Decca Decolaがお嫁入り

やっとこさ入手したDecca Decolaの整備記録

EMT 950 について

2018-01-28 15:33:58 | EMT

 EMTのレコード再生システムはリムドライブ、ベルトドライブ、ダイレクトドライブとあるが、一番名高いのはEMT927,EMT930を中心としたリムドライブプレーヤーで、はっきり言ってその後の製品はそれらの陰に隠れていると言って良い。EMT950は1976年に発表されたEMT最初のダイレクトドライブレコードプレーヤーで日本での価格は250万円、約1000台が製造されたとされる(未確認)。EMT950には2種類あり、通常のものと後発のショートデッキのEMT950Eがある。そのほかにも細かな仕様の変更で約20種類の製品が存在しサフィックスによって分類されている。特にイコライザーボードはMCトランスを搭載したTSD15専用品とトランスを搭載していない47KΩ負荷のMMカートリッジ専用品があって変更は手前にあるパネルを開くと現れるイコライザーボードを交換する。

 EMT950の特徴は「すべてにおいて電気的なコントロールに置き換えたレコードプレーヤー」だと思っています。ターンテーブルの回転の制御は慣性モーメントに頼らない、アームの位置を示すインジケータは光学システムから電気メーターに、頭出しはデジタルカウンターを見ながらスイッチで逆回転させて、アームリフターも電動、回転切り替えも当然スイッチで、また可変域も設けていて古い78SPレコードなどにも対応できる、などなど至れりつくせりの内容で放送局にとっては究極のマシンだったと思う。唯一アームの水平方向の移動は手動だったけど。

 拙宅にはEMT950とEMT950Eの2台が一時鎮座していましたがEMT950Eはお嫁に行きました。現在はEMT950のみですがこの個体はBBCが放出したものを業者を通じて個人輸入したものでここ数年間は通電していませんでした。久しぶりにスイッチを入れると瞬時にヒューズが飛ぶ。仕方ないのでスライダックで徐々に電圧を上げて行ったがどこかで短絡しているようでやはり低い電圧で飛んでしまう。回路図が入手できておらず修理は一筋縄ではいかない(と思う)。 

 何とか入手できました。その中の電源部




 低圧で(AC30Vくらい)でも瞬時に切れることからこのあたりが怪しいと目星をつける。。でもホームセンターから買ってきたミゼットフューズが4本全部切れたので今日はここまでです。

 翌日ホームセンターからありったけのフューズ買ってきて再開。100V仕様にすると1.6Aフューズなのだがそんなのはないので2Aで代用。
 
 これだけのボードが内蔵されています。表だけでなく裏にも2枚(上段に写っている2枚)
 ボードを外した状態でスイッチを入れると、、瞬時に飛びました。。やはり電源トランス周辺が故障している。トランスのレアショートだったら困ったことになりますが、、。ボードを外すのは簡単だがその内部にアクセスするのは結構面倒そう。

 裏の+ネジ4本外すと
 
 トランス、整流用ブリッジ3個、平滑コンデンサーが現れます。スパークキラーコンデンサーがスイッチの後に入っているのでここがショートしてるのではないかと期待したが違ってました。さらにーネジ4本外すと

 これらが前へ引き出されます。裏側にはコネクターボードがありすべて外して再度通電すると
 
 やはりフューズは飛びます。。次行ってみよ〜!(いかりや長介殿ご発声)
 AC100Vをトランスに直接繋いでもフューズが飛ぶ。トランスは角ケースに入っているが100V〜240Vの6段階の電圧対応なので引き出し線は複雑になっている。切り替えスイッチの故障も考えられたのですべて切り離して調べるしかなさそう、、。
 ケースからトランス本体をほじくり出した。充填材はシリコン系と思われる半透明のもの。イヤな匂いがあって家族からクレームが来た!でもピッチに比べたら100倍マシです。
 
 スイッチの接続とトランスの巻線を解析してみると
 
 データに基づいて結線して通電するとやはり過大な電流が流れて発熱する。傷んだ巻線を避けて通電してなんとか使えないかと色々と模索したが状況は変わらず。2次側も(少なくとも)短絡は無い様子で原因は解らないのにいよいよ手詰まりになってしまった。。

 このトランスは諦めることにします。幸いに電源室の隣には大きなスペースがあるので電源トランスを複数並べることはできる。ジャンク箱から(新品も混じっている)かき集めて
 
 電源は4系統の出力が必要、隣町のパーツ屋さんからケース買って来てトランス並べて配線した。適当な電圧のトランスが見当たらなかったのでちょっと工夫しています。コネクターを取りつけて完了。今日一日はこの作業でほぼ潰れました。。
 
 元のトランスを巻き変えることも検討したがユニバーサル対応なトランスなので巻線構造が非常に複雑になっている(と思います)。設計し直してもらって100V専用で巻き替えてもいいと思うが今回は別電源としました。巻き替え修理、また別手配で入手できた時のために本体には手を加えず元の状態にいつでも戻せるように進めます。

 早速結線して通電してみる。心配だったのでAC50Vあたりから、、。大丈なようです。他が短絡していてトランスにダメージが及んだということも考えられたので。現在は仮配線ですべてのボードと電源からのコネクターは外したままです。無負荷の電圧は結構高いのはヨシとしても最終的に回路図の電圧になるように微調整が必要かもしれない。
 次にいよいよコネクターとボードを差し込んで通電する。やはり低い電圧から、、っとフューズが飛びました。フューズ交換して低電圧で電圧測定するとメインの電圧(一番上に書いてあったもの)が上がらない。どうもこの電源の供給先に問題がありそう。
 すべてボードを半抜きして通電すると

