Decca Decolaがお嫁入り

やっとこさ入手したDecca Decolaの整備記録

SONY M-400について

2024-07-31 23:04:27 | オーディオ

 1981年はマイクロカセットにとって特別な年だったらしく各社から多くの新製品が発表された。その一台SONY M-400はオートリバースなし、カウンター付き、マイク内蔵、キュー機能あり、単3乾電池2本使用、2スピードというありふれた仕様で超小型でもないのだが36,800円と同時期のSONY M-9の3倍の価格。ボディは精密な金属製で非常に薄い形状には「ウスロク」という名称がついていた。SONYは「カッパブックスサイズ」や「パスポートサイズ」「カセットケースサイズ」など外径に拘った製品が多くそれらは特徴的なネイミングだったが「薄い」というのも大きな売りにしていた。(でも「ウスロク」という呼び名は「ウスのろでロクでなし!」みたいでイマイチのような気がする。)携帯製品は実際に持ち運びするとその厚さが気になることが多い。スマホもそうだが画面の関係で外径が大きいのは許せるが厚いのはいただけない。薄さを追求するためにSONYは専用の小型2次電池まで開発していたがこのころはまだ単3電池を使っていた。(少し調べてみると通称名「ガム電池」はニッケル水素電池で1985年にWALKMAN用に開発されたがその後同形状のものが各社で発売された。すでに生産は終わっているが(互換品は続いているらしい)現在でも流通していて驚く事に1個の価格がSONY 純正品は10,000円を超えている。)

SONY M-400 その1

 入手したのは外観は良好で傷も全くないもの。しかし再生ボタンでモーター音はするがキャプスタン軸は回らないがこれもこの時代のテープレコーダーのほぼ全てに当てはまる症状。

  

 

 幸いwebでservice manualが閲覧できる。

  

 内部へのアクセスはマニュアルのようにネジを外して表裏パネルを横にスライドさせる。無理をするとケースが歪みます。

  

 大きなフラットケーブルが走っている。フライホイール周りは時計のような形状でモーターからの駆動ベルトは緩んでいる。ベルト交換するときに軸受金具を外すがこのフラットケーブルの下にネジがあって避けて取り外したが少々気を使う。

 

ベルトサイズを測って少し小さめの0.7mmx46mm(折り返しての寸法)を注文した。到着を待つ事にします。

アジア大陸から届きました。

 

 お盆の帰省先から帰って早速取り付けてみると、再生、巻き戻しは問題ないが早送りは弱々しくて途中で止まってしまう。それと「pre end alarm」の点灯が早い。これはテープの残量が少なくなると点灯するのだがテープをひっくり返しても消えない。。よくみるとカウンターが動いてないのでカウンターベルトが切れたらしい。こちらも交換が必要だった。

 カセット下のパネルを外す。フライホイールからの太いベルトは緩んでいて交換した。ところがカウンターベルトは切れていない。これはいったい、、?

 

 カウンターには磁石リングがありこの回転を検知して状態が把握される。磁石を軸に固定する樹脂パーツが割れて外れていた。戻すと一応固定されるのでこのまま(!)にする。たびたび脱落するようなら接着も検討する。ベルトはそのままで。

 これで完了した。

 

SONY M-400 その2

 その1が治ってない時にまた入手しました。元箱、付属品付きに引き寄せられてしまった。

   

 このあたりは昭和のブリキのおもちゃと一緒で元箱の有無が価値を左右する大切な要素になる(その割に他には誰も入札はない、、)。届いたのを一眼見て程度良好かと喜んだのも束の間電池ボックスにサビ発見、嫌な予感がする。電池入れても通電しない。

 

早速開けてみるとやはりこの状態。特に樹脂コーンのスピーカーグリルあたりが酷い。通電しない原因を探ると

 

 電池の端子のリード線が腐食して離れていたのが原因だった。裏返して保管している間に電解液が漏れたらしく範囲が表パネルに集中していたのは不幸中の幸い。

 

 グリルだけ分解、洗浄、お化粧直しして再度組み立てた。電気的な動作もするようになったのでこちらも各部の清掃をしてゴムベルトの到着を待つ事にします。

 ゴムベルトが届いて交換するが残念ながら稼働しない(以前は動いていた気がするのだが)。まずモーターが少し動いてすぐに停止する。これはpauseをONした時のような動き。モーター周りの回路図と基板図をみると

  

 相変わらずモーター基板はブラックボックスになっている。モーターの回転を止める信号は⑦に入っているようだが(基板図では4(BLU))回路図では普段は0.1Vでpause時は1.3Vになっている。電圧を測ると常に中途半端な値なのでとりあえず基板からワイヤーを外してpause機能をカットしてモーターの回転を止めないようにした(pauseの不具合は後回しに)。次にドライブゴムベルト以外のベルトが緩くてREW/FFができない。このベルトを交換するには表のリットをどかしてからテープの底板をはずす。

