Decca Decolaがお嫁入り

やっとこさ入手したDecca Decolaの整備記録

HICKOK 真空管試験機 TV-2 について

2018-04-16 19:06:00 | 真空管試験機

 不調の電子機器から取り出した真空管は見ただけでは良否の判別はできないので真空管試験機の出番となる。幼い頃の記憶では電気屋のおじさんは真空管テレビを修理するときには真空管がいっぱい詰まってたトランクからさっと取り出して交換しててなかなかカッコ良かったが良不良の判定に真空管試験機を使っていたかは覚えていない。余談だが当時電気屋に乾電池を買いに行くと1本ずつチェッカーにかけて(電池の陳列ケースの一部に組み込まれてた)メーターが触れるのを確認して売っていた。「アメリカのスーパーでは普通に真空管を売ってて、購入者は自由に設置してある真空管チェッカーにかけてから購入する」という記事を初歩のラジオだったかで読んだ記憶がある。自宅の機器から外した真空管を持ち込んで判断したのか売ってる新品を選別するためのものかはわからない。真空管試験機は憧れの測定器で最初に買ったのはHICKOK社製だった。20年ほど前にお店から不動状態で購入したのだが整備しながら今も使い続けている。今回入手したのは同じHICKOKの「TV-2」というもの。以前から気になっていたのだが縁あって拙宅にやってきた。

 HICKOK社は1910年というから今から100年以上前のハレー彗星が地球に接近した年にRobert D. Hickokによってジョージア州アトランタに電気時計メーカーとして設立された。1920年頃から開発されたばかりの真空管の試験機を製造するようになったらしい。HICKOK社は多数の製品を発表していてまた世の中には真空管試験機のコレクターも存在するらしくwebでもそれらは紹介されている。

 真空管試験機にはメーターやつまみがぎっしりと並んでいてカッコよろしい。HICKOK TV-2はその筆頭なのは異論のないところだ(ホントか?!)。なんてたってメーターが6個も並んでいる!ところでカッコはさておき真空管試験機は何を測定して良否を判断しているのだろう?また真空管にもいろんな種類があって真空管試験機も1機種で全ての真空管を網羅しているわけではない。真空管試験機にはデータ表が付属してて(大抵がロール紙だが中にはパンチカードもある)その表を見ながらスイッチを設定して測定する。したがって表にない真空管の測定はできないことになる。

 真空管は発生した電子が陰極から陽極に達することで回路に電流が流れる。発生する電子の量が少なくなったり、電子の流れのコントロールがうまくいかないと機能不全になる。真空管試験機はこれらの状態を測定しているらしい。したがって大別すると2種類あり1種類はエミッション測定型でどの程度電子が放出されているかの測定、もう1種類はgm(相互コンダクタンス)測定型。一般にエミッション測定型は簡易型と言われ真空度が低下するなどで電子の放出量が少なくなり電流量が減ることで判定される。gm(相互コンダクタンス)は以前は「mho(モー)」と呼ばれていた。mhoとは実はohm(オーム Ω)の逆さ読みでmhoの記号はΩをひっくり返したものだった。オームの法則では抵抗値(Ω)は電圧を電流で割ったものだがmhoは電流を電圧で割ったものだからオームと反対だからmhoにした!、、と冗談のような話だがやっぱり具合が悪かったのか現在では「相互コンダクタンス 単位はG(ジーメンス)」ということになっている。実際に動作させて信号を加えた状態にしてちゃんと増幅されているかを判断しているらしい。その際に信号はグリッドに加わり電圧表示され、プレートからの出力は電流表示されるので(実はされないのだが)電流を電圧で割ってる関係で上記の表記となる(と思います。。自信なし)。

 TV-2には「TV-2/U」「TV-2A/U」「TV-2B/U」「TV-2C/U」の4種類ある。1961年5月のマニュアルには「TV-2C/U」の記述はなく同年9月のマニュアルにはあるので最終型はこの年に発表された。いつまで製造されていたかは不明だが(1966年6月のマニュアルはある)最終型でも半世紀は経過していると思われる。軍用に製造されていたため過酷な環境下でも耐えられる堅牢な構造であることからwestern electric製品同様長生きしそうな様子。TV-2は各要素はメーター直読で管理されているのでメーターの精度が確保されていれば校正の必要はない(ホントか?!)。