 無負荷なので電圧はかなり高い。とりあえずワイヤーハーネスには問題はなさそうでやはりどれかのボードが犯人らしい。一枚ずつボードを戻して行って犯人探しをする。この光景はスタンリー・キューブリック監督の「2001年宇宙の旅」に出てくるHALの反乱シーンの逆みたいでちょっと萌えます。。
 犯人がわかりました。3枚あるドライブ基盤032A、032B、032Cのうちの032Bでした。
 
 さてボードのどの辺りが問題なのだろうか?トランスが壊れるほどの過大電流なので当然焼けているはずだが目視では判らない。。こんな時に同じ基板があると比較できるので助かります。、、、原因がわかりました。一際目立つC305、220μFの電解コンデンサーが短絡している。こりゃもろにショート、火が出なくてよかったがトランスを巻き添えにしたのはダメだったなぁ、、、残念です。

 外して短絡を確認した。チューブラタイプの同等品がなかったのでアキシャルタイプを加工して取り付けた。。ところが直径が大きくて隣のボードと干渉する。仕方ないのでABCを入れ替えてなんとか納めた。これで通電すると

 うまくいきました。まだ音出しはしていないがターンテーブル周辺のコントロールは正常に戻った。アームリフターは動かないがモーター音は聞こえるのでドライブゴムベルトが破折しているらしい。これは予定通り。

 久しぶりのEMT950だが操作フィーリングの快適さには改めて感動する。ボタンに触れると瞬時に反応するのは快感でオープンデッキの操作のように重量のあるリールと異なり慣性の小さい軽いプラッタを重量のある本体の上で指一本で自由自在にコントロールする不思議な感覚。改めて感心してこれでは1976年当時の日本価格250万円(本国では15,000ドイツマルク)は適正価格かも、、などと思ってしまう。(いやそんな、、1970年のTOYOTA 2000GTは238万円だったがこれは同社のカローラ6台分(!)だった(wikipedia)そうだからやはりトンデモ価格には違いない)

 稼働している状態で各電圧を測定すると主電源は少し高めなのでトランスのタップを少し下げることにします。コンデンサー類も注文した。


 回路図ではトランスからもアース線の引き出しがある。2個のトランスはネジ止めがないのでコアにドリルで穴を開けてタップを立ててすべてのトランスからアースを取った。主電源の電圧は4V下がったタップへ変更した。

 取り出したトランスはケースに戻して元の場所に収めた。細かい配線を戻して整理して。。トランスケースは前パネルのスイッチと干渉するので縦置きとなった。
 

 次に行きます。アームリフターはモーター音はするが稼働しない。外してみると

 モーターと駆動プーリーを結ぶベルトが切れています。実は普通のゴムバンドで前回換えたのは私です。。もらった熱接着タイプのベルトで作成して
 
 うまく行きました。これで機械的な動作は復旧したので信号を取り出してみます。

 信号出力はラインでキャノンコネクターです。詳しく解析はしていませんがこのプレーヤーはBBC仕様なので前面にフェーダーが付いていてまたリモート操作に対応しています。前面パネルを開けると
 
 フェーダーへの信号はイコライザーボードから引き出されてオペンプを経て達します。BBCではこういう仕様だったわけですが一般に使うにはやはり隣にあるラインアンプを経て出力トランスで出力させたい。出力は裏面からですがラインアンプのポテンショメーターが効くことを確認して接続します。
 BBC仕様の配線は回路図、結線図には無く後付けなためプロが行なったとしても全体の調和を損なっているように見える。本体の基本設計をきっちりと行なって配置や接続をわかりやすくしたからこそ仕様の変更がスムースにできていると思うが通常の使用には必要がない部分は撤去したい気にもなる。。garrard301のBBC仕様などは通常使用にはとても使いづらいと思うが世の中には色々な好みを持つ方々がいるので独断による大胆な変更はやはり控えた方が良いように思います。ちょっと整理する程度にとどめておくことにします。
 肝心の音出しは実はすんなりとは行かなくて、シェルの接点を掃除するなどしてようやくこぎつけた。
 
 初めは少し寝ぼけたような感じでしたがしばらくすると次第に目が覚めてきた様子。しばらく聴いてみましょう。



      ミス・アメリカ  リンダ・ロンシュタット(1978年)

 リンダ・ロンシュタットは今年71歳とのことだが今から40年前の彼女の代表作。当時新譜で購入した国内版。EMT950の発表から2年後なのでラジオ局などでもこのプレーヤーで盛んにかけられたと思う。70年代を代表するアメリカンポップスの一枚。テープレコーダーは何を使って録音したのだろうか?やっぱりアンペックスか?スカリーか?なんたって「ミス・アメリカ(邦題)」なのだから。


 帰省先から帰宅する時に秋葉原に寄ることが多いが年々オジさんの好きそうなお店が減ってきて行くところが無い。電気少年の街からオタクの聖地に変貌して久しいがやはり寂しく感じる。その中でも必ず行くのはラジオデパート、というか此処しか行くところがない。どなたか「私の好きそうなお店」をお教えいただきたいと切に思います。
 そのラジオデパートで買ってきたキャノンコネクターを取り付けて別購入の220μFの電解コンデンサーはやっぱりチューブラータイプが手に入らなかったので改造して3本とも交換した。
 

