Decca Decolaがお嫁入り

やっとこさ入手したDecca Decolaの整備記録

REVOX Model 59A について

2017-04-11 22:47:18 | オーディオ

 REVOX社はスイスの音響機器メーカーでSTUDER社と姉妹関係になっていて業務機器はSTUDERが、民生機器はREVOXが担当していた。REVOXの設立は1951年でテープレコーダーが始祖だがその後、スピーカー、アンプ、FMチューナー、レコードプレーヤーなどを発表し総合音響機器メーカーになっていく。その中でも有名なのは何と言ってもテープレコーダーで当時日本でも絶大な人気があった。スイス製という魔法の言葉とヨーロッパの洗練されたデザインのオープンデッキは音楽愛好家のオーディオルームに是非とも置いておきたい逸品だった。当時の日本はTEAC,SONY,AKAI,などの専門メーカー以外でも一般家電メーカーで独自のネイミングがされた音響部門があってオープンデッキもラインナップされていた。超高価な輸入品のREVOX,STUDERなどは購入どころか目にする機会も少なかったと思います。
 「Model 59A」は1955年に発表された管球プリアンプでモノラル、電源内蔵、多分第一号プリアンプだと思うが非常にマイナーな機種で資料も少ない。




 

 

 

  

  



 





 このマニュアルは「Model 59A」と「Model 59E」のもので組み合わせるメインアンプが決まっていたが電源が内蔵されていたことから単独での使われ方もあったと思われる。59Eメインアンプの回路も変わっていて興味深いが実物は見たことがありません。
 この個体や写真で見てもパネルと本体が離れていて他の機材に組み込んで使うことを前提にしている。コンポーネントの部品として供給されていたのかもしれないが詳細は不明です。単体で使うには不便なのでケースに収めたいところです。

 

 

 

 

 
 内部を見るととても民生機とは思われないような豪華な造りです。同時期の他社製品とは比較にならないような堅牢さ。ヨーロッパ製品のワイヤリングは直線的のものが多く、アメリカ製品と比べて見栄えがする。きちんとシールド線を使っている。
 特徴的な形のセレンでB電源、ヒーター共整流されている。電源は220Vと110Vの選択ができ、輸出を考慮した設計でヨーロッパ製品ではよく見かける。ACプラグを交換して電源トランスの結線を110Vに変更。
 
 この状態で入出力を接続してみる。初めての音出し。。かなり歪みます。ブーンという通奏低音も。B電源圧を半波整流セレン出力で測定すると本来276Vのトコが185Vで全くアウト。平滑回路の電解コンデンサーにテキトーな電解をパラに繋ぐと静かになる。セレンとコンデンサーは劣化していました。

 暫く聞いてるとしだいに電圧が上昇する。117Vにすると220Vになった。これでも足りないが素性はわかってきた感じ。音味はやはり業務機的で縦横がキチッと揃う。堅牢な構造がしっかりと出ているかのよう。真面目な音とも取れるが日本製品とも異なる。

 週末はまたまた行事で不在でした。途中で気づいた事ですが信号の出力は97Vの電位がある! カソードフォロワーなのですが「McIntosh AE-2」などと同様でやはり専用のメインアンプとの組み合わせのようです。

 ご臨終のB電源用のセレンを取り外して

 分解してみる

 セレンがいっぱい積み重なって耐圧を稼いでいます。今回はこのケースにダイオードを組み込みました。

 ご臨終のブロック電解コンデンサーには美しい抵抗器が付いてましたが

 不注意で巻線を切ってしまいました。抵抗器の周囲を線香花火が這っている!(ホントです。不思議な光景)外すと

 なんとTESLAです。初めて見たけどもったいない、、しまったなぁ。電解コンデンサーは例のごとく分解して中身を入れ替えます。今回は22μFしかなかったので7本詰め込んで
 
