Decca Decolaがお嫁入り

やっとこさ入手したDecca Decolaの整備記録

UHER CR240 stereo について(2)

2018-05-30 23:17:31 | UHER

 拙宅のUHER CR240とCR240AVは両方ともに難があって稼働できていないのは前に書いた通りですがいつまでもこのままではやっぱりマズいのでとりあえずしっかり動く1台を組んでみることにします。無印とAVと何が違うのかよくわからないがまあ共通部品が多いだろうから適当にいいとこ取りしてまとめようと始めた。
 外観は無印の方がよろしいが最大の問題として再録ヘッドが片ch断線している。AVは入力ボリュームが1本折れているし録音ボタンが無い。パイロットLEDも1ヶ所光らず。
 どちらをベースにしようか迷ったがAVをメインに部品を移植しようと開始した。




 まずつまずいたのは操作ボタン。5個のボタンの4個は同じ構造。録音ボタン1個がロックの関係で形状が異なる。

 録音ボタンは長いスライドスイッチを操作していて動作も重いためスプリングも他に比べて強力。操作レバーの位置によって動きが制限される。その他のボタンはスティックに組み込まれたワイヤーと内部の小型スライドスイッチの横にセットされている樹脂パーツで動きがコントロールされる。ボタンを外すにはこのロックを外す必要があり内部の基板を外してアクセスする。無理すると受けの部分の樹脂パーツが破損する。
 
 とても繊細で巧みな構造でボタンの動きが理解できるまでかなり時間を費やしてしまった。ロックしなくなってしまった原因は写真の2個並んでいる白い樹脂パーツの片方の内部が破損していた。
 4個のボタンはスライドスイッチに直に接続するものと接続スティックを介しているものがある。厄介なのはスライドスイッチと接続スティックの接続部で、はめ込みだけの接続のようでロック機能はなさそう。この部分が緩んでしまうとボタンとスライドスイッチが離れてしまって機能不全となる。どうもAVはそうだったようで録音ボタンがなかったのもそのせいだったのかもしれない。解決するには新たなジョイントを設定しなくてはならずなかなかハードルが高そう。。
 機構を理解せずに作業すると試行錯誤の無駄な繰り返しが生じて結果的にパーツを傷めてしまう事があり、とても繊細な機構に加えて経年変化による脆弱化も進んでいていじり壊してしまう可能性が高い気がする。分解マニュアルがあるわけではないので慎重に作業するかドナーで練習してからにします。

 というわけであっさりベースを変更した。無印へパーツを移植することにします。
 
 移植する前はカウンターのライトは点灯していたのに消えてしまった。麦球外して確認するも切れていない、、。回路図をみると
 
 100基板と800基盤のランプは直列だった。800基板のランプはスペースの関係で外してある。それ以来消えていたことに気がつかなかった。どうするか後で考えましょう。
 ヘッドブロックの交換がメインイベントだが
 
 初めて気づいたのだがヘッドの形状が異なる。無印は普通の2chステレオだがAVは4トラックヘッドとなっていている。ブロックの形状などは同一なので移植して動作確認するとやはりうまくいかず動作が継続せず止まってしまう。
 無印とAVはリールについているセンサーが異なっていてAVにはついていない。機構は不明だがヘッドの残りのトラックで情報を拾っている可能性が高い。
 
 なぜシマシマセンサーが付いてないのに動きがコントロールされるのか不思議だった。ヘッドブロックのアッセンブリーの交換はできないことがわかった。
 こうなったら再録ヘッドのみの移植しかない。

 無印のヘッドとCR210のヘッド
 

 
 リードの直出しなので使いづらそうなので他から調達してみる。
 
 このヘッドはゴミになっていたカーステレオから取り出したリバース用でサイズは一緒。これで組んで音出ししてみると

 ちょっと問題があったが正常動作した。しかし特性が違うのかとてもダルで全くさえない音になってしまった。カセットデッキのヘッドは同規格で造られているらしいのがわかったのはよかったがこれでは全く使えない。

