Decca Decolaがお嫁入り

やっとこさ入手したDecca Decolaの整備記録

National PanaColor8(TH8-V5) について

2022-03-31 02:17:33 | テレビ

 1950年代から始まったテレビ放送の歴史だがブラウン管カラーテレビの普及は1970年頃からで当時は非常に高価だった。小学生の頃友人宅で初めてカラー放送を見た時は「なんてボケた画面だろう」と思ってあまり魅力を感じなかったが今になって思うと多分負け惜しみだったと思う。「カラーテレビは20万円を切ったら購入する」と言っていた叔母さんはSONYのトリニトロンが19万円台で発売されたのを本当に買っていた。カラーテレビは驚くべき普及率であっという間に白黒テレビを駆逐したがその後はブラウン管もプラズマテレビも絶滅し現在に至る。

 カラーテレビは真空管時代からあって実家にあった大型の家具調カラーテレビは故障続きだった事は以前書いた。ポータブルタイプの真空管カラーテレビが存在したかは不明でちょっと思い浮かばない。IC化以前のカラーテレビは白黒テレビと比べて部品点数が多く素人にとってもハードルが高そうに思う。ブラウン管カラーテレビはどうしても大型になってしまうので小型で魅力的な形状の製品は少ないと感じていた。その中でもNationalのTH8-V 8inchシリーズは以前から気になっていた。

 

その1

 入手した1974年製造のTH8-V5はラッキーにも映像と音声は出力した。しかしチャンネルの接点が不安定で手を離すと映らなくなる。全体に薄黒い感じでボディのネジは無く修理を試みて開けてそのままだったのかもしれない。

 

 初代Macintoshに似ていると思うがあちらは10年後の1984年発表。もっと新しいカラークラシックの方が似ているかも。

 

    

がんばって分解するとやっぱりこうなる。。元に戻るのだろうか?ドンガラになったケースを洗剤で丸洗いして、基板など中身は埃を払って無水アルコールで清拭する。高電圧のためか白黒テレビと比べて黒い粉が大量に付着していてなかなか取れない。掃除後に組み付けていくが(以下備忘録)

 コネクターを外してまずフロントパネルにブラウン管と周辺パーツを取り付ける。

 

 次にチューナーボックスとボリュームブロックの取り付けだがその前にチューナーの接点掃除を行なっておく。

 

付着したカーボンを拭き取って無水アルコールで清拭し接点グリスを塗ってからフロントパネルに取り付ける。

メインボードは下2本の赤ネジでヒンジ状に取り付けられる(しかし十分には開かないが)。あとはボードを立体的に起こしてコネクター、ねじ止めなど全てのケーブルを接続して完了。

 試運転して調整。カラーテレビの調整方法は全くわからないがブラウン管後部の左右にあるこのハンドルを回すと3色それぞれの画像が動くのでずれが無いように調節した。

  

 画像は安定して思ったより鮮明。ブラウン管テレビを見ていた頃の記憶が蘇る。

     

Macintosh Plusと並べてみるとTH8-V5の方が一回り小さい。久しぶりのMacは結構大きかった!

 コンパクトで愛らしい形態だと思う。ハンドルや角の処理などは鋭角的な要素を無くして安全に配慮した子供向け玩具を連想させて原色のボディと相まって余計にそう感じる。フロントの4個のツマミは最初はちょっと煩いかなと思ったがちょこんとしてこれもよろしい。

 

その2

 外観は良好で画像と音声は出力するが白黒テレビ状態で色がつかない。

 

内部は埃がいっぱいだが製造して半世紀近いのだから当たり前。分解も随分慣れたのだが全バラせずに掃除を行う。ボディは洗剤で拭いて、子供さんが貼ったと思われるシール剥がしに一番時間がかかった。

 

 

