Decca Decolaがお嫁入り

やっとこさ入手したDecca Decolaの整備記録

SONY TC-1100(B) について

2024-06-30 21:26:28 | オーディオ

 約半世紀前の1975年にSONYから発売されたモノラルカセットテープレコーダー。有名なWALKMANは1979年に発売開始されるのでその4年前という事になる。シルバーとブラック(B)の2色で価格は39,800円と42,800円でブラックの方が手間がかかるのか3,000円高い。大きさは幅174mmX高さ29.5mmX奥行き113mmでカッパブックス(光文社のペーパーバック本ですでに廃刊)と同じ大きさで極薄というのが売りだった。SONYは8mmハンディーカムでも「パスポートサイズ」というキャッチコピーがありいかに小型の製品であるかを伝えるうまい戦略だったと思う。当時から「高性能、高信頼性」は日本の電気製品に共通した特徴だったわけだがそれに加えてSONY製品は小型で美しく楽しいという魅力あふれる製品群で世界を席巻していた。

 半世紀前の39,800円は現代の高級スマホ並みの価格だったと思うがテープレコーダーという用途が限られる製品ということを考えるとかなりの贅沢品だったに違いない。それでも当時はよく見かけたと記憶するがオーナーのビジネスマンや学生は(たとえ使う機会がなくても)美しいガジェットを携帯するという満足感があったのだろうと想像する。家が裕福な友人が持っていて借りたことがあり私も欲しくてたまらなかったがとても手が届くものではなかった。ちなみにシルバーとブラックでは圧倒的にシルバーに魅力を感じていた。やがて音声の記録媒体はカセットやマイクロカセットから個体メモリーに移行していきカセットWALKMANとともにその役割を終えた。現在のボイスメモはスマホアプリとして使われることが多いと思う。

 どれくらいの台数が生産されたかは不明だが中古市場でも多くが取引されている。電池の液漏れや酷使されて傷が目立つものが多いがケースに入れられてあったものは綺麗な状態を保っているのもある。WALKMANを除いてもポケットサイズのカセットテープレコーダーは数多いが(ちなみにWALKMANだけで150種類以上ある)この機種ほど外観の魅力を感じる製品を見たことがない。最近偶然に状態の良さそうなものをwebで見かけたのだが懐かしさもあって入手した。

   

 

 残念ながらトップのパネルの一部が歪んでいる。何かに引っ掛けたか?ここのリペアーは最重要で失敗したら価値はほぼ無くなるよ。。

 パネルはずして慎重に修正しました。この個体は電池ボックス(単3が4本)の腐食もなく外観は非常に綺麗で半世紀前の製品だが新品同様と言っても過言でないくらい。ケースも無傷でほとんど稼働していなかったと思われる。

 数十年ぶりに再会して改めて観察すると当時の高価なアイテムらしく全体に丁寧に作り込まれている。やはり自分はNakamichi 700やB&O 4000シリーズなどのようなソリッドでプレーンなデザインが好きなのだと思う。

 早速単三乾電池買ってきて動作させてみる。最近は単三より単四使う機器が多くストックも切れたままになっていた。乾電池の出番は以前より少なくなったがエネルギーの備蓄という観点からも把握がしやすく安心感があるのでもうしばらくは生き残るのではないかと思っている。適当なテープを入れて再生ボタンを押すとブー!という大きな音が出て発振している様子。軸は回転しない、、と思ったらpouseスイッチが入っていて解除すると再生、巻き戻しはテープ動作したが早送りは不動。しばらくすると発振は少し落ち着いたが再生音は小さくその割にヒスノイズはあってボリュームは効いている。バッテリーチェックボタンを押してもメーターは振れないなどやはり当たり前にすんなりとは動かない。

 内部へのアクセスは容易、ネジ4本で裏蓋外すと右端は電池ボックスのスペース、その内側は結構大きくてしっかりしたモーター。モーターからの動力はL字に走行しているゴムベルトでキャプスタンのフライホイールを回す。フライホイールが小さいのは可搬性能を重視したためか?

基板はネジ2本、フライホイールの樹脂製軸受を支えているプレートはビス3本でとまっている。

    

 この状態で4本のゴムベルト全てが交換できる。一番大きいのがモーターからの駆動ベルトでこの手配が一番困難かと思う。幸い手持ちの中に適当なものがあって助かった。オークションを見るとベルト4本セットで販売されていた。ただし価格は本体よりずっと高いがどうしても入手が困難ならこれも止むを得ない。

  

 ところがベルトを交換したがやはり早送りは動かない。電池から外部電源に切り替えて電流を測ってみると通常は200mA程度の電流なのだが早送りだけ3倍になっていてこれはいったい、、?原因は単純でモーターの負荷が高まって回りづらいため消費電力もアップしただけのよう。早送りの時に介するアイドラーの回転が渋い。

  

取り外してクイックドライクリーナーで軸と共に洗浄給油して解決した。巻き上げ軸の回転が止まるとオートストップがかかる構造。これで駆動系の問題は解消した。しかし再生すると発振したり大きなノイズが入る。しばらく触っていると再生、録音の切り替えスライドスイッチの接触不良とわかりこちらも同様に洗浄して解決した。しっかりメンテナンスするためにはハンダ付けされているスライドスイッチを基板からとり外す必要があるがここはスルーした。内蔵マイクから録音できることも確認した。

