.0V で思ったより差が出ない。続いて入力から途中にあるゲイン調整用ボリュームでイコライザー特性を測ってみると4段階の1は高域はフラットなのだが他のイコライザーでは共通の低域のターンオーバーはEMT139Bとは大きく異なるし高域のロールオフも次第に深くなっていくのは確認できるが一体どのカーブなのかは不明。ただし4段階の4が一番RIAAに近いので(予想通り)当面ここで比較試聴してみます。

 休日を利用して3台のEMT139(EMT139 1台  EMT139B 2台)を比較するために改めて測定してみた。2台のEMT139Bも出力トランスが異なっている様子なのとEMT139の終段のプレートチョークが不完全なのでどの程度の差が出るか。
 フラットアンプ(のはずだが)であるEC82からEF804のDCカットのコンデンサー出力を見るとなぜかEMT139B無(シールが無いのでこう呼ぶことにします)の高域特性が10dBほど落ちている。他の2台はほぼ一緒で-5dBほど、出力トランスを通しても同様でこれは意外です。またこの接続で100Hzの無歪み出力を見るとEMT139が60VでEMT139Bは150Vから200Vでここはかなりの差が出ました。やはりチョークの不備は低域に影響が出ています。出力トランスを通すとさらに下がってEMT139で5.0v他は13〜14V。しかし入力を調整して5.0Vに揃えた時の1KHzと10KHzの変差は3台ともあまりありません。とにかくこれは意外でフラットアンプでは無いということになる。後半にはスクラッチフィルターが入るのでもちろん一番回し切ったところでの測定です。
 肝心のEF804とECC82のイコライザーアンプ部分は前述の通りですが後半部分が全体の周波数特性に関係していたわけで一体どうなっているのか。もう少し回路を理解しなくてはいけません。(どなたか解説していただければ幸いです。。)



 webで見た古い写真は特徴が現物とよく一致しています。またスクラッチノイズフィルターのバリコンの軸が長いことも。なぜ長いかは疑問だったしもし取り替えられていたのなら短くカットしようと思っていたので確認できて良かったです。この写真以外で特徴の一致するEMT139はまだお目にかかれない。今の所唯一の写真。

 気になるのでまた測定してみた。今回は入力から出力までのオーバーオールの特性。
 それによると2台のEMT139BのRIAA特性はよく揃っていた。またEMT139の①ポジションもほぼRIAA特性。これらは偶然とは思えないほど一致していたので調整は1台毎にオーバーオール特性で調整していた可能性があるかもしれないと考えたがゲインコントロール以降に特性をもたせたらゲインが変わる毎に特性まで変わってしまう。やはりありえない。
 100Hz以下の特性でやはりチョーク巻き直しのEMT139の耐入力が低い。下限を30Hzとすると波形が乱れない限界が出力3.3V この時の入力値で1KHzの出力は0.7Vでここが限界値。ちなみに2台のEMT139Bの30Hzの最大出力は4.0Vと7.0Vで1KHz時は1.1Vと1.5Vで意外に低い。(680Ω負荷)
 これはどう評価したら良いのだろう、高出力のモノラルカートリッジをちゃんと受け止められるのか?

 少し休憩してまた検証することにします。
 
 


 







LE8 ゴムエッジ交換

2017-12-11 15:38:44 | JBL
 「JBL LE8」は(多分)世界で一番有名な20cmフルレンジユニット「LE8T」の前身で製造期間が短かったため激レアではないがまあ珍しいユニット。LE8Tとフレームは殆ど共通で(ネジ穴がザグってないくらい)コーン紙はLE8Tは「ランサプラス」という白いコーティングされたシングルコーン、LE8はコーティングの無い黒でダブルコーン。エッジはLE8Tは途中からウレタンに変わりましたが初期のものはLE8同様にゴムエッジとなっています。二者の音味は明らかに異なりLE8Tの方が抑制の効いた厚い音、LE8はよく言えば軽やか、悪く言えばちょっと薄い感じの音がします(個人の感想ですが)。JBLらしさと言えばLE8Tに軍配があがると思いますがLE8の音を好む方も多いのではないかと思ってます。(ただしLE8Tの音は唯一無二のような気はします)
 

 使われているゴムエッジ(ランサロイ)はウレタンエッジに比べたら長寿命ですがそれでも継時的には硬化が進み次第に低域が不足する。この段階でゴムエッジ軟化剤を使う事もあるようですが私が見た軟化剤はオイル系と思われ、コーン紙にも染み込む恐れがあるので将来のエッジ交換に支障が出ると判断して今までに使用したことはありません。
 拙宅ではミニゴンとJBL L75 メヌエットに取り付けています。メヌエットのLE8のエッジがとうとう寿命となりました。

 

 低域の大入力で両chとも一気に亀裂が入りました。
 入手したのはネットオークションで「LE8用」と謳っていたもの。

 白いのは当然ですがゴムエッジという事に惹かれて高価だったのですが購入しました。貴重なユニットだしなるべくオリジナルに近い状態に戻したいしウレタンより長寿命だし、、との事で思い切って。エッジの交換の経験は数度ありますがゴムエッジは初めてです。ウレタンのエッジは寿命が来るとボロボロになってユニットから剥がすのもそんなに苦労は無いのですがゴムエッジは接着剤も強力で厚みもあり除去しづらいだろう、、という予想は的中しやっぱりコーン紙に影響が出ました。(一層剥がれてしまう)なるべく丁寧に時間をかけて行いLE8Tのボイスコイルを交換した時はあまり芳しくなかったので溶剤は今回は使わずに行いました。


 このセットは接着剤と筆まで入っていて古いエッジの除去が済んでいれば作業時間は1時間程度で2本の交換が完了します。ボイスコイルが擦れてないのを確認して一晩放っておいて試聴。

 随分低域が豊かになりました。今までの硬化していたエッジがいかにコーン紙の動きを邪魔していたかがわかります。。

 ゴムエッジを除去するのに良い方法があればぜひご教授をお願いしたいです。



  お読みいただきありがとうございました。

 後日談 1
  もともとJBL L75はLE8Tが搭載されていますが不注意でボイスコイルを焼損させてしまい修理したのだが、、今ひとつピンとこなかったのでLE8にして使ってました。今回LE8のゴムエッジを交換してとても良好だったのですでに寿命が来ていたLE8Tのエッジも交換することにした。こちらもゴムエッジ(ランサロイ)だが何分にも交換エッジが高価だったので(もったいないので)白色のウレタンエッジが海外オークションに出ていたのを入手した。

 価格は送料込みでもゴムエッジの半額以下。

 早速交換してみた。安価でも接着剤と小筆が付属している。ところが接着剤のフタが開かない。。仕方ないので切り取った。妙なところでボロが出た。

 LE8とLE8Tを並べてみた。フレームは共通と思っていたが微妙に異なる。エッジ周囲の樹脂リングのサイズも。これで接着剤の硬化を待って音出しすると、、

 、、いい感じです。良い点は音が軽々と出るようになった。悪く言えば厚みやゴージャス感が薄れたようにも思う。LE8的な音味か。しかしデテイルはちゃんと聞こえるし何より嫌な音要素が無いので日常的に十分使えそう。JBL L75メヌエットのパッシブラジエーター(名称忘れた)のゴムエッジは変えてないのでいずれ交換しようと思う。50年前のスピーカーですが酷使に耐えて歌ってくれてます。