製造は1922年から1927年まで、世界で最初に市販されたアンプ。組み合わせるスピーカーはWE518Wでその一式は「No,10Aラウド・スピーキング・テレフォン・アウトフィット」と呼ばれた。
WE-7A(図ではNo.7-A)の電源はA電源6V(蓄電池)、B電源120V 積層乾電池(22mA)、C電源9V(エヴァレディNo.751 X 2 内蔵)
メインスイッチはA電源のみでB、C電源は接続したままになっている。ちなみにEveready No.751とは
紙箱のこんな格好だったようで日本でもかつて電気屋さんで売っていた「平角3号」みたいなものかと思っていたら、、「平角3号」まだ売ってました。http://www.kenis.co.jp/onlineshop/product/1123120 (模型エンジンのプラグはこの電池で始動したことがあるけどグロープラグは2V 白金プラグは1.5Vなのでどうやっていたのか、、。忘れました。(その後1.5Vのを発見した。白金プラグでこれを使ってたみたいです)なかなかエンジンがかからないとどんどん電池が減るのでヒヤヒヤした)高圧の積層乾電池は昔はラジオのB電源用として市販されていたらしいですが見たことはありません。「006P」はもちろんどこでも入手できますが記憶の彼方の「4AA」もかつては電気屋さんで売ってました。調べてみると単3電池4本をそのまま組み込んだものでスナップ端子は006Pなどと共通らしい。そういえば単3電池4本入れる電池ボックスにこの端子が付いているのも見たことがあるからあれは「4AA」の代用品だったわけです。世の中広いものでこういった電池コレクターも居られるようでどこにでも楽しい世界は広がってる。
B電源はEveready No746(108V)とEveready No766(16.5vから22.5Vまで1V毎のタップがある)を直列にしていて電池の寿命は1日2時間として2ヶ月間だった。WE216Aは5V〜6V1Aのヒーターなので3本パラのA電源は結構大食い。度々充電が必要だったのでしょう。
真空管はWE216Aを3本
完品からジャンクまでいろいろ
発振防止のコンデンサーが入っているのもある。eveready電池はこの金具で留められている。
ボードの両面にはエボナイトと思われる薄板が貼られています。配線コードは極太のゴム被覆された単線です。すべての端子は「陸軍端子」のアメリカ版。実験装置のような雰囲気の95年前のアンプ。今となっては存在そのものに感嘆します。「音質を評価する」など烏滸がましい(オコガマシイ)。当時の価格は$400だったとのことですがどれくらい高かったかは想像がつかない。
「No,10Aラウド・スピーキング・テレフォン・アウトフィット」のもう一人の主役のNo.518-Wレシーヴァです。
マグネチックスピーカー。基台の中にトランスが内蔵されているものもあるそうです。WE25Bと101Fプリアンプで鳴らしてみてもとてもプアの特性でこれで音楽を聴くのはムリがある(聴いてる方スミマセン。あらためて陣笠は画期的なスピーカーだったと思います)
518-Wより前にはこんなのもありました。(駆動したアンプは不明ですが)
名称は「521-CW」で1918年2月23日と書いてあります。薄い鉄製の振動板を電磁石で駆動するもの。
タイトルは「親子ラッパ」か「夫婦ラッパ」か
充電や電池交換が煩わしいし、電池代もかかるということでWE7AにはACアダプターがありました。「2A CURRENT SUPPLY SET」
使用された真空管は217A X 2本
製造はWEではないと書いてある。。とてもレアな球ですが入手できないときは216Aで代用できます。どっちにしても入手は容易では無いけど。
巨大なACアダプターの資料はほとんど見つけることはできませんでしたがA電源AC6V、B電源DC120Vを供給します。C電源は内蔵バッテリーのまま。
裏ブタを開けたら前オーナーが描いたと思われる回路図が出てきた。
、、いやよくわかります。描いてくださった方、ありがとうございます。217A半波整流管2本でオーソドックスな両波整流を行い、極小コンデンサ2本とチョークコイルで平滑している。中点接地のACヒーターであることがわかります。
