Decca Decolaがお嫁入り

やっとこさ入手したDecca Decolaの整備記録

夏の終わりとマイクロカセット

2024-08-30 11:55:38 | オーディオ

 台風10号が日本列島を西から縦断している。今日は8/30で夏休みもあと数日で終わる。小学生の時にいっそ台風が誰もいない学校を吹き飛ばしてくれたらもうしばらく夏休みが続くのに、、と妄想したことを思い出す。近年の夏は猛暑酷暑が当たり前で2年連続でほとんど外出しなかった。昨年は足を骨折して手術、退院したのが7/4だったのでリハビリに通いながらの自宅療養、今年は昨年の手術から1年経過したので希望して埋め込まれた金属プレートと釘を除去する2次手術を行なって退院したのが6/28だった。担当医からは1ヶ月を過ぎれば加重しても大丈夫と言われていたが猛暑もあってほとんど外出を控えた。

 コロナ禍でstayhomeが言われたときはほぼ2年間ブラウン管テレビの修理に、そして今年の夏の2ヶ月間はマイクロカセットテープレコーダーのメンテナンスに没頭した。夏休みの宿題と勝手に決めて期間限定のつもりだったのだが小学校の時の宿題と一緒で最後まで難しく厄介なものが残って結局不十分なまま9月を迎えることになりそうだ。

 備忘録として簡単に総括しておきます。

1 SONY M-805 2003年 12,100円

 アナログテープレコーダーとして最終盤の製品で安価でしかしマイクロカセットに求められる機能はすべて満たしている。趣味性は低くあくまでもツールとして実務に使われたと想像する。SONYにはこのコンセプトでいくつかの製品がある。

 

 AIWA TP-M71981年 20,600円

 テープレコーダーの雄AIWA製品。古くからのSONYの子会社なので設計陣も同じかもしれないと思っていたが共通項は少ない。メカニズムが複雑で生産性、メンテナンス効率も悪かっただろうと思うが信頼性の高い美しく魅力的な製品だと思う。価格はSONY製品と比べて安くブランド力の差を感じた。3台メンテしたがカセットリッドの形態が異なる2種類があった。

 

3 SONY M-909 1992年  36,000円

 当時のSONYの技術力を結集して(妄想)造られた世界最小のアナログテープレコーダー。カウンターやスピーカーは内蔵されていない。いっそのこと「マイクロカセットケースサイズ」だったら良かったのに、とかデザイン的にはもう少しシャープで薄くてNAGRA SNのような狂気があればいいのに、、とか思う(好きなこと言ってる)。 のちに外部スピーカー兼電池ボックスがドッキングするSONY M-950に繋がる。

 

4 SONY M-9 1981年 13,000円

 若者や子供向けに造られた5色のテープレコーダー。小さいから子供向け?プレゼントされた子供たちはどう使ったのだろうかと思う。デザイン重視、最低限の機能、高級な玩具的な扱いだったかもしれない。まだマイクロカセットの位置付けが定まってなかったか。

 

 SONY M-1PD(Pocket Deck)1981年 27,800円(MDR-1L1 ヘッドホン付属)

 SONY初のメタルテープ対応のステレオマイクロカセット(ポケットデッキ)。SONY M-9ベースでマイク、スピーカーは非搭載でその割に価格は高い。どうした!SONY !!  と言いたくなるようなちょっと不思議な製品。

 

6 SONY M-400  1980年 36,800円

 薄さにこだわったSONYは「ウスロク」という呼称でM-400(マイクロカセット)とTCM-280(コンパクトカセット)の2種類を発表した。とてもスタイリッシュで質感も高かったが価格は驚きの36,800円(M-400、シルバーのみ)。特徴的なのはフラットワイヤーハーネスと基板が一体化されているという衝撃的な構造で今まで見たことがない。薄くするための手段でメンテナンスは難しいのではないかと思うがこのころはエレクトロニクス部分は想定された製品寿命内には故障しないという自信があったのかもしれない。一方でメカニズムは再生時の巻き上げ軸の駆動はアイドラーを介した構造でその後に一般的になったギアドライブと比べると信頼性は劣ると思われる。回転を大幅に落とす必要があるために駆動軸が細くアイドラーゴムとの接触が滑りやすく調整がクリチカルになる。2台挑戦したが趣味のメンテナンスの対象機としてはとても難しいと感じた。