 

 比較的簡単にアクセスできるのは非常に助かる。結構ゴツいベルトで多分1mm程度の太さがあるが手持ちがないので少し細いベルトで代用。(作業している間に「その1」のカウンターが動かなくなりベルトを交換したが改善しない。原因はパーツの破損(ひび割れ)だった。)カウンターベルトもこの状態から交換できるが隙間を通す工夫(省略)が必要。これでRW/FF機能するようになったが再生時の巻き上げ軸の動きが悪い。これは「その1」でも発生している現象。機構を確認するとREW/FFはフライホイールから太いベルトで駆動されているギアが

 

レバー操作で左右に首振りする事でリール軸のギアを駆動するのでギア、ベルトに問題なければトラブルは発生は少ない。一方再生時は巻き上げ軸とこのギアの根本にメカニズム唯一のアイドアーが押し当てられて伝達される。

その時のトルクはマニュアルによればREW/FFの1/3〜2/3でまた巻き上げ軸の樹脂と金属のパーツ間のフリクションで調整されテープにムリな力がかからないようになっている。そしてこの伝達部分がメカニズム上の弱点のようだ。スプリングでアイドラーが両軸に押し当てられるのだがスリップして回転がうまく伝わらない。清掃、注油、アルコール清拭やスプリングの調節を行なってみたがやはりアイドラーのゴムの劣化が一番の原因ではないかと思う。サンドペーパーを当てたりしたが芳しくない。

 

 また分解して不動の原因を検討してみる。

   

 スリップは2つのプーリーを繋ぐアイドラー(写真はゴムを外した状態)が滑るため。主にギアの根元の細い部分とアイドラーとの間で起こっている。抵抗を減らすため巻き取り軸を再度清掃した。アイドラーゴムはOリングで代用することがあるが根気よく探さなくてはならないし加工も必要かもしれない。断面が長方形のパッキンはトイレの水回りのパーツを流用することがある。今回は摩擦を回復させる目的でギアの根元とアイドラーゴムを紙やすりで一層切削した。

 

 これで回転するようになったが動きがスムーズではなく巻き上げ軸のトルクは足りていない。残念ながら今のままでは稼働は難しそうだ。また「その1」のようにカウンターの磁石を固定している樹脂のリングが割れていた。

 さてどうしましょうか?

雑記1

 ケガの2次オペで入退院して1ヶ月経過した。この間ほとんど家から出ていないので記録的な猛暑も苦にならない(?)毎日。でも昨日誘われて久しぶりに夕方から釣りに出かけた。砂浜からの投げ釣りで狙いはキス。

 静かな海と夕焼け空を眺めながら竿先につけたケミホタルが震えるのを待つ。この竿をひっぱり出したのは多分10年ぶり。最近は延べ竿の探り釣りが多く手に伝わる小魚のダイレクトな反応が楽しい。太い竿で重い仕掛けを遠くに飛ばすような投げ釣りは豪快で大物狙い。両者は全く異なり釣りは奥が深いと思う。でもキス釣りはもっと細い竿と軽い仕掛けでちょい投げ引き釣りが定番らしい。残念ながら同行の方も含めて本命は釣れなかったが最後の一投で上がったのが

、、糸切って逃しました。その後場所を変えて探り釣りでガシラ、海タナゴなどが数匹。太陽が出ている時は暑くてたまらないが夜中になるとさすがに風が気持ちいい。

 

 


SONY M-1PD について

2024-07-25 01:35:45 | オーディオ

 1969年にオリンパスが提唱したマイクロカセット規格は当初はコンパクトカセットと同じくモノラル録音を目的としていたが機器やテープの進歩は凄まじくやがて音楽領域まで拡大した。特にコンパクトカセットはオーディオコンポーネントや携帯プレーヤー、ラジカセなどの領域に音源として深く浸透しFM放送、アナログレコードと共に当時の中心的な存在だった。一方でマイクロカセットはより細いテープ幅や2.4cm/sというテープスピードなどの物理的な条件が厳しく音楽領域への拡大は困難を極めたと思われる。それでも1980年代にはSANYOやHITACHI、TOSHIBAなど数社から据え置き型のデッキが登場しオーディオコンポーネントの一員となった。携帯型ステレオとしてもSONY、AIWA、Victorなど数社から製品が発売された。しかしやはり性能面での音質の壁は厚くメタルテープなどの投入もされたがやがてすべて撤退した。