一応描き直しました。実機とは比較していません。CB21(だと思うが)2μFが生きていることを祈ります。216Aも217Aも古すぎて手持ちのHICKOK KS=15560-L2 tube tester では対象となっていません。実装あるのみ。
100Vでおそるおそる点灯してみると217Aはどうやら生きているようで無負荷ではかなり高圧で出力されます。まあ良かった。。
C電源はやはり006Pを使うことにします。
このホルダーに収まるわけですが大きいのでホルダー内のホルダーが要ります。折角なのでEveready 751バッテリー型ホルダーを作ってみた。
夕飯前に作りましたとさ(ホントです)。おバカですね〜。
取り付けて完成。C電源はスイッチはありません。本物のNo751バッテリーは4.5Vなので2個使います。
2A電源と接続して通電してみる。
本体のスイッチを引っ張ってONです。最初「PULL OUT」と書いてあったので勘違いしてちょっとあわてた。。やっぱり接点は磨かないと不安定。無水アルコールで。
安定してきました。518Wスピーカーと入力を繋いでみる。ソースはパソコンから。
無事音が出ました。ちょっとハムが目立つがこんなものかもしれません。
しばらく聴いてみましたがこの音味は、、やっぱり蓄音機の音が一番近いと思います。ちなみにこれは褒め言葉です。電気再生ではなかなか得られない音。「これで音楽を聴くには無理がある」などと失礼な事を申しました。音の出入りのスピードが速く特に引っ込む時の潔さは陣笠の比ではなく爽快な音です。この音で上下の帯域が拡大できたら、、と思われる方も多いのでは。常用するにはコード類のメインテナンス、端子、接点の磨きなどまだまだ手入れが必要です。このセットが拙宅に来てから数十年が経過して(!)いますが、今回初めて音出しすることができました。これはこれで魅力的な音だということがわかりましたので良かったです。日常の生活で活用するためには生活そのものの質を高めなくては。これは難題です。
お読みいただきありがとうございました。
TA7388はWestern Electricの映写室モニター。TA7355メタルキャビネットにWE95AアンプとTA4189フルレンジ、ASLポテンショメーターが組み込まれていてひっくるめての名称。
WE95Aはケースとは一応絶縁してあるがトランスレスなので検電器代わりのネオン球をぶら下げてます。片方を指で触りながらもう片方をシャーシにタッチして光らない向きにプラグを差し込む。でも実際はアイソレーションを兼ねて昇圧トランスを使ってます。
名器の誉れ高いTA4189フィールドスピーカー(インピーダンス7Ω フィールドコイル110V/74mA DC抵抗1500Ω) フィールド電源はWE91Aとは異なりアンプのチョークを兼ねない接続でアンプ内蔵チョーク出力のほぼ100Vがかかっている。プッシュプル単段なのでチョークを省いてもいいのではと思うが(使用状況を鑑みて)WE95A単体で状況の違った環境での稼働もあったのかもしれない。
この個体を入手した時は全周にわたってエッジが切れていた状態でした。裏から補修していますがエッジが硬くなってストロークはあまりとれないと思います。修復してからかなりの年月が経過している。久しぶりに通電してみたがなんともしょぼい音。スピーカーが原因なのかアンプなのかもわからないのでまたWE140Aに登場してもらってフィールド電源はそのままで信号だけ入れてみる。
残念ながらボイスコイルが擦れている所があります。音を出しながらギャップの掃除を試みると次第にクリアーになってきました。4時間ほど鳴らして問題なさそうですのでまたWE95Aと繋いでみる。
WE140AとWE95Aのゲインは一緒くらいです。単段増幅の単純な回路ですが入力トランスの利得が高いのか。。音質はかなり異なります。WE140Aは低域まで伸びたHiFi、WE95Aは中高域が張った、明瞭な、厳しい、玄人受けする音。
TA7388はWE91Aの出力トランス171Aの2次側中間タップからの出力を入力していた。入力トランスがWE282B(600:120K)、出力トランスがWE174A(12Kpp:7.4Ω)、周波数特性は100Hz〜5KHz。新 忠篤氏の実測によると-1.5dBで50Hz〜6KHz、クリッピングポイントは0.6Wだが0.3Wくらいから波形が崩れ始める。