 その1 HICKOK TV-2C/U sn,34*

 届いたのを確認すると「SIGNALメーター」にひび割れがある。修復を試みた跡があるので輸送時のトラブルではなく商品説明にもなかった。修復してあるので支障無しということか。外してみると
 
 メーターは「phastron」社製で全てのメーターがここの製品。分解できる構造でムーブメントまで到達できる。ガラスと思ってたのはアクリル製でかなりの厚さ、またパネルへの固定は分厚いゴムパッキンを介している。気になれば同社同サイズのメーターを探してメーター窓だけ移植するのが良さそう。

 ところで点検するときはパネルを立てて行うのが楽だが自立用の棒状の支えが付いている。

 細やかな配慮でこれがないとロータリースイッチを痛めやすい。

 商品説明では「バイアス電圧が不良」とあった。バイアス電圧は向かって左から2番目のM2メーターで表示される。その下のスイッチでレンジ切り替え、巻線ボリュームでバイアス電圧が50Vまで調節される。状態としては50Vレンジで針が動かない、メーターの動きがスムースでなくギクシャクしている。
 またメーターを外して分解してみる。

 ギクシャクした動きなのでムーブメントを取り出して確認したがメーター軸が軸受けから外れているわけではない。軸受けの位置はネジで調節する構造なので針が文字盤と干渉しないように注意しながら調節したら何回かのチャレンジでスムースな動きになった。
 次に50Vレンジで反応しない原因を探る。

 回路図ではバイアス電圧を発生するために6X4が1本使われている。その直後の電解コンデンサーC3も怪しい。
 
 内部には予備の真空管が保管されていてさすがヘビーデューティー(?)。だが6X4を交換してもコンデンサー入れ替えても変化無しで両者ともまだ生きていた。巻線ボリュームでの電圧を測ってみるとちゃんと50Vレンジでも出ているのでメーター回路の不良とわかる。回路図の「R10」が怪しい。部品配置図もあるし基板に印刷されてるので探すのは楽です。
  
 おー!なんと配線が切れてる、、。分かりやすいトラブルでよかった。修復してテスターと比較してみると

 ちょっと高めですが+5%には収まっている。ソケット出力ではもう少し低くなるかもしれないのでこのままとします。

 これで様子を伺っていると今度はプレート電圧メーターの動きもおかしい。やはりギクシャクする。。これも分解してピポッドの調節した。
 
 これでスムースになった。

 やはりメーターは命なのでここが不調だと困ったことになる。ただいざとなったらムーブメントは他から移植できる可能性もあるかと思う。

 次行きます。ACコードがボロボロ。

 このタイプはALTECのアンプなどにも使われてるが同様な状態になっている。

 プラグも魅力的な形なので移植。

 パイロットランプのドーム型ジュエルとメーターカバーは一応手配したので到着を待つことにします。




 その2 HICKOK TV-2B/U sn,故意に消してある


 TV-2C/Uと何が違うのか分かってないが見た目は同じに見える。クリップの付いてる赤黒2本のワイヤーのうち

 赤い方は被覆がボオロボロなので交換したくらいで他は問題なさそう。TV-2は3本の整流管(83を1本 6X4を2本)使ってるが83と6X4の1本づつが予備に内蔵されている。そのほかにもヒューズホルダーは3個あるのだが1個は接続されておらず予備ヒューズが入っている(3本とも3A)。そのほか蓋にもパイロットランプ1個、ヒューズ数本を収納できる引き出しがあってマニア心をくすぐる。。戦場で命がかかった状況というのはこういう装備が必要なのだと思う。

 赤コードを交換して完了

 メーターは「phastron」だが少し形状が異なる。




 その3 HICKOK TV-2C/U sn,35*

 「その1」と同じTV-2C/Uでシリアルナンバーも近いが一見して違うのは
 
 メーターが「HONYWELL」というメーカーが5個だが「SIGNALメーター」のみが「phastron」となっている。(3台ともこのメーターは共通)
 この個体はとても汚れていてまず全体の掃除を数時間行った。
 