 後付けのBBC配線を整理していたら表のフェーダーはイコライザーからの信号は通過するようで今の所この部分の配線は必要な状態です。イコライザーから出た信号はオペアンプで増幅されフェーダーからまたイコライザーボードへ戻る。フェーダーから別ルートが出ているようですが(モノラル変換されているかもしれない)この辺りは失礼してスルーすることにします。

 時間表示のカウンターのLEDのセグメントが1ヶ所点灯しません。10の位の真ん中の横棒です。結構目立つのでできれば交換したい。パネルを開けてみる

 5桁のLEDのうち左から2番目です。ところで一番左は「時」表示なのだろうか?点灯しているのを見たことがないし、もしそうであっても2時間以上(支障が出るのは「2」の数字から)の表示はいらないと判断して
 
 左2個を入れ替えてごまかした。ソケットに入っているので今後さらにトラブルが出ても規格品のようで(サイズで名前があるらしい。ちなみにこれは「KW1391CSB」(未確認です。会社ごとで名前が異なる))交換できそう。

 LED1個の交換で思い出したのは、、、随分前に「Macintosh plus」というMacの始祖みたいなコンピュータを使っていた頃、20Mbのハードディスクと一緒に専用バックに入れて持ち歩いてデータを入力していた。かなりの重量で階段を4階まで担いで登っていた。ハードな使用が祟ったのかそのうちキーボードの1個のキーが反応しなくなって分解すると当然のようにキースイッチがいっぱい並んでいる。デジカメなんて無いから形を覚えておいて秋葉原で探したら、、ありました!1個買って喜び勇んで持ち帰って交換して治った時の嬉しさといったら、、。とにかく全てが高価だったから中古で購入したMac plusでも宝物だった。今時はキーボードは量販店に行けば1000円台で購入できる時代になって誰もが当たり前にPCやスマホを使う。でも当時は中古のMacでも「時代の先端」を感じていた。今の時代は「コンピュータが趣味です」なんていったら「怪しい人」扱いされるのは必至だが当時は尊敬された気がする(ただの錯覚か?)。HAM(king of hobbyと言われてた)やオーディオも憧れの趣味だったのは間違いないところだが世間のブームが去っても楽しめることができてるのが「自分にとってホントに必要な事」だと思うしルーツは遠い昔(小学校の低学年くらいまで)にしていた遊びやいたずらのようで「幼い頃を思い返してみるとこれからの道筋が見えてくる」というのを聞いたことがある。。そうかもしれないと思う今日この頃です。

 ターンテーブルを外して重量を計ってみると
 
 480g。フリスビーみたいと言われるが事実です。それを支えるフレームとモーターのゴツいこと。。移動時にはサスペンションとモーターをロックするのだがサスペンションのロックができない。ゴム類がへたっているのかもしれないがクッションはあるので今回はスルーします。モーターのロックは真下に空いている穴から手を突っ込んでダイヤルを締めてロックする。これは重要で実は海外オークションでEMT950Eを落札した時に送られてきたプレーヤーのモーターが破損していて多分ロックしてなかったと思う。一瞬目の前が真っ暗になったが売主にそのまま連絡したら「モーターをもう一個持っているので送ります」で事なきを得た。こんなのはホントに稀で今でもラッキーだったと思ってます。


 最後に操作について書かせていただきます。
 操作ボードの一番上ですが

 赤ボタンはメインスイッチ、モノラル、ステレオ、スピードと切り替えの他にスピードの微調整がある。ただCOARSEとFINEの違いがよく分からない。上のダイヤルで変化させます。ターンテーブルの周囲には各回転スピードに応じたマークがありスピードに対応して点灯している。
 中段はアームのインジケータメーターと頭出し関係

 メーターはアームの水平方向の表示をするが曲の頭出しにはとても有効かと思う。センサーはとても正確。デジタルカウンターは時間表示でターンテーブルが回転を始めるとスタートし積算される。「00」はカウンターリセットでその下のボタンは押した時だけテーブルが逆回転し、0から逆回転でマイナス表示になる。その横のスイッチは押すとカウンターが「0」になるまで(逆)回転する。(忘れてました。マイナス表示のためにLEDの真ん中の横棒は必須だった!)

 おお! 表示されています。LEDの足の接触不良だったのかもしれない。。良かったです。
 最下段です。

 左のスイッチは黄色がOFF、緑がONでこのスイッチの目的はちょっと解りづらいところだがOFFにするとターンテーブルとアームリフターの操作ができなくなる。隣のスイッチは上はターンテーブルの停止、下の緑は回転。このスイッチの周囲には防護壁があって手触りでスイッチの位置がわかるので目を離しても一番怖い「キューが出た時の押し間違い」を防いでいる。一番右はアームの上下で通常はアームを下ろした状態で頭出しをして待機する。

 とにかく至れり尽くせりの内容で放送事故をいかに無くすかというのが最重要タスクで、現場からの声やEMTの長年の経験を生かした究極のプレーヤーだったのだろうと思います。



 

  お読みいただきありがとうございました。




 後日談
 一生手元に置いておきたいと思っていたのですが稼働する機会が減ったのと諸般の事情でお嫁に行くことになりまして先日お別れしました。船便でイギリスから3ヶ月くらいかけて来たプレーヤーでした。木材で梱包されていて内側には油紙が貼ってありまして梱包を解いた時の感動を思い出します。残念至極ですが新しい環境で元気に働いて欲しいと思ってます。








 


SONY TC-4550SD について

2018-01-25 20:11:49 | カセットデッキ

 SONYの可搬型テレコは民生用の他に業務機の系譜があるがそれらは別項に譲るとして、TC-4550SDは1976年に民生機器で最上級(?)のポータブルカセットテープレコーダーとして発売された。
  カタログから