 仕方ないので(往生際が悪い)AVから

 向かって右の「UHER」と書いてあるのがそうだがやはりオートリバース用の4トラックヘッドに見える。大きさは無印と比べて一回り大きくUHER CR210のヘッドとも異なっていて(多分)Bogen製。早速交換して聴いてみるとアジマス調整もしていないがとても良好。走行系も安定していて正直感心した。これならば不満は感じない。ヘッドに付属しているテープガイドは通常ヘッドは入り口のみ、オートリバース用は入り口と出口の2ヶ所に付いている。ということはオートリバースはもともとアジマス調整という作業が省略されているのかもしれない。ではなぜ一方通行ヘッドは片方なのか?(お詳しい方、よろしければご教授ください)
 ところが録音されない。入力のDINコネクターの配線が間違っているのかなどしばらく原因を探し回ったが判ったのは鬼門の録音ボタンのS1スイッチ。録音ボタンは操作レバーがストップの時に押し込む事ができ、押し込んだままレバーを下に下げるとそのままの状態でpauseとなる。録音スタートする時は右方向に倒すと開始する。録音ボタンを途中まで押し込むと入力を感知する事がある。しっかりと押し込むと切れる。ということはスライドスイッチの位置とボタンのロック位置がずれているという事。

 ロック金具を加工しなくてはいけないかと考えたが原因はボタンに固定されているスティックとS1スイッチのジョイント部分のずれだった。ボタンとスイッチの位置関係は基板を外して確認した方がよく(写真)、この部分は非常にデリケートで破損させると修復は非常に難しい。無理は禁物だし構造がわかると録音ボタンの扱いも慎重になる。。

 これでようやく録音再生ができるようになった。しばらく聴いてみます。



 チョン・キョンファのバイオリンリサイタルに行ってきました。2018 6/5(火)東京オペラシティコンサートホール
 
 曲目はブラームス3番、フォーレ、シャコンヌ、フランク、アンコールでボカリースともう1曲 (写真はパンフレットから)

 Deccaのブルッフを聴いて以来のファンだったが永く活動を休止していた時期があったりで偶然に見つけたコンサートだった。新宿からほど近い東京オペラシティというきらびやかな(自分には眩しすぎる)場所で1階の一番後ろから2番目の席。1500人以上のホールだと思うが一杯に広がる音色に聴き入った。フルコンのピアノに全く負けない音量は急遽変更とアナウンスされたグァルネリ・デル・ジェスで当初はストラドの予定だったらしい。また曲目や演奏順序も変更があってブラームスは1番から3番になっていた。
 天才少女も御年70歳になっていたわけだが思い切って聴きにいってよかったと思う。故郷で行われた同窓会(遠方だったので今までほとんど参加したことがなかった)に出席した帰路でのコンサートです。解体直前の国立競技場にポール・マッカートニーを聴きにいった(ゲートで並んでいたら中止のアナウンス、翌年京セラドームでリベンジ)時も思ったが自分の人生に関わってきた人やモノたちにケジメをつけるというか一方的にお別れを告げるというか。東京で一泊した関係で代々木のウェスタンサウンドインクと銀座のシェルマン本店にも数十年ぶりに訪れることができて親切にしていただいてこちらもとても有意義だった。
 もちろん人生はまだまだ続くわけだが(そうあってほしいが)自分の終わりを意識するようになったり悔いが残らぬように日々過ごすということも大病を経験したおかげかと。時間は有限だ。子供の頃はそんなことは考えない。


 田舎にいる間に子供の頃に遊んだあたりをできるだけ歩き回った。
 
 裏山の諏訪神社と途中摘み取って拾ったコンビニのレジ袋に入れた「木の芽」。一般に「木の芽」は山椒の芽だが、このあたりは「アケビの新芽」で非常に美味。山菜は苦手なものが多い自分だが「こごめ」と「木の芽」は大好物。早速ゆでて卵と醤油でいただきました。

 帰省途中の新幹線にかかってきた奥様からの電話で「Hさん」が亡くなったことを知った。長くパーキンソン病を患いながらもオーディオや投釣り、バイクなど好きな事には体調を顧みずに貪欲に取り組む姿勢にとても感銘を受けた人だった。現在の自分は「Hさん」存在がなかったら全く違うものになっていただろうとと確信するほど影響を受けた。心よりご冥福をお祈り致します。