 また組み立てて装着。切れたTESLA抵抗は適当な値がなかったので似たのをパラで代用

 コンデンサーと共に取り付けました。

 117V入力でヒーター、B電源共に適正値となった。これで問題なく出力されますがカップリングコンデンサーは多分ダメだと思いますが。。

 0.025μFと0.1μFのカップリングコンの漏洩をすべてチェックすると、、使えそうです。このまま行きましょう。

 このままでは使いづらいのでケースを自作します。例によってMDFをカットしてもらって組み立てたが、
 

 
 なんと!寸法間違ってしまった。上下の底板が大幅な寸足らず。ケチなので着き合わせて伸ばす。シャーシとの隙間はほとんど無い。放熱はどうしましょう?
 
 ガワが完成しました。放熱の関係でちょっとオシリを出しています。MDFは厚ボール紙みたいな板ですが天然木に比べて真っ平らなのがありがたい。カットさえ正確なら精度の高い工作ができる、、筈でしたがまさかの結果になりました。これに突き板を貼ります。GWに突入するので注文品が来るのは暫く先になりそう。「McIntosh 20W-2」に繋いで暫く聴き込んでみます。



 GWは一度は行ってみたかった知床に。女満別空港からレンタカーで斜里、ウトロ、羅臼泊。天気は良かったですがこの時期は山には残雪ありでウトロと羅臼を結ぶ知床横断道路は雪崩で通行止めになってしまった。迂回してなんとかたどり着く。
 斜里では知床五湖からの知床連山の景観が素晴らしい。でもここはエゾヒグマの生息地なのでレクチャーを受けての散策となる。


 ウトロからは知床を海から。子供の時以来の「酔い止め」飲んで


 羅臼からはホエールウォッチングではなく「シャチウォッチング」

 羅臼沖には300頭が識別されているらしい。海のギャング、、ではなく母子が優雅に、大きな父親は離れて泳ぐ。会えてラッキー。

 
 帰宅したら突き板が届いていた。早速貼ってみましょう。
 
 材はキリです。
 
 オイル仕上げで完成。不満多し。そのうち何とかするとして今回は終わりにします。


  お読みいただきありがとうございました。


 GWで晴天。バイクイジらない手はないので「今日は1日Vespa三昧」にするが、、、回転続かず。

 点火系?イグニッションコイルが怪しい。高圧コード切れたのを繋いだトコが原因か?コイルの1次側にバッテリー繋いで入れ切れしてみるがやっぱり火花が飛ばず。何時もではないので余計始末が悪い。とりあえずコード付きのコイルのみ注文した。

 

 後日談

 やっぱりケースが気に入らなかったので5年半たってから塗装することにした。

 

  

 突板+オイルステイン仕上げに着色できるのかと思ったが普通に塗れた。油性塗料で以前も行ったことがあるが支障はでていないので多分大丈夫だと思う。クリアラッカーで下地を作ってから塗ったが元々が暗いのでベージュは色止まりが悪く塗膜が厚くなる。


ALTEC A-440A について

2017-04-05 22:11:23 | ALTEC

 「A-440A」はALTEC最初の民生用プリアンプで発売は1954年、価格はキャビネット付きで$139。なかなかユニークな構造で蓋を閉じて正面から見るとダイアル1個とパイロットランプだけ(!)ダイヤルは電源スイッチ付きのボリュームで「普段はこれだけの操作でしょ?」と言わんばかり。蓋を開くと
                                                  

 
 組み合わせるパワーアンプはA-340Aだったようです。このアンプもALTECのアンプ群では比較的珍しいもの。

 セレン整流器でB電源とヒーターを直流化してます。ここはMarantz Model7Cと同じだがB電源は倍電圧整流。使用真空管は珍しく12AY7 x 2と12AU7の3本。

 拙宅の「ALTEC A-440A」です。
 

 

 

 
 セレン整流器はB電源、ヒーター共に生きていました。カップリングコンデンサーはセラミックコンなども使われている(値が回路図と異なっている所があるがオリジナルらしいのでこのまま)。他も奇跡的に問題なさそう。

