Decca Decolaがお嫁入り

やっとこさ入手したDecca Decolaの整備記録

TOTO 定量止水栓 の修理

2024-05-21 00:37:01 | 日記

 浴室の混合水栓は浴槽の出湯が自動に止まる定量止水栓なのだが最近調子が悪い。数日前から妻に「蛇口のダイヤルの感触がおかしい」と言われていた。そして昨日は設定量でお湯が止まらず溢れている!タイマーに頼るのも不便なので早速部品を注文して修理してみよう。この製品は古くなると内部のプラスチックのギアが摩滅して正常に働かなくなる。修理は水栓に内蔵されている水車ユニットごと交換するのだが昨年たまたま帰省していた時に実家の水栓(偶然にも同じ製品)が同様の故障をした。その時はいつもお世話になっているお店に修理をお願いした。母親一人暮らしの実家で長期予後の見通せない不十分な修理はできない。修理代をケチって自分で行うアマチュア修理は試行錯誤しながらどうにかして完了に持っていく。修理後も不具合が発生すればその都度手直しが入る。一方プロの作業は的確でやり直しという事がない(あえて断言)。自宅でこの手の作業は家族以外には迷惑はかからないからとたいていが素人の自分が行っていた。

 水栓の型番を確認して定量止水ユニットをamazonに注文した。netで調べてみると作業を進める上での障害がいくつかある事がわかった。一つは上部についている「バルブカバー」が固着していて回しずらいこと、もう一つは「定量止水ユニットカバー」が外れにくい事。両者共に専用の工具がTOTOから発売されているくらい大変らしい。ただ工具の方がユニットより高くこれを買うのは不経済で手持ちの工具と工夫で何とかなるでしょう(とこの時は考えていた)。

  

 水栓の型番はTMF47E1R  バルブやOリングも含んだ交換ユニットセットは送料込みで7000円程度。5年から10年程度で故障するようなので消耗品。

 上部の円形の蓋はプラスチック製で外すと問題のバルブカバーが現れる。今回が初めての交換だがやっぱり固着していて回らない。

 

 三日月状の溝が掘られているので適当な金属板を削ってツールを作る。今回は2mm厚のスクレーパーの根本の部分をグラインダーで切削して形状を合わせて溝に差し込んで木片を食い込ませた先端を上から渾身の力で押さえつけながらロッキングプライヤーで回そうとしたがビクともしない。オイルを吹いて何回かトライするうちに真鍮製のバルブカバーが削られて舐めてしまうようになったが一番力をかけたい溝の両端の部分が浅くこれでは舐めても仕方ない形状ではないか。TOTOはレンチのビットとして専用のツールを供給しているのだが9000円と交換ユニットよりもはるかに高価。プロはこれを使うのだろうが出費をケチって自前で作業するアマチュアとしてはとても選択肢にならない(とこの時点ではまだ気持ちの余裕があった)。舐め防止の対策として溝の底をリュータービットで削り込んで水平な形状にした。

 

 地元のホームセンターではリューター用の2.35mmの軸径のビットはあまり種類がなく仕方ないのでダイヤモンドポイントと2.3mmのドリルを購入した。底が平らになったのでスクレイパーの根元の形状も平坦に加工し直して周囲を養生してもういちど試みる。しかし動かない。。

 次に行ったのはポンチとハンマーで溝に引っ掛けて横向きに叩いてみた。その次は剛性を高めるためにタイヤレバーをグラインダーで切削してツールを作って試みるがいずれも不成功。ここまで来るとかなり気持ちの余裕がなくなった。

 

 結局溝をもう少し深く掘り直して最初の方法のスクレーバー改造SSTでようやく外す事に成功した。定量止水ユニットカバーの方は軸が邪魔するのでこちらもTOTOからの専用工具もしくはディープ24mmを使うのが便利。両者とも私は持ってなかったが通常の24mmソケットでなんとか緩める事ができた。

  

 あとは内外部や再使用するパーツを掃除し付属のOリングをシリコングリスを塗ってから取り替えて作業は完了した。詳しいマニュアルが付属するので問題なく作業できる。

  

故障したユニットを分解するとやはりプラスチックのギヤの歯が欠けている。猛者はギヤだけ再生するかも?