 蓋には真空管ごとの設定データが書かれたロールがあり右側にあるダイヤルを回して探す。真空管の一番初めの数字順に並べてある。

 右下にスペアフューズの小さい引き出しがある。左上はMT管の曲がったピンを矯正するツール。

 スペアのパイロットランプと蓋についてるクイックガイド


 なぜかこの個体のロール表示はガイドからずれていて操作に慣れてないととても不便に感じる。ネジ2個で外れます。上にスライドさせる。
 

 分解してなんとか横にシフトできないか試みる。軸の端にスペーサー入れたりして、
 
 回転軸の位置をずらしたがなかなかうまくいかず。ふと閃いて、、
 
 ロール紙の起点は回転軸に貼り付けられている。一度剥がして位置変えて貼り直して解決した。思考が硬直してたらしい。ロール紙はバージョンアップされてたかもしれない。
 ジュエルが届きました。サイズはぴったりで良かったです。アキバの部品屋さんから調達。



 ここで「その1」に大問題が発生しました。中央にある「PERCENT QUALITY」メーターが不動です。分解して確認すると見慣れない構造で調べたらトートバンドを用いた形式で残念ながら修理は難しそうです。他から移植するしかなさそう。「その1」のメーター6個の内4個に不具合があったことになる。

 「その1」の対策は先送りにして「その2」と「その3」で実際に測定してみます。全て英文だし分厚いマニュアルを読むのも気が進まない(単に英語力が低いだけ)ので蓋についてるクイックガイドに従ってやってみましょう。


  TV-2C/Uの操作方法の要点

1. ロールチャートで真空管を選択
Ⅱ. 電源入れてロールチャートの指示通りに全ての設定をする。特記なければフィラメントをFIL RANGE欄の値に設定する。
Ⅲ. 真空管を適切なソケットに装着し立ち上がらせる。
Ⅳ. 「PLATE control」を「line」ポジションに合わせる。
Ⅴ. 「SHORT TEST」スイッチを「V,W,X,Y,Z」に回して「OPER」に戻す。もし「SHORT」ランプが「Note」欄に載っていないところで点灯したら真空管は不可。テストを続行する場合「PLATE control」を表示の電圧に戻す。
Ⅵ.「SELECTOR」欄で指示された時はtube capにAかBの線を接続する

 「GM(相互コンダクタンス)」
1. ⅠからⅥまで全てを行う
2. 「GM-SIG.RANGE」を「F」にセットし「P4」を押し下げ、ロールチャートのように設定しなおす。
3. 「GM CENTERING」で「PERCENT QUALITY meter」を「0」に設定する。
4. 「P4」を戻して「GM SIG.RANGE」をチャート指示に戻す。
5. 「P4」を押し下げる
6. もしメーター表示がlimit columより上だったら真空管は正常。「P4」を戻す。

 「EM(エミッション)」
1. ⅠからⅥまで全てを行う
2. 「GM-CENTERING」をlineに合わせる。
3. 指示のようにP2またはP2とP3いっしょに押し下げる。
4. 「PERCENT QUALITY meter」を読んでPスイッチを戻す
5. 良品は「MINIMUM LIMIT」を超えなくてはならない

 以下「TH(熱陰極管)」と「VR(定電圧放電管)」は略

 なかなか煩雑で面倒くさそうだしやっぱりマニュアルは読まなくてはならない、、と感じる。実際にやってみることにしましょう。

 ところでTV-2には4種類(「TV-2/U」「TV-2A/U」「TV-2B/U」「TV-2C/U」)あるがどこが違うのだろう?マニュアルには

 3機種の違いの記述はあるがTV-2C/Uとの違いはわからず(多分どこかに書いてあるのだろうが)
 向かって左がTV-2C/U 右がTV-2B/U

 外観はどこが違うか比較するが、、
   
 ヒューズホルダーの形状が違うくらいで他は不明、、と思ったら

 ロール紙の一番端にはこのような記述とOrder Numberが書いてある。この2機種は同じロール紙でナンバーはTV-2C/Uのプレートに書かれているものと一致していた。もう一台のTV-2C/UのOrder Numberはまた異なっている(プレートと一致している)ことから頻繁に改定されたものと思われる。TV-2B/Uは中身とケースが異なった組み合わせのよう。