 色がつかないのは当時はまだ残っていた白黒放送時や信号が弱い時にカラー成分をカットしてわざとモノクロにして見やすくするKiller回路の調整で対処できた。資料によると白黒放送は1970年代のNHK教育テレビ(現在のEテレ)の一部が最後だったらしい。基板のスライドスイッチを操作すると3色の横線になり一致するように調整するためのものかもしれないがこの接触不良も不安定の原因になっていた。

 

TH8-V5の回路図は手に入らず同じシリーズの製品の回路図は入手していた。これを機会に学習しようと思っていたが幸いにも故障ではないようで必要に迫られたら、、にします。

 

その3

 アンテナは折れて通電せず。チェックするとACラインの2Aヒューズ1本が切れている。ホームセンターには残念ながら2Aは無くて3Aを購入。これで通電すると画は現れるが安定には程遠い。音声も一応出るが切れ切れで弄っているうちに突然沈黙してしまった。シングルTr駆動のOPT付き回路で出力TrはclassAのためかかなり発熱する。FM検波とAF増幅はICで行っているがこのICを壊してしまったらしい。NationalのICで当時のSANYO製品にも使われている。不注意で高電圧がICにかかってしまったのが破損の原因で幸い入手できそうなので早速手配した。

 その間にドンガラにしてケースを洗剤で丸洗いし基板など内部は掃除した。再度組み立てて画像の不安定の原因を探るがまだわからない。AC100Vの直接整流後の電圧は問題なさそうに見える。中電圧はFBTでACを発生させて半波整流している。

  

 届いたICは当時ものの新品でこんな真空パッケージに入っていて早速取り替えた。半田吸引コテはICの交換には特に便利で作業は快適。これでめでたく音声再生が復活した。

 基板を触ると画面が白くなってぼやける。叩き回って原因を探すがなかなか特定できない。そこで以前聞いたプロからのアドバイスで「不調箇所付近の半田のやりかえ(というより盛り直し)」を行ったところ安定した。基板の不良が目視で確認できない時は有効ではありそう。しかし映像はまだ不鮮明で左右の歪みがあり左画面が縦に暗い部分がある。調整不足かそれとも部品の劣化なのか不明だが回路図の入手を含めて今後の課題として一旦〆にしたい。破損のロッドアンテナは他から移植して(トップがオレンジの樹脂)対処した。

  

 3台並ぶとほとんどダルマさん、もしくは湯婆婆の部屋にいる頭だけの三怪人に見える。。

 

 

 

 

 

 

 お読みいただきありがとうございました。

 

 

雑記1

 ディスカバー・クイーン

 (NHK HPより)

 NHK FMの日曜夜21時からの1時間番組。1年間にわたってあたかも大河ドラマのように一つのアーティストを深掘りする内容で一昨年のマイケルジャクソン、昨年のビートルズに続いてのプログラム。今回のMCはサンプラザ中野くんで2022年4月3日で1年間の放送は終了した。番組の登場人物はいずれもこのアーティストの大ファンを公言している方々、それに加えて歌詞や楽曲の専門家による深掘りした解説、コピーバンド選手権など非常に充実した構成で毎週の放送が楽しみだった。前作のビートルズがとても良かったのでさすがにクイーンは見劣りしてしまうのではないかという危惧は大きく外れて劇場公開された映画以降の新しいファンや以前からのコアなファンにも支えられて大変な盛り上がりをみせた。

 クイーン正式結成50年(!)フレディ没後30年という節目の年の番組だったが古くからのファンの(と思っていた)自分にとっても新たな発見の連続だった。初期の作品には大きな衝撃を受けたが中期から後期にかけてはさほど深く聴き込んではいなかった事に気づいてあらためてアルバム入手の手配をした次第。絶版の重量版LPレコードを数枚何とか入手できたのでこれから楽しみたい。MCのサンプラザ中野くんはじめ西脇さんやパッパラーさんの1年間の御奮闘には心から感謝申し上げます。

 

 

 

 