   
  フラッグシップの価格はポータブルカセットテープレコーダーとしては驚きの158000円。

    型式 ポータブルカセットコーダー
    ヘッド 消去:1 録再:1
    モーター キャプスタン用:FG付き周波数サーボモーター
    早巻用:   DCモーター
    SN比    61dB(ドルビーoff、ピークレベル、デュアドカセット)
    周波数特性 20Hz〜20kHz(デュアドカセット)
    ワウ・フラッター 0.065%wrms
    歪率 1.2%(デュアドカセット)
    モニター出力 500mW(EIAJ)
    電源 AC100V(付属ACパック使用)
    乾電池12V(単1×8)
    カーバッテリー(別売DCC-130使用)
    電池寿命 約40時間(エバレディアルカリAM-1)
    約12時間(ソニースーパーSUM-1S)
    消費電力 7VA(AC時)
    外形寸法 幅370×高さ110×奥行240mm
    重量 5.2kg(乾電池含)
    付属 ショルダーベルト
     (別売) キャリングケース LC-4550(6,000円)

 さすがに単一電池8本ではさぞ大変な重さだっただろうと軟弱者は考えるが、生録演奏会に2トラ38cm機材を持ち込んでた当時のマニア達には全く問題なかったノダ、、とも思う。



  

  

 久しぶりに通電したが動作せず。仕方ないので分解しながら様子を伺う。裏から入れる電池ボックスには同サイズのACアダプターが収まる。電池を並べるパーツが無いので現在はこのACアダプターが唯一の電源。

 この写真はwebから拝借したものだが右のブロックに単一電池8本をセットする。

 内部は大きな修理をした様子はなく穏やか。電源が入らないのはアダプターと本体の接触が悪いのが原因かと思ったが調べてみると、本体にある電源スイッチのレバーがアダプターにあるスイッチを直接押してON,OFFするのだがこれがうまくいっていないらしい。メーターのランプも切れていて点灯しない。そのうちなんとか電源は入るようになったがキャプスタンの回転がおかしく高速で回っている。横には±6%の範囲で回転を調整できるボリュームがある(つまみを引っ張ると可変モードになる)がここも効かない。どうもサーボが外れている様子でさてどうするかな、、と思っていたら突然正常に戻った。何が原因だったかは不明だがこのあたりは知識がないのでとりあえず安堵する。

 軽く掃除してまた組み直した。本格的なメンテはこれから行います。しばらくこの状態で試聴してみましょう。

 しばらく再生していたらまた暴走が始まってしまった。昔のテレビみたいに叩くと治る(!)こともあったがついに故障が本格化した。やはり避けては通れない。
 回路図は入手できそうもないのが困った。おまけに知識もないので治す自信もない。これ以上壊さないように最大注意しながら進めてギブアップの段階で専門家に委ねることにします。

 カタログスペックによればキャプスタンモーターは「FG付き周波数サーボモーター」になっている。「FG」って何だ?多分「周波の発生」のことかと思うがモーターそのものはブラシ付きのDCモーターだと思うので、モーター軸にFGが付いていて回転数によって変化する周波数に応じてモーター電圧をコントロールしているのではないか、、と推理する(この程度なのです。私の知識は。)
 裏カバーを外すとシールド無しに現れる基板がこれらを司るところで見えているのがキャプスタンモーター。

 基板はネジ2本で早巻モーターに止まっている。ネジを外すと
 
 モーターには赤白2本でDCが給電され、紫2本でFG信号が出力される。出力された信号は処理され給電電圧をコントロールします。モーターの故障であればとにかく回っているのでブラシ関係は大丈夫だとして紫2本にFG信号が出ているかを確認することからスタートする。その後処理がきちんとされているかを順を追って検証することになる。。
 電源を入れたまま基板を触ると時々復帰したり暴走したりする。これは信号処理の途中を邪魔したからだと思うが肝心のモーターからのFG信号出力線を触ってもサーボが外れることがある。。どうも基板との接触が問題の可能性が高くそうであれば素人としてはとてもありがたい。そのうち何をしても暴走しなくなってしまってトラブルが再現できなくなった。
 しょうがないので(ウソです)また蓋を閉じることにした。これ以上の深追いは自分の力量との照らし合わせでやめといたほうが無難だ。。

 次の不具合、電源スイッチがうまく動かない。原因は内蔵されるACアダプターのトグルスイッチの動きが渋くて本体のレバーを動かしてもACアダプターごと動いてしまうこと。これはスイッチを分解整備してみましょう。
 
 うまくいきました。この方法だと露出していないアダプターだがACをしっかりと遮断できる。面白いアイディアだと思う。

 次の不具合、メーターの照明が全て消えている。分解してみると
 
 照明はメーター2ヶ所、カウンター、テープの窓の計4ヶ所だが何故か全て電球はカットされていた。ちょっと面倒な雰囲気なのでここはスルーします。

 モーターの暴走がまたまた再発した。
 泥沼に陥ることを覚悟してキャプスタンモーターを外す。上面からネジ3個で固定されている。ヘッドのカバーを外して
 
 分解してみると
 
 何と整流子の固定板が欠けているしネジ穴にはヒビが入っている。何とか修正して長いネジとナットで固定した。また整流子のダンパーらしきスポンジも劣化が激しい。板のかけらもスポンジのクズも見当たらないので過去にメンテの手が入っている。
 