 怪しい6L6GをTV-2C/Uで検査してみる。
1. ロールチャートで真空管を選択


Ⅱ. 電源入れてロールチャートの指示通りに全ての設定をする。特記なければフィラメントをFIL RANGE欄の値に設定する。
Ⅲ. 真空管を適切なソケットに装着し立ち上がらせる。


Ⅳ. 「PLATE control」を「line」ポジションに合わせる。


Ⅴ. 「SHORT TEST」スイッチを「V,W,X,Y,Z」に回して「OPER」に戻す。もし「SHORT」ランプが「Note」欄に載っていないところで点灯したら真空管は不可。テストを続行する場合「PLATE control」を表示の電圧に戻す。
Ⅵ.「SELECTOR」欄で指示された時はtube capにAかBの線を接続する

 6L6のNOTE欄には「Short in Z」とあるがランプは点灯しなかった。(ランプは切れてないことを確認した)

 「GM(相互コンダクタンス)」
1. ⅠからⅥまで全てを行う
2. 「GM-SIG.RANGE」を「F」にセットし「P4」を押し下げ、ロールチャートのように設定しなおす。
 

3. 「GM CENTERING」で「PERCENT QUALITY meter」を「0」に設定する。


4. 「P4」を戻して「GM SIG.RANGE」をチャート指示に戻す。


5. 「P4」を押し下げる
6. もしメーター表示がlimit columより上だったら真空管は正常。「P4」を戻す。
 この場合は「75」

 とかなり煩雑。もっとも慣れてきたら省略できる項目もあるかと思うがやっぱり測定の原理を理解しておいた方が忘れ難いかと思う。(実際の現場にそれを求めるのは難しかったろうからこの手順に従えばOKという事かと思うが)
 実際にTV-2C/UとTV-2B/Uで測定してみると
1 6L6G(不良)
 

2 6L6


3 6J5(59以上で正常)
 

 と大体一致した。全ての要素が可変設定なのでメーターの読み如何で結果も異なる。間違い、勘違いも起こりやすそうでなかなか手ごわい感じがする。各レンジ毎にメーターには直列に抵抗器が加わっていて経年変化で数値が変わってしまうことは容易に想像できる。デジタル機器のようにレンジが自動切り替えなら便利だがそうもいかず。「校正は不要」ではなさそう。。



 注文してたPhastronのメーターが届きました。アメリカから。これを隣の割れてるメーターパネルと交換する。
 
 多分同サイズだろう、、と写真から想像してたのだが届いたのを見てホッとした。ところが裏からのネジ止めの穴の位置が0.5mmほどずれている。内部を保護しつつ小加工して交換は完了した。

 よかったです。

 あとは主役の「PERCENT QUALITYメーター」だが今回来た中身は果たして使えるだろうか。。サイズも異なる。

 幸い磁石などの位置は同じで加工せずに移植はできそう。機械的な部分がクリアー出来ればあとはなんとかなりそうだが最大の課題はサイズが異なるので針の長さも異なってるということ。今までのメーターの針は極細パイプに髪の毛ほどのワイヤーを入れ込んでエクステした構造だったのでその髪の毛ほどのワイヤーを移植する事にした。極細パイプはどう切断しても断面が潰れる。綺麗に潰してその後で針でつついてパイプの形態に戻してから元のメーターから取り出した(これも結構大変だった)エクステワイヤーを差し込んで固定した。
 
 これでできたかと思ったのだが針が長くなった事でバランスが崩れて、メーターの向きで針の位置が変わってしまう。
 
  この写真だけ水平に置いています。

 