 点検、掃除して組み立てたら今までなかったハム音が発生するようになってしまった。 いや単に気がつかなかっただけかも知れない。やはり電源を疑う。B電源の平滑コンデンサーにパラに適当なのを繋いでみる。

 これで聴いてみると明らかに改善するのでやはりこのブロックコンデンサーは寿命のようです。
 電源トランスからのコードが接続されていないのがあるなぁ、、? とのんびり眺めていたら

 なんと!倍電圧整流は直接AC117Vからになっている!トランスレスラヂオか〜。ピアレスの電源トランスは断線のようです。このままではやっぱりマズいのでトランスを外してコアを分解してボビンの皮をむいてみる。

 まず現れたのはヒーター巻線です。0.5mmで160ターン、中点と43ターンにパイロットランプの端子があります。これを解くと問題のB電源ですが「とーっても細くて」何ターンかは解りませんでした。太さはマイクロメーターで測ってみると

 0.08mmという極細。多分2段に巻いている。(マイクロメーター使うと高度な作業をしてる気がしてちょっと気分が良ろしい)
 最内側は117Vが接続される一次巻線。太さは0.2mm。

 一次側は無事なのでこのままとします。問題は中間層の高圧巻線が何ターンかだがヒーターはセレン整流後が両波整流で15Vなので両端で24Vくらいと考えてB電圧は倍電圧整流で255Vなので130Vくらいと判断して160:24=X:130 X=867ターン位と考えた。
 巻線機は無いので電動ドリルを使うことにします。まずボビンを作ってみる。
 
 手持ちのエナメル線は0.2mmしかないのでこれを巻いて行きます。ホントはボードを使ってしっかり固定すべきだが、、
 
 こうなりました。。こんなんでいいのか??とにかく巻いてみよう。。周波数変換機もないのでスライダックで低電圧にして
 
 一応数えながら巻いて行ったのですが途中でよくわからなくなった(カウンター無いからではなく集中力の問題)。1段ごとに紙絆創膏を巻いていく。途中で1回切れたのでどの程度のテンションをかけれるかを学習した。あまり大きくなってもコアが入らなくなるのでテキトーに切り上げ多分800回位は巻いたと思われるトコでオシマイにした。その周りにヒーター巻線を巻いたが0.5mmは持って無いので解いたのをそのまま巻くという暴挙にでる。

 引き出し線はラグ板を介して取り付けた。
 
 これで通電してみると唸る。やはりニスでコアを固める必要がありそう。手持ちの色付きニスを塗ってみたら唸りは止まりました。

 早速取り付けて電圧を測定すると、B電圧は幸運にもほぼ規定値、ヒーター電圧は残念ながらかなり低い値でアウト!です。またトランスの発熱が結構あることからレアショートの可能性が高い。トランスが唸ってたのはこれが原因でした。やっぱり0.5mmのエナメル線を買ってこなくてはダメそう。またコアの分解からやらなくては。。

 、、、というわけでわざわざ隣町まで行って0.5mm エナメル線買ってきました。エナメル線ではなくてポリウレタン銅線。

 1パックが10mだったので中点までの距離を解いたエナメル線で改めて測ってみるとギリで10m。。というかコアが収まる幅ギリギリまで巻くわけだが実際やってみたら20mを4段で巻けた。ターン数は不明(、、これが一番大切なのですが)巻きは手巻きで1ターンずつ確認しながら行いました。もう一度組みたてて取り付けてみる。
 
 これで117V入力で測定すると整流後のヒーター電圧は10.3V。少しさみしいがセレンにダイオードをパラ接続すると11.7V位にはなる。何よりトランスの発熱が気にならない位になったのでホッとします。もちろん唸りもありません。電圧を上げるには0.4mm線を使って巻数を上げるなどが考えられるがそのためには大きな単位で購入しないといけないのです。1次側の引き出し線もそろそろ破折の危険があるのでこれ以上の深追いは諦めました。PEERLESSのシールっぽいのを作って貼って完了。