 帰宅して途中だったUHER CR240を組み立てる。

 まだ仮組です。国産のカセットデッキと比べてもミニチュアか(!)と思うくらい小型で美しい製品。

 カウンターの照明が点灯しないのはカセットテープを照らすムギ球とシリーズで繋がっていて今はスペースの関係で撤去しているから、と書いたが何とかしたい。シマシマテーブルのセンサーである800基板のLEDとフォトトランジスターを小さいものと交換したい。小型のはCR210で使った余りがあるが高さは結構ある。そこで各々を削って高さを低くしてみた。
 
 サンドペーパーで整形してコンパウンドで磨いて高径は半分くらいになった。これでちゃんと発光するか確認 大丈夫そうなので今までのと交換する。
 
 LEDにヒシチューブを被せてるのは横への赤外線漏れを防ぐ目的。ところが残念ながらフォトトランジスターの方の感度が足りない。やっぱり削るのは良くない(当たり前だ!の声が、、)
 そこで基板に穴を開けて削ってないフォトトランジスターを裏側から落とし込んで先端の位置を合わせて何とか動くようになった。 ムギ球も取り付けて
 

 

 これでようやくフル稼働となった。ちょこっと移植すればいいだろうと軽く考えて始めた合体作戦だったが思いの外時間がかかってしまった。最後のLEDとフォトトランジスターの交換も以前は横方向からの光は入らない構造だったのが透明樹脂で覆われた形態に変わって漏れが生じるのになかなか気づかずに(CR210で経験しているのにもかかわらず)ウマくいかなくて悩んだ。


 UHER CR210との比較だがCR240の方がやはり走行は安定しているように思うが決定的な差は感じない。CR210はオートリバースだが録音は一方向のみとなっている。これはやはり逆方向の走行は構造上の弱点があることの対策と思うしその方が事故が起こりにくいと思われる。ヘッドの違いからCR240とCR240AVの音の差もあるかと思うが残念ながら比較はできなかった。
 日本で認知されているUHERのCRシリーズはCR210とCR240だけかと思うが試聴記事はCR210以外は見たことがない。両者とも究極のコンパクトさゆえの高い集積度で整備を困難にする。特に整備できないスペシャルなスイッチが破損するとかなり苦しい状況となる。後発の機器はこの点が改善されているのかはわからないがそうであれば入手するのも面白いと思います。何と言っても精密模型のようなデザインのボディは思わず撫でてしまいたくなるほどキュートですから。






 お読みいただきありがとうございました。

 追記 1
 Youtubeに手持ち動画をアップしました。内臓スピーカーです。
  https://youtu.be/E99TcV8MgWs



 追記 2

 やはり劣化するのはおもにLEDのよう。オートリバースがうまく機能しない、レバーを離すと再生が止まる、などの症状の場合にはまずここを疑ってかかる。赤外線LEDがスイッチONで光っているか(肉眼では見えないので)自作のテスターで調べて

 

 これは異なる個体だがこれでLEDがダメだとはっきりしたら要交換だが適当なものが入手できない時は同規格の製品を改造してみる。頭を削って耐水ペーパーで磨いて短くしてヒシチューブを被せて赤外線の横漏れを防ぐ。

 

 取り付けて改めて発光を確認する。実際には組み立てて走行実験しないと確認できないが幸いにウマくいった。部品の交換だけなので基板へのダメージも少ない。多分このあたりがCR210,CR240の最大のウィークポイントかと思うのでこんな方法で対処できるかと思います。

 

 




 


Stellavox SP7 について

2018-05-20 22:18:36 | オープンデッキ


 Stellavox社は1955年にMr Georges Quelletによってスイスで設立されたオープンテープレコーダーメーカー。主なプロダクツは1954年に Model 54 1960年に5 Sm 1969年にSP7 1975年にSP8 1989年にSP9。日本国内で特に有名なのはSP7とSP8でNAGRA Ⅳと共にプロフェッショナル用ポータブルオープンデッキとしてマニアの羨望の的となっていた。
Stellavox社の歴史について詳しいことは不明だが1964年にはライバル会社のKudelski(NAGRA)社に売却されたがその後数年でまた独立したり色々あった様子。現在でもブランド名は残っていてオーディオ製品を供給しているようです。ポータブルオープンデッキを語る時にはNAGRAとともに必ず引き合いに出されるがどちらかといえばNAGRAの方が有名なのは実際の映画の撮影現場の映像でよく見かけたからかもしれないし多分生産量も大きく違うのではないかと思う。Stellavoxで思い出すのはソリッドステートアンプ研究家の金田明彦氏が発表していた一連のDCアンプシリーズでStellavox(年代的に多分SP7だと思うが)のメカニズムを用いて再録アンプを「無線と実験」誌に発表されていたこと。1980年前後かと思うが氏の強烈な筆力に圧倒されながら一生懸命(多分1/100も理解できなかったと思うが)読んでいた。今になって振り返るとあの頃のオーディオを取り巻く熱気が懐かしい。話が逸れたが誰かが言ったセリフで「NAGRAは持ち運べる据え置き型デッキ、Stellavoxは据え置き型にも匹敵する性能のポータブルデッキ」というのがあって(写真だけでは伝わりにくいが)実際に現物に接すると妙に納得した。Stellavoxは軽量でフィルムカメラに通ずるような雰囲気を持っていた。
 