 SONYは据え置き型のデッキは発売しなかったが録音再生可能な携帯型を3機種発売した。ほとんどのWALKMANのような再生専用型はミュージックテープもしくは録音のできる機器(マイクロカセットデッキやラジカセ)が必要だがマイクロカセット用の機器は少なく再生専用では成り立たないと判断されたと思われる。3種類のうちメタルテープ対応は2機種でそのうちの1機種はラジオ内蔵。

 

SONY M-1PD(Pocket Deck)

 1981年発売の2番目のSTEREO機だが初めてメタルテープ対応となった。価格は27,800円(MDR-1L1 ヘッドホン付属)、テープ速度は2.4cm/s固定、マイク、スピーカー、カウンターは非搭載、カセットリッドの開閉ボタンもなく(?)テープレコーダーとしても最低限の装備となっている。外装ケースも2色のプラスチック製であまり高級感はなく「メタルテープ対応の画期的製品」という意気込みは感じられない。

  

 

 入手した個体は電池を入れるとモーター音はするがキャプスタンは回転しないのでベルトはダメになっているらしい。ヘッドホンを差し込むとホワイトノイズは聞こえる。

 早速開けてみましょう。

 

このメカニズムはつい最近見たような、、

 

やはり廉価製品のSONY M-9と共通のメカニズム。フライホイールの軸受は3本のネジでとまっています。テープをめくって下に隠れているのを外してあり合わせのベルトと交換。

 

これで動作するかと思われたがすこし回転ノイズを感じる。また再生はするが外部マイクを接続しても録音はできない。回路も故障しているらしいしストップボタンを押してもリッドが開かないのも?

 幸いWEBでservice manualは閲覧でき回路図も掲載されている。

 

 ヘッドのバイアスは交流のようだが消去ヘッドは相変わらず永久磁石を用いている。

 ベルトは少し太いのかもしれない。0.7mmのものを注文しているので交換して異音が消えるか確認します。録音できないのはどうするかな。

 マイク入力から(内蔵マイクはない)低周波発信機の信号を入力して波形を追ってみます。調べてみると録音信号はジャックから基板までは正常に届いている。再生と録音の切り替えは普通は大きなスライドスイッチが信号や電源の切り替えをおこなっているのだがこの機種は3Px2のスライドスイッチだけでどういう仕組みなのだろう?

 これはservice manualの再生録音の切り替えの概念図だがS301スイッチの半分の3接点だけを使って信号の切り替え(この図はモノラルだがこの回路でアンプの稼働を含めて両CHをコントロールしている)を巧みに行っている。ところが実際と基板図、回路図を比べても?? プラスアースなのだが不思議なことにアースの走行が無いではないか!散々悩んで分かったのは

 

 基板がメカニズムにビス留めされているのだがそれによってアース回路が成り立っている!ということだった。これには呆れました(いや自分のアホさに)。基板外したら動かないのかい!

 改めて信号路をチェックするとやはり録音基板のICに問題がある様子。IC内の6個のアンプ全てが動作していないので電源や録音再生の切り替えの関係を疑って色々と条件を変えてチェックしたがやはり芳しくない。このSONYのICは同じものが録音再生それぞれのアンプに1個づつ使用されていて単体での入手は不可能ではないが海外からになり送料を含めるとちょっと考えてしまう金額。国内でジャンクの出物を辛抱強く待つ方が現実的かもしれない。同時期のステレオマイクロカセット SONY M-1000は全く異なる回路になっている。

 ステレオミュージックテープがないので十分な試聴ができないがとにかくヒスノイズが大きい。ドルビーは必須だろうし周波数特性はノーマルテープで80〜10000Hz(play backは50〜12000Hz)となかなか厳しい。周波数特性はメタルテープでは少し改善されるがかなり高額だったらしくそこまで無理してマイクロカセットにこだわった人は少なかったと思う。夥しい種類のWALKMANが発売されたがステレオマイクロカセットは3機種だけ。SONYはマイクロカセットをオーディオコンポーネントに加える事を早々に見限り据え置きのデッキタイプは発売しなかった。時代はCD登場前夜で音楽再生はアナログからデジタルに移行するのは当然と思われていたころ。10年後の1991年に発売されたMDプレーヤーはその10年後の2001年に発売されたiPodでその役割を終えた。そしてすでにiPodもない。マイクロカセットはあまり目立たなかったと思うが40年近く存在したわけでその間HiFiに挑んだ当時の技術者諸氏の努力と無念さに想いを馳せる。SONY M-1PDはメタルテープ対応のステレオマイクロカセット機ですがメカニズムや形状も最廉価版の機種とほぼおなじ。他社のステレオ対応のマイクロカセット製品に合わせるために会社の上層部の指示で気の乗らない担当者がそれも低予算の枠で設計したのかと思わずにはいられない。ちょっと残念な製品でした。

 

 

お読みいただきありがとうございました。

 