 スポンジを切って接着した。これで導通を測ってみる。美しい回転子はまるでREVOXのモーターのようです。

 実際はなかなか安定せずに軸のスペーサーの位置を変更したりして数回の分解、組み立てで何とか安定した。
 その後もACアダプターのフューズが切れて交換すること4回。また当初原因不明の挙動が次から次へと(この表現がぴったりだ)現れて現状復帰(最初の故障状態のサーボが外れて高速回転)するまで10時間ほどかかってしまった。

 改めてモーターからのFG信号出力のDCRを測定すると

 やっぱりコイルの導通がありません。モーターのフライホイールの裏にリング状の永久磁石があり波が出力されます。コイルのDCRは2kΩ(未確認)。
 コイルはモーターハウジングの外部に取り付けられている。やはり断線しているが引き出し線のあたりかと見当つけると、、、やはりそうでした。巻き始めの方が切れているので少し解かないとワイヤーの端が取り出せない。コイルワイヤーの太さはマイクロメータで測定すると0.07mm、また取り出したところで端子板にハンダ付けして端子板をコイル表面に固定して、端子板に引き出し線をハンダつけるのはアマチュアにとっては最大級の難易度かと。
 2時間ほどかかって何とかできました。

 木綿糸で周囲を固定して完成。改めて回転させて(当然サーボの外れた最高回転)オシロスコープで波形を見ると

 ちゃんとサイン波が出力されていてホッとします。これで基板に接続して解決されていなければ回路の問題もあるということになるが、、

 、、、安定して回っています。良かったです。。とてもいい音。どっしりとしていてポータブルカセットとは思えないような安定感。

 FGモーター修理の備忘録
 ・分解するときは最大限の注意を払う。特に整流子、コイルの引き出し線にストレスをかけないように
 ・樹脂ワッシャーなどどこに入っていたかはしっかりとメモする
 ・回路の故障は少なくモーターなど可動部の故障が多いので真っ先にFG信号出力をモニターすること
 ・新たな問題が加わったときはその問題の解決を優先する。
 ・以前に修理の手が入っているらしきところは前修理の間違いの可能性もある

 2日間ほど仕事の合間に寝食忘れて(ウソ)修理に没頭した。楽しかったような苦しかったような。。深追いは泥沼にはまる、、という予感は的中で集中しなくてはならないし中途半端な作業の中断は事態を悪化させるのでキリがつくまで寝ることもできない。自分の持ち物だからいいようなもので他人様の預かりものだったら、、と考えると修理に携わっている方々のご苦労を思ってしまいます。趣味として考えれば上手くいったときの快感はかなりあって古いラジカセやテープレコーダーの再生修理を趣味にされている方々の気持ちもちょっとわかったような気がします。

 全盛期の可搬型のテープデッキを考えるとオープンデッキではNAGRA、STELLAVOX、UHER、SONY、またカセットデッキではUHER、SONYほか家電各社が作っていた。カセットテープという限られた規格や悪条件のフィールドで性能を発揮させる技術ではやはりSONYは傑出していた。当時カセットデンスケは数多く発売されていて購入した全員が生録したとは思わないが製品としての魅力、凝縮された高級感、精密さ、ギミックの面白さなど所有する満足度が高かった。SONYはやっぱり「楽しくて小型で高性能」を作り出す企業の代名詞だった。

 TC-4550SDはTC-D5を生み出す前夜の製品。比較的大柄な筐体に詰め込むだけ詰め込んだ技術はポータブルカセットデッキの一つの完成形でこの後(1978年)最終型とも言えるTC-D5が発売される。



 

 

 

 

    

 お読みいただきありがとうございました。



 
 


SONY WM-R2 について

2018-01-24 13:40:36 | カセットデッキ

 SONY「ウォークマン」は改めて云うまでもなく世界を席巻した再生専用機でSONYというブランドの間違いなく代表作。1979年に初代が発売されて以来カセットテープ、CD、MD、DAT、HD、メモリースティック、、など媒体を増やしながら現在も続いている。カセットウォークマンは2010年まで生産されていた。WM-R2はレコーディングウォークマンとして1981年に発売され爆発的に売れたらしい。コンパクトな筐体にステレオマイクまで組み込んでいてとても魅力的だった。珍しく新品で購入してから37年経過(!)したわけだがいつ頃からか動かなくなっていた。今回初めて中を開けてみた。。



 

 

 表面に露出しているネジを緩めるとカバーが外れて

 この時に開閉するフタをロックするパーツがバネごと外れるのでバネを無くさないように、、。またマイクのカバーも外しておきます。
 いきなりこんなカスが現れます、、というかあちこちに詰まっている。

 ゴムベルトの残骸で触ると指が真っ黒になる。
 基板を外すにはネジを外すのとコード類を止めているテープも剥がす必要があります。外れなかったらネジが残っています。基板を外すと

 出ました。問題の黒いプラスチックギア、やっぱり割れています。
 webの記事を見てもゴムベルトの溶解とギアの破折はほとんどに見られるようで、特にこのギアの再生は困難。代替部品の情報は持っていませんが入手できなければ残念ながら修理は不可能なようです。(どなたか情報があれば教えてください)

 細かいネジも部位によって微妙に規格が異なっていてとても繊細なキカイです。この内容でフィールド使用を前提とした機器を大量生産したのですからSONYのいやモノ作り日本の技術力高さに脱帽です。当時の世界の技術者の感嘆の声が聞こえてくるような。。

5年後の追記
 最近オークションでこの機種に適合する「アイドラーギア 射出成形」というギアが出品されている。3Dプリンターのコピー製品ではなかなか強度を出すのが難しいらしいが射出成形という方法だと強度は十分に確保されるらしい。