 

7 SONY M-1000  1981年 37,800円

 SONYのマイクロカセットオーディオへの評価は「使い物にならない」というものだったと思うが他社との関係でステレオバージョンを発売しなくてはならない状況だった?(妄想)。M-1000はSONYのマイクロカセットで最高値、筐体は大きく立派で質感は高くたとえばリッドカバーの固定ネジもデッキクオリティ、フライホイールも大きく音質に配慮されている。ただ内蔵マイクはメカノイズを拾うので生録には不適でカタログ写真のような静寂の森のバードウォッチングなどでは全く使えないと思う。

 

8 SANYO MR-88 1981年 59,800円

 ステレオラジカセの雄SANYOのラジカセ最高値の製品。「飛び出せテレコ88」の名前の通りマイクロカセット部が取り出せて各々が独立して使用できる。ギミックがユニークで美しく超小型でとても魅力的。どれくらいの数が現存しているか、そのうち稼働できるものが何台あるか、、と思う。

 

9 SONY M-80  1982年 39,800円

 SONY 最後のステレオマイクロカセット機で考えられる機能を詰め込んだ(オートリバースは除かれた)。当時のカタログのキャッチコピーを見るとこの製品はステレオラジカセのマイクロカセット版という発想だったらしい。

 

10 Olympus Pearlcorder L400   1992年 38,800円

 マイクロカセットの本家Olympus製でSONY M-909と同じ年に発表された。超小型、操作はボタンスイッチ、カウンターも液晶表示となっていて当時の日本の高い水準の物作りの技術がつぎ込まれている。'90年代は一段技術革新が進んだ時期だったようだ。マイクロカセットにもう一度スポットライトを当てたような、モニュメント的な作品。


SANYO MR-88 について

2024-08-23 18:59:51 | オーディオ

 ボイスメモや留守電用として使われることが多かったマイクロカセットだが1980年台にはステレオ化された製品が登場してポータブルオーディオやオーディオコンポの音源として使われるようになった。物理的に不利な条件のメディアだがメタルテープが登場し周波数特性が改善されたことも製品開発に拍車をかけたと思うが発売は全てのメーカーからではなく数社にとどまっていた。当時は家電メーカーも各社独自のオーディオブランドを持っていた時代で現在と随分状況が異なる。「ラジカセ」が大流行していてSANYOからは1971年に第一号のステレオラジカセが発売され1979年には大ヒットした「U4」シリーズが販売開始されている。「U4」は「おしゃれなテレコ」というネイミングでSANYOカラーともいえる鮮やかな原色の細長いステレオラジカセが至る所で見られた。

 SANYO(三洋電機)は今はPanasonicに吸収されたが当時は印象的な製品が多かったと記憶する。マイクロカセットを採用したステレオラジカセも発売していた。今回入手したのは型番はMR-88T MR-88Mで発売は1981年で価格は59,800円、歴代のSANYOのラジカセでは最高値。なぜ2つの名前があるのかというとステレオマイクロカセットハンディ機(MR-88M)がAM/FMチューナーを内蔵したステレオラジオ(MR-88T )にドッキングするというものでとても洒落ている。(世の中超合金ロボットの合体ブームだったか?)そして型番のほかの呼び名は「飛び出せテレコ88」というもので「飛び出せ青春」の村野先生が持っていて「青い三角定規」でも流れていればピッタリだ。(ちょっと調べたら「飛び出せ青春」は1972年放送だったので時代は合わない)