BMW X1 E84 フロントブレーキパッド交換

2022-03-28 19:31:30 | BMW E84 X1

 突然ブレーキのアラートが点灯した。購入して約3ヶ月ついにやって来ました。このアラートはサイドブレーキランプとブレーキフルードの液面低下、ブレーキパッドの摩耗あたりらしい。ブレーキフルードは大丈夫、ジャッキアップのサインも出たのでとりあえずタイヤをはずして観察してみる。

 

やはりフロントブレーキパッドの摩滅のよう。ここでディーラーもしくは修理工場に持ち込むか自分で交換するか考える。。交換がうまく行っても出てしまったアラートは消去できるのか?ちょっと調べてみると特に消去のためのツールも必要なさそうなので自分で行うことにした。取り換えるのはフロントブレーキパッドと摩耗センサー。この2点はセットで売っている事が多くオークションでも色々な種類の非純正品が並んでいる。型式を確認して適当なものを落札しようとしたが商品説明に適合の確認サービスがあって落札前に限るとある。確認は17桁の車体番号が必要で早速問い合わせるとこの製品では摩耗センサーが非適合との返事だった。そして別の適合品の紹介があって(この手続きを踏めばもし送られて来たものが非適合時でも交換が可能)早速注文した。

同じ車種でも細かな違いがあり面倒がらずに確認をすべきと心した。写真のセット価格は激安の7,000円程度。

 再びジャッキアップして交換作業 交換に必要な工具は7mmのヘキサゴンだけ。これは140円でホームセンターで買って来た。本当はレンチをかけれるのが欲しかったが扱っていなかった。

 

キャリパーはボルト2本で固定されている。ジャッキアップして作業し易くする為に蛇を切って内側にある樹脂キャップを外して回す。

 

 ボルト2本は同じ長さ。ただしボルトを外しただけではキャリパーはなかなか外れてくれない。これはブレーキディスクに段差ができていてパッドが引っかかっているからで(いずれディスクも交換せねば)なんとかこじって外す。新旧のパッドを並べるとあまりの厚みの違いにやっぱり驚く。

 

 この厚い新品パッドを入れるにはキャリパーのピストンを限界まで押し戻す必要がある。専用の工具もあるのだが買いに行くのも面倒だったので何とか力ずくで押し戻す。その際にピストン側のパッドと外側のパッドを2枚重ねて穴を利用したテコの要領で押し込むとうまくいった。ピストンを押し戻すとブレーキフルードがリザーブタンクから溢れることがあるのでオイル差しを買って来てスポイトのように吸い取って液面を下げてから作業した。

新しいパッドは#60のヤスリで面取りして収まるところにはグリス(耐熱グリスがいいらしいが入手できなかったので少量だけ)を塗っておいた。ブレーキダストの掃除が大変。

 摩耗センサーはパッドが薄くなると自らすり減ってアラートを出すので再使用はできない。このセンサーは左前1ヶ所だけにある。パッドを取り付けたあとに新しい摩耗センサーをパッドの溝に押し込むのだがこれがなかなか固い。挿入に失敗して破損した、、という記事もあったので慎重に押し込みたいがどうしても入っていかない。仕方がないので小型のスパナで保護しながら慎重に叩いて押し込んでうまくいった。

 

 

 古いセンサーコードは一気に外さずにガイドとして新しいコードを固定する所1ヶ所づつ置き換えていくと具合が良い。コネクターボックスは巻上げられた土埃が多く詰まっているので掃除。

 あとはアラートのリセットをwebの情報通り行って完了した。作業時間は2時間ほど。キャリパー周辺はダストが溜まって非常に汚れていて掃除に時間がかかる。先週洗って作業に備えていたのだがそれでも汚くてツナギとグローブは必需。そしてこれが一番重要なことだがブレーキは命に関わる重要な機構ということを常に考えて作業する必要がある。不明なことがあれば潔く中断しプロに委ねようと思う。情報は多いので素人でも何とかなりそうな気がするがいざ作業にかかるとなかなか思うように進まず試行錯誤が多い。プロは総合的に判断してくれるのでブレーキディスクが摩耗していれば当然交換を勧められるし純正部品使用で作業工賃もかかるからディーラーの作業は高額になるのは当然。しかし安心を買ったと考えればこれも全くアリだと思うし事実今回も随分迷った。自分で作業した代償としてしばらくはスピードを出さずに様子を見ながら慎重に運転しようと思うし毎回のチェックは欠かせない。ただDIYすることでクルマに対してより愛着が湧く喜びは感じる事ができた。

