Decca Decolaがお嫁入り

やっとこさ入手したDecca Decolaの整備記録

UHER CRのベルト交換とピンチローラーについて(追記)

2018-08-10 13:31:27 | UHER
 ポータブルカセットデッキでは比類なき高額なUHER製品だが製造されて数十年の経過でメンテナンスなしには100%と言っていいくらいまともに稼働しなくなっている。劣化部品の筆頭はゴムベルトでUHER CRには4本使われている。次はピンチローラーでCR210はオートリバースなので2個、CR240は1個。両者とも狭い空間にほとんど隙間がないくらい高密度に配置されていて交換はハードルが高いらしく海外では結構な金額で交換を請け負う業者まで居ます。しかし交換を含むメンテナンスをしなくてはタダの飾りになってしまうので業者に頼むのも一つの選択には違いない。今まで自分が行ってきた工程を備忘録を兼ねて記録しておこうと思います。

 UHER CR210とCR240の走行系は基本的には同じなのでゴムベルトも共通になっています。メーカーからの純正品の供給の有無は不明だが海外オークションを見ると社外品と思われるものが常に出品されていて送料込みで3000円〜5000円程度で入手できます。国内では通販サイトでカセットデッキの交換ベルトというカテゴリーでいろんな大きさの詰め合わせセットが販売されていて数十本入っていて500円から1000円程度で私もこれを利用しています。ただし必要とされている大きさのものが含まれるかは説明と写真だけではなかなか把握できないし中には粗悪品もあるようでクレームを入れて交換したこともあります。メインベルトとカウンターベルトは特に苦労します。

 
 これ以外にも購入したのはあるのですが持っていても劣化は進みますし、最初から粗悪品もある。

 UHER CR210の場合
 
 外装パネルを外してからテープ装填ブロックを外します。マイナスネジ2本外して上に引き上げれば外れます。この時テンションがかかっていますが気にしなくて結構です。
 
 テーム挿入口のリッドですが外しておく方が安全です。マイナスネジを緩めて取り付け金具を奥方向へスライドさせて開閉リッドを外します。その時に細いスプリングをなくさないように。もし外れないようならネジごと外します。
 
 裏返して三角印の付いている3ヶ所のネジを外すとフライホイールを含んだヘッドブロックが外れます。
  
 ヘッドからのコネクターを外しておく(CR240の場合)。またシマシマセンサーの載るパーツを留めているビスも外しておく。フライホイールを含むヘッドブロックが落ちているので支えながらひっくり返す。
 
 モータープーリーからベルトを外してこれで全てのベルトが取り外せます。写真ではボード(基板)は外しています。この方が視界良好。
 

 

 
 ベルトは伸びているので計測は参考程度だが 直径 80mm 50mm 25mm(50mmは2本)少し小さめのベルトを選択する。
 またせっかくメカニズムを少し分解しているので掃除と給油も行なっておく。
 

 
 メインベルトを懸けてフライホイールが脱落させないパーツを戻して
 
 ここからが一番手こずったところ。巻き上げ、送り出し軸への2本のベルトの装着がそのままではちょっと面倒。そこでクリップでフックを作ってみた。
 
 モータープーリーにゴムベルトをかける前にフライホイールからのベルト2本をフックに引っ掛けておいて作業する。
  
 ベルトがかかったら裏返してヘッドブロックのネジ止めだがその前に各部が結合されているかチェックしておく
  
 カウンターのベルトを装着し、裏返してヘッドブロックとシマシマセンサーのパーツを固定したら電源をつないで走行試験をしておく。向かって右にあるスイッチを押してみて不具合がないか動きを確認しておくと組み上がった後の再分解を避けられます。テープを入れての走行テストをしたければテープ装填ブロックを固定して(後述)行います。

 ヘッドブロックを止めているネジ2本を外してピンチローラーの清掃、養生(?)、ヘッドのクリーニングを行う

 テープ装填ブロックの取り付け。まずガイドのポールに差し込んでから垂直に立ててドライバーやラジオペンチなどで押し込んでからネジ2本で固定する。1ヶ所引っかかりがあってスプリングに逆らって押し込むことでそこがクリアーされます。(全て目視できる位置にあります)押し込んだ時はヘッドブロックが後方へスライドします。
 
 テープ入り口のリッドを外したのと逆の手順で取り付けてからスプリングの端を回して引っ掛ける(留めなくて良いです)。テープ走行して確認。
 
 幸いにうまくいきました。


 UHER CRのダイキャストのシャーシはとても頑丈なもので高信頼性につながっています。一方で基板は経年変化でしなっていたり基板上のスイッチの具合が悪くなったりと使用、保存された環境で様々な状態のものが混在しています。またピンチローラーの寿命も気になるところです。走行が不安定になったら真っ先にここを疑うべきですが純正品が入手できるか否かも不明。現実的には再生したり代替え品を探すことになりそう。メンテナンスしていて感じることはネジ類がしっかりと締め付けられていること。しっかりした工具で適切な力で組み立てられたと思われ、さすがに管理されたドイツ製の工業製品という趣です。テープレコーダーは電子回路とメカニズム両方の問題発生の恐れがある厄介な音響製品ですが、メンテナンスに耐えうる構造であればチャレンジして楽しむのもアリかと思っています。交換せざるを得ない部品やトラブル対処などで情報交換ができればありがたいと思っております。