 パイロットランプは「GE 51」というものだが多分6.3V球。トランスからの専用引き出し線があって忘れていたわけでは無いのだが(気持ちの)余裕がなくって設けなかった。24V球に変更して両波整流の片一方から供給します。というのは中点からのワイヤーの長さは10mで一緒なのだが4段にわたっての巻線なので次第に直径が大きくなって巻き数が減ってしまう。それを見越して長さを異なるようにして調節するかは不明。真ん中で分けて2つのコイルにするのが良いとは思うがそういう構造ではなかった。電圧を測ってみると0.3V程度の差異があったので高い方へパイロットランプを繋ぐ。ちょっと暗いランプが郷愁を誘うということにして電圧を測ると0.1Vしか下がらず。もともと電流には余裕のあるヒーター回路なのかもしれない。


 気になっていたHAMもトランスを修理したら消え(気にならなくなり)ました。12AY7はX7やU7などと比べてあまり使われてません。増幅率の違い以外はよくわからないです。「A-440A」はALTECが民生用アンプを作ったらこうだ!という主張を感じるアンプでした。近代のアンプでもあまり使わないファンクションは普段はパネルの裏に隠れているのはよく見ますがここまで徹底していると痛快ではあります。しかし成功したかといえばその後のアンプではあまり採用されなかったようでツマミが多くてゴージャスなものの方が人気だった。またこのアンプのパネルもシンメトリーでツマミはMcIntoshと共通だと思われます。
 
 「McIntosh 20W-2」でピッチからトランスを取り出して、「ALTEC A440-A」でトランスの巻き替えの真似事をやってみたわけですがトランス修理の大変さを思い知った。古いトランスには断線、ショートは付き物だが作業する人に「同じ音に仕上げてくれ」とか「引き出し線は元のもので」とか勝手なことばかり言っている(言ってました。私は。)大いに反省した。当たり前の基本的な構造の上にそのトランスの個性が載っかるわけでそのご苦労たるや、、です。でも一度はトランスを巻いてみたいと思っていたので良い経験になりました。

 


 お読みいただきありがとうございました。

 

 注意! 電源トランスの改造は感電、発火などの危険が伴います。くれぐれもご注意ください。



 





                         

 


BROOK Model7 について

2017-04-02 06:21:28 | オーディオ

 米国のアンプメーカー「BROOK ELECTRONICS」についての資料は少なく、日本ではあまり知られていないのではないかと思っていますが、稀に海外オークションに登場すると素朴な外観のアンプがびっくりするような価格で落札されることが多く、特別な思い入れを持つ人がおられるらしい。実は私の周りでもBROOKのプリアンプを使っている方は多く(一番かも)ちょっと珍しいと思うがこれはインフルエンサーが居たからなのは間違いない。特徴は色々あるがまず挙げられるのはGT管プリアンプという事で民生用では他にはあまり見当たらない。メインアンプの出力管は2A3でどれも強い拘りを感じる。
 今回の「BROOK Model7」は有名なMarantz Model7Cよりかなり前のモノラルプリアンプでBROOKアンプ群の中でもめずらしいもの。発売は1953年(未確認)。
 

 当時のプリアンプでは珍しく電源内蔵している。またイコライザーはGT管だがラインの送り出しにMT7ピン管を使っている事でよっぽどX7,U7が嫌いだったのか、、と思わせる。ここまで来ると拘りというか偏屈なのかと思ってしまう。
 入力は豊富で
 AとB:ライン入力、負荷1MΩ
 CとD:ライン入力、250KΩ
 E :phono入力、 47KΩ
 EI :phonoとマイク入力、2MΩ  マイクの場合は「record playback characteristic」を1にする。

 トーンコントロールの中点(フラットポジション)は「TREBLEは8」「BASSは4」
 イコラザーポジションはフラットを含んで10ポジション。



         

