Decca Decolaがお嫁入り

やっとこさ入手したDecca Decolaの整備記録

Thorens TD 134とTD184 について

2017-11-29 17:41:07 | Thorens

 Thorens社は1883年にヘルマン・トーレンスによってスイスのサン・クロワで創業された精密機器メーカー。かつてはオルゴール(1985年にルージュ社に売却)、オイルライター、ハーモニカ(1914年〜1952年)などを生産していたが1957年発表のターンテーブル「TD 124」が世界を席巻する大ヒット商品となった。1966年にEMTと共に共通の持ち株会社の傘下となりドイツに製造拠点を移転した。日本でもかつて「ノア」が代理店契約をしていたが現在は解消されているらしく過去の製品のメインテナンスも扱っていないようです。有名な製品は「TD 124」以外でもRefarence(リファレンス)やPrestage(プレステージ)などの超高級品が思い浮かぶ。しかしここでは真逆の大衆機であるTD 134とTD 184を取り上げてみます。
 
 Thorens TD 134とTD 184はターンテーブルの直径が10inch(25cm) 重量が1kg(TD 124は5kg)という軽量系で、コンパクトなデッキにターンテーブル、アームなどを配したシステム。


 

 いつ頃のカタログかははっきりしませんがTD 134とTD 184は1958年頃に発表されたのでその当時と予想されます。アメリカでの価格はTD 124が$99.75に対しTD 134は$60.0 TD 184は$75.0となっています。この2機種の樹脂製アームにはEL104という名称があり単体発売されていたらしくTD 124にも取り付け可能。別のカタログに木製のキャビネット(現在の基準で見ると木製の箱という雰囲気の簡易型)の価格があるがTD 124用で$9 TD 134とTD 184用が$6となっていて現在の価格としてはせいぜい9000円と6000円程度ではないかと思う。それ以上高価なら自分で作ってしまったのではないか?それくらい簡素な箱。

 TD 134はオートストップのみの機能、TD 184はレコードの大きさによって選択するダイヤル電話のような機能でスタートの位置までアームを移動させるというセミオート機能を持つ。

 TD 134

 

 

 

 

 

 拙宅のThorens TD 134はShure M3Dが取り付けられています。ずいぶん前から居るのですがまだ稼動させたことはありません。久しぶりに電源を入れるとなんとかモーターが回る、、といった具合。金属部品は全体に「こなを吹いた」ように見える。これは一体なんだろう?
 とりあえず軽く分解、注油、掃除しながら構造を学習した。ほとんどTD 124と変わりないと思うし両者は以前メンテしたはずだがすでにほとんど忘れている。徹底的なメンテを行う前の予備メンテという位置付けで欠品があれば補充し、ネジの具合を確認、金属の表面を整え、一応モーターも分解してみた。やはりグリースは硬化しているので良質のものを調達する必要がある。
 作業には特殊な工具は必要なく構造も難しい所はない。世間ではこの分野の匠がおられるそうなので多分色々なノウハウがあるのかとは思う。しかし基本は抵抗を小さくしてスムースに動くことかと思うので一般的な約束事で十分にことが足りるようにも思う。とにかくホントに美しい個体でミュージアムクォリティ。拙宅の機材の中では最上位なのは間違いない。たとえ新品未開封でもキカイはメンテナンスが要ります。