 お読みいただきありがとうございました。





 
 追記 1
 ベルト交換したがやはり走行が不安定。モーターの不具合やヘッドブロックのテープへの接触の不具合なども疑ったがやはりピンチローラーの問題と思われた。いくつか取り替えてみたが見た目はさほど変わらないのに非常に機能の差があった。もちろん無水アルコールで清拭したりサンドペーパーを当ててみたりしたが根本的な改善は認めず。動作状態のピンチローラーを見るとかなりの圧力でキャプスタン軸に押し付けられていてピンチローラー軸とゴム部分の接着が離れているときはかなり変形する。
 
 接着剤を綺麗に除去して再度接着し直したがやはり根本解決しない。そこで代替え品を探してみることに、、。軸径は1.5mm 直径は12.5mm。ところが勘違いして軸径2.0mm 直径13mmのものを注文してしまった。
 
 中心部は樹脂製。間違いに気づいて唖然としながらも軸径1.5mmのものを探すが残念ながら扱ってない様子。そこでオリジナルの中心部に適当なパーツを組み合わされないか改めて探してみると内径9mm(同寸)外径13.2mm 厚さ1.9mmのアイドラー用ゴムリングというのがあったので入手して劣化したゴムと入れ替えた。
 
 2枚重ねると少し隙間が空くので小さいOリング入れた。接着はしていない。
  
 これで装着するとうまくいきました。ほとんど問題なく再生できる。(このアイドラーゴムは売り切れました。最後の3枚だった。)
 
 オリジナルが入手できない場合のピンチローラーの可能性を考えると
 11.5mm軸径 直径13mm程度の代替え品を探す(発見できず)
 21.5mm軸周りを直径13mmのゴムに移植する。(直径13mm 軸径2mm以上と軸径1.5mmで外寸が小さいものは入手できる。ただし軸の入れ替えが可能かは不明)
 3オリジナルの軸周りに他のゴムを移植する(ドナーは上記のようなものを利用するか内径9mm 外径13mm程度のものを探したが未発見)
 4オリジナルの軸周りを利用して外注
 5本体の1.5mm軸に内径同寸の真鍮スリーブを被せて軸径が2.5mm 外径13mmのピンチローラーに適合させる。
 6外径13mmのゴムを加工して内径9mmに穴を広げる。ただ同心円状に加工するのはかなり難しそう。冷凍するか?
 7新潟精機(SK)六角軸皮抜きポンチ を使ってゴム板から打ち出して研磨してオリジナルと取り替え。


 軸径1.5mmというのがネックになっている。また代替え品の場合は軸周りを(下側は凹んだ形状)加工するなど必要。ゴム部分を外注するのが一番確実だがCR210では2個必要なので結構な金額になりそう。当時の販売価格を考えればこれもありかもしれないが、、ゴムの新製をサイズでお願いすれば少しはコストダウンできるか?

 上記の「2」パターンを実行してみた。間違って注文した軸径2mm 直径13mmの芯を抜いて(破壊して取り出した)軸径1.5mm 直径10mmのピンチローラーを注文し軸だけ取り外して(ゴム部を切って軸周りを破壊せずに外す)移植する。
 
 軸周りの形状が少し異なるので元々あったスペーサーを外して位置の調整を行う。以前注文したテフロンワッシャーが残っていたので役に立った。

 これで聴き比べると上記の「3」パターンと遜色ない。プラスチック軸周りだが一応給油はしてみた。耐久性はわからないが幸いにドナーとなった2種のピンチローラーは在庫は十分ありそうで現時点の対応はこの辺りが一番現実的か。

 しばらく使ってみたがやはり十分な安定を得られない。1KHz 440KHzなどの正弦波を録音再生してもワウが大きいと思う。ピンチローラー以外にも原因があるかもしれないと以前発煙の原因となった10V1000μFの電解コンC16とC28を交換した。
 
 やはり変化は見られず。ただ電圧9.5Vの回路に10V耐圧の大容量なので弱点には違いないので交換が望ましいとは思う。同様にACアダプター内のROEの25V耐圧も交換が望ましい。。
 、、そう書いてからふと思い立ってACアダプターを交換してみた。同じくサンスイが仕立てた100V仕様なものに、、、一瞬違いがあるように感じたが電圧は正常、コンデンサーも取り替えたが変化なしでどうもこの辺りもシロのよう。

 ホームセンターで見かけたパッキン 2個入りで111円
 
 上の1個はアイドラー用ゴムとして注文していたもの。内径、外径は共通だが厚みがパッキンの方が0.1mm厚い2.0mmで都合が良く表面の様子も良好に見える。これを組み込んでみると

 支障なく稼働しそうです。111円でピンチローラーが修復できれば言うことなしだが。。この方法は形状がほとんど変化しないので美しく修理できる。代替えピンチローラーはとにかく見た目が(通常はほとんど見えないが)問題ありであまり使いたくないのが本音。

 youtubeでたまたまUHER CRのメンテナンスが目に止まった。それによるとピンチローラーのスリーブを抜いて周囲のゴムを旋盤に挟んでサンドペーパーを当ててメンテしていた。旋盤はないが電気ドリルで挟むことはできるので早速やってみた。
 
 スリーブは万力と適当な棒で押し出した。4mmのビスナットで電ドリに咥えさせて行う。
 ゴム部は元のもので一度外して再接着してある。アルコールで清拭して装着すると、、結構いい感じでもうしばらくは使えるかもしれない。新製したものもこうすれば研磨できるしいい情報だった。