Decca Decolaがお嫁入り

やっとこさ入手したDecca Decolaの整備記録

マトリックススピーカー について

2017-07-31 13:50:30 | ALTEC
 学生時代に多大な影響を受けたオーディオ評論家は何人か居られましたが残念ながらすでに鬼籍に入られた方がほとんどで改めて自分も歳とったと思います。長島鉄男氏はその中の一人で氏の歯に絹着せないオーディオ論評は爽快でまた発表した多数のスピーカーシステムは氏の筆力もあってとても魅力的なものでした。現在でも書店では氏の書籍を見かけることがあり没後17年経過しているにもかかわらずその影響力は衰えていないのではないかと思います。

 発表されたスピーカーシステムの共通点はユニットはフォステクス、材は合板、仕上げなし、というものでかのオーディオ評論家の江川三郎氏から「モンキー工法」などと揶揄されてたと思います(お二人はとても仲が良かったらしい)。氏のお気に入りのアンプや推薦されていた盤は未だ中古市場では高値で取引されている。代表作の一つであるバックロードホーンはかつてはメーカーのスピーカーでも多数見られたがPA用途以外はほとんど廃れていたのを長岡氏が復権させた。

 私も氏の設計した音道が階段のように見えるバックロードホーン、棺桶のようなスーパーウーハー、そしてマトリックススピーカーを作って聴いていた時期があった。バックロードホーンとスーパーウーハーは消息不明(!)だがマトリックススピーカーは見た目のインパクトとコンパクトさの為か40年近く経過した今でも手元にある。しかしここ数十年は稼働していない。久しぶりに見ると当時のフォステクスのスピーカーの弱点であったコーン紙とフリーエッジの接続部が怪しくなっていて早速補修した。



 使用ユニットFostecs FE103で初発は1964年というものだがその系列は途絶えることなく現在も続いている。軽量なコーン紙と強力な磁気回路が特徴だがもともとテープレコーダーに組み込んで使われていたという話を聞いたことがある。スピーカーユニット専業メーカーは他にもあったがFostecsが生き延びたのはやはり氏の薫陶を受けたことが大きいと思う。スピーカーシステムの自作ブームを牽引したのは間違いないところ。「モンキー工法」などと言われながらも誰でもやる気さえあればホームセンターの木材裁断サービスを利用してあっという間に形にできて絶対に失敗することはない。(失敗というのは音が出ないという意味で)「発せられた音が客観的にいい音か否か」は二の次で本人が気に入ればOK。ただし仕上げのない合板の断面丸出しの家具は家族の反発を招き、マイブームの収束と共に静かに引退する、、という流れかと想像する。

 久しぶりに聴いてみると(アンプはJBL SA660、音源はitune)やはり低音不足。マトリックススピーカーは20種類くらい発表されたと思うがダブルバスレフでこの欠点を補ったのがあった。調べてみるとMX-10という名前が付いていてこれは聴いたことがない。(ちなみに第1作は当然MX-1)
正面の2本のスピーカーからは左右の音が均等に、左右は差(Right-Left、Left-Right)が出てくる仕組み。したがってモノラル音源時は左右スピーカーは鳴らない。
 音源によっては面白い効果がある。ただし音楽鑑賞に向くかといえばやはり厳しいと思います。あくまでもサブシステムか。肝心の音場効果も感じる個人差が大きく試聴記のような広大な音場、縦横無尽に動き回る音(だったかな、、)のように感じられる人がいれば何とも感じない人もいる。これはステレオ効果を感じやすいかどうか、ステレオアンプやスピーカー左右の位相特性が異なった場合の定位の乱れが感じられるかどうか、もっといえば歪んだBGMにも全く気にならない人もいる、、などにも当てはまってやはり個人差ということだと思う。

 アンプのBASSを少し持ち上げて聴いているとバランスの悪さが気にならなくなってきた。やはり慣れは大事。
 世間では8K、22.2chなどと言われる時代になった。またVRスコープは今後当たり前に浸透すると思う。8Kは画角が100度で大丈夫だそうでほとんど視野いっぱいに広がる感覚。それに(22.2chはムリでも)サラウンドを組み合わせて、、考えるのはバーチャル旅行。リアルタイムの旅行経験を自宅で行える日はすぐそこのように思う。いろんな事情で外出できない人には喜ばれるかもしれない。お金のある人はバーチャル旅行で予習して本チャン旅行に行けばどうでしょう?