 

 


キースモンクス レコードクリーナーについて

2018-01-19 12:00:43 | レコードプレーヤー

 キースモンクス(Kieth Monks)社は英国の音響メーカーで放送現場での機械式のレコードクリーナーで有名。同社のHPによればレコードクリーナーの歴史は1969年からで現在も製造は続いていて消耗品の供給もされている。 http://www.keithmonks-rcm.co.uk

 現在の最新機(HPから)


 私がKieth Monskレコードクリーナー(KMRと略す)を初めて知ったのは1970年代、中学生の頃の「初歩のラジオ」の記事で(そうすると発売されてさほど時間は経ってなかった頃ということになる)、放送局ではこんな機械でレコードを掃除している(!)のと50万円(!)という価格は「Kieth Monks」という名前とともに深く印象に残った。以来現物を見ることもなく数十年が経過した。その後KMRに似たレコードクリーナーは色々と出現したが「洗浄液を含んだ糸がレコード盤に触れて溝を洗い、糸ごと洗浄液を吸引して乾燥する」というメカニズムは他には見当たらず半世紀経過した現行製品でも原理は全く変化していないことには(最初の完成度の高さと共に)驚く。
 中古で入手したのは20年ほど前かと思うが説明書によると代理店は「東志」。10年ほど前に寿命が尽きたゴム製のポンプの換えを同社から入手できたが現在も扱っているかはわかりません。当時のカタログにはRCM MK2とMK3(2連)があった。


 使い方は簡単なようでちょっとコツもいるし仕組みを理解していないとメンテナンスもできない。。
 洗浄液はマニュアルではアルコール:水が1対1なのだがちょっとアルコールを薄めで使ってます。この洗浄液は本体のポンプ(逆流防止弁は外付け)でブラッシから滲み出ます。
  
 ブラッシを十分に湿らしてからレコードをWETスイッチで回転させて盤面に当てて10秒〜20秒洗浄します(ここで見物人からは「全然手動じゃん!!」とツッコミが入ることは確実)。でもここからがハイライト。

 ブラッシを退けてピックアップをレーベルあたりに置いてCLEANスイッチ入れると、ターンテーブルが回転し電動ポンプが作動して内周から外に向かって結構なスピードで移動しながら吸引していく。洗浄液を出しすぎると思いっきり周囲に撒き散らして慌てるが、吸引されていくと見た目でも境目が明らかで盤面も美しくなって嬉しくなる。最外周にはちょっと液が残ることがあるのでそっとティッシュなどを当てる、、、という手順。ひっくり返して裏面も行う。マニュアルによるとクリーニング後はすぐに演奏可能とのことだが心情的にはちょっと待ちたい。

 デッキを開けると


  
 吸引路に洗浄後の廃液と共にナイロン糸が陰圧で引っ張られていくという仕組みで、レコード盤との接触点が糸という事と共に独創的だと思う。アームの動きと糸巻きからの供給量はモーターでコントロールされていて、試行錯誤があったはず。
 洗浄液の容器は500cc。糸は30番のナイロン糸で糸巻きは15分に1回転する。糸巻き1個で2000枚〜2500枚のLPレコードの洗浄ができるとのこと。もちろん廃液が溜まったら捨てるし洗浄液は補充しなくてはならない。

 これだけ見ると古いターンテーブルとポンプが手に入ったら自作できそうな気がしてくる。実際に動画サイトなどでは自作されたと思われるレコードクリーナーを見ることができる。一番の課題は極細の毛を持つブラシだと思うがこのブラシだけでも補修部品として供給されているのでこれを利用してもいいかもしれない。

 久しぶりに稼働させると、、ターンテーブルは回るがアームの動きが外から内に向かって動く(!)これでは反対だ。でも正常方向に動くこともあって一定しない。仕方ないので分解してみる。
 
 ターンテーブルは独創的なメカニズムのスイス製「LENCO」。LENCOのレコードプレーヤーを常用している人は私の周りには皆無、自宅では使ったことはないが回転を安定させるのはなかなか大変だった記憶があります。縦に位置するアイドラーとテーパー状のモーター軸の接触位置で速度が変更できる。現在は最速の位置に固定してありやはり特殊使用かと思う。
 

 アーム送りと糸巻きには各々にモーターが使われている。起動用のコンデンサーが容量抜けかと思い、適当なコンデンサーと交換してみる。。これで再度組み立ててみるとまだ逆転することがある。。なぜ??不思議だ。ACモーターの原理が分かってないとこうなる。

 容量を変えても頻度は減ったがやはり逆回転することがあります。なぜ?
 しばらく使っていたら逆走はほぼなくなった。これで良しとしましょう。ちょっと情けないけど。

 レコードの掃除は古今東西さまざまな方法があった。一般的なのはレコードブラシで拭うというものだが一周すると帯状の埃がどうしても残ってこれをどう拾うか悩んでしまう。私は「ハァ」っと息をかけて拭き取っていた。今でも手元にあるブラシは45年くらい前から使っているのだが中に水を含ませたスポンジが入っていて埃を吸い付けてしまうというもの。乾燥防止のために専用の筒に入れておく。ターンテーブルにセットしてレコードが回っている間に掃除するものや(これも長く使っていた)、電動でブラッシが回ってレコードプレーヤーに乗せるとスピンドルを中心にして自走するもの(このタイプはなぜかオゾンの匂いがしていた記憶があるが埃を吸着する仕組みがあったのかもしれない)。目の敵にされてたのはレコードスプレーで一時は盛ん使ってたが「レコードに良くない!」という記事を見た時のショックは大きかった。学生時代に通っていた中古レコード店のオヤジは固く絞ったガーゼで強く拭くのが一番だ!と言っていたし、強力なコロコロみたいなローラー状の粘着テープでバリバリ言わせながら転がしたのや木工ボンドを薄めたのを盤面に塗りつけて乾燥してから剥がす、、という荒技も。
 高かったし大切にしていたレコードを少しでも良い音で聴きたいということで色々と考えて工夫した。
 これらは「アナログの作法」などと言われるが一部のオタクやマニアの儀式ではなくごく普通の生活の中の一般的なものだった、、ことに隔世の感ありです。