 

 入手したのは欠品はない様子だがとにかく汚い。多分マイクロカセット機のメンテは大変だろうから先にドック部(MR88T)の掃除と整備を行います。ACアダプターは付属しておらず乾電池が各々に2種類必要でドックは単2が4本。

MR-88T

 

 

 外部から電池ボックスに6Vを給電するとラジオ部は動作する。幸い電池の液漏れはないがほこりが溜まっているので掃除しよう。

   

 選局は糸ダイヤルだが基板上のバリコンとは結合部があり簡単に切り離してメンテができる。隣の写真は原始的な子機との接点でここも曲者か。それ以外の入出力はLINE入力とSP出力がある。切り替えスイッチはないのでSPは同時出力、LINE入力は録音時の子機にダイレクトにということか?モニターはされるのか?子機の内蔵マイクとの関係はどうなっているのだろう。

 掃除が完了した。さっさと終わらせた勢いで本丸に攻め込む。

 

MR-88M

電池は単3x2本 電池ボックスを開けると、、

 

一番恐れていた液漏れが発生していた。もちろん電池を入れても動かない、、というかREWボタンがへこんだまま元に戻らない状態。心が折れそうになりながら裏蓋を開けると

、、思ったよりも被害が少ないかも、、という期待も虚しく結構侵食されている。基板の固定ネジが全てない、、と思ったら裏蓋と共じめだった。基板上の大きなスライドスイッチを操作する関係でメカニズムと基板はリジットに結合する必要がある。両者のケースへの固定はメカニズム側でされている。

 

 液漏れで困るのはプリント基板の箔の腐食もそうだがハンダ付けしてあるリード線がポロポロ外れること。基板図や回路図はないのでそうなると非常に苦労する。でも眺めていても埒が開かないので掃除と堆積した異物を取り除きつつ分解を進める。

 2個あるマイクからのリード線は外しておいた。

 

 メカニズムと基板を一体にネジ2本(ケース側面は除く)でケースからとりはずしてから裏からのネジ1本で両者を分離して夥しいホコリと堆積物を取り除く。写真を多く撮っておいてリード線が外れた時に備える。基本的にワンボード基板だが2個のICは基板の裏に(!)取り付けられている。一見なんとひどい設計か、、と思わせるがICの足はランドマークとなるのでアクセスしやすいところにあることはメンテナンスを行う上で有利なのだと思う。SONY製ICは検索したがわからなかった。電源基板は電池ボックスの下だったが無事だった。

  

 まずREWボタンが戻らないことを解決しなくては、、原因は電解液による浸食だったのだが幸いにもさほど深刻な状況ではなく辛抱強く除去、清掃、注油することで動作するようになった。ゴムベルトはドライブベルトとカウンターベルトの2本だが幸いにも手持ちがあって交換した。いつも問題になるカウンターベルトも大きく分解しなくても交換できる。このベルトは今まで見たことがないほど細いもので多分0.4mm、一方ドライブベルトは1.0mmのとても太いもの。

 

 腐食した端子はカッターなどを駆使して腐食部分を取り除いたがこのまま再使用はムリでどうするか、、。今回も極小紙カップが活躍した。ほとんど同じに見えるが径がわずかに異なるネジが使われていたので各工程ごとの仕分けは大切、ネジ余りも防げる。

 

 外部電源入力には6Vと書いてあるのでなんらかの方法で降圧している。親機のMR-88Tから6Vの電源供給されるかと思ったが3Vで子機の単独使用時に親機と共通のACアダプターを接続するためらしい。外部電源からの3Vを電流をモニターしながら電池ボックスに給電すると

 