 針と反対側にオモリが2個巻き付けてあるので一番端まで移動したが

 これでも賄えない。仕方ないので新たなワイヤー(コードの芯線)を巻き付けてようやくバランスした。

 埃が入るといけないのでこの状態で組み立ててこれから較正にかかります。


 素の状態で測定してみると DCR 8.2Ω FS(フルスケール) 3.9mA でがっかりする。。メーターパネルにはR=250Ω±10% FS=100UADC とある。「UADC」は最初わからなかったが多分「μADC」と勝手に解釈して全く異なるデータ。もう一台のTV-2C/Uのメーターを測定してみると DCR 259.5Ω FS=96.1μAでほぼ一致する。
 交換したメーターのスペックがこれらを上回る高感度であれば問題ないのだが残念ながらこれはアウト、振り出しに戻ってしまった。考えてみれば大電流メーターなのだから(当然シャント抵抗は入ってるが)当たり前に超低感度メーターが採用されたはず。なんとかなるだろうと確かめもせずに進めてしまっていて失敗した。
 FS=100UADC以上の感度のメーターを探す事にします。


 改めて回路図の抜粋を見てみるが

 正直よくわからない。なぜここを測定するとGMがわかるのか..?お勉強が必要。ただわかったのは「SHUNT」回路の大切な事。この設定で計測値が全く異なるわけで非常に重要な要素だ。

 回路図とにらめっこしながら英文マニュアルを一生懸命追ってなんとか原理を理解しようと努力はしてみましょう。なかなか難解です(私にとって)。両波整流管83のプレート各々に独立した巻線からAC電圧を供給している。両波整流管のプレートからDC(プラスの脈流)が交互に出力される(回路図にある実線と破線)。2本の出力を高抵抗で繋いで途中に電流計(PERCENT QUALITYメーター)をチャートに基づいたとこに入れて、グリッドバイアスを加えた状態でGM CENTERINGつまみで「0」調節しておく。
 グリッドに加えるAC信号は同じトランスの別巻線からとっていて信号の強さは切り替えできるが周波数は50Hzもしくは60Hz。そして同じトランスなので位相はプレートに加わっているACと一緒なのでグリッド信号の山の時はPERCENT QUALITYメーターのマイナスが繋がっている側(上側)のプレート電流が多く流れ、グリッド信号が谷の時(反対側のプレート電流が一番少なく流れる)はプレート間に電位差が生じてゼロバランスが崩れてメーター表示される。。というものかと思うが(間違ってたらどなたかご教授ください。お願いします)。


 後日談:(誰も見ていないらしく)何方からも指摘がないのですがこれは電流の多寡は逆ではないでしょうか?


 phastronのメーターをもう1個入手しました。実は割れたパネルの交換用で手違いで注文してしまった交流電圧計で早速分解すると

やっぱり整流回路あり、ポテンショメーターが2個も入っている。素の状態のFS(フルスケール)電流とDCRを測ってみる。
 
 文字盤はないがまあいけるだろう(これがマチガイのもとだった)同じ方法で針をエクステしてオモリも追加して測定すると
 
 なんとFSは200μAだったみたいでこれもアウト。。情けない。また振り出しに戻ってしまった。オークションに出品されてるメーターのパネルを一生懸命拡大してそれらしきものを注文した。到着までまたまた待ちます。


 Dysonの掃除機が壊れました。今流行りのコードレスでないほう。
  故障の様子は「ヘッドについてる回転ブラシが回転しない」というもの。ただし伸縮するパイプを一番縮めると回ることもあります。これはピストン状のパイプ内部で断線したな。
 修理のための分解に難儀する。。接続部の端子2ヶ所はトルクスネジで固定されてるのでホームセンターでレンチを結構な値段で買ってきたら最小のサイズより小さいねじでムダになってしまった。それでもなんとか端子を外すもピストン構造がわからずそれ以上分解できない。
 
 はめ込み構造なのでなんとか力技で分解した。中からワカメ状のコードが出てきてどこで断線してたか探る。方法はカッターナイフを当てていくという原始的な方法
 
 断線場所で切断してテープ状のコードに新たなワイヤーをハンダで固定。しかし伸縮するときにはかなりのストレスがかかると思われる。もともとワカメを回避するためのパーツが組み込まれていたようだがうまく機能しなかった様子。

 4時間もかかって修理完了した。ついでに掃除機の掃除を徹底的に(でもないか)行ってオシマイです。分解するのに一番時間がかかりました。この辺りが故障したらさっさとメーカー修理に出した方が良さそう。