  お読みいただきありがとうございました。



 後日談
 一生手元に置いておきたいと思っていたのですが稼働する機会が減ったのと諸般の事情でお嫁に行くことになりまして先日お別れしました。残念至極ですが新しい環境で元気に働いて欲しいと思ってます。




 


 


REVOX E36 について

2018-01-13 14:02:04 | オープンデッキ

 REVOX 36シリーズはREVOX初期のオープンテープレコーダーで1956年のA36から最後の G36まで長期間にわたって大量に(8万台以上と言われている)作られた。

 REVOX A36(1956年)   REVOX B36(1957年)   REVOX C36(1958年)
       
 初代のA36は2500台が作られた。36Cまでがモノラル

  REVOX D36(1960年)   REVOX E36(1962年)   REVOX F36(1962年) 
     
  REVOX G36

 それまではREVOX独自の25cmリールが最大のサイズだったがG36から国際基準の10号(26.5cm)まで使えるようになった。そのため全体のサイズが大きくなっている。またそれまでのシンボルカラーは緑色だったがG36は灰色に変更された。この機種だけで6万台とも8万台とも製造されたと言われている。1967年まで製造。


 秀逸なデザインのボディは最終型に至るまで基本的な形態は維持された。操作系、走行系も大きな変更は無かったが、D36以降はステレオになり回路は大きく変更になった。
 QUADやNAGRAなどもそうだがモノラルからステレオ対応に移行する時に筐体はほとんど変更なく完了させるというのはヨーロッパの伝統なのだろうか?凄さと共に奥ゆかしささえ感じる。

 拙宅にはREVOX E36が居ます。




 リール軸のロックは無いので立てての使用はできません。また写真で見るリールは何号なのだろう?通常の10号リールは大きすぎて入らないし7号リールより大きいプラスチックリール。
 リールについて調べて見ると現在の標準は3号、5号、7号(18cm)、10号(26.5cm)だがそれ以外でも22cm、25cmなどがあった様子。実際に25cmのリールを探してみるが数が少ないのかなかなか見当たらない。しかしREVOX 36シリーズにはG36を除いて必ず要る(見た目で)訳でなんとか入手したい。ところで入らないはずの10号リールアダプターを介して10号のようなメタルリールを装着している写真があったが多分改造したものかと思う。10号リールを切り取って、また軸部分に手を加えたか他機種を移植したものかと思うがなかなか興味深い。

 トランクの蓋を開けると本体との間に隙間がありテープとリールを入れることができて使い勝っても良好。55年以上前の製品にもかかわらず動作はとても快適でさすがにベストセラー製品だと思わせる。
 
 トランクケースと一体構造になっている
 
 デッキ部分は金属板の打ち抜き。ここをダイキャストにするとすごい重量になりそう。でも現在でも十分重たい。。
 
 モノラルアンプとモニタースピーカーが内蔵されている。フィリップス製によく似たダブルコーン。
 
 巻き上げ、巻き戻しモーターの回転するアウターはボディと同色に塗られていて余裕を感じる。。
 
 キャプスタンモーターはとても大きくやはりこの色に。回転軸はゴム製のジョイントを介してその上にある黒色のフライホイールにつながっている。この様子を見ると電気的なコントロールではなく物量をたっぷりと投入してかなり高い基本性能を目指したとわかる。
  
 アンプ類は底の狭いスペースに結構な密度で収まっている。

 録音部の入力はPNPトランジスターが2石使われている。あとは真空管のハイブリッドで比較的シンプルなもの。走行系もとても簡素な構成でメンテナンスしやすそう。スピーカー駆動のアンプ部は6BM8ppという豪華なもの(?)でch切り替えとともに気合が入っている。この辺りはステレオセットに繋ぐいわゆる「テープデッキ」というよりテープレコーダーという位置付けを感じる。
 またアイキャッチャーなマジックアイの「EM71」だが比較的潤沢に流通している様子。現在はちょっと色が薄いのでどの程度実用的かは置いといてもできれば交換したいところ。


 しばらく再生だけ行っていたがラインから録音してみると片chがされない。録音時はマジックアイが点灯して入力信号を表示する。36Eはマジックアイ1個なのでスイッチで両chを切り替える。36Fからは2個になってるらしい。みると片chは入力信号を表示しない。早速開けてみると入力あたりからの反応はある。改めて回路図を見ると、、入力には2段のトランジスターアンプがあるのだがその間に入力ボリュームがある! 裏パネルにあったボリュームはやっぱり絞ってあったという顛末。