 なんとかメカニズムは動作するようになった。ヘッドホンでモニターすると再生、REW/FF時にアンプ部は動いている。幸いリード線の脱離は数カ所だったが再度ハンダ付けする時は清掃を念入りに行いリード線もしっかり被覆を剥いて行うがそれでも結構困難でやはり電池の液漏れ被害は深刻なトラブル。また一時的に外したパーツを再度セットする時はリード線の取り回しをしっかり再現しないと組み立て時の最終的な収まりが困難になる場合がある。これも最初の写真が頼りになる。

 ほぼ1日かかってここまで辿り着いた。あとは組み立てと動作チェックになるがすんなりとはいかないだろうと思っている。

 

 昨日は録音以外の動作確認を行なっているので今日はなんとか完成させたい。まず腐食している電池ボックスの電極はがんばって磨いたがこの状態でおまけにスプリングも外れていて使えそうもない。そこで他の電池ボックスの端子を移植することにした。今までの金具に穴を開けてハトメのような電極を叩いて取り付けてからスプリングの根本を板金フラックスを用いたハンダ付けで固定した。

  

マイクの配線の前に仮組みしようとするがうまくいかない。分解したときの手順をすっかり忘れていてすったもんだしているうちに脆くなったワイヤーが次々と外れる。すぐに写真と照合して元に戻す、、の繰り返し。

問題点は沢山噴出した(備忘録)

・録音ボタンが戻らない →  メカニズムと基板を接合(ネジ1本)してからケースに収める。取り外す時はメカニズムと基板の一体で行いその後で分離する。2個のマイクはゴム台ごと外せる。

・マイクを認識しない → スライドスイッチ、マイクジャックに接触不良あり。清掃は十分にできず仕方ないので接点復活剤にたよる。

・回転が持続しない → センサー基板からのワイヤーはずれ

 予想通り時間はかかったがなんとか完了した。分解組み立ても随分慣れて気軽にできるように(?)なった。

 

 

 メタルテープ対応 2スピード ボリュームは左右別々(!) 外部電源はACアダプターの6V ドックに入れると親機からの電源(3V)に切り替わる。したがって子機に入っている単3電池が放置される危険があり液漏れに注意が必要。外部電源との切り替えは装着した時に押し込まれるボタンスイッチで行われると思われる。信号回路はIC、ボリューム共に2個使っている事から多分モノラルを2個並べてステレオにしたようなものだと思う。機能は必要十分でヘッドホンで試聴すると意外に走行系統は安定していてモーター音も小さくワウフラッター、S/Nも良好。

 早速ドックに入れてみる。ACアダプターは付属しておらず入口は6Vのミニプラグ。ジャンク箱を漁ってみると6VのミニプラグのACアダプターはあったのだが中心がマイナスでプラスとマイナスが逆。余談だがSONY製品でも同じ電圧で逆になっているのがある。分解して内部の接続を逆にしてアダプターの表示も忘れないように変更しておく。

このレトロなACアダプターはトランスが使われていて大きくて重いのに700mWしかとれない。でもぴったりだ。

 特にFM/AMラジオの音が良い。スピーカーの口径は多分8cmくらいだがとても明瞭な発声をする。でもパワーICはヒートシンクがないが大丈夫だろうか?マイクロカセットの出音も確認したがもう少し接点のメンテナンスが必要で位置によって途切れることがある。ラジカセレベルならマイクロカセット音源も十分に実用になりそうな音質だった。

 

 

 ようやく終わってやれやれと思いながらその後しばらくラジオを聴きながら別の作業していた。今夜は雷、大雨警報が出ていてそのせいか時々バリバリ言ってる、、と思っていたがそのうちバリバリノイズだけに(ラジオ局が落雷で停電したと思った)なってしまった。おまけに子機も不調で2台とも同時に故障してしまったらしい。不思議なこともあるものだが落雷で破損したわけではない。(ちなみに我が家は数十年前に玄関のインターホンに落雷したことがある。幸いインターホンが壊れただけでぞれ以外の被害はなかった。そのインターホンは現在玄関チャイムのスイッチとして現役で使用している)