 この状態で聴いてみましょう。カートリッジはshure M3D


  アラーム・ア・ラ・モード /  松任谷由実  1986年

 年間のLP売上第一位だそうだが覚えている曲は少ない。飛ぶ鳥を落とす勢いだったユーミン18枚目のアルバムで時代はバブル絶頂期に向かっていく真最中。とても豊かでゴージャスでお金がかかっている音でそれまでの4帖半フォークの世界とはエラく違う。「ビンビン」言ってるスラップベースに「世の中浮かれていたんだろうなぁ」と思う。
 1986年当時の自分を思い起こしてみると。。就職して4年目、バブルの恩恵はなかったが結婚して子供も生まれて何となく「軌道に乗った感」は感じていた。。それから32年経ちました。この間世間はバブル崩壊でえらい目にあってしばらくは反省しきりだったが最近の好景気ニュースを聞くと、やっぱりヒトは過去のことはすぐに忘れる。。と思う。欲望は社会を前に進めるためのエネルギーの源かもしれないが繰り返しているような歴史の中で自分自身の立ち位置は1986年当時とは(当たり前に)えらく違っている。楽しい事以上に悲しいこともいっぱいの人生だがせめて音楽は楽しく聞きたいものだ。当時の音楽を聴くことで楽しい思い出を蘇らせたいと思う。

 操作はまず回転切り替えを”0”から”33”にしてアームを外側に振るとターンテーブルが回転しレコードの終末では自動停止する。途中で回転を止めたいときはアームを内側に振るか手前にあるスイッチを「stop」にする。また「MANUAL」モードではオートストップは解除される。10inchターンテーブルなので30cmLPレコードは当然はみ出す。ペラペラのレコードの端に針を下ろすのは昔実家にあった卓上電蓄を思い出させる。当時世の中のほとんどの人はターンテーブルで音が変わるなどということは全く考えもしなかったと思う。使いやすくてちゃんと音が出ればOKで変に音にこだわったりせずに音楽が楽しく聴ければそれでよし。。のプレーヤーだ。細かいことを追求したい人はいくらでも違うのがあるからわざわざ10inchターンテーブルなんて変わり種を使わなくっても良い。「コンパクトで愛らしいプレーヤーで楽しくレコードを聴きたい」「面倒臭いのはいらない」という人にはぴったりだ。(私もときどきこういうヒトになります)
 機構はTD 124と変わりないので廉価版といっても利益は薄かった製品だと思う。ベルト、アイドラードライブという傑出したメカニズムは魅力的だし洗練されている。LPレコードを10枚ほど聴いてみたが快調。信号ノイズ、メカニカルノイズは極小でワウも感じられない。デテイルを聴き分けるような試聴ではないし、、と言いながらもS/Nが良好で見通しがよろしいしオートストップも実用的です。(回転切り替えを”0”に戻し忘れないようにしなくては。。)小型だが質感の高い製品で性能にも不満はありません。スイスの精密機器メーカーが本気で作った大衆機はやっぱり流石でした。


 TD 184

 兄弟機のTD184は大きさはTD134と同じだがカタログでは「セミオート機能」を追加したもの。特徴的な外観で昔の洋画で見た公衆電話のダイヤルみたいなのがついてる。

 マニュアルには調整方法が詳しく書いてあってありがたい。入手してからメンテしていなかったので調整の前にまず分解して掃除、注油を先に行う。ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤーコンサートの再放送を見ながら少しずつ行った。
 TD143はTD124とほぼ一緒のメカニズムだがTD184はアームのコントロールが加わるので結構複雑。正直よくわからないところもあるのでとにかく慎重に分解掃除を進める。モーターの分解は行わずで3時間程度行った。TD124と同じく電源は50Hzと60Hz両方に、電圧も3段階に対応している。全体の程度はとても良好で手荒に扱われた様子はない。



 

 

 



 純正と思われる付属の木製キャビネット
 
 カッコ良ろしい角のRはこんな風に作っている。。かなり手抜きのキャビネットは$6でやっぱり6000円くらいか。

 操作方法はレコードを載せて回転数を選んでレコードの大きさによって7" 10" 12"どれかの穴に指を入れてダイヤル電話のように止まるところまで動かすとすでにリフトアップ状態だったアームがレコードの最外周のリード部分に水平移動する。同時にターンテーブルは回転を始める。そして指をダイヤルから離すとエアダンプ機能でゆっくりとアームが降りて演奏が始まる。レコードの最内周まで来るとアームはリフトアップし回転は止まる。ただしアクションはここまででアームをホームポジションに戻すのは手動となるので「セミオート」だそう。途中で終了するときは「stop」、また「manual」にするとオートストップがキャンセルされるのはTD143と同じ。