 基板上の古い電解コンデンサーは時代を感じるが結構生きていることが多い一方でタンタルコンデンサーも使われているがこちらは意外に寿命が短い。でもどちらもスルーしてしばらく古いテープを聴いてみた。ワウフラッターが思ったよりも大きいがこの構造では致し方ない気もするがもうすこしブラッシュアップすれば多少の改善が見込めると思う。今の時代に新たにカセットテープに録音する局面は殆ど無いと言って良いだろう。カセットを常用するメリットもないだろうと思っていた。

 あまり気にしていなかったのだが今回色々と調べてみると限られた範囲だと思うがカセットテープを取り巻く状況が随分と熱いことがわかった。過去に発売されていた一部の高級カセットデッキが高騰していることは知っていたが驚いたのはWALKMANの一部の機種も高騰していること。特にWALKMAN professionalの人気はすざまじく最終型の取引価格はTC-D5のそれを上回っている。また上蓋が透明アクリルタイプのWALKMANに見栄えのするカセットテープ(これもかなり高価)を装着するのが流行っているらしい。さまざまなデザインがあるからお気に入りもそれぞれかと思っていたがどうも万人の趣向は一致する傾向のようだ。

 久しぶりのテープレコーダーのメンテナンスを楽しみました。

カタログの説明によるとメーターは特に問題ないようです。

 

 

お読みいただきありがとうございました。

後日談1

 しばらく聞いていたがやっぱりワウが気になる。ゴムベルトをもう数mm短いものに交換してフライホイール、ピンチローラーなどを掃除、注油してみる。

フライホイールは2つあり大きい方はキャプスタン軸、小さい方はL字に走行しているゴムベルトの折れ曲がっている部分のガイドとして回っている。注油後はキャプスタン軸とアイドラーを十分に脱脂する。これで聴いてみると少し改善したか、、と思う程度でちょっとがっかりする。

後日談2

 早送りが元気がないかな、、と思っていたが再生時に巻き上げが止まるようになってしまった。

 キャプスタンのフライホイールから回転を伝達するアイドラーとオートシャットオフを司るローラーとがスリップする。無水アルコールで清拭したりスプリングの荷重を変えてみたりするがあまり変わらない。これはゴムが劣化、硬化ゆえのスリップらしい。ワウが大きいのもピンチローラーの劣化の可能性が高い。ゴムをサンドペーパーで一層削って解決したがいずれ交換が必要になる。ゴムパーツは一応汎用品が市販されているがちょうど良いサイズのものがあるかは不明。テープレコーダーはゴム部品が多く使われていて対応が悩ましい。ゴムパッキンやOリングを流用することもある。


リフレッシュ 2題

2024-06-10 19:15:34 | 日記

リフレッシュ その1

 梅雨入りが遅れていてあと1週間は晴れの日が続くらしい。しかし数日前から蒸し暑さが増したようで梅雨の気配は感じてきてちょっと過ごしにくくなってきた。今日はよく晴れたので洗車、waxがけして以前から気になっているヘッドライトカバーの黄ばみをとってみよう。先日オートバックスに行った時に購入した製品

 

店頭にはヘッドライトカバーのコーティング剤は多数あったのだがこれを選んだ深い理由は特にない。価格も似たり寄ったりでいずれもコンパウンドで黄ばみを取ってからコーティング液を塗るものかと思う。洗車して早速やってみよう。2液の他にクロス、手袋まで付属している。

施術前

 

施術後

 

写真だとわかりずらいが結構透明になって説明には1年持つと書いてある。1年半ぶりにディーラーでオイル交換しようと思っているので見栄を張って綺麗にした次第。雨が降らないうちに早速予約を入れましょう。前回はオイル漏れなど色々と問題を指摘されたのだが一通り対策したので今回は何を言われるか楽しみだ。

 

リフレッシュ その2

 外塀に組み込まれているポストがいかにもみすぼらしくなってきた。昭和の製品なので取り替えてもいいのだが多分コンクリートを触らなくてはならぬ。安易に流れて決定的に壊れるまで手直ししてなんとか頑張ってもらおう。

 できるだけ分解して数十年たまったホコリを掃除する。二重底からコイン、玄関の鍵まで出てきた。養生してペーパーかけて脱脂、ミッチャクロン、プライマー吹いて上塗り。ステンレス部分は目の細かいスチールウールで磨く。

   

 黄色に変色していた名板はペーパーかけたが少し薄くなった程度。漂白は時間がある時に先延ばししてとりあえずプリンターで印刷した名前シールを二重に貼って「ホイ、できた!」

 ライト点灯すると結構いい感じ。最近宅配便の誤配達が多いのだがこれで少しは改善するかも。 内蔵のインターフォンは取り外しているのだが「ボタン部分は穴だけ」状態で「壊れてますアピール」している(チャイムは玄関ドア横にあってインターホンを改造してボタンだけ機能させている)。夕方から始めて夕食前に完成した。