 半世紀も前の1969年発表のStellavox SP 7だが1976年の「STEREO SOUND誌」の記事では価格は1,100,000円を超えていて改めてEMT950もそうだったが大きなお金が動く特別な世界のキカイなんだと感じる。

 

 

 

 

 久しぶりに取り出してみたら、、、ピンチローラーとキャプスタンが接触している〜! おかげでピンチローラーのゴムが変形してしている、、

 、、、やってまった(岐阜で暮らした経験あり)。しっかりと圧痕ができてしまって大切なピンチローラーが大ピンチだ!(などとシャレを言ってる余裕はない)また暗い気持ちで取り外してみると
 
 アルミ削り出しの中央にベアリングがはめ込まれている。削り出しリングは結構ラフな感じ。ゴム部の形状はちょっと変わっていて中央のテープと接する部分が一段盛り上がっている特殊な形状。さてどうするか。。

 誰もが考える(と思われる)ヤスリで整形してみる。
 
 どうやってセンター出すかが一番のポイントかと思うがボルトにテープ巻いたりして色々気が済むまでやったらドリルで咥えて回転させながらヤスリを当てる。棒状の金工ヤスリで段差をやっつけてその後は平面板に貼ったサンドペーパーで仕上げた。これで組んでみると
 
 普通に再生する。正弦波を録音再生してみようと思うが問題なく再生しているよう。これならなんとかなりそうでホッとした。このピンチローラーはとても優秀で指先で回転させると軽量にもかかわらず30秒近く回転が続く。左右のガイドローラーには50Hzと60Hzのストロボが載っている。

 回転数も問題なさそう(ローラーの径が変わっても影響しない)。これでしばらく聴いてみる。ヘッドブロックはSTEREO 7.5ips(19cm/sec)NABでScotch 203用と書いてある。 

 忘れていたがモジュロメーターの片chのムーブメントが無い。
 
 なぜこうなったか忘れてしまったが故障して外してそのままだったのかもしれない。一応替えのメーターは入手してあったので早速交換した。ムーブメントは特別なものでは無い様子。
 
 規格は一緒のようだが意匠は少し異なり交換した方は金属フレームだったので(プラスチック製と選べる状況だったが)こちらを装着した。金属フレーム用の皿ネジも付属していたが、ピッチはISOでヘッドはインチという変わったもの。

 内部の状況
 
 各セクションは色分けされたモジュールで8種類11個。ケースに色紙が貼ってあって同色のモジュールを装着するようになっている。モーターは非常に大きなもの1個でベルトの代わりに長いスプリングで動力が伝達されている。ゴムベルトより寿命は長そうだがスリップが起こりやすくこの個体は少し切り詰めて使っている。またガイドローラーのテンションのかけ方はとても凝っていて長いスプリング(というよりヨレたワイヤー)を張っていて各リール軸のブレーキと連動している。テンションも厳密に調整できるらしい。

 「据え置きデッキに匹敵する性能の」を達成するには5inchリールしかかからない本体は役不足ということで10inchリールまでセットできるツールが用意されていた。Stellavox ABR85

 原理は至って原始的でボードにリールを固定する軸を設置してリール軸と駆動する本体の軸に専用プーリーをねじ込んでゴムベルトで繋ぐというもの。ABR85には電源は必要ないし本体との接続はゴムベルトのテンションを見ながら2ヶ所クランプで固定する。
 