 

 作業を終えて

 netでは「修理しようとしたがバルブカバーが外れない」という声が数多く見られた。外してみるとそれなりの厚みはあり多少の切削をしても決定的な破損をすることは少ないのではないかと思う。念の為に単体で入手できるか検索してみたが見つけることはできなかった。私は電動工具を用いて加工したがそういった設備のない方は潔く業者さんにお願いした方がいいのではないかと思います。すでに溝を舐めまくった後でもプロは何とかしてくれるのではないか。実家での交換ユニット込みの作業代金は2万円程度だったと思うが毎日使うものでもあるしこれは適正な料金ではないでしょうか。中途半端なカッコ悪い状態で業者にお願いするのはプライドが許さないという方は(交換できなかった)交換ユニットは無駄になるが(10年先のためにとっておこう)本体丸ごとの買い替えもありかもしれない。本体の実売価格は3万円台(定価は倍以上の表示)。私も途中で何回か挫けそうになりましたがなんとか終わってよかったです。

 

 

お読みいただきありがとうございました。

 後日談1

 実家での業者による修理料金が気になって電話で89歳の母親に尋ねると「15400円」とのこと。修理もごく短時間で終わったので出張修理工賃も低額だったらしいがこれなら絶対に専門家に頼んだ方が良い。良心的な業者を探しましょう。

 後日談2

 1週間経過したが良好で特に手直しは必要なさそう。定量止水を設定、ダイヤルは軽く回せて水切りも良いのでとても快適。地元のガス会社がLNGになった時に通常はガス器具のパーツを取り替えて対応するのだが我が家の器具は古すぎて部品がなくレンジと追い焚き付きの給湯器は無償で新品交換となった。しかし交換してから既にそれなりの年月が経過している。夫婦の高齢化に伴って電化に移行するのが賢明と思っているがガス器具が快適なので使い続けている。(もちろん安全装置は付いているが)火の始末に自信がなくなってきたら本気で検討しよう。

 


NEC 8P-692 について

2024-05-07 01:25:43 | テレビ

 以前NEC製の真空管ポータブルTV NEC 8P-722をメンテナンスした。今回入手したNEC 8P-692は同じ8inchのNEC製ポータブルTVだが外型や内部の構造は異なる。米国に似た形状の製品があるので何か関係があるかもしれない。やはりほとんど資料が見つかりません。

 

  

 以前メンテナンスしたRCA VICTOR 8-PT-7011と形状が似ているので比較したが内部構造は全く異なっていてやはりこの機種はNECのオリジナルTVか。。

 前オーナーはメンテナンス済みという事で購入したらしいが現在は不動とのこと。コンデンサーなども多く交換されているらしい。 通電するとブラウン管は光ってザー音は出るが受信していないようだ。ところがしばらくして「バチッ」という音と共に電源が落ちた。トランスレスTVなのだが中身を取り出すとフレームが黒いビニールテープで覆われていてこれは感電対策なのだろうか?多くの部品が交換されているがまず全体像を掴んでおきたい。以前NEC 8P-722を修理した時に参考にした同社他製品の回路図と比べてみる。

 

 内部はかなり部品交換、追加がされているが埃が溜まっていて少し触ると指が黒くなることからあまり掃除はしないで修理改造されたもののよう。元の状態が分からないのは非常に不利だがなんとか進めるしかない。その際不合理な部分は改善させたいがこの状態でもメンテ済みということで一応動作していたことがあるわけだから現在の不動の原因を追求して一度復旧させてから次のステップに進むのが無難。特にトランスレスということもあって感電には気をつけたい。内部の骨格部分にビニールテープを貼ったのはトランスレスの処理に不具合があっての事かと思う。作業はセパレートのためのトランスを入れて行う事にします。