かなり個性的な部品配置のシャーシ。
前回整備したままですが特に問題発生はなく真空管43、25Z5もチューブチェッカーで点検してOKでした。WE140AはWE100Fの親戚かと思いますが、WE95AはWE100Eまでのシリーズの父親といったところです。映写室はプロジェクターの騒音、ランプの熱などかなり厳しい環境での稼働だったと思います。その中でモニター装置なので絶対的な信頼が必要とされた。
ところでWE91Aは500Aシステムに組み込まれていたとすれば映写室のモニタースピーカーWE4172も含んでいたわけで。TA7388との関係はどうだったのだろうか?500Aシステムはオールインワンのスーパーシステムだったと思うがWE91A単品での稼働もあったのかもしれない。
前回時の修理記録をUPしていますので再掲しますと
修理品のTA4189は残念ながらエッジはほとんど全周にわたって切れている状態でした。(単に切れているだけではなく幅1〜2mmの欠損が半周以上ありました)私はオリジナルのTA4189を他に見た事はありませんが、エッジ上に補修と思われるテープがありました。映写室で酷使された往時の様子がうかがわれます。このままでは十分に機能しないと判断し、一旦ガスケット、コーン紙をとりはずして裏側から和紙を用いて欠損部の補修を慎重に行いました。ダンパー、ボイスコイルは特に問題無く、ギャップの清掃も行いましたが錆なども認めませんでした。再度組立てし外部フィールド電源で音出し確認しました。心配したエッジ部のストローク量も大丈夫なようです。
WE95Aは通電前に各部のチェックをいたしますと、電源入力部の抵抗が焼損のため大きく抵抗値が異なっており整流管へのヒータおよびB電源への正常な供給ができない状態となっていました。(音はかろうじて出ていたかもしれません)これは外付けの抵抗で対処しました。またWE174A OUTPUTトランスからピッチが漏れていましたので点検をかねてトランス類をはずしてシャーシの清掃、被覆の破れているワイヤーの取り替え、レーシングを行った後に通電いたしました。(RCAソケット、スイッチ類、ヒューズ、ヒータの100V用への変更をオリジナルをなるべく崩さないように行いました)43のプレート、カソード間のNF抵抗の値が元回路と異なっておりますが聴感上の問題はありませんでしたので戻していません。(特性はまだ計測していませんが)試聴してみますとWE95A,TA4189ともにとても好ましく「さすがにWE」と思わせます。鉄のキャビネットに裸のユニットが入っていて音になるのだろうか、、と思っておりましたが、この形態で完成していました。
スピーカー前面のダストカバーを両面テープで貼り付けて完了。ダストカバーの周囲には厚いフェルトが貼ってあるので前面バッフルと密着して効果を期待する構造かと思ってましたが実際は脚を固定する部分を前後的に調節しても距離がありますのでどうもそうではないようです。前面バッフル以外は意図的な穴は無いのでスピーカー背面から発した音はバスレフ的に前面から出てくると思います。このあたりは思いっきりアバウトかと思うが全体の共振も手伝って何となく納得の音というのがすごいというか、、。すごいのでしょう。
TA7388の整備は終了しました。
お読みいただきありがとうございました。
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回路図を見て気づくのは電話業務で使われたWE100Fによく似ていること。トランスレス、使用真空管は同一。異なるのはシングルアンプがパラプッシュプルになって位相反転回路が加わり電源が25Z6の倍電圧整流になっていること、出力トランスが「WE91B」「WE124A」などに採用された171系トランスの171Dになっていること、入力トランスが広帯域の285系になった。こういったバリエーションはWestern Electricのアンプではよく見かけます。WE140Aはインターステージトランスを使っていないのを見ても近代的なアンプだなと改めて思う。ところでこの位相反転回路は何という名前なのか?下のグリッドの入力が無いではないか?と思っていたがどうもミスプリントのようで。上プレートから0.05μFで直結(!)される。これは一体??