 後日談1

 随分と失礼なことを書いたら補足の記述がごっそり消えてしまってバチが当たったらしい。もう一度書きます。

 RECが不動なのは変わらないが走行音がおかしく規則的なメカノイズが聞こえる。またボリュームのガリもあって不快。また分解した。

  

 フライホイールの裏にある樹脂製のギアが割れていた。メカノイズの原因は多分これだろう。メカニズムはSONY M-9と共通なのだが幸いジャンクのストックがあった。やはり同一に見えるが工作精度などに違いがあるかは不明。ギアだけ移植するのは取り外すときに破損の恐れがあったのでフライホイールごと取り替えた。劣化したゴムベルトがフライホイールやモーター軸にこびり付いている場合があるので掃除を念入りに行った。これでドライブベルトの走行を観察して不規則な動きがあるようなら可能なかぎりサイズを含めて取り替えてスムーズに走行するようにもっていく。ベルトの品質はかなり大きな要素なのはいうまでもないが現実的には入手できる中で選別するしかない。

 ボリュームのガリはクイックドライクリーナーと接点復活剤で対処した。幸いきれいに消えてくれた。

 

これでようやく周波数特性を語れるレベルまで引き上げることができた。不良ICのCX887は海外から入手可能だが現実的な価格ではない。この際ミュージックテープの作成は他に任せて軽量を生かしてWALKMANのような再生専門機となりそう。

 

 

 


SONY M-9 について

2024-07-23 01:43:17 | オーディオ

 SONY M-9は1980年に販売店に向けた発売にあたっての製品紹介の文書によると若者、子供にターゲットを絞って発売する、とある。ボディカラーは5色、価格は13,000円。

オークションを覗いてたらカラフルな機種が目にとまって思わず落札した。

  

  

 ジャンクという説明だったが開けてみると乾電池からの液漏れによる壊滅的な状況で電池の端子のみならず基板やモーターのフレームまで侵食されている。液漏れでこれほどの惨状は初めてでジャンクという説明に偽りはなかった。

 乾電池の電解質の成分を調べるとアルカリ乾電池は水酸化カリウム、マンガン乾電池は塩化亜鉛でアルカリ乾電池の方が被害が大きいらしい。ハンダ付けの部分も侵食されていてリード線がバラバラと外れている。さてどうするかな。外観はまあまあなのでもう一台入手して中身をごっそりと入れ替えるのが一番手っ取り早い。もしくはこのまま廃棄するか。

 webでサービスマニュアルが閲覧できるので一応整備してみましょう。電界液漏れの掃除にアルコールを使ってはいけないという記事があるがどうなのだろう?

 

  

 

とりあえず電池の接触する金具を含んだ電源基板をIPAにつけて歯ブラシでゴシゴシ洗ってみた。歯ブラシではなかなか落ちないところはカッターの刃をスクレーパーがわりにしてこそげ落とした。極細のワイヤーはAWG#34だろうか。ワイヤーストリッパーが無かったので新たにHOZAN製(青い方)を入手した(隣は数十年使っているVessel製)。細かなパーツを扱うときにピンセットが磁化していると作業しにくい。便利なこともあるのだが磁化していないのもが欲しくなる。ヘッドのイレーサーを近づけて消磁を試みるが難しい。チタン製のピンセットを検討しましょうか。

 これで修復を試みるがまずハンダ付けができない(難しい)。ワイヤーの深いところまで侵食が進んでいるのかフラックスを塗ってもハンダが乗りにくい。

 

なんとかハンダ付けできても信頼性は薄い。半固定抵抗や音量調節ボリュームも死んでいてやはり電池の液漏れは深刻なダメージのようだ。ドライブベルトは普通の太さで対応できそう。

スピーカーのコーンは樹脂製(PPPか)。

 残念ながら一旦修復は断念した。とても鮮やかで華やかなケースなのでこれを活かすには適当なジャンクを探して中身をそっくり移植するのが最良かと思います。この製品は当時13,000円で他製品と比べて廉価な設定で現在でも多くが流通している、価格も500円から1,500円といったところ。将来適当なジャンクが入手できれば再び取り組んでみようと思います。

 

お読みいただきありがとうございました。

後日談1

 オークションでSONY M-9の元箱、説明書付きが出ていたのでとりあえず入札してしばらく見ていたがほかに誰からも反応がなくそのまま落札した。翌日送られてきたのを見るとめずらしく動作する。ジャンクを入手して中身を全て交換するするつもりだったが予定が狂ってしまった。

どうするか考え中です。

後日談2

 夏も終わりに近づいて台風10号が上陸してきた。大きな被害がでないことを祈るのみ。M-9は考えていても仕方ないので初志完徹。

 