 マニュアルによる調整ポイントはリフトアップ時のアームの高さ、オート時のアームの降りる位置、針圧、アームが降りるスピード(エアブレーキの調整)など。モータープーリーの2ヶ所の固定ネジの締める順番の指示があるのは知らなかった。
 実際に操作すると結構面白い動きでさすがにスイスのオルゴールメーカー、、と言った風情。決まった時はちょっと嬉しいし、なかなかチャーミングなギミックだと思う。かつての日本製品でも高級プレーヤー以外は大抵はオート機能がついていたが1(ワン)モーターでメカニズムの伝達を工夫してすべて賄ったのは少なかったのではないだろうか?モーターを複数使えばなんて事ない動きだと思うが(コンピューターはなかったからそれなりに大変か)
 この傾向はTD224で頂点に達する。
 カートリッジはクリスタルと思われるのが付属していたが残念ながら十分には働かなかったのでM3Dを取り付けてあるシェルと交換して試聴した。速度調節ダイヤルを最速位置にしないと定速にならないのでやっぱりモーターのメンテナンスは必要な様子。トレース能が低く内周で針飛びを起こす。これは要対策。


 年末年始の休暇で帰省した。初めての長期滞在(?)帰省。帰りの東京駅で毎度のお気に入り駅弁、深川めし

 九州在住2輪ライダーのRさんもお気に入りらしい。お互い年取るとこういう渋々好みになるみたい。。今回食べて「おっ」と思ったのは夏食べた時と比べて薄味に感じたこと。ちょっと塩っぱいかな、、といつも思っていたのでこれは良かった。やはり「日もち」ならぬ「時間もち」を考えて気温差で味付けを変えていると考えると合理的な説明になる。ホントにそうなのかは自信がないがその前にホントに薄味か??。単に気のせいだったかもしれない気がしてきた。

 モーターのメンテで分解

 上部はラジアルのメタルのみ、下部は軸にボールがあり可動式のラジアルメタルが非分解のケースに収まる。残っているオイルを拭き取ってからWAKO Ti-103MKⅡを注油した。上下ケースは金属板打ち抜きなので精度は出にくい。また位置極めのピンとホールなどもないので4ヶ所のネジの締め方で軸とメタルの位置関係は容易に変わる。この辺りが匠の出番だと思うが、工業製品と考えた場合この精度の無さはボトムのメタルが可動式というあたりで吸収されるということだと思う。
 実際に稼働させると(TD124で)定速が出ない、気温の低い季節では立ち上がりに時間がかかる、などはよく聞く話。通常は100V〜120Vのポジションで使うことが多いと思うが100Vではなく120Vかけてみたり200V〜250Vポジションで250Vかけてみたらどうだろうか?メーカー指定の電圧なのだから著しく寿命を減らすとも思われない。電圧の違いによる音の差は当然ながらかなりあると感じる。今回は100Vで大丈夫そう。

 モータープーリーをモーター軸に固定する時はマニュアルによれば
 最初に黒いネジを締める。ついでニッケルメッキネジを締める。
 
 ドライバーは右側から。。

 エアーブレーキのピストンはゴム製でちょっと心もとない。とりあえずシリンダー内にはグリスを多めに塗った。クレデンザやデコラの扉を思い出します。内周部の音飛びはセンサーがアームの動きを邪魔しているようにも見えない。アームの位置を少し上げてみると解決した。



  Thorens TD184は私の尊敬する方が常用されていて10年以上前にプレゼントされた晩年のローラボベスコ日本公演のCDRは愛聴盤になっています。素晴らしい演奏と音で簡素なレコードプレーヤーでも使いこなし何如と感じた。デリケートな使いこなしがアナログ再生のアマチュアとしての面白さなのかもしれない。一方で物量を投入したアナログ製品には逆立ちしても出てこない音があるのも事実。その日の気候に影響を受けるようでは業務機としては成り立たないわけで変な例えだがEMTのレコードプレーヤーはCDプレーヤーのようだ、、と感じることさえあるくらいいつでも同じ音がする(ことが多い気がする)。EMT927とThorens TD184を比べるのはメジャーリーグとリトルリーグを比べるようなものでナンセンス(陳腐な例えで書いていて恥ずかしい)。元々の性能をきちんと引き出すことがキカイと設計製造した方への礼儀かと思っています。