上側は通常の自己バイアスの増幅回路、位相の反転したプレート出力を直に下グリッドへ。下はプレート電圧を2MΩと510KΩで分圧しグリッドに対アースで40Vかかっているがカソード抵抗が39KΩで42Vの電位があり差し引き2Vのバイアスがかかる、、。上下の利得はどうなっているのだろうか。
WE100F回路図
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トランスレスなのでシャーシとケース、また手に触れる部分は絶縁されている。
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ハーネスはやはりWestern Electric特有のオーラを感じる。こんな小さなアンプでも迫力に目を奪われる。ハンダ付けの力量は高くネジ類もしっかりと締め付けられている。
音は出ますがハムが多い。以前は動作していましたが久しぶりの稼働でいろいろと問題ありそうです。整流用電解コンデンサーのベーク基板が割れている
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このコンデンサーは感電防止の紙筒が被っています。またシャーシには接続されていない。容量、電圧表示はこの紙筒に書いてあるのでなんとか外したかったが上手くいかず破れてしまいました。外してチェックするとやはりご臨終。仕方ないので根本付近で切り離して分解して適当なコンデンサーを入れる事にします。
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2階建。端子への接続は(やはり内部では難しいので
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底に穴を開けて端子とケースをベーク基板に留めるツイスト端子に半田付けまた組み立てました。容量は1.5倍になってしまってます。もう1ヶ所の電解コンデンサーは無事でした。
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電源部は復旧したが各部の電圧は回路図記入のものとかなり異なっています(この回路図はマチガイがありそうだが、、)カップリングコンデンサーはWestern Electricネイム入りだが全滅のよう。
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交換してもまだおかしい、、。おっと2MΩが断線している。数個の抵抗をつないで置き換えてみると正常値になりました。
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しかし初段のチリチリノイズが消えない、真空管換えてもダメ。なぜ??とりあえず部品を注文した。
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せっかくの休日(秋分の日)がまったりと過ぎていく、、。もう夕方か〜。
苦節数時間(?)ノイズの原因が分かりました。初段の抵抗を交換していくとR3のカソード抵抗2KΩが原因でした。A&B抵抗は劣化してくると抵抗値が高くなる傾向が出ますのでチェックしていて分かりました。古い機器の原因不明のノイズを解決するのに「ハンダを押さえていく」というのはプロから教わったことがありますが電圧が2Vしかかかっていない抵抗器が原因だったとは、、。とにかく原因がつかめてよかったです。手持ちのものと交換して今日はここまであとは部品待ち。
この状態でWE755Aを鳴らしてみると、、なかなかの音です。
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WE755Aは比較的鳴らすのが難しいスピーカーです。大型アンプで蹴飛ばすようにすればそれなりですが、小型アンプでそよそよと鳴らすのはけっこう面倒。WE140Aは地味なアンプですが素性は宜しいよう。
部品交換しようやく完了。結構時間がかかりました。