 ケース入れ替えの前に電解液が残ってるとマズイのでドンガラにして丸洗いした。少し緩かったゴムベルトも交換しています。

 完了しました。

 

 メカニズム、メイン基板、スピーカーなどネジ固定されていなくて入れ替えはあっという間に終わった。せめて「手が入った」という痕跡を消す努力をした。SONY M-1PDにも採用されたメカニズムは簡素ながら信頼性が高いのだろうと思う。夏休みの残った宿題を一つ済ませたようなささやかな充実感を感じた。

 

 

雑記

 いつもお世話になっているコーヒー豆店から水出しコーヒーの器具を購入した。実は水出しのアイスコーヒーメーカーは持っているがほとんど使わない。夏でもアイスコーヒーを飲むことは少ないのだが落下式の水出しコーヒーは抽出後に温めてホットで飲むことも多いと思う。昭和の喫茶店では目を引く木製の枠に囲まれた豪華な器具が置いてあっていかにも高級感を漂わせていた。ショーケースのダッチコーヒーの器具には憧れるがさすがに一般家庭ではオブジェになってしまいそうで入手は断念した。喫茶店のダッチコーヒーは高かったと思うが(飲んだ記憶がない)時間はかかるが手間はほとんどかからないし豆の量もほとんど一緒、いい豆を使っていたのだろうか?

  

 IWAKI製でGood Design受賞 価格は3,000円台で破損の場合のパーツ売りもある。フィルターは洗って使うがいずれ消耗するだろうから助かる。ポットだけガラス製。「粉をセットし水40ccを3回に分けて直接注いでかき混ぜる」という工程が必要でこれをしないと水が溢れ出てしまうのだそう。4杯で粉40g、水450cc、抽出時間は2時間。私はドリップの場合はいつも料理計りにのせて量を測っていますがこれを使うようになって味が安定しました。

 早速飲んでみると思った通り雑味が少なくすっきりしている。時間が経つと結構味が変わって甘味が増すらしい。ドリップとは異なる味なのでしばらく両方を飲み比べてみようと思います。

 

 

 

 


SONY M-909 について

2024-07-09 16:20:58 | オーディオ

 SONY M-909はバブル崩壊期の1992年に発表された世界最小のテープレコーダー。価格は36,000円、媒体はマイクロカセットテープでモノラル、リバース再録、電源は単4電池1本で当時の技術の結晶のような製品。現在でもオークションやフリマで多数見かけるがほとんど全てが故障しているといって差し支えない模様。ベルトが溶けて機能していないのは定番だがそれに加えて外装(ケース)にも問題を抱えているものが多いらしい。

  

 単4電池が収まる電池ボックスの蓋およびその部分の本体の破損が結構な確率で見受けられる。これは些細な問題のように思えるが結構深刻でここを解決しないと現実的には稼働は難しい。

 

 左は正常と思われる電池ボックスの写真で右は今回のもの。蓋と本体両方のプラスチックが破損している。小型化のためにプラスチックの厚みが薄くこれだけ頻発しているのをみると少々設計に無理があったのかもしれない。電池ボックスのマイナス側のコイルスプリングによる圧力もかかる部分なので強度も求められるがさてどうするか。。そして電池を入れて蓋を指で押さえながら再生ボタンを押しても反応がなくモーター音も聞こえない。外観は良好だがいろいろと問題を抱えている。

 ケースから中身を取り出します。まず極小ネジ4本でテープリッドの化粧板を外して

 

 その後ケース外面に露出しているネジ4本を外す。ケースは封筒状でこれで中身をスライドして取り出せるのだがケースに突起が出ていて(下の写真)そのままではひっかかって動かせない。ケースを少し持ち上げて(歪めて)スライドさせる。

 すそ

 実際はなかなか動かなかったのだが原因の一つに溶けたゴムベルトでケースとフライホイールが固着していた。(右写真)メカに力を加えると変形する恐れがあるので少し隙間ができたらプリント基板を狙って細いドライバーなどを入れて梃子の原理で押し出したがここは慎重にいきましょう。取り出せたらゴムベルトの残骸をピンセットとアルコールで掃除して(指が黒くなった)これでもう一度電源を接続するがやはり反応がない。

 

 各レバーを動かすと大きな接点が押される。この接点に問題がありそうだがアルコールなどで清拭しても改善せず1500番のサンドペーパーで磨いてようやく通電するようになりモーターが回ってアンプにも電源が入るようになった。

 破損している電池ボックス周辺と蓋はプラリペアで修復することにした。

   

一層削って新しい面を出してレジンを盛り上げて形を整える。電池を入れて蓋が閉じて固定されることを確認して修復した部分だけ黒ラッカーでタッチアップした。ドライブベルトは細くて小口径のかなり特殊なもので腕時計の蓋の防水パッキンを代用品として使うこともあるらしい。別件で小径ベルトを注文しているので到着までしばらく待つことにします。