 毎年玉ねぎを植えていて先日収穫したのだが今年は結構大きくて嬉しい。昨年は玉ねぎの価格が高騰したが今年はどうだろう。一昨日は梅とアプリコット(あんず)とアプリコットに接木した梅の収穫をしてアプリコットはそのまま食し、そのほかはシロップとサワー漬けにした。夏になったら炭酸で割っておいしくいただきます。飲み終わって残った梅でジャム作って冷凍保存する。もう少しするとヤマモモが採れるのでこれもジャムに。我が家の冷凍庫は結構ジャムに占有されている。

 

お読みいただきありがとうございました。

 


SHARP 5P-MIU 3S-111R について

2024-06-01 22:47:06 | テレビ

 SHARP 5P-MIU(3S-111R) は1970年代(1972年?という記述がある)のspace age design の5inch小型白黒ブラウン管テレビ。色はオレンジと赤と白を確認している。国内では5P-MIU、海外では3S-111Rという型番で販売されていたが両者の仕様は若干異なっている。

SHARP 5P-MIU

SHARP  3S-111R

 

 本体は電池駆動もしくは外部ACアダプターが必要で5P-MIU用は通常のコードが両端から出ているもの、一方3S-111R用はACアダプターが内蔵されているテレビ台が付属していた。両者とも生産数は少なかったようであまり見ることはない。

 本体サイズは9X10X9 inch (229X254X229 mm)でVHF UHF 受信、収納できるハンドル付き、半世紀以上前の製品だがなかなか凝った美しい形状とカラー。側面から前面にかけてのアクリルカバーの正面観は台形で全てのパネルに傾きや湾曲があるなど樹脂素材を生かしたデザイン。

 

 銀色のバーはハンドルで押すと飛び出す。底には電池駆動用のBOXがあり裏板に単1電池10個が収まる。仕様ではDC12〜17V 500mAなので乾電池でも結構長時間稼働が可能。

 

 

 5P-MIU専用のACアダプターもしっかりデザインされている。まず欠品のロッドアンテナを仕立てて取り付けた。「受け」をどうするか思案中。これでAC100Vで通電すると一応不安定ながら画と音は出た。

 早速分解してみる

   

 外観はそれほど汚れてなかったが内部はいつものように埃が積っている。掃除しながら様子を伺うが今回も回路図は入手できていない。

  

 

 ブラウン管の尻尾を囲む形態のフレームの上部には電源基板、側面にはVIF,AF基板がある。パターンが白で表面に印刷してあるのでメンテナンスや修理にはありがたい。高圧、偏向基板は底にあるが基板どうしを結ぶワイヤーハーネスに余裕を持たせている関係で量が多くかなり混雑している印象。掃除しながら操作していたらどこかをショートしたらしく直付けのヒューズが切れてしまい今後を考えてヒューズホルダーに置き換えた。ACアダプターにもヒューズが組み込まれている。

 

 電圧出力は10V程度で少し低い気がする。しかし安定化されていると思われる電源基板の半固定ボリュームを調整して12Vにすると映像が出なくなってしまった。電解コンデンサーが劣化していて電圧上昇に耐えれないのかもしれずとりあえず元の電圧に戻した。また背面にある画面調整用の4個の半固定抵抗のうち1個が接触不良を起こしていた。開放型なので無水アルコールで清拭して何とか復活した。全体的にしっかり作られていてトイ的な印象はなく品質の高さを感じます。今回は主だった部品交換はなしで外装と内部の清掃、給油で終了とした。

 

 

     

 収納するハンドルの処理が洒落ている。しかし内部のハンドルの固定部はあまり信用できない構造なので(ハンドルなのに)ここは持たない方がよろしい。目立った傷もほとんどなくデスクトップに置くと質感もあり結構いい感じ。3S111Rのように台に載せるとまた違った印象になると思います。

 

 

お読みいただきありがとうございました。

 後日談1

 しばらくVHSビデオを視聴していた。画面向かって右側がすこし歪んでいる(圧縮されているような)かな、、と思っていたのだが気がつくと縦線1本になっていた。

 

 横線1本は垂直偏向回路の故障で修理本によく出てくるパターンなのだが縦線はあまり見当たらない。輝線が出ているということは高圧回路は働いているわけだがこれはどうしたことだろう?実は以前の修理でも同様の症状のことがあった。水平偏向コイル周辺の不具合だと思われ偏向コイルの断線が一番困るが当時の原因は直列に接続されているコンデンサーの故障だった。再びブラウン管を引っ張り出してチェックして偏向コイルの断線がないことを確認し一安心、コイルから伸びている緑のリード線を辿っていくと

 

見覚えのある黄緑のコンデンサーがある。早速はずしてチェッカーにかけるとやはり不良。

 

手持ちの耐圧の高い2.2μFと、ついでに平滑回路の電解コンデンサーも同容量と交換した。このコンデンサーの不良は結構な頻度かもしれない。

   

幸いこれで復活し画面の歪みも解消され平滑回路のコンデンサーを交換したためか画面の安定性も向上したと思っていた。ところが取り外した平滑回路の電解コンデンサーは特に問題なく関係なかった。