  お読みいただきありがとうございました。


 後日談 1
 アームがレコードの最内周に来た時、または途中で演奏をカットした時のノイズが「バリッ」とすごい音。これは困る。。

 内部のモーターON OFFスイッチは見事なフリップフロップで名前を具現化した最たるもの。ここのコンデンサーをとりえずテキトーなものと交換してみた。

 しかし全く効果がない。ノイズキラーを検索するとコンデンサー+抵抗器ということになっているので○ノタロウから届いたのと交換した

 ところが相変わらず盛大な「バリッ」が続く。これはどうしたものか。。



ALTEC A-340A について

2017-11-24 13:25:06 | ALTEC

 ALTEC A-340Aは1955年に発表されたメインアンプでカタログで併記されているプリアンプはA-440A






 12AY7 - 12AU7 - 6550pp、5U4GB VR75 という構成で12AY7の採用はこの時期のALTEC製品の特徴になっている。電源はチョークコイルは省略されておりコンデンサーインプットの平滑回路、終段のスクリーングリッドは定電圧放電管が入る。35W出力の割には全体的にコンパクトでメタリックグリーンが美しいシャーシ。トランス類も同色に塗られたPeerlessとなっている。終段のB電源は平滑回路前のコンデンサーからで随分思い切った気もするが問題ないという判断なのでしょう。入手した時はこの出力トランスの一次側が断線している状態で早速前回Mcintosh 20Wのインターステージトランスの巻き直しをお願いしたC電器さんに修理に出した。

 

 

 




 隣町で開かれたノスタルジック車祭 というイベントに行ってきました。立派な屋内会場で行われます。入場料もしっかり徴収する。
 今回2回目の参加ですが前回は展示がなくて残念だったホンダスポーツ


 ホンダスポーツとよく対比されるトヨタスポーツ


 個人で楽しむにはやっぱりこれかな!と思わせる可愛いらしい休憩車いや旧軽車。


 フェンダーとバンパーの隙間から生えていたキノコという設定(だと思うけど)のホンダ ステップバン。ミニのカントリーマンやトラベラーの木製ボディでそんな拘りがあったような。。


 超古典車からスーパーカーまで楽しめました。どの車もお金をかけて仕上げたと思わせる力作。この状態を維持するにはそれなりの覚悟が要るかな、、。いろんな面で生活に占める割合がかなり高くなりそう。




 修理のトランスが帰ってくるまでにできることを進めます。カップリングコンデンサーは2ヶ所4個入っていますが全て劣化が進んでいる。

 外して漏れ電流を測って確認した。出力トランスが断線したのもカップリングコンデンサーの劣化が原因の可能性が高い。

手持ちのsprague 160Pと名称不明のペーパーコンデンサーに交換した。

 これで漏れ電流は無くなりました。トランス待ちです。

 約2週間で届きました。

 相変わらず綺麗な仕事です。ケースからピッチ漬けのトランスを取り出してピッチ落として巻線の回数測定して、、ホントに大変な作業です。
 早速取り付けて回路図見ながら配線。オリジナルのコードを残してくれているのでありがたい。


 

 出力トランスの2次側にダンピングファクターのコントロールが付いているが??正直よくわからない。ちょっと接続が変更してあったので回路図通りに戻してこれでiTunesから直接信号を入れて聴いてみる。。スピーカーはこのところ酷使しているJBL L75メヌエット。LE8Tのエッジ交換が必要。
 問題点は
  ・入力ボリュームはガリオーム
  ・「ぶー」という通奏低音ハムが載る
  ・2本の煙突のような電解コンデンサーのベースの取り付けベーク板が割れている。(ここはアンプをひっくり返すと力がかかるところ)