 

直径15mmから25mmの詰め合わせで1個あたり40円程度。今回は23mmを使いこれで動作させてみる。ケースから出した状態ですべての操作ができる。

 

 スピーカー非内蔵、カウンターなしで最小限の機能と思われます。実際に動作させてみるとやはりモニタースピーカーは欲しいしキューができないなど実用機としては使いずらい。でも手に取って美しいボディを眺めて「世界最小」に納得して、、いい気分になる。このサイズでステレオなら現在の市場価格は多分10倍以上になるだろう。ステレオヘッドに置き換えてアンプ部を改造した猛者が居たかもしれない、、などと妄想した。

 

 

お読みいただきありがとうございました。

雑記1

 数年前にT先生からいただいたブラックベリーにはじめて実がついた。

挿木の枝1本をプランター植えしたらあっという間にツルがどんどん伸びて葉が茂ったのでツル切って挿木にしたらさらに増えた。繁殖力はとても強いらしい。ちょっと持て余していたがしっかり収穫できるようにきちんと世話をしよう。すっぱいので生食には向かず大量に収穫できたらジャムにしたい。

 


AIWA TP-M7 について

2024-07-06 14:27:11 | オーディオ

 マイクロカセットテープ規格は1969年にオリンパスから発表された。外型寸法は50×33×8mm、体積はコンパクトカセットの約25%、標準速度の2.4cm/s以外にも1.2cm/sの低速モードがあった。主にメモ録音や留守電などに使われたが80年代にオーディオ用として製品展開された時期もあった。私が初めて購入したPCはEPSON HC20だったのだが記憶装置として本体にマイクロカセットテープレコーダーが組み込まれていた。現在でも需要はあり留守番電話用としてテープは生産されているらしい。コンパクトカセットはPhilipsが提唱して世界中に普及したがその後もいろいろな規格のカセットテープが存在した。本家Philipsからも独自規格のミニカセットが発表されSONYにも対応したテープレコーダーが存在したがマイクロカセットとは互換性はない。

 AIWAは懐かしいブランドだが創業は愛知で(AIWAは愛知の愛に輪を組み合わせたトレードマーク)1969年にはSONYの子会社となり主にテープレコーダーの設計、製造を行って自社ブランドとしても出荷していた。2008年にはブランドは一旦消滅したがその後変遷があり現在もブランド名は存在するようだ。AIWA TP-M7BLはマニュアルによると1981年頃の製品。金属の筐体でとても洗練されているデザイで価格は20,600円、単3乾電池2本で17時間の録音が可能、W128.8xH59.0xD17.8mm 205g。

 

1 AIWA TP-M7BL

 

再生ボタンを押すとテープは走行し出音するが数秒で停止する。再度押し直すとまた走行しすぐ止まる。裏蓋を開けると

ゴムベルトは緩いが一応機能している。単3乾電池2本使用だが当時は今ほど単4乾電池は一般的ではなかったため大きさでは不利だが入手しやすいものを採用したか?(ところで最近単5乾電池は見なくなった)。録音時間も17時間とかなり低電力。電池を外して外部電源で電流を測定すると6V 5mA流れるがすぐに電流が0になる。巻き上げ軸は回転しているがオートシャットオフらしき止まり方でよくみるとカウンターが動いていなかった。(ピントローラーを引っ込めるオートシャットオフは結構複雑な機構を必要とする。この製品はモーター、アンプへの給電が停止するだけだがもしテープが巻きつくなどのトラブルが発生した場合にも有効に働く。)カウンターを駆動するゴムベルトが切れてカウンター軸に組み込まれているセンサーによる回転の検出ができない状態らしい。

幸いwebで詳細なサービスマニュアル(日英)が入手できる。このマニュアルを見るだけで緻密なプロジェクトを感じる。

    

やはりカウンターベルトは溶けていた。ドライブベルトもゆるゆるなので交換する。しかし巻き上げ軸を外さないとベルト交換ができなさそう。ワイヤーハーネス、メカニズムの構造が複雑。隙間からベルトを通してみたがベルトに無理がかかって伸びてしまいこの方法ではだめだった。

 AIWA TP-M7のメカニズムはシャーシBに配置されその上にシャーシAがかぶさって可動する部品がその間に挟まれるという構造を持つ。巻き取り軸はこのABシャーシを分離させないと取り出すことはできずカウンターベルト1本を交換するために非常な手間がかかる(と思う)。眺めていても埒が開かないので片っ端からネジ緩めてようやくABシャーシが分離した、、と思ったらバラバラと部品が落ちてくる。こうなったらもうどれがどこに収まっていたかわからなくなり絶望が頭をよぎる。小さなスプリングもあちこちにある。