 ビジュアル的には最上級にカッコよろしいしほとんど問題なく動作する。しかし実際に現場で使われる事は少なかったのではないかと思っている。というのは巻き戻しの時はかなりのトルクが必要で10inchリールを回し切るには非力で途中で止まってしまうことが多い。時間が勝負の現場では致命的だったと思う。原因は本体内部のスプリングベルトのスリップ。

 しばらく動かしていたら問題が現れた。ピンチローラーのアームの位置が定まらない。またSTOPからPLAYにしてもたまにアームが動かないことがある。デッキ上のアームを固定している部分の緩みではないので(ロックされていて位置は変わらない構造))トラブルは内部の伝達機構のよう。モーターをどけないと見えないところなのでモーターを降ろして確認することにした。
 モーターはデッキ上にある3本のネジで固定されている。

 モーターにはアーム駆動用のギアとアームが組み込まれているがモーターを下ろすとバラバラになって慌てる。。
 
 モーターの側面には首振りギアがありモーターの回転方向でギアも首振りする。このギアから外部のギアに伝達されアームが動く。
 組む時はモーターのハウジングにこれらを装着した状態で本体に戻すのが良さそうな気がする。

 戻す時は周囲のモジュールユニットを外して視野をよくしてテンションワイヤーに当たらないように注意する。

 肝心なポジションが定まらない原因は

 ピンボケ御免。アームと軸の接続部が緩んでいる!ここはしっかり固定されている必要ありだがちょっと手を入れた気配があるのでひょっとすると修理歴があるのかもしれない。
 またPLAY時にアームが動かないのはギアが噛み合わないのが原因のよう。どちらも要修理で高額製品だけに気が重い。。さてどうしよう。。

 まずこのアームだがもともとどうやって固定していたかよくわからない。再生状態で最適と思われる位置に調整して分解、そっと取り出してみる。

 接合部にハンダ固定も考えたが見えている側が回転軸のベース部分と接触するので厚みが取れない。軸部とプレート部の接触面積は結構ありそうなのと完全に密着していない(紙1枚の隙間あり)ので非分解で接着することにした。これで不具合が出るようなら溝を削り込んでロックのためのキーを埋め込むことにします。

 モーターに組み込まれている首振りギアは樹脂製で次の真鍮製のギアを保護しているように見える。そうするとこのギアは消耗品かもしれない。
 

 
 結構汚れています。ギアの谷部分も歯ブラシと楊枝使って掃除する。給油は粘らないオイルということで(釣りの)リール用を使う。これで新たな不具合は解消したが巻き戻し時のスリップはプーリーを掃除しても変わらず。ただ10inchリールを使う時は直に左右を繋げばとりあえず用は達することはできる。

 モーターの駆動プーリーにはスリップ防止のゴムが仕込んであるがこの劣化もあるのかもしれない。

 スプリングベルトをゴムベルトと交換してみた。
 
 適当なものがなかったのでUHER CR210から外した廃品。しかしスリップは少なくなりちょっと快適な動作にはなった。期待してABR85に載せてみる。

 やっぱりスリップしてそのままでは巻き戻しきれない。しかし巻き上げベルトを外すとしっかり最後まで巻戻せた。

 Stellavox SP7と組み合わせるミキサーのStellavox AMI

 入力は5chで記号の意味はパネルに描いてある。トーンコントロールを⚪︎に合わせるとRIAA特性になるらしい。SP7と同寸法でモジュロメーターは共通のよう。ACアダプターも共通だが別に用意する必要がある。電池駆動できるのも一緒。
 

 


 残念ながら未だ活躍する機会がありません。


 久しぶりに稼働させてみたらやっぱり不具合があった。ベルトやギアなどの消耗品はどうやって入手したら良いのだろう?今となっては大切に使うしかないが世界展開した製品であるだろうから何とかなっているのかもしれない。Stellavoxの印象はNAGRAと比較するとどこか華奢な感じがあって現場でヘビーデューティーに使い倒した感じが薄い。ネジ類を面一に処理してテープの走行を妨げないようにしたり「ソリッドでプレーン」を強調したデザインはパネルのヘアーラインや細かなパーツのエッジの処理などが美しく熟練工が匠の技でブロックから削り出したことが伺えたり、、と細部まで非常に拘って造り込んでいる。業務機にありがちな無骨さはほとんど感じられずまさにスイスメイドのイメージ通りの製品だと思う。一方でメカニズムは非常に簡素で早送りは再生スピードが最速になる機構のみだし大切なpause機構もピンチローラーアームにほとんどオマケ程度に組み込まれているだけである。可搬性を追求していかに軽量化することに注力した結果と思うがそのためか動作はクリチカルなところがあってオールラウンドにバリバリ仕事をこなすにはちょっと問題アリだったかもしれない。エレクトリック回路はマークレビンソンのようなモジュール化され不具合があれば短時間で対処できたと思われる。
 現代にあってStellavoxは「オーディオ界のバルナックライカのような趣味性の高いギア」という位置付けかと思います。健気に10inchリールを回して音楽を奏でる姿を愛でるような。