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改めてWE755Aの良さに嬉しくなりました。大きな音が出ますが貴重なスピーカーなので過大入力には注意です。
WE140AはトランスレスやWEtubeを使ってないなどあまり人気の無いアンプだそうです。今回改めてメンテナンス、試聴してみてとても好感を持ちました。出力は10Wですのでホームユースの使用には全く問題はなくその品格ある音質からメインシステムとして十分に通用すると思います。パラプッシュはWE118AやWE143A,Langevin101Dなどと同様ですが通常は大出力を求められる場面に用いられる。しかしWE140Aは10Wです。WE124Aとどう棲みわけたかはわからないが(多分FM局の廉価アンプとしての位置付け)小出力管をパラプッシュとして動作させたことに注目します。個人的にこういう設計にはとても好感を持っています。古典的なアンプほど、パーツの個性が際立って名真空管、名トランスなど神話とともに君臨する。近代的な回路になるほどその傾向は薄れていき、真空管も「WEでなくてはダメ」な世界ではなくなっていく。「Marantz Model 9」のEL34を現代流通しているものに取り替えた時もそれを強く感じました。tubeをアンプの消耗部品としていて多少銘柄が変わってもアンプの骨格はびくともしない。それだけ技術進歩が匠にとってかわるということではないかと。(といいながら入出力トランスにはやはり感心するが)電力増幅管を多数パラプッシュにしたアンプも存在しますがまだ聞いたことがありません。こういう世界はアマチュアの特権かと思ってましたが登場した時は驚きました。
お読みいただきありがとうございました。
後日談 1
手持ちの資料の中にWE140Aの別回路図がありました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/44/13/f73ea2ed73f772b4332f08a3dc94df7c.jpg)
やはり前出のものはミスプリントがあるようです。記入の電圧も実測値に近いです。
WE100AからWE100Fのパワードスピーカーは電話業務用らしいのですが電話の音をスピーカーで拡声する必要があったのはどのような場面なのか。鉄道の駅舎に設置されて前の駅から列車が「そちらに向かった」という電話連絡が拡声されて伝えられた、という説明を聞いたことがあるのですが真偽は不明です。ご存知の方はぜひ教えてください。
100A 100B 100C
100A,100B,100Cは回路図はありますので存在したのは確実だと思いますが、A〜Cの違いは、いつの時代か、何台製造されたのかなど不明です。
100D
100Dの回路図をそれ以前のものと比較すると、コンデンサー容量が僅かに変化したのと、ヒーター電圧が僅かに下がった程度でほとんど変化は無い。初段の真空管は77になっている。
100Eより一世代古く私は100Dより古いのは見たことはありません。
チェックするとかなり問題がありそう。
16μF+13μF/200Vの電解コンデンサーは上に減圧弁があったみたいで吹き出している。
この電解コンデンサーはナットで止めるタイプでWE91Bなどと一緒です。シャーシからは浮いている必要があるためかシャーシとの間に紙製のスペーサーが入っている。
この表示が欲しかったので(回路図と同じ)分解して中身を取り替えることにしました。
WE91Aレプリカを作るときに苦労したところだったのでちょっと工夫してみる。内部端子はアルミ製なのでそのままではハンダ付けできないので横穴をあけてリード線を結びつけるという荒技を試みる。
整流管はやっぱりご臨終のようです。電界コンデンサーが原因か、カップリングコンデンサーがお漏らしして過電流が流れて出力管を道連れに逝ったのか。。
部品をリストアップ、注文してしばし待ちます。
ピンボケすみません。例のごとく届いたチューブラー電解コンデンサーを入れて組み立てて完成。 22μF+22μFです。もっと大きい方がいいとは思いますが。カップリングコンデンサーは同時に注文したオレンジドロップ。何十年ぶりに購入。