 

セラミックコンデンサーが割れていたが何か関係があるのだろうか。

以下備忘録

 電源が落ちたのはヒューズが切れたためだが電源回路の改造が多い。2本のヒューズを出て一方は直接シャーシアース、もう一方は音量ボリュームの電源スイッチを介して2本に分岐、その1→大容量コンデンサー、ダイオード、追加された多数のコンデンサー+大型チョークコイルによる平滑回路。これはダイオードの半波倍電圧整流回路で現在の出力B電圧は230V、3個ずつのパラに繋がれて宙に浮いている6個の黒い電解コンデンサーはチョークを挟んでπ型平滑回路。電源スイッチからその2→6個の無極コンデンサーとパラ接続の5kΩからヒーター回路へ

修理計画

 全体の清掃を行う。電源回路の整理、追加された多くのコンデンサーは代替品だがラグ板固定されているヒーター回路はそのままで、宙に浮いているB電源の6個のコンデンサーは適切な部品に交換して元のコンデンサー取り付け部分に固定する。トランスレス回路による感電防止策を検討する。ビデオ信号と音声信号を別入力とし外部入力端子を新設する。欠品の脚部の形態を検討し再現する。

 

交換されているパーツだがほとんどすべてが元のパーツのワイヤーを切断した所にハンダ付けされていてラグ板の端子には触らずに交換されている。プロは悠長にハンダ吸い取って付け替えるなんてことはしないのかもしれない。趣味のアマチュアはプロから見ればどうでもいいところも気になる。できるだけ美しく修正するのも結構楽しい作業で納期も予算も関係ないのだから気楽なものだ。

 

注文していた電解コンデンサーを4本(2本+2本)元の電解コンデンサー取り付け部に設置して配線したがブラウン管の様子がおかしい。少し動かしただけでラスターが消える。残念ながら原因はピンの破折だった。8inchの換えのブラウン管もないしこれは万事窮すか。

 

 、、と思ったがダメもとでダイヤモンドポイントで足周囲のガラスを削除し破断面を出してリード線をハンダ付けしエポキシ接着剤で保護して復帰した。今後ブラウン管が手に入れば交換も検討しましょう。

 これでRFにビデオを繋ぐと一応受信する。

 非常に不安定で不鮮明。気になったのはヒーター回路に後付け(交換)された6個の無極性電解コンデンサーの発熱が激しいこと。3x2のシリーズ、パラ接続なのだがこれは危険そうなので交換する事にした。この部分での電圧降下が数十ボルト、直列のヒーター電流は0.6Aなのでかなりの消費電力となり発熱は当然のこと?回路の意味がわからないが本来はシリーズに大きな抵抗器が接続されるはずでどうしてこうなったのだろうか?

 少し調べてみるとトランスレスのヒーター回路の電圧調節に抵抗器を使う場合のほかコンデンサーを直列に入れる場合がある事がわかった。この方法は以前はあまり採用されずそれは挿入するコンデンサーが昔は良質なものがなかったためらしい。フィルムコンを用いるのだが発熱もほとんどないとある。詳しい算定方法もあったのだが提示されていたヒーター回路の電流は0.1Aと0.15Aなので今回のような0.6Aの場合と少し異なるのかもしれない。実際電圧降下された分の電力は何処へ?またトランスレスTVの回路図を見るとヒーター回路に半波整流のダイオードが挿入されている。これで電圧を調整するのだろうか?実際に実験して対応策を考える事にします。

