1950年代から始まったテレビ放送の歴史だがブラウン管カラーテレビの普及は1970年頃からで当時は非常に高価だった。小学生の頃友人宅で初めてカラー放送を見た時は「なんてボケた画面だろう」と思ってあまり魅力を感じなかったが今になって思うと多分負け惜しみだったと思う。「カラーテレビは20万円を切ったら購入する」と言っていた叔母さんはSONYのトリニトロンが19万円台で発売されたのを本当に買っていた。カラーテレビは驚くべき普及率であっという間に白黒テレビを駆逐したがその後はブラウン管もプラズマテレビも絶滅し現在に至る。
カラーテレビは真空管時代からあって実家にあった大型の家具調カラーテレビは故障続きだった事は以前書いた。ポータブルタイプの真空管カラーテレビが存在したかは不明でちょっと思い浮かばない。IC化以前のカラーテレビは白黒テレビと比べて部品点数が多く素人にとってもハードルが高そうに思う。ブラウン管カラーテレビはどうしても大型になってしまうので小型で魅力的な形状の製品は少ないと感じていた。その中でもNationalのTH8-V 8inchシリーズは以前から気になっていた。
その1
入手した1974年製造のTH8-V5はラッキーにも映像と音声は出力した。しかしチャンネルの接点が不安定で手を離すと映らなくなる。全体に薄黒い感じでボディのネジは無く修理を試みて開けてそのままだったのかもしれない。
初代Macintoshに似ていると思うがあちらは10年後の1984年発表。もっと新しいカラークラシックの方が似ているかも。
がんばって分解するとやっぱりこうなる。。元に戻るのだろうか?ドンガラになったケースを洗剤で丸洗いして、基板など中身は埃を払って無水アルコールで清拭する。高電圧のためか白黒テレビと比べて黒い粉が大量に付着していてなかなか取れない。掃除後に組み付けていくが(以下備忘録)
コネクターを外してまずフロントパネルにブラウン管と周辺パーツを取り付ける。
次にチューナーボックスとボリュームブロックの取り付けだがその前にチューナーの接点掃除を行なっておく。
付着したカーボンを拭き取って無水アルコールで清拭し接点グリスを塗ってからフロントパネルに取り付ける。
メインボードは下2本の赤ネジでヒンジ状に取り付けられる(しかし十分には開かないが)。あとはボードを立体的に起こしてコネクター、ねじ止めなど全てのケーブルを接続して完了。
試運転して調整。カラーテレビの調整方法は全くわからないがブラウン管後部の左右にあるこのハンドルを回すと3色それぞれの画像が動くのでずれが無いように調節した。
画像は安定して思ったより鮮明。ブラウン管テレビを見ていた頃の記憶が蘇る。
Macintosh Plusと並べてみるとTH8-V5の方が一回り小さい。久しぶりのMacは結構大きかった!
コンパクトで愛らしい形態だと思う。ハンドルや角の処理などは鋭角的な要素を無くして安全に配慮した子供向け玩具を連想させて原色のボディと相まって余計にそう感じる。フロントの4個のツマミは最初はちょっと煩いかなと思ったがちょこんとしてこれもよろしい。
その2
外観は良好で画像と音声は出力するが白黒テレビ状態で色がつかない。
内部は埃がいっぱいだが製造して半世紀近いのだから当たり前。分解も随分慣れたのだが全バラせずに掃除を行う。ボディは洗剤で拭いて、子供さんが貼ったと思われるシール剥がしに一番時間がかかった。
色がつかないのは当時はまだ残っていた白黒放送時や信号が弱い時にカラー成分をカットしてわざとモノクロにして見やすくするKiller回路の調整で対処できた。資料によると白黒放送は1970年代のNHK教育テレビ(現在のEテレ)の一部が最後だったらしい。基板のスライドスイッチを操作すると3色の横線になり一致するように調整するためのものかもしれないがこの接触不良も不安定の原因になっていた。
TH8-V5の回路図は手に入らず同じシリーズの製品の回路図は入手していた。これを機会に学習しようと思っていたが幸いにも故障ではないようで必要に迫られたら、、にします。
その3
アンテナは折れて通電せず。チェックするとACラインの2Aヒューズ1本が切れている。ホームセンターには残念ながら2Aは無くて3Aを購入。これで通電すると画は現れるが安定には程遠い。音声も一応出るが切れ切れで弄っているうちに突然沈黙してしまった。シングルTr駆動のOPT付き回路で出力TrはclassAのためかかなり発熱する。FM検波とAF増幅はICで行っているがこのICを壊してしまったらしい。NationalのICで当時のSANYO製品にも使われている。不注意で高電圧がICにかかってしまったのが破損の原因で幸い入手できそうなので早速手配した。
その間にドンガラにしてケースを洗剤で丸洗いし基板など内部は掃除した。再度組み立てて画像の不安定の原因を探るがまだわからない。AC100Vの直接整流後の電圧は問題なさそうに見える。中電圧はFBTでACを発生させて半波整流している。
届いたICは当時ものの新品でこんな真空パッケージに入っていて早速取り替えた。半田吸引コテはICの交換には特に便利で作業は快適。これでめでたく音声再生が復活した。
基板を触ると画面が白くなってぼやける。叩き回って原因を探すがなかなか特定できない。そこで以前聞いたプロからのアドバイスで「不調箇所付近の半田のやりかえ(というより盛り直し)」を行ったところ安定した。基板の不良が目視で確認できない時は有効ではありそう。しかし映像はまだ不鮮明で左右の歪みがあり左画面が縦に暗い部分がある。調整不足かそれとも部品の劣化なのか不明だが回路図の入手を含めて今後の課題として一旦〆にしたい。破損のロッドアンテナは他から移植して(トップがオレンジの樹脂)対処した。
3台並ぶとほとんどダルマさん、もしくは湯婆婆の部屋にいる頭だけの三怪人に見える。。
お読みいただきありがとうございました。
雑記1
ディスカバー・クイーン
(NHK HPより)
NHK FMの日曜夜21時からの1時間番組。1年間にわたってあたかも大河ドラマのように一つのアーティストを深掘りする内容で一昨年のマイケルジャクソン、昨年のビートルズに続いてのプログラム。今回のMCはサンプラザ中野くんで2022年4月3日で1年間の放送は終了した。番組の登場人物はいずれもこのアーティストの大ファンを公言している方々、それに加えて歌詞や楽曲の専門家による深掘りした解説、コピーバンド選手権など非常に充実した構成で毎週の放送が楽しみだった。前作のビートルズがとても良かったのでさすがにクイーンは見劣りしてしまうのではないかという危惧は大きく外れて劇場公開された映画以降の新しいファンや以前からのコアなファンにも支えられて大変な盛り上がりをみせた。
クイーン正式結成50年(!)フレディ没後30年という節目の年の番組だったが古くからのファンの(と思っていた)自分にとっても新たな発見の連続だった。初期の作品には大きな衝撃を受けたが中期から後期にかけてはさほど深く聴き込んではいなかった事に気づいてあらためてアルバム入手の手配をした次第。絶版の重量版LPレコードを数枚何とか入手できたのでこれから楽しみたい。MCのサンプラザ中野くんはじめ西脇さんやパッパラーさんの1年間の御奮闘には心から感謝申し上げます。