 

 

 

お読みいただきありがとうございました。

後日談1

 交換後1ヶ月ほど著変無く始業前後点検も疎かになりつつあった頃右前輪あたりの異音に気づいた。走行時僅かに「サッサッサッ」と聞こる。そのまましばらく走っているとだんだん大きくなってきてなんとか家まで辿り着いたがいよいよ素人整備のツケが来たか!と暗い気分になった。一夜明けて翌朝ジャッキアップしようとタイヤレンチを掛けると、、タイヤナットが緩んでいる!それもほとんどの部位で。。これには安堵してから青くなった。事故を起こさなくて良かった。。反対側をチェックするとわずかに増し締めできるが後輪2輪は全く動かないほど締め付けている。もちろんトルクレンチで確認すべきだが一般人は目一杯締めてOKがせいぜい。何事もなくて良かったが発生するリスクの責任は全て自分にある。今後心してかかります。


CHANNEL MASTER について

2022-03-23 22:00:25 | テレビ

 記録的な円安で海外からの輸入は割高になっている。この製品は以前からebayに出品されていたが入札がないままに次第に開始価格が下げられていた。円安が進む前に思い切って入札したらそのまま落札、先日無事に送られてきた。

 

 今まで見たことがない製品だが明らかに「SONY 8-301」に似ている。ひょっとすると日本製品か?と思っていたがやはりそのようで使われているパーツにはSANYO,TOSHIBAの名前が入ったものが多く見られる。前面のフードには「CHANNEL MASTER」とあるがその他ラベルなどはない。裏面にあったと思われるバッテリーパックは欠品だがこの辺りもよく似ているし電源コードにいたってはSONYと同形状。

 外観は前述の欠品や一部ツマミの破損があるものの非常に良好であまり稼働されていなかった様子。全金属製でとても堅牢だが重量は非常に重い。分解は背面のネジ数本と前面カバー止めのネジ1本を外して前面へ引き出す。

             

  

 全体に民生品とは思えないほどしっかりと作り込まれていて真空管ポータブルテレビのような構造でとても堅牢な造り。大量生産は難しかっただろうと思わせた。高圧整流管は使われておらずすべてソリッドステートなところをみるとSONY 8-301や一連のマイクロテレビよりあたらしい時代の製品かもしれないがICも使われていない。予算を度外視して技術者が思う存分自由に作り上げたようなイメージ。

 早速DC12Vを直接給電すると画面は横一線のみで音声はでない。SANYO製と書いてある楕円スピーカーは断線していた。同径のボイスコイルを移植できないかと考えたが諦めて小型のスピーカーに取り替えた。出力トランス付きのPP回路で7Ωなので何でも良さそうだがフェライトマグネットがパネルに当たるので大きさには制約がある。

 DC12Vを直接通電していたがここでAC117Vにして整流回路の様子を伺う。SONYのマイクロテレビと同規格の電源コネクターなのでそのまま接続してスライダックで徐々に昇圧したが反応がない。ここで電源の切り替えロータリースイッチが切り替わってないことに気づいて合わせると瞬間にヒューズが飛んだ。やはり電解コンデンサーが短絡状態なのか?と調べるが構造が複雑でなかなか分解できない。複数の電源に対応していたり充電機能がある製品の解析は時間がかかるし正しい分解方法があるのだろうが不明。ところが電源コードのコネクターからのリード線をみるとDCは±の識別あり、ACは識別なしのはず。突起の位置まで共通のコネクターだったがSONYのコードと位置が逆だった。切れたヒューズ取り替えて改めて通電すると無事整流された。

 