 まず適正なヒーター電圧が掛かっている時のシリーズ接続のヒーターにかかる電圧は約75Vなので100V入力時の電圧降下は25V(0.6A)で抵抗器で電圧降下させるにはは40Ω 20W程度は必要になる。回路図にあるようにダイオードを接続すると適正な電圧に達しない。ヒーター電圧12.6V管で6V程度、ダイオードの出口に電解コンデンサーを入れても8V台でこれは不採用。試行錯誤の結果33μFの無極コンデンサーと20Ω20Wのセメント抵抗をシリーズにした。コンデンサーで42V、抵抗器で12V 合計で44Vの電圧降下となったが不思議にヒーター電圧は適正値に収まった。抵抗器で8.2Wの発熱がありコンデンサーもそこそこ発熱する。ラグ板を立てて配線したが動作原理もよくわからず困ったものだ。

 ところが抵抗器は予定通りだがコンデンサーも結構発熱する。結局この方法は諦めてダイオードとその後の平滑コンデンサーの値を調節してヒーター電圧を得る事にした。コンデンサーの値によって出力電圧は大きく変化するが今回は22μFで適正な値になった。

 次に画面の明るさが均一でないこと。これは垂直発振部の不具合だが該当の真空管を揺すると少し変化する。ソケットを掃除して接点復活剤吹いて安定した。不良が疑われた映像増幅管の6AW8Aを交換して直接映像信号を入れてみると

 

 しばらく調整すると安定して出画するようになった。音声はボリュームから入れると少々ゲインは低いが出力される。そのほか接続場所が不明なパーツもあるが一応この方向でもう少し配線を整理してまとめる事にします。一方外装だが欠損していた脚部は仕様を変更して前後のゴム脚とした。ボディの塗装のヤレはあるが醜悪ではないのでオリジナルを重視して再塗装は避けて磨いてこのままにしよう(メンドくさいだけかも)。

 このまま纏めようかと配線などを整理していたら突然(何か異音があったかもしれない)画面が光らなくなった。原因はわからないがそのうちダンパー管の12GK19のプレートが灼熱している。

 

 一番危惧したのはフライバックトランス(FBT)が損傷したのではないかという事だったがDCRを測ってみると一応反応はある。水平出力管12GB3のプレート電圧をはかると最初は電圧がかかっているがヒーターがあったまった頃からどんどん下がっていって明らかに異常。ダンパー管以外の水平出力管12GB3、高電圧整流管1X2BとFBTとの接続を外してもダンパー管の灼熱は変わらず。これはダンパー管自体が故障したかもしれず早速手配した。ダンパー管とFBTを切り離して(抜くとヒーターが点灯しない)水平発振6GC7から12GB3への波形を見ると正常に発振しているようです。6GC7周辺は大変なカオス状態ですが故障中に無闇に触るのは状況を悪化させる事もあるので画面が復帰できてから考える事にします。

  

 ダンパー管を交換して通電した途端に水平偏向コイルから火花が出て3ヶ所の断裂を認めました。

  

 なぜ火花が出たかは不明だがとりあえず導通を確認しながら錫メッキ線で修復した。これで再度通電すると水平出力管は動作しているようだが高圧整流管のヒーター点灯がなさそうでスパークも生じない。FBTの高圧側の抵抗はあり断線はしていないようだがこれが正常値かはよくわからずこのあたりで行き詰まってしまった(いずれ他のTVの水平出力管と高圧整流管のプレートキャップどうしの抵抗値を測って比べてみましょう)。ブラウン管、偏向コイルは修復したがFBTの問題を(これが確実かもはっきりしないが))解決できないままで残念ながら一旦撤退となりました。

   

 真空管テレビ、特にトランスレスはあつかいに気をつける必要があり外部入力端子もアースに配慮がいるなど面倒な事が多い。しかし構造は分かりやすく各パートごとの確認も測定器があれば比較的容易だと思う。にもかかわらず今回は症状を悪化させてしまい結局回復にたどり着けなかった。ポータブルTVゆえの作業しにくい面もあるがこれは自分の力量のなさの現れに他ならない。3週間以上取り組んだが残念な結果となってしまった。捲土重来か。

 

 お読みいただきありがとうございました。