Western Electric社のシアターアンプとして1934年に発表されたWEでは最も著名なアンプ。出力は15Wでそれ以前のアンプと比較して集積化、小型高性能化が飛躍的に進んだ。1937年までの間に大量に生産された。
『86』は「86A」「86B」「86C」「86E」の4種類だがバリエーション(主に部品の変更)が数種類あり各々に名前が付いている。また「86C」は後発で「86A」と代わって製造された。「86A」を「KS7488」キャビネットに組み込んだのがシアター用「1086A」でトータルゲインは99dB、キャビネット下部には前置アンプのフィルターが内蔵される。「86B」を「KS7520」に収めたのが「1086B」でレコーディング、PA、テレフォンラインのリピーター用。「86E」は大幅に構造が異なる異形らしい(一度オークションで見た事があります)。「86A」のアウトプットトランスは166A、「86B」は166B、「86C」は159B。166Bはリピーター用途ということもあり500Ω出力もある。インターステージトランスはパーマロイコアの264Cをクラーフ接続。電源トランスは容量と周波数対応の向上のため途中変更されている。インプットトランス261Bはパーマロイ製シールドが覆っている。
1086A
いろいろと手が入っています。まずアウトプットトランスがピアレスに変更されていてトランスの交換のためシャーシの穴は拡大されている。また電解コンデンサーがシャーシ内に増設され電源トランスは最終型のD96970が搭載されている。
CDプレーヤー出力(600Ω)をアッテネータ介して入力してJBL L75 メヌエット(改)を繋いで聴いてみますと、、
ちょっとハム音がありますが特に大きな問題なく出力されます。音は「小さなメヌエットがフロアスピーカーになったみたい」とはオーバーだがこういった表現が使われそうな物量を投入したと思わせるいい音だと思います。所謂「トーキーサウンド」とは異なる標準的な感じの音味。
懐かしい「高中正義 SUPER LIVE!」、「越路吹雪」姉さんを片ch鳴らすと普段は興味を示さない奥さんも聴き入っている様子。一言「ラッパがいいわね」ですと。たしかに!
部品交換の影響で内部配線が変更されているがどこがどう変更になったかを探るためにwebで集めておいた画像と比較検討した。
写真で比較すると色々と気になる違いがあります。アウトプットトランスの変更、コンデンサーの追加以外でも
・内蔵電解コンデンサー(8μF)はもともとWE91などと同じロックナットタイプだがバンド固定に変更されている。これに伴ってシャーシ加工がなされている。容量は8μFで変わらない。この変更は随分古いもの。
・謎の大きなホーロー複合抵抗がある。取り付け金具はエポキシ接着されている。
・基板の古い抵抗器はほとんどA&Bに交換されている。
・増設されたコンデンサー(フィルム?)は10μFx3本だが1本をチョーク前に、2本パラを後に接続している。(チョークインプットからコンデンサーインプットになっている)
・シャーシ上に立てられたコンデンサーも変更、シャーシ加工されている。
などアンプの長い歴史で幾度かのメインテナンスが入っていると思われます。大胆なシャーシ加工もされていますのでプロの手で行われた気がする。できるだけ本来の姿に戻したいとは思いますがどこから手をつけましょうか??
初段のシールドケースはスペシャルなシールド処理がされているらしい。
141Aコンデンサ(1μF)X3 0.4μFX1
ロックナットの電解コンデンサーには減圧弁が付いていて噴き出していたWE100Dと同じ構造。紙筒を被っているのはシリーズ接続でボディに電位を持っていて感電防止か。