 しばらくしたら超低周波発振いわゆるモーターボーティングが始まってしまった。それも8Ω端子に接続した時に起きる。(そういえば出力トランスの1次側の電圧が初めは左右異なっていて慌ててドライブ段の電圧を測ったらデジタル表示が激しく変わる、、そのうち治ったら電圧も一致したのでそのままスルーしていた)ハムも乗るし電源の電解コンデンサーが逝ったかと思ってミノムシでテキトーな電解コンデンサーをパラに入れてみるも変わらずに発振する。出力トランスの2次側の回路を変更していたので帰還が間違ったかとも思ったがモーターボーティングにはならんだろう、、。整流管交換しても変わらない。でも5U4Gから5U4GBに変えたら(本来こちら)B電圧が15V上昇して随分しっかりした音になった。16Ω端子では起きないしハムも載らない。さて、、。


 そのうち定電圧放電管がチカチカしている事に気づいた。
 定電圧放電管の発振はWE143でも経験した。その時調べてみたら放電管を通過する電流が少ない時に、、とあったのでとりあえず100kΩのブリーダー抵抗を入れて回避している。今回は放電管を交換して、コンデンサーを取り替えて、ブリーダー抵抗を追加して、終段のカソード抵抗も交換したが治らず。負帰還部分を外すと発振は治る。仕方ないのでこの部分のコンデンサーを小さいのに変更した。
 これで発振はしなくなったが理由がわからないのでなんとも悔しさは残る。

 ALTEC A333Aと聴き比べてみるがダンピングファクターコントロールを回しても変化するし負帰還の具合も異なるし、、比較する事に意味がないようにも思ってしまうが、、やはりA333Aは優しくて上品なイメージ。これは6L6と6550の違いか、回路の違いかはわからないがA433Aは一段増幅が多いことが原因と考えるのが自然か。

 メーカー純正(?)組み合わせ ALTEC A 440AとALTEC A 340A
 

 これで聴いてみると、、使いやすいし聴きやすい。トーンコントロールの効き、S/Nも良好で高級感もある。センスの良いモノラルシステムになりそう。


   お読みいただきありがとうございました。



TOGA ターンテーブル について

2017-11-16 15:28:10 | レコードプレーヤー

 「TOGA」はデンマークのコペンハーゲンの音響メーカーらしいが詳しいことは不明。「Jensen」のブランドかもしれない。webで検索するとわずかにヒットする。

 製品番号は「V」で識別されていている」。いずれもアンプ内蔵らしく外部スピーカーに繋がっている。
 なぜこのメーカーに惹かれたか、、ですがデンマーク製ということもあってOrtofon製品を組み込んだ製品、それもあまり高級ハイエンドオーディオでない日常使いの製品群に興味を持ったのと、世にも不思議なカートリッジである「Ortofon type AD」に対応している製品があったことに!

 手持ちの資料から
 
 「Ortofon AD」はモノラルLPと78SPレコード両方に使用できるほとんど唯一のMCカートリッジでその切り替えはカートリッジ本体を左右にわずかに回転させて行う。カンチレバーの先はトンカチのように「T」型に左右に別れていて各々に針が取り付けられているというシロモノ。
 このアイディアには恐れ入りました。かなり強引だし専用のアーム「A212」も必要だった。カートリッジを2個用意して取り替えるのが常人の考えかと思うがホントに超越しているというか翔んでます(死語)。LPと78SPレコードが混在しているのを気軽に切り替えて音楽を楽しむためのツールだったわけで、音楽を聴く事が居住まいを正してではなく日常生活にしっかりと根ざしているという(勝手に妄想)文化の違いに少しの間思いを馳せてしまう。これは欧米で一般的だったオートチェンジャーが日本では普及しなかったこととも無関係ではなさそう。
  