中央が取り替えたミゼット管ヒューズだが両サイドは太さは通常と同じで長さが短いという見たことがない規格。あまり良くないと思うがホルダーの調整でミゼットヒューズを使う。

 電源が整って改めて全体の構成を観察する。後ろから見ると5本の大きなブロック型電解コンデンサーが並んでいる。縦3本はDC12Vの平滑用で2本間には大型のチョークコイルが入っている。チョークコイルの隣は電源トランスでしっかり放熱固定したシリコンダイオードで整流。上段にある一番左のロータリースイッチはAC,DC,CH(チャージ),FL(不明)の切り替えで全体に物量を投入した充実の電源。左下のケースはVHFチューナー、左側面の基板はVIF基板、上面の基板はSIFとAF回路、右角のケースの中にFBTと高圧回路基板がありこの基板が下面の偏向基板と結合されて大きなブロックになっている。各基板への配線は直接ではなく9ピンの端子を介しているのでボディ側の端子板を残して基板を引き出せることがわかった。

 高圧+偏向基板を引き出して水平、垂直偏向回路を確認する。

  

垂直偏向回路と思われる出力Tr2SB122から60Hzの波形は確認できず遡ってみる。まず2SB122のbに低周波SGから60Hzを加えてみると(修理書ではトランスのヒーター回路からコンデンサー介して繋げ!などと書いてある)

無事垂直方向に広がったのでやはりこのあたりが垂直偏向回路ということと2SB122は無事ということがわかる。ついでに隣のドライバーと思われるTr(放熱器が巻かれているので銘柄不明)のbに加えても表示されるのでここも大丈夫そう。その前段の発振部の波形を探るがやはり発振していない様子。ブロッキング発振回路でトランスと2SB94で構成されているがトランスの断線はなさそうなのでこのTrが怪しいか?

 ところがはずしてチェックすると特に問題なさそう。それよりもTrの接続が解せない。。過去に修理されてないだろうか?試しに接続を変えて再装着したがやはり発振しない。電圧も??なのでこれは決心してパターンの写真を表示した画面にトレーシングペーパーを貼り付けてパターンを写して部品を描き込んでみよう。

これで回路図を描いてみるが、、やっぱりよくわからない。当時の白黒テレビの回路図で似ていると思われるものを漁ってみると

 

これは1968年のナショナルのテレビだが発振回路の構成はよく似ている。ブロッキングトランスとTrの接続を見ると勝手に「おかしい」と判断して変更していた接続は間違っているらしい。破損していたゲルマダイオードと周辺のコンデンサーをできるだけ交換して通電するとめでたく波形が現れて発振が確認できた。ただし波形には結構ヒゲがあってなお問題がありそう。これでアンテナからRF信号を入れると

 

 不鮮明だがようやく画像と音声が現れた。

 輸送中と思われるツマミのカケラをレジンで修復、タッチアップして作業は終了した。

      

SONY 8-301と並べてみると

  

 似ているがCHANNEL MASTERの方がちょっと大きい。内部の構成は全く異なっている。両者ともブラウン管のフードが付いているのは屋外での使用を考慮してだと思うがこちらはブラウン管を保護する役目もある。

 最後まで製造メーカーについてはわからなかったが使われているパーツからやはりSANYO(三洋電機)の可能性が高いと思う。検査工程の担当者のハンコが押されていたり当時の丁寧な作業が伺える。この製品についてご存知の方がおられましたらぜひご一報いただけたら幸いです。

 

 

 

 お読みいただきありがとうございました。

 

 


SONY KV-6AD1 について

2022-03-18 23:53:25 | テレビ

 SONY KV-6AD1は1991年発売の6inchトリニトロンカラーテレビ。大きさ:幅173×高さ137×奥行226mm 重さ:2.8kg 電源非内蔵で車載も対応、価格は1991年当時で75,000円。白黒テレビと比較してカラーテレビのブラウン管はどうしても大きくなるためボディの奥行きが伸びてしまうことが多い。筐体のデザインはこの点で白黒テレビと比べて美しさが削がれてしまうと感じていた。一方でKV-6AD1をはじめとする一連のSONY製品はショートネック型ブラウン管でとてもコンパクトにまとまっていた。上面は放熱のためにパネルがメッシュなので高密度な内部が良く見える。