ケースに仕込んで各々のコンデンサー周りを配線し直し。カップリングコンデンサーの固定だけで4本のネジが使われている(取り付け金具を留めてるネジを含んで)。この厳重さが信頼性や当時は多分気にしなかったであろう音質にもいい影響を与えていると思う。
パネルを外すと両切りされるスイッチをショートして各電圧測定と音出し。うまくいきました、、が今度はボリュームがおかしい。立派な部品ですがスムースに回らないし、うまく音量調整できない。
外してメーカーを確認すると「ELECTRAD」Newyorkの知らない会社。ネジ止めで分解可能。
掃除してうまくいきました。電源コードはシャーシからの出口の傷んでいる所をカットしています。コードの抜け防止はシャーシに空いている穴に紐で留めてあります。またコードと紐は糸で結んでいる。できるだけ再現した。
電気部分の修復が完了しました。整流管も交換しています。
キャビネットも合板の剥がれなどがみられましたので接着剤を入れ込んでクランプで締め付けて補修。リアパネルもサビ落とししてからデカールをマスキングして軽く塗装。
組み立てて完了、、のはずでしたがうまくいきません。両切りの後ろスイッチが不良になっていました。。しょうがないのでパスして
今度はうまくいきました。音質は、、ちょっと驚きです。これはイケる。4台の100シリーズ中ピカイチです。これは単純にスピーカーの状態が良いだけかもしれない。(これもけっこう補修してあるが)jensenスピーカーのコーン紙は脆く劣化しているのが多い。せっかくの小口径(5inch)フィールドスピーカーなので他のももう少しなんとかしてあげたくなりました。「古い方が音が良い」などとは軽々に言いたくないが物量と手間が投入されているのは事実。やはり音にも現れる(と思います)。
100E
100Eは100Fより一世代古いものだが比較的目にすることがあります。キャビネットの形状には大きな変化はありませんが回路はそれ以前のものまた100Fとも少し異なっています。100Fとの最大の違いはやはりスピーカーがフィールド型だということで、この製品の最大の魅力となっています。また電源スイッチもスタンバイ機能がありとっさの稼働にも支障が出ないように配慮されている。真空管もST管でやはり時代を感じます。
100E その1
裏のパネルを外すと電源が切れる(両切り)構造。このスイッチもシャーシから絶縁されている。
真空管 25Z5 43 CK108(6C6)
jensenフィールドスピーカー エッジがぼろぼろだったので修理しています。たしか他のスピーカーからエッジだけ移植した。またスピーカーはシャーシにはリジットに固定されず、キャビネットのフロントパネルにしっかりと押し付けられるような凝った固定方法。
電源スイッチはトグルスイッチを回転軸でコントロールしている、off,standby,operation とてもよくできています。
出力トランスはスピーカーの背中
入力トランス、チョーク、コンデンサーはしっかりした(?)WE製。また内部ハーネスもシアターアンプを彷彿させるような。コンパクトなパワードスピーカーだがやはり魅力がある。真空管は筐体の高さの制約からまた放熱の関係からシャーシに沈み込ませていて浅野 勇先生のアンプを思い出します。
部品点数も100Fと比較して多く凝った内容。
メインテナンスは以前行ったわけですがあまり覚えていない。シャーシ内が汚れているのは、、
221Cチョークコイルからピッチが溢れていたため。しかたないので外して掃除してまた組み立てる。また配線は単線だが被覆がほどけてるので(しょうがないので)スリーブを被せて配線し直す。
黄色のスミチューブ2本はフィールドコイルに行きます。各部動作チェックするとカップリングコンはダメのよう
はずして絶縁試験するとやはり漏れがあります。
分解してみるとペーパーコンのようです。
コンデンサーにはPCBが含まれてることがあるので(特に1970年台のもの)良い子はマネしないでください。適当なフィルムコンを入れ込んで完成。
ところがすんなりとはいきませんでした。最初耐熱パテで埋め込んだのですが絶縁は弱いようで、しばらくアタフタした。。