 また親機から分解するが

 回路図もなく何が原因かさっぱりわからない。一応ノイズは出てるのでAFAMPは無事ではないかと思うがそれも自信がない。電解コンデンサーには6Vかかっている。外部電源を変更したりスピーカーからヘッドホンにしたり、AF信号を入れたりあちこち突いたり叩いたり、、これは親機を舐めてかかったバチが当たったな。。そのうちショートしてワイヤーから発煙したりといよいよヤバい状態になってきた。

 今夜はもう諦めて終わろうと一旦片付けてからふともう一度未練がましく通電すると微かだがAM放送を受信している。この状態でモニターしながら再度基板をよく眺めてみる。ICは数個使われていて順番に足を触って反応を見る。すると

 LA3361の1,2番に触れた時に突然大音量となりいきなり改善したようだ。このICはSANYO PLL FM Multiplex Demodulator で1番はVcc 2番はMPX IN。ここが原因らしいが見つかったのは当然偶然、なぜAMラジオも不調だったのか?外部の電源モニターでは過電流は流れていなかった。その後も突いたりひっぱたりしても特に問題は発生していない。このICは交換が必要になっても入手は容易なようだ。偶然に助けられて情けない話だがとにかく良かったと思いたい。

 燃えたワイヤーを交換してまた組み立てたが残念ながら完調ではない。まずAMの音が小さい。そしてFMのステレオは不安定でスイッチを入れ直して表示が点灯してもすぐにモノラルになってしまいやはりIC素子が問題か。動作してしばらくしてからの発症なので電解コンデンサーのパンクなども考えられる(特に子機)が一応出音しているので解決を先送りにします。

 

 その後やはり気になってもう一度基板を取り出してできるだけチェックしてみました。電解コンデンサーは数個使われているが特にパワーIC LA4190周辺に集中している。

 小出力のステレオアンプで出力にも大きな電解コンデンサーが入っている。ヒートシンクはないがプリント基板に放熱する程度の発熱らしい。ガリガリの原因が終段ではないことを確認するため5,8に信号を入れてみるとスピーカーから正常出力した。ICおよび周辺の電解コンデンサーは無事らしい。

 次にPLL  IC LA3361

 電圧は4V台かかっている。LRの出力は4,5からでここにAF信号を入れると正常出力する。やはりこの段以前に問題がありそう。

 再組み立てするとしばらくは調子良く受信するが次第にノイズ混じりになるなど若干不安定。またstereo受信が安定しない(強制的に切り替えてもすぐにモノラルになる)。一応受信しているが念のためにLA3361は交換することにして発注し早速交換してみる。

 

 結果は全く変わりません。stereoの表示、切り替えは不調のままで予想は外れました。

 AM/FMの切り替えスイッチが接触が悪そうでうまく働かない。6Pのスライドスイッチを基板から外してメンテしてみる。

 

 接点を掃除して再度組み立てて装着するもやはり芳しくなくこちらも失敗したようだ。おまけにAM放送の感度が悪くなってしまった。なかなかうまくいかない、、というか無手勝流にも限界がある。

 AM受信がますますおかしい。感度低下もそうだが周波数表示と全く異なる放送局を受信している。同調回路特にアンテナ付近をチェックしてみると

 

 バーアンテナの巻線の導通が1ヶ所無い。4端子あり取り外してみると確かに巻線の導通がなくどこかで断線したらしい。被覆を破らないと断線部位を調べることはできない。大阪のRM社のS氏がスピーカーのボイスコイルの断線部位を調べる時にカッターの刃を当てていたのを思い出して慎重に当てて部位を特定し芯線をほぐしたワイヤーを介して新製した端子にハンダ付けした。接着剤でワイヤーが動かないように養生した。

 ようやくこれでAM/FM共に良好に受信できるようになった。ステレオから外れやすいのは半固定抵抗など何か調節代があるのかもしれないし単に電波が弱いのかもしれない。わかったら対応することにします。