 縁あって拙宅に来たKV-6AD1はスイッチを入れても起動せず修理を途中で諦めたのか上蓋がネジ止めされてなかったりと問題を抱えている。調べてみると通電しないのはヒューズホルダーの接触が悪いため。ボディにはダメージがあり内外部とも喫煙が原因と思われるベトつきがあり埃の付着も多い。ヒューズホルダーの修正と清掃で通電はするようになった。ところが画面は横一線で垂直偏向の振幅がない。掃除から始めようと開始したが

 

 まず分解につまづく。底板の接合部が外れず構造がわからないので無理ができない。結果的に底パネルを押し込むと3ヵ所の引っ掛かりが外れてパネルも外れる。時間がかかったがようやくばらばらになった。

 

 基板は偏向高圧基板、同調基板、電源基板の3枚に分かれていて偏向高圧基板に他が立体的に刺さっている。ベトつきは時間をかけてアルコールで清拭して再度接続すると

 

「掃除したら治っていた」を期待したがそんなに甘くはなかった。。回路図もないしカラーテレビの学習から始めなくてはならぬ。ただ偏向回路は白黒テレビと大きくは異なっていないらしい。

 数日悩んで行き詰まったので気分を変えてドンガラのボディの水洗いをしたがネバつきがなかなか取れない。また破折しているところもあって残っているカケラを丁寧に集めてとりあえず修復した。ただ力のかかるところは補強が必要だし外装の目立つところに欠けがあって悩むところ。洗剤で洗ったりアルコールで清拭したりを繰り返してようやくべとつかなくなった。

 欠けている所はレジンを盛って整形、塗装してみる。

  

 メッシュのパネルは錆落として塗装した。ただし裏面はアース接続があってそのままで。

 垂直偏向の振幅が出ていない事についてはブラウン管の偏向コイルの波形を調べようとするがどの端子かわからない。端子は4つなので取り合えず測定器を当ててみて特定する。

 写真のコネクターだが回路図もないので無反応2端子の裏のパターンを追ってみるがどこに繋がるかよくわからない。本来はオシロスコープで波形を辿るところだと思うが無手勝流でそのあたりの部品を揺すってみると

 

 おお!ラッキーな事に一瞬垂直振幅が回復する場合がある。なんとか維持させてそっとモニター入力すると画面と音声が出る!(音声が未接続だと映像も出ない仕様らしい)だが裏返して観察してもプリントパターンは見た目ではしっかりしていて断裂もわからない。垂直偏向出力Trと思われる2SC4440(一応規格を調べたが製造中止らしい)を外してチェッカーにかけると接続によってはちょっと不可解な表示もあったが一応無事な様子。再度取付けて次に隣のICの放熱版をゆすると画面の変化に少し再現性がある。そこで足のハンダ付けをやり直すと一応安定した。

 これで一旦組み立ててみる。

  

スピーカーは50mmの小型だがセンターキャップがやたら大きい。これでうまくいくものと思っていたが

 残念ながら色調がおかしく赤が出力されていない様子。信号出力の抵抗と半固定抵抗がRGB3個づつ並んでいて波形を見ると

 

 いずれも波形が出ている。近い年代の他社の小型テレビの回路図を入手するとICからのRGB信号出力はTrの一段増幅で直にブラウン管と繋がっていて多分どの機種も似たようなものだと思う。波形が出ているのに??と思って眺めていたが