 お読みいただきありがとうございました。



 追記 1
 ラインから録音したら片chが途切れ途切れになる。録音ヘッドへのテープの接触具合を変えると状態が変化する。しばらくアタフタしたが原因はヘッドブロックにあるテープガイドの1本が緩んでいた、、というもの。締め付けで解決した。

 追記 2
 金田明彦氏のDCアンプシリーズでStellavox SP7を使った録音アンプの記事は1978年〜1979年にかけて3回に渡って掲載されていました。無線と実験 1979年4月号の製作編

 金田明彦氏は現在も「MJ」誌などで健筆をふるっておられるそうです。




 



 


UHER CR210 stereo について(2)

2018-05-17 16:18:33 | UHER
 懲りもせずにまた不動のUHER CR210を入手した。フランスからで生まれて初めてフランス語の手紙を書いた。と言ってもわかったのは「Bonjour」と「merci」だけで翻訳ソフトのおかげです。荷物を送る方法を尋ねてきたので相手の提案した「◯APPY ◯ost」というのにした。ところが発送されて数日で到着するはずがかなり日にちが経っても音沙汰なし。一応トラッキングできるようになってるので見ていると3週間くらいして「ベルギーに到着した」と出た! 3週間も経ってるのにまだヨーロッパから出てないのか、、とは思ったが「音沙汰なし」に比べれば100倍マシなのでとりあえず様子を見ているとちょうど1ヶ月目で到着した。とにかく良かったがやっぱりヨーロッパは遠いということか。。

 来たのは2台で1台は見た目はキレイ、もう1台はちょっと変わった格好で外装の欠品もあるしいかにも部品どり、、という風情。ヨーロッパ、アメリカ仕様のACアダプターが1台付属していたがスイッチング電源がまだ無かった頃に山水が仕立てた日本国内用ACアダプターでキレイな方へ電源供給してみると、、やっぱり動かず。そのうち焦げ臭い匂いと煙が!
 
 煙はこの辺りから、、だが部品配置がキツキツでよく分からない。ACアダプターのヒューズも切れている。とりあえずそれらしい電解コンデンサーを1個外して基板を見てみると

 どうもその隣の抵抗からの発煙のよう。電源電圧を測ってみると9.3Vだったのがスイッチが入ると3V台まで低下していてどこかで短絡に近い状態らしい。着脱できるコネクター、基板を順番に外していくとモーター基板を外すと電圧の低下は無くなる。コネクターと回路図を照らし合わせると灰色線で電源供給されている。モーター付近で短絡していれば当然それまでのラインも大電流による影響が出ると思うがそれらしき様子はない。 モーター基板のコネクターへの灰色線は先ほど発煙したあたりに接続されている。
 
 短絡したのはC26で大電流が流れての発煙はR67と思われた。電源回路の1000μFの電解コンデンサーはスペースの関係か耐圧がギリの10Vでこれでは信頼性は低かったのではないだろうか。周辺のコンデンサーとともに手持ちの同容量、高耐圧のと交換した。
 
 外したコンデンサーをアナログテスターでチェックするとやっぱり絶縁が低下していた。これで異常な電圧低下は無くなりモーターが回転するようになった。そのモーターは外してみると
 
 モーターに巻きつけてあるスポンジはボロボロでいっぱい散っている。適当なクッションと交換した。またキャプスタンに巻きついているゴミは大量でしっかり稼働していたことが伺える。またドライブベルトは適当なのがなかったので戴いた熱溶着ベルトで再製した。その他のベルトは手持ちのものと交換した。
 