 

 一旦稼働したのにまた不調になった子機だが

現在の状況は(以下備忘録)

・REW/FFは動作する。両スピード切り替えるとREW/FFのスピードも大きく変化する。その際再生アンプは動作していて音声は出力される。

・何もしない状態(電池を入れたり電源を接続しただけで)7mA程度電流が流れてアンプとモーターが起動している。パイロットランプがつかないほどの低い電圧と思われる。

・録音ボタンを押すとアンプは動いてマイクモニター、録音もする。最初は1.2cm/sのみだったが次第に2.4cm/sでも動作するようになった。pauseも効く。

・再生することもある。ただし1.2cm/sのみ 2.4cm/sは走行しない。

・再生時にpauseが効かない

・次第に再生時に2.4cm/sも動作するようになってきた。いつもではない。

 状況が刻々変化する。一応録音はできるようなので親機にセットしてFM放送を2.4cm/sで録音してみる。再生はできないので他のテレコで確認すると録音されている。

 何とか動くようになった2.4cm/sで録音再生してみると録音はされているが電源と思われるノイズがいっぱい。他のレコーダーでも確認した。

 1.2cm/sで録音再生しようとしたが両スピードともモーター不動、パイロットランプの不点灯になり状態は悪化した。しばらく時間を置くとわずかに復旧する。

 

 メンテナンス後にしばらくは普通に稼働していたわけでなぜトラブルが発生したか?数十年ぶりの通電で何が起こっただろう?

 親機にセットした時は電源は親機からに切り替わる。再生ボタンを押さないのにわずかに動くということは物理スイッチの接点はどこにあるのだろうか。子機を乾電池駆動にしても同様の状態。

 

 現在1.2cm/s、2.4cm/sともに録音はできているが2.4cm/sは何らかの問題があって走行が安定していない。1.2cm/sは録音、再生はできている。1.2cm/sの音質はやはり厳しくてこのモードで音楽に浸るのは困難。本体共に動作しているうちに安定傾向に向かっているようなので放送を受信しつつ時々録音してみよう。しばらく聴き込んでみます。

 

 

 


SONY M-1000 について

2024-08-23 01:20:56 | オーディオ

 SONYから1981年に発売されたポータブルステレオマイクロカセットレコーダーで価格は37,800円(M-1000B、ヘッドホン付属)でSONYのマイクロカセット製品では最高値、M-1000とM-1000Bの2色がある。ステレオ録音再生、可変指向性ステレオマイクとスピーカー、カウンターも内蔵されている。厚みがあり少し大きめのゆったりした金属ケースに収まっていた。ステレオマイクロカセット3機種のうち唯一メタルテープには対応していなかったがSONYがマイクロカセットに本気で取り組んだ製品と思われ1992年の世界最小テープレコーダーSONY M-909とともに歴史に名を残したと思う。

 

 

 1個しかないスピーカーは左右の信号をミックスしている。ヘッドホン周りの信号の流れはちょっと理解が難しいがかなり変則的な気がする。UHER CRは割り切って片chだけ鳴らしている。

 入手した個体はドライブベルトが緩んでいるらしく走行が不安定。早速中身をケースから出してみるがこの製品はSONY M-909と同様に封筒状の金属ケースに樹脂ボディが収まっている構造で内部を横にスライドして取り出す。この辺りもマニュアルに詳しく記載がある。些細なことのようだが分解できない!という事が実際にはある。

 

 基板を外すのもマニュアルに指示がある。多くのワイヤーが走行しているが固定しているテープを外さないとワイヤーの余裕がなく基板を持ち上げることができない。そしてこの固定テープは再使用するので丁寧に扱う。基板の下のメカニズムは初めて見た形状でやはりドライブベルトが緩んでいる。ネジ3本で留まっているフライホイールの軸受をはずす。

 

 フライホイールは肉厚で重量があり表面も梨地処理されている。緩んだベルトを測定すると幸いにも手持ちに適合するものがあった。

 