 失礼いたしました。


 後日談
 先日かなり行き遅れの高齢婚でしたがめでたくお嫁に行きました。送り出す時に「シスコンのスピーカーはいずれ捨てられる運命かと思うけれど、こう行った類のスピーカーはユニットを取り替えたりして永く生き延びるかもしれない」などと考えてしまいました。

ALTEC 1520T について

2017-07-28 14:05:56 | ALTEC

 業務用音響機器メーカーの雄ALTEC社は綺羅星のごとくの名機器を発表したがその中の一台「ALTEC 1520」は1953年の真空管アンプで出力管は6L6ppで35W出力、トランスはpeerless。シャーシはゆったりと大きく塗装はグレーのハンマートーンでパネルはブラック、有名なアルテックグリーンのアンプ達より一世代古い。ラックマウント可能。
 ALTEC 1520は「Aタイプ」と「Tタイプ」がありAタイプは2系統のマイク入力用プリアンプを搭載している。Tタイプはプリアンプの代わりに入力トランス「4561」を搭載しているブリッジアンプで入力インピーダンスは15kΩ。。とあるがパネルにもある「ブリッジングアンプ」とは何のことだろう?
 



 前段は初期の民生用プリアンプ同様に12AY7を使っていて当時ALTECのお気に入りだったらしい。終段は6SN7によるカソードフォロワー、固定バイアスでAB2級ドライブされる。またその対応としてチョークインプット整流回路。出力トランスの3次巻線からオーバーオールのNFBがかかっている。これで悪い音が出るわけがないと思わせる豪華な内容(?)

 拙宅のALTEC1520Tは10年くらい前から居るのですがまだ稼動させたことはありません。点検してみる。

 

 

 

 
 操作パネルはラックマウント時の裏板に取り付けられてアンプの顔の一部となるのが一般的な姿だと思うがこのアンプはなぜかアンプの側面に取り付けられている。ラックマウントしない場合はこの方が使いやすい。しかし場所を占領する(ラックへの固定部分、つばが大きい)のでこのパネルは後で移動してみます。幸いに固定金具はそのまま残っていてコンパチ仕様のよう。

 早速電源入れてみましょう。
 ・電源トランス入力を105Vに設定(1と2端子)
 ・整流管抜いて通電してパイロットランプとヒーターの点灯を確認。バイアス用のセレン整流器出力電圧を測定(-135V)
 ・整流管挿して(できればスライダック使って恐る恐る電圧を上げていく)通電して終段6L6のバイアス電圧の測定(-30V、しかし実測値は+6Vだったのでとりあえずすぐにスイッチを切る)。バイアス調整ボリューム(シャーシ表面に軸が出ている)を調整してバイアス電圧を-30Vに。
 ・各部の電圧測定して回路図と照らし合わせる。カップリングコンデンサーはオレンジドロップに変更されていた。前段はオリジナルのままでいずれも無事だった。

 ほぼ規定値に収まっています。この状態でスピーカーと入力を繋いで音出ししてみる。スピーカーは



 DIATONEのモニタースピーカーP-62F(有名なP-610の先祖)を内蔵した見るからにモニター然とした骨董。通常のアンプで鳴らすと高域が寂しい感じだがALTEC 1520Tでは不思議にあまり不満を感じない。縦横揃っていてしっかりとコントロールされた音でこれは業務用アンプ特有な音味。若干ハムが載るが電源コンデンサーのメンテはしていないのでこれは致し方ないか。3本の煙突のようなブロックコンデンサーはMallory製の多分オリジナルだが発熱はないのでいきなりの爆発はなさそう(?)。
 雑誌の試聴記などを読んでも概ね好意的な意見が多い。シンプルな回路なのでメンテも易しいと思われ堅牢な構造と相まって長く使えるビンテージアンプだと思います。数年後に発表される1560番台のアンプとは使用目的が異なるが高音質を目指していて遥かに物量を投入したアンプだということは素人目にもわかるし音の安定度にも現れているかもしれない。逆に1560番台のアンプから高音質を取り出すには真空管の選別やバランスの取り方などで結構なテクニックが必要かと思います。機会があれば触れてみたいが今の所縁がありません。