 
 LPレコードの再生時と78SPレコードの再生時


 LPと78SPレコードの針圧は異なるためアームで切り替えている。クリスタルカートリッジはアームの中で回転させて切り替えていたが針圧はかなり重たかったのでその必要はなかった。写真では「TOGA V6」はクリスタルカートリッジだったようだが面白いのはトーンアームは「A212」と良く似ている。Fairchildの3個のカートリッジを搭載する202トーンアームは切り替えで回転するとカートリッジに適合した針圧がかかるようになっていた。
 

 「TOGA V3」(と思われる)
 

 

 

 

 、、と思われる、、と書いたのはエンブレムは無く(失われたのかもしれない)モーターに記載があることから。ターンテーブルの直径は230mmで軽量系なのに対してモーターは不釣り合いなほど大きい。3スピード切り替えのメカニズムは大変珍しい構造で、基本的にはアイドラードライブなのだがメインアイドラーとモーター軸を連結するのもアイドラーを用いている。中間アイドラーは各スピード毎にあるため全体で4個必要(!)というもの。通常はモーター軸が段付きで1個のアイドアドラーが上下及び左右に移動して切り替えるわけだが「TOGA V3」の構造だと中間アイドラーの水平方向の移動のみとなっている。私が入手した時点では当然ながら4個のアイドラーのゴムは劣化で使用できない状態でいつもアイドラー再生をお願いしている会社にお願いして修理した。モーター軸とターンテーブルの間にアイドラーが2個介在するわけで性能面では不利だったと思う。なぜこのような形にしたのだろうか?実際に使用してみると切り替えはとてもスムースで軽快。これを採ったか?
 ボードとターンテーブルは美しいハンマートーンでターンテーブルシートと「typeA212」アームと「typeAD」カートリッジのアイボリーが調和していてハイセンス(これも死語かも)。ターンテーブルシートは新品時はもっと白かったかと思う。220V 50Hzはヨーロッパ仕様で切り替え無し。当地では周波数変換機とトランスが必要になる。
 電源スイッチは無くアームを外側方向に振るとモーターが回転、オートストップは当然付いている。モーター軸は太いのでモーターがストップした後に中間アイドラーが接したままでもゴム部分の食い込みは少なく(使用しない時はスピード切り替えを操作して中間点にすることでアイドラーを軸から離すのが通常)操作を省略しても支障がないのかもしれない。メインアイドラーもターンテーブルに常時接している。
 小径ターンテーブルの電蓄は国産でも多数発売されたがここまでメカニズムに拘ったのは少なかったと思います。ターンテーブルが小さいので可愛らい佇まいで、不必要に大きく大げさにせずにコンパクトにまとめて日常生活を邪魔しない思想のように思う。質感も高くカタログには価格も書かれているが当時としてはやっぱり高価だったのだろうか?
 入手した時はキャビネット無しの裸状態だったので自作した。
 当時よく用いた手法で木製の椅子を2個分解して組み合わせて作った。突き板貼って仕上げたのですがずっと気に入らなかったので今回思い切って着色することにした。
 
 はじめのうちはホントに椅子買ってきて分解していたのですが最近ではホームセンターに丸椅子製作用材が売ってます。写真は分解したものだったので残った丸い座面は小型スピーカーの置き台として使ってます。