カウンターベルトもあまり苦労なく交換できそうだが問題なさそうなので今回はスルーした。余談だが各ステージごとの細かいネジは百均で売っている盃くらいの大きさの紙カップに入れて作業している。作業の進行順に並べていくと再度の組み立て時にネジの選択に迷うこともなく取り付け忘れも少なくなる。また外した配線固定テープに両面テープを貼り付けて再度使っている。

 

テープの位置とワイヤーの処理は最初の写真を参考にした。

   

 

 

  

 作業が完了して動作させてみるとやはりフライホイールの大型化の恩恵はあってワウフラッターが少ないことがはっきりわかる。S/Nも若干良いかもしれない。残念ながらボリュームのガリが大きくてこのままでは実用は難しい。RECモードで内蔵マイクをヘッドホンでモニターするとあまり感心しない音でこのままでは生録はムリだと思う。(手持ちの3.5mmステレオプラグのステレオマイクが故障していて比較ができないのでマイクの問題なのかははっきり言えないが。)テープスピードは2.4cm/sと1.2cm/sだが1.2cm/sは必要ないだろう。消去ヘッドは相変わらず永久磁石。全体に非常に質感が高く動作も滑らかで高級感が漂う。同時代のマイクロカセットテープレコーダーに比べて厚みが2倍近いのは安定走行のための必然だったかもしれないがやはり気にはなる。サイズ的に余裕を持った設計のためかメンテナンスは楽でベルト交換なども難易度は低い。

 隣は同時期に発売されたメタルテープ対応のSONY M-1PD(Pocket Deck)。1万円ほどの価格差があるが両者には質感の圧倒的な差がある。個人的にはSONYにはこの大きさでステレオラジカセを作って欲しかったと思う。できれば側面にもスピーカー乗せてマトリックス再生できてフィギァとして飾ってもインパクトのあるデザインで。SANYOにはU4デザインのマイクロステレオラジカセがあるが(これもかなりユニーク)SONYだったらどう料理しただろうか、、と妄想します。

 

お読みいただきありがとうございました。

 

後日談1

 中途半端な形で終わった整備だったのだがその後改めて問題解消に取り組んだ。不具合はボリュームのガリ、そして録音レベルの低下。

 

 まずボリュームのガリだがいつものようにクイックドライクリーナーと接点復活剤をぶっかけてグリグリする。

 

 このボリュームはAIWAのマイクロラジカセと同じでガリオームの常連か。

 基板を触っているとワイヤーが基板からはずれることがあるがservice manualの回路図と基板図が閲覧できるので素人には非常に助かる。録音レベルの低下はヘッドの掃除(!)をした。

 

 これで幸いガリはなくなり不具合は解消した。

 ステレオマイクロカセット機器に接して感じることはメカニズムをシビアに整備しないとカタログデータの数値を得ることは難しいということ。メタルマイクロカセットテープを用いた周波数特性が説明されるがそれらはあくまでベースとなるメカニズムの安定走行の上に成り立つ話。特にワウフラッターが大きい場合はどんな優秀なメディアでも意味がなくなる。かつて長い間TEAC A-450を使っていた。A-450はテープを上面から入れるような初期のカセットデッキだがフライホイールは巨大でワウフラッター値も当時としてはとても優秀だった。その後電子制御やダブルキャプスタンなどの機構で数値上優秀な機種が増えるが物理的に慣性モーメントを増加させたメカニズムの信頼性は巨大なターンテーブルを擁するアナログプレーヤーと共通の雰囲気がある。数値を比較したわけではないが数台の機器を整備してメカニズムの安定性についてはSONY M-1000が一番ではないかという気がした。ミュージックテープを作るときになるべく良好な状態で録音しておきたい。今のところマイクロカセットデッキを入手する目処は立たない。多分それに準じるであろうM-1000を中心に考えたい。