カプリングコンデンサーが漏れていると43のグリッドはカソードに対してプラスとなり超過電流が流れます。チョークトランスも加熱してピッチが流れ出したのではないかと思っています。
どうにかできました。結構楽しいものです。Western Electricのアンプリペア入門にはぴったりかと。カップリングコンデンサーを交換した直後は少しトゲトゲした感じはあったのですがすぐに落ち着いてきました。
100E その2
内容はほとんど同じ100Eです。「その1」と異なるのは電源のコンデンサーが変更されていることくらい。各部の電圧を測定すると「その1」よりは若干高いので「その1」はまだ問題を抱えているのかもしれない。(実は「その2」はスクリーングリッドへの抵抗が断線していたことが後で判明)カップリングコンデンサーはやはりリークありですので交換しておきます。
スピーカーのコーン紙特にエッジはかなりひび割れあり。「その1」は修復不能でエッジ部分を切り取った経緯があります。(フィックスドエッジからフリーエッジになった)今回はコーン紙用接着、調整、修復材で補修した。
また直近まで正常だった25Z5が昇天しました。急に電圧がとれなくなった。早速注文すると新品でも数百円で入手できます。
「その2」修復終わりました。
100F
100Fは製造された数が多いらしく一番新しいこともあってよく目にします。入力トランスは100シリーズ専用に開発されたWE282A、出力トランスはKSナンバーではない社外品。使用真空管は25Z6GTで整流、初段は6SL7GT、出力段は25L6GTの3球。トランスレスなのでヒーターは抵抗と直列に接続される。25Z6GTは全波整流管だがトランス巻線がないので当然半波整流。プレートはパラに直結かと思われるが100Fだけは各々に30Ωの抵抗が入る。2つのプレートの片方に電流が集中しないための工夫らしい。ヒーター抵抗とともにメッシュの筒型抵抗セットが8ピンソケットに入る。断線した時の対応かと思います。電源スイッチは両切りのもので100Eまでのスタンバイ機能は省略された。また電源はAC105〜125V以外でもDCで稼働する。当然極性は存在する。初段の6SL7GTはパラ接続だがグリッド間に15kΩが入っている。何のため?ゲインのコントロール?発振予防?わかりません。。トランスレスだがシャーシには0.1μFで落ちているのでうっかり触っても感電しない。それで100Eまであったもう一つのセンサースイッチが廃止されたのかもしれません。(ホントか?)ところで電源は相変わらずAC,DC兼用だがACでは20〜65㎐と対応幅が広がっている。20Hzとはいったい、、??どういった環境で使われたのだろうか。一番最初に書いた疑問がまた頭をもたげる。
この個体は外装レストアしてあります。とてもきれいだが残念ながら貼り付けてあったはずのデカールは無くなっている。木製キャビネットには足はなく床に直置きを推薦していることから低音増強を狙ったものと思われます。
入力コードの先端には外れ防止のフックが設けられている
出力トランスはスピーカーから離れて別に設置されている。
スピーカーはjensen製 5inch スタンダードシリーズの 「アルニコ5」
至る所に「KS」ナンバーの部品
電源スイッチは回転式両切り
唯一のカップリングコンデンサはマイカコン
ボリュームはオーマイト製
ヒーターと整流管プレートにつながる発熱ニクロム線はGTプラグ付のメッシュの筒に収められている。
10年ほど前にメンテしたままだがあまり支障は出ていない様子。電解コンも生きている。当時は整流管は交換した記憶があります。Western Electric社の製品なのにらしいのは唯一
入力トランスだけというもの。
消耗部品は何処でも入手できそうな汎用品がほとんど。製品群の中では一番手を抜いたものというイメージだが安っぽさは感じられない。卓上でモニター(?)する分には十分な音量。明瞭度も高く特に不満は無い。温かくなるので冬は手をかざして暖房代りにもなるし。趣味性の高いギアとしてこれは魅力的だと思います。