 Percent Qualityメーターの3個目のドナーが来ました。

 前2つは所謂「廃物利用」だったのですがこれはドナー目的で注文しました。決め手になったのはPhastronでメーターパネルに「FS=50UADC」と書いてあったから。高感度であれば分流器を用いてFS=100UADCに改造できると目論んだ。早速分解して分流抵抗入れて

 メーターが4inchと大きいのでちょっと心配でしたがムーブメントは問題なく移植できます。また針のバランスオモリも少なくしたり針も切り詰めて完成した。あとはDCR=250Ωになるように直列に抵抗を繋げば完了、、と思ったらなんと遥かに高抵抗です。
 「FS=100UADC R=250Ω±10%」でないとやっぱりダメでこの条件のメーターはかなり特殊なものに思えます。同じHICKOKのTV-7のメーターはFS=200UADC R=2.355KΩとのこと(投稿されていたデータ)でメーターの移植もあまり苦労しなくて済むらしく記事を書かれている方もおられます。
Ebayでもリプレイスメーターとして売っていたりする。。

 もう少しTV-2のPERCENT QUALITYメーターについて調べてみると、、
 まずメーターに流れ込む信号の波形ですが

 半波整流後の波形のようかと思っていたが所謂三角波です。メーターはもちろんDCアンメーター。そこで正常動作していると思われるTV-2C/UとTV-2B/Uのメーターの振れとその時の電圧をACとDCに分けて測定してみます。基準管があればいいのだがとりあえず6L6を使ってSHUNTを調節して各データを集めていく。
 
 ACはミリバル、DCはDMMを使って波形を見ながらTV-2C/Uを測定、グラフにしてみると

 まさかの手書きグラフだがDC成分はACに比べて遥かに直進性は良好。DCアンメーターのPERCENT QUALITYメーターは前述のようにFS=100UADC R=250Ω±10%なのでFS(フルスケール)時の端子間の電圧は25.1mVなので一致する。またもう一台の(TV-2B/U)データもほぼ一致していてFS時は24.7mV。しかし不思議なことにACデータは1.5倍程度になっている。

 修理中のTV-2C/U(SN,34*)のメーターの代わりに250Ωの純抵抗を繋いで各々のデータを採ってみると

 3機種ともDC成分値はほぼ一致する。またAC値はTV-2B/Uに近い。AC成分の違いは何を意味するかはわからない。真空管試験機は交流と直流が重畳している信号のうち直流成分をメーター表示して交流成分は針を振動させているらしい。出力される信号を250Ωでシャントし高抵抗のメーターで両端の電圧を測定し補正すれば「FS=100UADC R=250Ω±10%メーター」のデータを再現できそう。直接DMMをつないで数値を6倍(PERCENT QUALITYメーターのFSは150でその時のDMMは(25mA)だから)すればいいのだがそれではあんまりカッコよろしくないのでなんとかしたいところ。入力抵抗がなるべく高くて25mVでFSになるようなメーターにすればいいのだが、、さて。。


 今回手に入れて改造したメーターの素性を改めて測ってみると
  
 R=1612Ω FS時の電圧は84.5mV (従ってFS=84.5/1620=52μA)写真のようにパラに分流抵抗を入れた状態でR=854Ω  電圧は同じ。。(当たり前だ!やってまった!!「半分、青い。」観てます。)

 同規格のメーターの入手が困難であれば特注で作ってもらう事も考えられるが(どれだけ高価か恐ろしくて)見積もりを依頼する気にもならない。回路を電気的に再現するにはメーターの代わりに250Ωの抵抗を入れ、両端の電圧を高い入力抵抗の電圧計で測定して得られたデータを補正して表示する、、ということになる。直流までゲインのあるオペアンプを利用して作ってみようと思います。
 ただし波形は三角波で整流せずにそのままDC電流計で計測していたので波形をそのまま増幅してアナログメーターを振らせることにします。グラフからも250Ω負荷で25mVでFSとなる。現在のメーターのFSは84.5mVなので単純に考えれば84.5/25倍増幅すればいいいがメーターの抵抗値が低いのでカットアンドトライで増幅度を決定することにし、メーターにも直列に可変抵抗器を入れて微調整します。波形の増幅はオペアンプを用いるが1から製作した経験はなく使い方もわからないがwebでは親切な方々が初心者にもわかるように詳しく解説してくれている。解説の一番初めに書かれている回路で「非反転増幅回路」を用いることにする。電源はなかなか悩ましい。通常オペアンプは±12V程度の電圧が必要だがトランスを新たに内蔵するか、現在のトランスの適当なタップから引っ張ってきて整流するか、、。単電源のオペアンプもあるが初めてなので2電源とし、100円で売っていたジャンクの12Vスイッチング電源を2個使用するという一番安易な方法とした。TV-2C/U内部は隙間がありそうに見えるが結構キツキツでこれらを組み込むには結構厳しい。最初は電源以外はメーター内部に組み込むつもりだったがどっちみち電源はメーター外になるので電源の隙間に本体を組み込むことにした。