 ブラウン管ソケットの基板接続部のハンダが割れていて導通が途切れている。原因がわかって良かったが回路の簡略化には驚くばかり。

 専用ICが故障してもし入手できなければ修理は不可能。30年以上前の製品だからそのまま廃棄の可能性は高い。近年の製品はメーカーの修理可能な期間が過ぎて故障したら捨てられるのが普通で使い続けたいと思わせる魅力的なモノは少ないと感じる。電気製品は新しいものほど高性能で使い勝手が良く「モノ」にというよりそれがもたらす「快適」にお金を払っている。都会の人に「一番欲しいものは?」と尋ねたら「空間」と答えるに違いない(田舎人の私の思い込み)。治ったのが嬉しくてちょっと(頭が)おかしくなりました。

 

カラー画面の撮影は難しい。RGBの調節をきちんと行う必要があるが(ここは手動)次の課題に。

    

 初めてのカラーテレビの整備だったが回路図も入手できず叩き回って不具合を探す有様で曲がりなりにも復帰したのはラッキー以外の何者でもない。ただIC化によって構造はかなり簡略化されて小型のボディだが基板の集積度はさほど高くはない。ボデイをはずしても基板同士をコネクターコードで接続するだけで稼働するので修理にはとても都合が良い。ただし修理はもはや基板交換が原則ではないかと思われた。車載を主目的とした廉価の他社製品も多く見るが非常に高価だったSONY製品との違いも興味があります。SONYの6inchブラウン管カラーテレビは1960年代のマイクロテレビの直系の子孫だがなんとなく新旧のミニやワーゲンのような雰囲気を感じた。各々に魅力があると思います。

 

 

 

 

お読みいただきありがとうございました。

 

 

 


RCA AC 095Y について

2022-03-17 01:56:51 | テレビ

 70年代後期はカラー化が進んでブラウン管白黒テレビの終焉が近づいていたころだがこのRCA製品はボディ裏面に書かれてあるように台湾で生産されていた。日本からも三洋電機などが多くの製品をOEM供給していた。当時の安い賃金に支えられた廉価な製品といった位置付けでSONYやPanasonicなど名前の通った製品より格下と見られていたのかもしれない。本国で設計され製造だけ請け負ったのかは定かではないが一見何の変哲もないように見えるこの製品は初めて見た時からなにか惹かれるものがあった。1978年製で製品名は記号だけ、それもロットのちがいで結構ばらついている。シンプルな造形が美しく普遍性があり44年前の製品だが古さを感じさせない。

 現物を見るまでわからなかったのだがボディの下の黒い部分は電池ボックスでオプションの充電式バッテリーが収まり充電機能も組み込まれている。またこの部分を切り離して稼働させることも可能。

   

 電源はAC117V、DC12V、内部の電池の3wayで電源コードは失われているので直接DC12Vを給電しようと思ったが電源周りが複雑でなかなか理解できずしばらく眺めてスイッチ周りの結線図を書いてみたりしていた。決心してDCそれからACを繋いだがラッキーにも大きな故障はしていない様子。そこで中身を取り出してボディーをドンガラにして徹底的に汚れを落とす。

   

スピーカーは低音から高音域までカバーする超楕円型でとてもいい音がしている。海外では楕円スピーカーはHiFiでも用いられたが日本ではオーディオで使われることは少ない。チューナーは接触が悪く接点の清掃を時間をかけて行った。

 

前後ボディの位置決めの爪が数過所折れていたので

 

樹脂板を加工して貼り付けて修理した。これは無くても問題はないがあまりすることがなかったので。

 

  

RFコンバーターからビデオ信号を入れると画質は非常に良好で当たり前に黎明期のテレビと比べるとかなり改善されている。ボディは極細コンパウンドで汚れと傷を取ってからシリコンで磨く。

    

 1970年代のPCでCRTの横に5inchのフロッピーディスクドライブが2基着いていたのに似ているということに気がついた。キッチンの隅に置いたらカッコよさそう。

 

 

 

 

 お読みいただきありがとうございました。

 

追記 1

 ナショナルの古いカタログを見ていたら

 雰囲気が似ている。名前は「パナステート」(もしくは「pana・pana」)らしいがいままで写真でも見たことがない。両者とも洗練された美しいデザインだと思う。