 お読みいただきありがとうございました。


B&O Beogram4002 について

2017-07-23 00:36:09 | B&O

 北欧デンマークのB&O社はハイセンスなデザインのオーディオ装置や電話などで有名。Beogram4002などの一連のアナログプレーヤーは同社を代表する製品(だと思う)。なんたってMoMA(ニューヨーク近代美術館)でも永久展示されている。デザインしたJacon Jensen氏はインダストリアルデザイナーの第一人者としてデンマークのみならず世界的に著名な方でMoMAには19点が展示されている。2015年に亡くなられたが同氏の名前を冠した会社は現在でも製品を提供している。

 Beogram4002は1976年に発売された。当時の価格は25万円。シリーズはBeogram4000から始まっており同名な製品でもロットNo,によって大幅な変更がある。

     (出典 https://www.hifi-wiki.de/index.php/Bang_%26_Olufsen_Beogram_4004)


 フラットなデッキと面一のターンテーブル、操作ボタンもフラットで7つのボタンは一枚の金属板にスリットを入れただけの構造。電源スイッチすら無くスタートボタンを押すだけでレコードを検知して針が降りる。アームはリニアトラッキングで操作は全て操作ボタンで行い手を触れることはない(手動では操作できない)。曲とばしもできるが降りるところは目視で行う。オートリターン付き。アームの動きはとてもエレガントでこのプレーヤーの存在感にふさわしい挙動を示す。出力にはミューティングがあって不快なノイズが入らないようになっている。カートリッジ一般的ではない形状だが規格品。回転は33と45回転の2スピードで±3%微調整できる。ストロボは付いていない。

 拙宅のBeogram4002は10年以上前から居るのだが入手当時は軽整備(ベルト交換など)で問題なく稼働していた。今回久しぶりに通電したがやはり問題発生。ターンテーブルが定速で回転せず、また振動もある。モーターはDCシンクロナスモーターで原理は不明。回路も「Beogram4002の回路図」とはなぜか異なっていて同じモデルだが途中で大幅な回路変更があった様子。それらしい資料をなんとかかき集めて検討してみる。
 調べてみるとBeogram4000から6000には製品の名称以外にType Numberという数字で識別されている。
    Beogram 4000 - 5215
    BeoGram 4002 - 5501 , 5503 , 5504 , 5511 , 5513 , 5514 , 5521 , 5523 , 5524
    BeoGram 4004 - 5525 , 5526 , 5527 
    BeoGram 6000 – 5502 , 5505 , 5511 , 5515

 中でもBeogram4002は製造年月が長かったのかバリエーションが多い。Type Numberはプレーヤーの裏のシールに記載されていて拙宅のは「5523」なので後期の製品のよう。

 
 これはwebから借用したターンテーブル駆動モーター周辺の回路図

 現在の症状を再度確認すると
 ・モーターの回転が遅くトルクもなく動きもスムースではない。
 ・モーターが回転する時はイルミネーションが暗くなる。リニアトラッキングの動きも乱れる(レコードを検出しないなど)
 ・基板が非常に発熱する。
 ・モーターへのコネクターを外すとイルミネーション、アームの動き、発熱などは正常(と思われる)になる。

 これらから考えられるのはモーターに通電している時に大きな電流が流れているらしいということ。  回路図を確認すると定電圧回路の後でICとモーターに給電されている。モーターは直流モーターだが見慣れないのがくっついている。
 モーターを分解してみると
 
 整流子に何やらくっついていている。

 ブラシの固定してあるプレートにはコイルが、、。ということはモーターの回転数を検出する機能のよう。ここで検出した信号はICに入って回転数を制御するためのデータとなる。ICの中身は解説の回路図にあるが正直よくわからないのでこのICが故障していないのを祈るのみ。もし故障していたら覚悟を決めて代替え品を探すか別部品で回路を組まなければならない。これは大変そうだ。  モーター内部を確認、掃除してまた組み直す(後で分かったことだが内部に問題があった)

 やはり分解掃除くらいでは症状は改善せずそのうち定電圧Trに接続してあったセメント抵抗は発熱のためハンダが溶けて脱落(!)という凄いことになった。これではTrも完全にお陀仏かと思われたがなんとか無事のよう。モーターを外すと電流は正常になるしもし制御ICが短絡していたらこちらもひどい発熱になるはずだがその気配もない。。となるとやはり原因はモーターそのものの可能性が高い。そこでまた分解して3極各コイルのDCRを測ると、、なんと(!)1ヶ所にショートあり。しかし目視ではわからず。原因は整流子に固定してあった回転数検出磁石のステーがショートしていた、というものでした。磁石部分はヒシチューブでカバーされていたのでその中でのショートに気づかなかった。