 めでたく入力は確認できるようになったがやはり片chはされない。信号を追ってみると(と言ってもマジックアイと録音ヘッドは抵抗1本で直結されている)ヘッドの断線か?!と焦ったがヘッドブロック部分を外して確認すると線が外れていてホッとする。ヘッドフロックは動かしたくなかったが2ヶ所の止めネジには各々異なる枚数のシムが入っていたのでそのまま戻した。これで録音再生は問題なくできるようになった。マジックアイは表示が薄いので海外から購入して取り替えたのだが(少しは改善したが)やっぱり薄い表示でちょっとがっかりした。EM71というこのバルブは廉価で潤沢にあるようなので助かるが。


 ある時「巻き戻しが随分威勢がよいな」と思っていたらボタンを押さないのに軸が僅かに回る。再生すると巻き戻しモーターあたりから発煙しヒューズが飛んだ。。分解して見るとやっぱり抵抗が燃えた様子。回路図から巻き戻し、巻き上げモーター共に各々の動作時に220Vかかる。スイッチ毎にスパークキラーの抵抗とコンデンサーが入っていてこのコンデンサーの絶縁が低下して電流が流れるとシリーズに繋がっている抵抗器が燃える(!)という流れかと思う。


 この辺りのトラブルはREVOX A700と全く一緒ですがA700は抵抗は燃えてRIFAコンデンサーは破裂したという激しさで十分見ごたえがあったけど(!)こちらの方は220Vかかっている関係でより危険です。やっぱり古いキカイはそれなりの扱いが求められます。
 早速コンデンサーを注文して3ヶ所すべて交換した。shizuki製。
 
 燃えていた抵抗は2本の10Ωで一緒に交換。

 これで安定して動くようになった。メカニズムを引っ張るのは2ヶ所のソレノイドで今回は外して作業したので微調整が必要。各リールのブレーキ操作ともう一ヶ所はヘッドブロック周り。3モーターのボタン式の操作だがボタンは重厚でガチャンと操作する。。

 モニタースピーカーを内蔵していて単体でも音が出るのはとてもよい。ステレオのオーディオセットに接続してももちろん良いが当時は一体何を録音していたのだろうか?こんな高級機器を購入する層がステレオLPレコードをテープにダビングしていたとは考えにくいし、FMのエアチェックをせっせとしていたとも思えない。マイク使ってホームパーティーでもしていたのだろうか?
 思い出すのは子供の頃、実家に初めてテープレコーダーが来た時の事。もちろんオープンの国産モノラルだが嬉しくて家族みんな笑顔でマイクでやたらめったら録音してた。両親が相談して購入したのだと思うが決して裕福とは言えなかった我が家にとっては贅沢品。日々の生活には何に役立つでもないが家族の声をCanonの小さなハーフカメラで撮った写真とともに保存しておきたいと思ったのだろうか。
 その父親も昨年母を残して亡くなりました。



 お読みいただきありがとうございました。



 追記 1
 備忘録
 ・電源スイッチダイヤルはON OFFとNAB,CCIRの切り替えを行うが操作軸は右回転しながら軸と受けに掘られた溝にはめ込む。180°ずれることがあるが非分解でセットできる構造。
 ・キャプスタンモーターが不動の時は速度切り替えスイッチのポジションを確認する。スイッチONで常に回転している。
 ・テープは2ヶ所あるテープガイドの内側を走行する。
 ・テープ横行のセンサーの動きはとても繊細。スイッチはフリップフロップ様の動きをするので細かな調整が必要。
 ・周波数は50Hz固定、電圧はユニバーサル


 後日談1
 巻き戻し時のリール回転のパワーが足りない。最後の方では止まりそうになる。電源電圧切り替えで110Vのトコに100Vなので仕方ないのか、、と思っていたがいよいよ動かなくなってしまった。回路図を見ると入力電圧切り替えに関わらずトランス両端の220Vがかかっているのは前述の通りだが(110V入力に100Vだと200Vになるが)電圧が下がっているのが原因とは考え難い(理由はありません。勘です)またパネルをめくってみると(多分もう30回くらいは着脱している)ブレーキが関係している様子。3モーターなのでブレーキはソレノイドを用いて両方のリールを同時にコントロールしている。回路図ではONとOFFしかなく巻き戻し、早送り、そして録音再生時にOFFとなるはずだが実際はブレーキレバーの動きが曖昧で弱々しい。最初は録音再生時は半ブレーキになるのかと思ったくらいだが回路図ではそうではなさそう。外部コントロール端子にプラグを差し込んだ状態で正常動作になる。

 ソレノイドの電源はブリッジ整流した24Vなのだがヨーロッパの電気製品に多いセレン整流器を使っている。回路図と照らし合わすとB電源の高電圧とソレノイドの整流がセレンで、初段のヒーターの整流はシリコンブリッジ整流が使われていた。そこで整流器の出口の電圧を測定すると無負荷で20V、ソレノイドが作動した状態で18V程度だったので電圧が激減しているわけではなさそう。またB電圧も2割減程度でまあまあといったところ。多分入力電圧を110Vに昇圧すれば解決しそうだったがいちいちトランスを繋ぐのは面倒なのでセレンにシリコンブリッジをパラに接続して測定してみると(上記の回路図の「M+」のところで)

 動作時に22V程度まで回復しソレノイドの動きもシャープになった。動作するとブレーキはしっかりとOFFとなって軸のフリクションは下がって回転しやすくなって巻き戻しも最後まで止まらずに完了する。今回はこのセレン整流器にパラにシリコンブリッジを組み込んでようやく解決した。この辺りの不具合が度重なる分解組立を招いていたので解決してよかったです。モーターのスパークキラーのコンデンサーが短絡してのトラブルが多かったのでソレノイドのも注意することにします。C67,C68,C69の10μFは次に調子悪くなったら要チェックかもしれない。