軸にベルトを通してから記憶とマニュアルを頼りに組み立ててみましょう。

   

なんとかここまで辿り着きました。まだ先は長いよ。

 マイクロカセットのメカニズムはキャプスタンはモーターからの直結のベルトドライブだか巻上げ、巻戻し、早送りの伝達はギアドライブとなっている。テープのテンションを一定に保つ仕組みはよくわからないがキャプスタン軸にあるメインギアがしっかり固定されていなかったのでここでのフリクションで調節されているのかもしれない。カウンターの駆動はベルトドライブにならざるを得ないがこんなに交換がやっかいなのを見ると最初から交換作業は考慮されてなかったのではないだろうか。巻上げ軸からも駆動パーツを外さないとベルトが入らない。(それともあっと驚く交換方法があるのだろうか?)

試行錯誤しながら残りを組んで再生ボタンを押すとモーターは回転するがフライホイールはうまく回らず。これはドライブベルトが太すぎるせいで周囲に引っかかっている。0.6mm 折り返しで60数mmのベルトはamazonで入手可能だがピッタリの長さかはわからない。伸びてしまった古いベルトを参考に少し短めを注文した。

 

 ベルトはまだ到着していないが伸びた古いベルトでメカの動作確認してワイヤーを両面テープを貼り付けた結紮テープでまとめて動作させてみると音声出力がない。。回路図、基板図とにらめっこして探っていくとワイヤーが痛んで導通していないところがあって原因がわかってホッとした。多分ケースの蓋で挟んで傷めてしまったのだと思う。

  

 

 かなり時間も経過しているのでこれで一応組み立ててパーツの到着を待ちます。音声出力はあるがなぜか小さい音、おまけに時々大きな音で発振(ハウリング?)するのだがどうした?、、、これは以前もあったのだが再録の切り替えスライドスイッチの接点不良。何回か動かしているうちに復帰したが外さないまでもベルトが来たら少なくとも洗浄くらいはやっておきましょうか。

 アジア大陸から届きました。

2つ折りで64mmのを注文したがちょうど良かったです。

 

 

2 AIWA TP-M7

 気に入ってもう一台入手した。こちらは「BL」がつかないシルバーだが2台はリッドの色が(実は形態も)異なる。

 

こちらはビニールケース付き。SONYに比べてケースが安っぽいのが2社の格差を表しているようでおもしろい。設計陣が同じだったのかは不明だが価格差、ブランドと共に意識的に差をつけたのか(妄想)

内部はメンテされた事がなさそう。やはりカウンターベルトは溶けているし、キャプスタンドライブベルトは伸びている。ドライブベルトはモーターとキャプスタンを繋ぐ単純な形で大きなフライホイールと共にワウフラッターを減少している。

 

カウンターベルトを取り替えるには「その1」のようにメカを分解する必要がある。

   

 webで閲覧できるservice manualに手順があるが組み立て時は動作を理解してチェックしながら進めないと何回も分解、組立てする羽目になる。特にRECボタンで基板のスライドスイッチを動かすのだが

ボタンから距離があるために幾つかのアクションを介して動作するのだがこのあたりがチェックポイントになる。手間取って何回も開け閉めすると基板から伸びているリード線が外れることがある。基板図もあるので少しは気が楽だが修理やメンテナンスに時間がかかりすぎた場合は完成後の信頼性も低下する。

 

 古い製品はメーカーメンテナンスはすでに受け付けてもらえないが個人で修理を受けてくださる方も多い。しかし素人が内部を触ってさらに状態が悪くなった状態からの修理は断られることもある。また日常の使用に耐える信頼性を確保することは「単に動作している状態」とはレベルの異なる作業でこの辺りにプロとアマチュアの差が出るのは自動車やバイク整備と同じ。アマチュアのレストア記事は多いが納品後に問題が発生し再修理となった場合にアマチュアなら仕方ないで済むがプロの場合は当たり前に悪い評価がつく。

 テープレコーダーはエレクトロニクスとメカニズムが狭い空間に同居しているのでお互いが干渉しないように色々と気を遣われている。そのうちの一つがワイヤーの固定で大抵はこのような薄い弾力のあるスポンジ状のテープが使われている。近年はフレキケーブルがほとんどになった。

 

 メンテナンス時には取り外してワイヤーの走行を追うことがあるが一旦取り外すと接着力が失われてしまい再度の組み立ての時に新たに必要となる。ところが製品の名前もわからず探してみるがなかなか見つけることができない。仕方ないので丁寧に破れないように取り外して保存しておき両面テープを貼り付けて再使用している。このテープの代わりにカプトンテープ、養生テープなどを使うこともあるがなるべく修理の痕跡を消したいと思う。