 なぜショートしたのかはわからないが製造時のゴミが紛れていた可能性もある。何れにしても珍しい原因かと思う。  原因の探求でYoutubeの動画が非常に役に立った。「Beolover」で検索できるがやはり困った人と達人は存在する。アップされた方ありがとうございました。  電解コンデンサー、タンタルコンデンサーなどは全て交換すべきだが今回は短絡を疑ったC11を交換したのみとした。駆動モーターでてこずったくらいだからリニアトラッキングの不具合は全く手が出ない可能性が高い。不幸にしてそういう状況に陥ったらまたお勉強しましよう。
 しばらくお行儀の悪い格好(ランジェリー姿)で聴いてみた。

 替えのベルトはなぜかポルトガルから入手した。問題なく稼働します。とにかく良かった。

 コンパクトな筐体に凝縮された機能は細部にわたってとても洗練されていて感心することが多かった。一例を挙げるとダストカバーを外した状態でも自動的に穴を塞いで外観を損なわない工夫がある。木枠を前方にスライドさせることによってボード上の3枚の金属パネルは工具を使わなくても取り外すことができる。極薄のプレーヤーだがリニアトラッキング機能を含むプラッター部分は金属サスペンションで吊り下げられていてハウリング対策が図られている。などデザイナーの意図する造形と機能の両立が高い次元で達成されていることには驚くばかり。こういう製品のことを「本当の一流品」と呼ぶのだと思う。音も悪いわけがない(いや絶対そうだ)。


 昨日(2017年7月23日)SPITZの広島公演二日目に行ってきました。

 広島風お好み焼き食べて原爆ドームと平和資料館見学してコンサート関連グッズ買ってのフルコース。30周年とのことだがリアルタイムのファンとしてはやはり灌漑深いものがあります。でも初参加 、、やはり上手い。ほとんど完璧な演奏と草野くんの歌唱。コンピュータなんて必要ない生の音楽を堪能しました。ライブ映像はよく見るが会場に足を運ぶことで得るものは大きい。近年はネット配信の影響でCDはあまり売れなくなっているらしい一方でライブは盛況、チケットの高値転売が問題になっているくらいに。観客の満足度は非常に高いのはよくわかるようなコンサートだった。

 スピッツは過去の16タイトルをアナログ盤で限定発売している(早々に売り切れですでにプレミアがついてます)。アナログレコードの復活が其処彼処で言われているがイマイチ信じ難かったが初めて実感した。


 
 こんなに美しく楽しいレコードプレーヤーは無いと思う。レコード鑑賞に何の不足もないしEMTに張り合おうなどと思う必要もない。
 唯一の欠点は「故障時の対応をどうするか」ということ。B&Oではとうにサービスは終了しているが海外では専門の修理業者もいるらしいから方法はある(修理費用はわかりません)。
 中古市場でも価格はこなれているから狙い目かもしれない。最悪不動になってもオブジェとしての存在価値はある(冗談です)。アナログプレーヤーらしく複雑な動きをアナログで制御しているし(意味不明)。

 久しぶりにメンテしての感想は
 ・外観が命の製品なのでダストカバー、パネルの着脱と保管は細心の注意で傷つけないようにしたい。
 ・モーターは分解は容易だがとてもデリケートなので取扱注意。ここが再生不良だとかなり厳しい。
 ・作業するときはコンセントを抜く。常時通電されています。長期使用しないときは同様に。




 お読みいただきありがとうございました。


 おまけ
 昭和のオーブントースター使ってましてほとんど毎日稼働している。そろそろ買い替えようかと調べてみるとこちらも電子レンジと同様に2極化している。高い方はスチーム機能があってトーストが美味しく焼ける(ここも電子レンジと一緒だ)安いのは昭和の、、とほとんど変わらない様子。ちょっと迷ったが今使ってるのを掃除して継続使用することにした。とにかく汚い、、というかトースター全体が焦げているイメージ(写真なし)
 分解してマイペット原液振りかけてその後漬け込んで、、深夜にお風呂場で体と一緒に洗った(ウソ)。

 再度組み立てて完了。

 ちょっとつや消し仕様になってしまって残念だが何たって「中が見える」ようになった!。 これには家族もびっくりです。
 旧車レストアに飽きたらこんなんも有りですね。でも作業時間は数時間かかった上に洗剤やタワシを買い込んだので新しく買ったほうが安いかも。。