WE100シリーズはいずれもトランスレスですがアイソレーションを兼ねて117Vに昇圧するトランスを入れた方が良い、というか必ず入れるべきです。100Vと117Vでは音質がかなり違います。電圧が高くなった以外でもノイズが減るのかもしれません。当時と今ではACラインのノイズ量が異なると思われます。歪率計でみるとちょっとびっくりする。
お読みいただきありがとうございました。
後日談
WE100Dの音が良かったのはスピーカーの状態が良かったことが大きいと思う。使われているのはジェンセンの5inchフィールドスピーカー。コーン紙がボロボロになったのを捨てずに保存しておいたのがあります。ボイスコイルとダンパーは無事。いつか活用しようと大切に(ホントです)とっておいた。
背中にトランスを背負っている。ボロボロのコーン紙を切り取っておいた。このジャンクに健全スピーカーのコーンを移植しようというバチあたりなプロジェクトを決行。まずドナーだが海外オークションで5inchのそれらしきものを購入。ところが、、
なんと来たのはちょっと大きい。。気をとりなおしてコーンを切り取ってみる。
ボイスコイルも同寸法のようだがDCRはちょっと異なります。同じものを3個購入しているので将来活用することになるかもしれない。フィックスドエッジが1山〜2山しか使えないがフレームに固定するところの外の山部分にアイロンをかけて平らにする。
試適してまずボイスコイルと固定。
周囲のガスケットも分解、修正して移植。実はこれが一番時間がかかりました。
で完成です。接着剤が固まる間にボイスコイルがギャップで擦れないことを確認しておきます。
さてどうなるか。。
WE100E、「その2」の方が「その1」に比べて歪っぽいので「その2のスピーカー」と交換してみました。
青いラベルが取り外した方。ラベルは異なるがスタンプや形状は全く同じものに見えます。組み込んでみて音出しするが、、やはり歪っぽい。。またスタンバイスイッチまでが少々接触不良ぎみ。期待していただけに(少し)へこみます。泣きっ面にハチだ!
もう一台ジャンクのWE100Eがあるのでスイッチの移植を試みます。
ところがスイッチをはずしてチェックすると同じ不具合があります。このトグルスイッチはベーク板の積層をカシメを貫通させて固定しています。カシメをドリルで揉んで外して分解してみます。
部品数は多くスプリングのテンションが掛かっているのでどう組み立てるかしばし考えました。接点を研磨して工夫しながら再度組み立ててみる。まず腰下を組み立てて
上からパーツを重ねていきます。トグル軸をなんとか抜いてトグルスティックをパーツを押し込むように入れて横から軸を再度入れます。
あとはカシメ部分を適当なビス、ナットで組み立てて完了。
うまくいきました。このスイッチは両端に端子が出ておりスティックを倒した方がONになる。スタンバイ状態だとパイロットランプも少し暗くなるという芸の細かさ。よくできています。(なおスイッチの分解修理はお勧めしません。保安部品の無い時代のセットです。決行する時は十分に注意してください)
各部チェックして終わりですが肝心の音は当然のことながらダメです。どこが原因か。。
入力から正弦波を入れてみると前段の波形がおかしい。。すぐに歪みます。調べてみるとスクリーングリッドに至る抵抗が断線している。ついでに「その2」を調べるとさらにプレート抵抗もかなり高抵抗になっている。(いずれも本来100KΩ)コンデンサーの絶縁が不良で過電流が流れたかと思いましたがWEのカッコよろしいペーパーコンデンサは無事みたいです。また分圧している抵抗値が違うのに変えられていたり、コンデンサへの接続が(故意か間違いか)違っている。すべて回路図通りに戻しました。
これで各段の電圧は正常値となりました。
WE100E「その1」、「その2」ともに正常動作しているようです。歪がとれて大きな音が出るようになりました。コーンの移植スピーカーも快調でもう片方のエッジを移植したものより良好かもしれない。ですがもうしばらくはこの組み合わせで(ステレオで)いこうかと思っています。
80年位経過した製品ですのでコンデンサ以外でも抵抗などの劣化は避けられない。抵抗値も大幅に変化していたりで音は出ていても正常動作かどうかは詳しく調べないと判らないこともあります。やはり使い続けるのは根気が要ります。