 BROOKの製品はプリアンプとメインアンプ組み合わせて販売していたらしくメインアンプの主力は「12A」(2A3pp 10W)と「10C」(2A3pp 30W)の2種、プリアンプは「Model2」「Model3」「Model4」と変遷があり、「Model7」は最終の「Model4」に電源を内蔵したという事らしい。「Model4」は見た事がありませんがパネルはよく似ています。BROOK以外のメインアンプと組み合わせたいという希望への対応かと思います


 拙宅の「BROOK Model7 」


 1953年は「McIntosh C-108」や「Marantz audio consolette」が誕生した年でイコライザーの設定数合戦開始の年(個人の感想です)、BROOKもしっかり参入していた。メインアンプと組み合わせる事を前提にしたプリが多い中で電源内蔵で多機能、コンパクトにまとめたModel7は魅力的だったはずですが。。



 

 
 全くげんなりする内部なのです。BROOKのアンプ全般に言える事ですがメインテナンスのことをほとんど考慮しておらず部品交換がとても大変。忘れてましたが(!)以前に一度メンテしている様子。ブロックコンデンサーに電解コンデンサーがぶら下がっている。
 
 とにかくメンテするには臓物を引っ張り出して測定器当てないと話にならないので、
  フローティングのボードのネジ4個
  電源トランス ネジ4個
  ツマミ類 7箇所と電源スイッチのエクステンションネジ
  コントロールボックスを固定しているネジ 2個

 を外してようやくひっくり返す事ができます。
 


 ブロックの電解コンデンサーの整流管直後のコンデンサーはチューブラーがぶら下がっている(見覚えあるコンデンサーなので多分自分がしたと思うが全く覚えていない)整流管なのであまり大きな値にはできません。
 回路図からカップリングコンは5個ですが結果的に全てダメになってました。手持ちのコンデンサーで入れ替え

 怪しいのも混じってるのでもちろんチェックしてます。外した「CORNELL DUBILIER」社の「TINYCHIEF」

 だだ漏れ状態でした。「このタイプは全滅だぁ」と知人のプロも言ってました。でもトーンコントロール周辺でも山ほど使ってますが(30個くらい)電圧がかからないところは目を瞑ります。

 これで再度組み立ててみるも最初は出力せず、、。ひっくり返したりを繰り返したので出力のシールド線が切れてました。。まあそれだけだったので良かったです。。

 
 この大きさの筐体にmonoとはいえ電源、多機能なコントロールユニットを収めるのはやはり大変だと感じます。あれだけGT管にこだわった「Lincoln Walsh 氏」(アンプの設計者)ですがこのModel7は出力の2段増幅は6C7が使われています。多分スペースの関係だと思うがさぞ悔しかったのではないだろうか?5本の真空管は10cm x 10cmのスペースに押し込まれているし整流管と初段の6J7に至っては高さが取れないので横倒しになっている!そしてこれらを含む増幅、整流回路はゴムブッシュによってフローティングされています。入力セレクターは該当以外の端子は接地されるようになっていてなかなかの気遣いです。「AUTOMATIC BASS COMPENSATION」という名称のスイッチがパネルにあってボリュームポジションの3箇所にコントロールが入ります。

 裏です。左窓には整流管の6X4が右には増幅系の真空管が見えます。裏板を外さなくても交換できる!

 肝心のフォノイコは音源の関係で今は確認できません。後日に接続して聴いてみます。
 「Marantz Audio Consollete」にちょっと似てます。金ピカのパネルにツマミは多分Marantzと一緒で1950年代のアメリカのトレンド。ただツマミの数がこちらの方が2個少ない。一体いくらだったのだろうか。