 スイッチング電源のACアダプターを分解したところだが(100円のジャンクだから仕方ないけど)内部はご覧の有様でとても汚い。写真は本体組み立てて仮配線してバラック状態の動作確認中のものだが実装機でもこの電源を使うか最後まで迷った。トランスはどうしても高さが必要になるし、単電源のオペアンプに変更する、単電源を工夫して2電源にする、、などいろいろ考えたが結局一番安易な方法となった。。今回は使わなかったが単電源から±2電源に分割する便利な素子があってちょっと感心した。いずれ使ってみたいです。
 
 適当なケースも見当たらない。特に厚みが取れないので基板の高さに合わせて既製のケースをカットして使った。面積も足りなかったので基板の周囲を削るという暴挙でなんとか納めた。肝心の本体は隙間に組んだが2/3以上が電源という美しくない格好。
 
 トリマーは0点調整とメーターのスケール合わせの感度調節。
 
 ケースはバンドでフレームの隙間に固定した。とにかく本体には手を加えずに将来PERCENT QUALITYメーターが手に入ったらスムースに交換できるように(わかりやすく)しておく。


 校正は他の2台と比較しながら行った。

 他の2台(各々が微妙に異なるが)とほぼ同一のデータとなった。しかしよくみると針が小刻みに震えている。60Hzの振動かと思うが波形を確認しても妙な発振は無さそうでまあ良しとしましょう。



 今回縁があって3台まとめてHICKOK TV-2を入手した。事前の説明では2台は稼働するが1台は修理が必要とあった。実はホントは5台まとめて売りに出されていたのだがそのうちの1台はトランスからピッチが溢れ出していて内部に溜まっている!という惨状でさすがにこれは避けた。5台の中から比較的程度の良さそうなもの3台を米国から輸入したが重量物のため支払額の1/3は送料だった。(3台まとめたら少しは配慮があるかとちょっと期待したがそのような事は全くなく3個口で送られてきた)長々と記事を書いたように当初はお買い得かと思ったが現実は厳しくやっぱり安いものはそれなりの理由があった。
 多分真空管試験機共通の弱点と思われるのは、メーターの不具合、トランスの断線やレアショート、スイッチの破損、真空管ソケットの不良、、かと思う。原理は簡単だが(ウソです)現実の製品は物理的な構造の複雑さからなかなか手強い。故障した時に考える事は皆同じでメーターを分解して掃除、接点の掃除、トランスの交換などかと思うが手に負えなくなってジャンク扱いで安価で手放す事も多いのではないだろうか。中でもトランスと特殊メーターの故障は深刻で鬼のように多くのタップが出ているトランスの再現は大変かと思うし(現実に特注された方がおられるようで頭が下がります)また数が揃わないと受けてもらえないであろうメーターの特注は今後の有志のご奮闘を期待するしかない。ケースの凹みや傷から想像すると現場で散々酷使されて、真空管の引退に伴って現役を退いてから数十年も経過したロートルなのに測定器(判定機?)という事でシビアな性能が求められるご苦労さんなキカイです。カッコ良さと品位を保ちながらなんとか実用機として生き長らえないかと考えて今回の対処となりました。結果的にラッキーだったのはまともに稼働すると思われるTV-2が2台含まれていたので、この2台を参考に残りの1台を修理校正できたという事であります。
 真空管試験機でご苦労されている方と情報交換できれば幸いです。



 お読みいただきありがとうございました。