 

 作業が完了しました(下、上はTP-M7BL)。2台はカセットリッドの形態が異なり下はイジェクト時にしっかり出てこないことがある。TP-M7BLはテープガイドがあって具合がよろしいので後発の改良型らしい。両者共に傷も少なく状態は非常に良くあまり活用されなかったのかもしれない。動作させてみるとマイクロカセットとしてはワウフラッターをはじめとして音質も良好で使いやすい。

 

 AIWA TP-M7は43年前の製品ですがとてもセンス良く真面目に作られた内外部共に手を抜いてない素晴らしい製品だと思いました。質感が高くその後のプラスチッキーな製品と比べても満足度は高い。1980〜81年はマイクロカセットにとって特別な年だったようで意欲的な製品が数多く発表された。この流れはしばらくは続くがその後のCD、MD、iPod、固体メモリー機器などの登場によるデジタル化、小型化、大容量化でその役割を終える。面白いのはその後に登場したこれらの製品さえすでに消滅もしくは存在価値を失いつつあることで、ありきたりな表現だが技術の進歩にはあらためて驚かされる。精密なメカニズムとエレクトロニクスが限られたスペースに同居した製品はまさに日本のお家芸だったわけだが残念ながらその場所に安住してしまってあらたなエポックへの挑戦が不足していたことが現在の世界における日本の凋落に繋がっているかもしれない。大きな潮流も元を探ればごく少数の傑出した天才の発想だったりする。生成AIの提案が最低ラインになりつつある現在の社会において人間に求められるものは何だろうと妄想するこのごろです。

 

お読みいただきありがとうございました。

 後日談1

  その1のAIWA TP-M7BLが不調になった。 AIWA TP-M7で録音再生されたテープが AIWA TP-M7BLうまく再生されない。また基板を触っているうちに今度はモーターが回転しなくなってしまった。ところが録音ボタンを押した時には回転する。この間触ったのはヘッドから基板への結線を再度ハンダ付けしたこと。この辺りが怪しいが(いつものように)自分で墓穴を掘ったか、、。

 以下備忘録

・電源のマイナス側のS5(POWER)でON OFFされる。+は2SB324(Q14)でS3(PAUSE)でON OFFされる。

・2SB324のコレクタ電圧は0Vで異常、よって現在ICへの給電はされていない。仮にここに3V加えると短絡(?)状態。2SB324の不良も考えられるが+Bラインの短絡原因を探すこと。抵抗値は疑問だがヘッドからの配線に関係がありそう。

・モーター基板はブラックボックスだが電源と速度切り替えとFF/REW時の切り替え、およびSLSS回路からの制御が入る(3番)。ここを接地するとモーターは回るのでモーター基板は問題ない。

 

3 AIWA TP-M7BL

 「その1」は随分深みにはまってしまったようで浮上には時間がかかりそう。もう一台入手した。

 先の2台と比較するとそれなりに使われていた様子。昭和57年(1982年)のメンテナンスシールが貼ってあったので前回メンテされてから40年以上経過している。状態は一応再生はされるがREW/FFは弱々しくカウンターも動かない。早速掃除と分解してベルト交換する。

やはりカウンターベルトを交換するには全バラする必要がある。随分慣れたのでスムーズに行けば短時間で完了すると思っていたが色々と問題が噴出した。まずREW/FF時にモーターの回転が上がらない。

 

レバーをスライドさせた時にONとなる接点が汚れていたのが原因。しつこい汚れを落とすのに手間取った。そして一番困ったのはRECボタンがロックされないこと。再度全バラか、、と思ったが原因は触らない部分のスプリングの一端が外れていたため(写真 メーカーが端をシャーシに接着してトラブルが出ないように配慮していた)。そのほか色々あったような気がするが夢中だったので忘れましたが完了しました。

 モノラルのマイクロカセットテープレコーダーはSONY製品ですら全く人気がなくSONY以外ではほとんど只のような(数百円)値段で取引されている。ほぼ100%故障しているので適合するゴムベルトを注文したりと気安く入手しても復帰させるにはなかなか手がかかる。しかし世界展開された製品が多いためかこの製品も回路図や基板図などはnetで入手できた。実際私のような非専門職にはservice manualがないと修復は難しい。高密度な製品なのでなかなか大変そうだがメカニズム部は目で追えるので動きを確認しながら進めれば特別なスキルは必要ないように思います。電子回路はIC化されているので不具合のほとんどは物理的な接点などが多い。コンデンサーの容量が抜けての不具合、、などというのは滅多にない。ICが破損していたなどの運が悪い時は安価に出回っているのを幸いにもう一台入手するのが手っ取り早い。今年の夏は「危険な猛暑」を理由に外出もほとんどせずに室内で安全に楽しみました。