 2017/11/19 広島グリーンアリーナで行われたBUMP OF CHICKENの Live「PATHFINDER」に行ってきました。


 CDはなかなか売れないのに相変わらずライブは盛況。チケットが取りにくく今回のツアーも数回のチャレンジでようやくゲットした。彼らのライブツアーには数回参加していてこのブログでも書いたことがあります。広島グリーンアリーナでのBUMP OF CHICKENのライブは2度目の参加。
 ライブの感想ですが、、このブログはとてもマイナーなのであんまり炎上とは縁がないのであえて書きますが、、残念ながらとても未熟さが目立った内容です。まず音が悪すぎる。。音楽専用ホールでないのは分かってますが前回の「spitz」の時はとても良好だったので一概に会場のせいにはできない。彼らの持ち味はボーカルギターの「藤原基央」氏の抜群の歌唱にあることは誰も異論はないところ。であればやはりそれをもっと大切にすべきで不必要なほど大きくて歪んだバスドラム類、ボーカルの音量、音質、とスタッフは全く分かってない!とあえて断言したい。ミキサー席のすぐ近くで聴いていてこれだ、、。「ライブ独特のミキシングもあるだろう、、」という反論もあるかもしれないが彼らのライブは9割がたは打ちこみに合わせた演奏でパッケージされたものの再現をしている。にもかかわらずこの状況では精細な歌いまわしや表現は全く伝わらない。ただ大音量と振動で耳が痛いだけだ。関係者の猛省を要求したい。 次に不満なのは(私の個人的意見だが)プログラムの構成。はっきり言ってMCはつまらない。毎回同じ内容で(前日参加した人から聞いた)、観客にもコールを強いる。(少なくとも私には)無駄な時間。その時間でもっと演奏が聴きたいと思う。それも打ち込みでなく4人での演奏が聴きたい。演奏技術なんてはっきり言ってどーでもいいのです。彼らの肉声が聞きたいと思う。もう一つは、、これが一番深刻ですが、、20年もやってるのにいつまでも素人のようなステージではだめだ。ライブに真剣に向かい合っているか?それに向けて一生懸命、全力で準備しているか? 大きなコンサートツアーで当たり前に観客動員されていることに安住していないか?ほとんど進歩が感じられないし緊張感がなさすぎる。会場からの声援もまるでアイドルのコンサートのようだ(ジャニーズのショーはなかなかよく出来ていると評判だが)。グッズを売るのも結構だしチケットのゲットの仕方にしてもそうだが純粋に音楽が好きだった少年たちがいつのまにか巨大な音楽ビジネスに飲み込まれているようでとても残念に感じる。彼らはこんなもんでは決して無いと信じてます。心を鷲掴みされるような表現でまた観客を圧倒してほしい。


 ortofon タイプのカートリッジはゴム製のダンパーなのでたとえ使わなくっても劣化が進みます。久しぶりにレコードかけてみるとまずトレースしない!重針圧なのに「ザー!」と流れていく(あな恐ろしや)。。なんとか音が出ても小さい音だったり歪んだり、、。自分でダンパーを交換できれば良いのですがスキルも材料もないのでここはやはり専門家にお願いすることにしました。修理が必要なカートリッジは数個あるのですが修理代金がすごいことになりそうで(恐ろしいので)まず1個(ortofon type AD)のみ送ってみてお伺いをたてることにしました。
 修理完了までしばらく待つことにします。

 約1ヶ月で帰って来ました。

 eメールでの連絡はできないようなので電話で修理を受けてくれることを確認して送りました。しばらくして電話がありなんとプラスチックの接続パーツが動かないとの連絡。これが抜けないとカートリッジの機械部分が取り出せない。最悪接続パーツを破壊することも覚悟して手持ちのortofon typeABのを取り外して送ってましたが幸い抜けたようでそのまま帰って来た。78SPの針は大丈夫とのことだったのでLPの針だけオリジナル通りサファイアとダンパーを交換してもらった。

 早速取り付けてみる。昇圧トランスはortofon製のESL-201 アンプはJBL SA600
 

 
 アームの取り付け部を少し調整して無事に音が出た(この表現がぴったり)。普通に聞く分には不具合はない。モノラルLPの時はこちらに傾ける。アームにある針圧調整は「LP」側にするが多分10gくらいはありそう。。サファイア針は50時間が寿命とのことだが存在そのものが貴重なカートリッジなので常用は無理でオリジナル重視、これで十分です。
 壊した椅子を材料にしたプレーヤーのキャビネットは今回白に塗り直しました。角が丸いとコンパクトさが際立ちます。
 肝心の音味は、、一言で言うとこじんまりとした可愛らしい音です。冬場の寒い時期ですが立ち上がりもさほど不満はないのはモーターが大きく強力だからだと思うが北欧の気候の下で稼働するにはそれなりの苦労があったのではないだろうか。家電品は220Vと言うのも意味があるのかもしれない。

 


    お読みいただきありがとうございました。
    皆さま良いお年をお迎えください。