 まだ電池ボックスの金具が傷んでたりするがこれで一応稼働するようになった。ドライブゴムベルトは一応注文したので様子を見ながら交換することにします。



 あまり弄られてなかったのが幸いしてかなんとか短時間で修理の目処は立った。小型にまとめる必要からか耐圧のギリなパーツを使ったりで(ACアダプターのコンデンサーも無負荷では耐圧オーバーしている)堅牢な製品というドイツ製品のイメージからちょっと外れているかもしれない。収穫だったのはオリジナルに近い内部が観察できたこと。

 もう一台の(部品取りと思われた)UHER CR210 stereoです。外装は欠品多数。
  
 今まで見て来たCR210と異なり、色はグレイ、カセットの小窓は固定で小さい。SNo,は17000台と若いので初期の製品と思われる。先祖と思われる同じUHERのCR134は窓はなかったようなので過渡的な製品なのかもしれない。

 しかし内部はほぼ同じに見えるが配線の処理などはちょっと荒れている。ところが通電してみると不完全ながら手を入れればちゃんと動きそうでこれはラッキーです。少なくとも発煙は無い。


 灰色機から整備を始めます。決定的な損傷はなさそうだったので高を括ってました。この個体は長期間蓋が開けられていたらしく内部にワタゴミがかなり溜まっている。ちょっと掃除してごまかそうと思っていたがメカニズムの動きがスムースではない。そこで(無理しない範囲で)分解掃除してみる。ゴムベルトも当然交換するので新たに注文した。


 
 巻き上げ軸を外して清掃、給油し今回はその他のメカニズムも分解した。ヘッド周りは2個のソレノイドでコントロールされるが、早送り、巻き戻しは手動でレバーを左右に動かすと各々の軸についているクラッチが操作され動力が伝達される構造。スイッチが入るとモーターは常時回転していて2個のフライホイールも回っています。ところが作業が済んで組み立てるとヘッド周りのソレノイドが作動しなくなってしまった。。
 
 思い当たることはある。。カセットの出入り口にある開閉リッドを固定するナットがソレノイドをドライブするTrに近く通電したままこの辺りを触るとTrが簡単にショートする。心当たりがあったのでやってしまった!と思い、この部分の部品取り機からの移植を試みたが交換しても動作せずで途方にくれてしまった。手を入れる前までは動いていたのに、、と暗い気持ちで原因を探る。
 
 回路図を参考にソレノイドの600基板への通電具合を探ってみるとどうも来ていない。原因はメカニズムと連動するスイッチ周辺とわかってホッとした。組み立てる時に招いた不具合でポンコツ素人丸出しだ。他にも結構問題があって思いの外時間がかかってしまったが完了した。

 録音再生を繰り返したが問題はなさそう。ただ内蔵スピーカーが結構ビビる。出力を外部スピーカーに繋ぐと(意図的なのか)結構低音が強調された音なのでひょっとするとアンプ部に不具合があるのかもしれない。ただしLINE出力は特に問題は感じない。



 続いてキレイな方の整備の続きをした。細かな所のツメと掃除とスピーカーとベルト交換など。スピーカーは

 なんと中にワタが押し込まれている!ビビリ防止のつもりだろうか?これはドナーと交換した。
 電池ボックスの端子は腐食していることが多い。薄板なので破損もしばしばで、今回はドナーから移植した。専用のNi-Cd電池はやっぱり腐食している。入れっぱなし注意。。
 
 端子にコンデンサーが増設されているのと無いのもある。Ni-Cd電池を入れて外部から電源を接続すると充電するようになっていると思われるし、充電しながら稼働する方がリップル分が減る(と思う)。単2電池でも稼働するので電池の再生はやめました。
 スイッチを入れた直後はちょっと回転が安定しないことがある。しばらく様子を見ることにします。


 
 いつのまにか増殖していたUHER CR210 stereoだがなんとか3台は稼働するようになった。残りの1台はドナーだが実はこの1台が最初に入手して外部に修理に出したりしていたもの。自分で行った修理に失敗した結果、余生をドナーとして送ることになってしまった。いろいろ探してもパーツの供給は少なく維持するためには(ドナーの)存在は欠かせない。特に純正のネジ類は重要で製品の顔の一部だと思っています。修理をするために新たなドナーを入手する。。この繰り返しが増殖の理由です。戒めとしたい。





 お読みいただきありがとうございました。