 お読みいただきありがとうございました。


ONLIFE UM-10MKⅡ について

2017-04-01 14:57:00 | オーディオ

 私がONLIFE社について知っていることは後のダイナベクター社であること、1970年代に真空管アンプを数機種リリースしたこと、くらいです。。有名なのはマークレビンソンそっくりの(マークレビンソンの方が後発)「U-22」というプリアンプで今でも中古市場で人気がある。(このアンプのデザインは実は伊藤喜多男氏のアンプにも似ていてそれだけ普遍的なデザインなのかと)
 「UM-10MKⅡ」はONLIFEが1976年頃に発売していた2A3ppのモノラルアンプ 、86.000円/台。


 最大の特徴は誰からも好かれるデザインかと。高さの低い(これはとても重要)ステンレスシャーシの上に4個のマリックトランスと2本の黒い電解コンデンサー(これが銀色だとまた違った雰囲気になる。取り付けバンドもシャーシ内に収めている)、2本の12AU7と2本の2A3がとても穏やかに配置されている。トランスを四隅に持ってくると安定感が増すし全体のスクエア感が強調される。おまけに放熱穴もスクエア(でも丸いのもあります)使われているネジも皿ネジの頭のRが緩やか。白いレタリングもいい感じだが外装部品が市販品と思われるのがちょっと気にはなるが真面目に作ったMade in Japanだからいいのでは?(随分な上から目、、)



 パンフレットに回路図は公開されている。インプットトランスを用いて前段2段はパラ接続、NFBは無いシンプルな設計。


 拙宅に居る「UM-10MKⅡ」です。
 

 

 実は配線は手を入れています。というのも素人目に見てもかなりの惨状だったからでオリジナルなのかメンテの関係かは不明だがこのまま使うにはどうかと思ったので(写真撮ってない)。前段はtelefunken指定だが現在はMullardが入っている。2A3はSYLVANIAとRCAのスプリングタイプ。
 インターネットの写真でかなり手を入れているのを見たが私よりずっと上手だし気合いが入っている。

 久しぶりに通電してみる。電解コンデンサーが生きているかちょっと不安だったがまあ大丈夫そう。直前まで聞いていた「McIntosh 20W-2」との比較になるが

 SYLVANIAはよく言えば2A3らしいウォームトーンでとても聴きやすい。RCAと交換してみると、、高域が伸びてその関係か輪郭がはっきりする。やっぱりこちらがオリジナルが望ましい。
 しばらく聴いたが特に問題なく安定している。前段のパラ接続が特徴的ですがこの贅沢さ、無駄さが音に現れているのかもしれない。
 悪く言えば特徴のない普通の音。低域の分解能が曖昧ではっとするような瞬間もなく、淡々と流れる、お行儀の良い音。
 舶来モノは古くても惹きつける魔力を感じるがそういった怪しさは全く感じられない。これは日本製品の伝統なのでしょうか?


 パンフレットではペアチューブが4500円で当時特に2A3は潤沢に入手できた。初めて買った2A3は国産JIMTECだったが先日訪れて6V6GT買ったアキバの球屋さんにありました。恐る恐る値段を訊いたのだが、、年のせいか忘れた(!)買わなかったのだから多分高かったのでしょう。

 1970年代はオーディオの隆盛とともに国産のtube amp makerがたくさん出現しました。ZAIKA、進藤ラボラトリー、UESUGI,そしてONLIFEなど。もちろんソリッドステートアンプが中心のオーディオ業界でしたが趣味性の高い真空管を使った高級アンプ、でもマランツやマッキンには手が届かない場合の選択枝として各社充実のラインナップ(?)。
 大きなスピーカーを狭い部屋に無理に押し込んだり、時代は4CHと4個を壁に並べたり。。そんなに生活は豊かではなかったはずなのに多くの家庭にはステレオセットがあってレコード音楽を楽しんでいた。「昔の方が良かった」などとは一概には言えないのはわかってるが現代の状況を見ると、また未来を予想すると「ヒトの知恵は何のためにあるのか」と思わずにいられない。文明の進歩と貧困の拡大が同時進行するとは誰が予測しただろう?車が空を飛んでる豊かな未来を夢見ていたオジさんはちょっとの間暗くなってしまうのです。


 お読みいただきありがとうございました。