Decca Decolaがお嫁入り

やっとこさ入手したDecca Decolaの整備記録

Videosphere (フリフリQ) について

2020-07-31 09:18:09 | テレビ

 Videosphereは今から50年前の1970年にJVCから発売された白黒テレビ。1980年代初頭まで生産され主に欧米に輸出されたが日本では「フリフリQ」という名称で38,000円で販売されていた。色は当初は赤、アイボリー、オレンジ、黒でその後グレーと青緑が加わった。球形なので設置は付属の金属チェーンで天井から吊るすか専用の台に置かれた。台の形状は箱型、円筒形、タイマー付きのパタパタ時計が組み込まれたものなど数種類あった。

 宇宙服のヘルメットをモチーフにしたVideoshereは当時流行したspaceageデザインを代表する明るい未来を先取りしたような製品で1970年に開催された大阪万博が製品の開発を後押ししたと想像する。映画の背景などにもたびたび登場していて発売から半世紀経過した現在でも遭遇した時のインパクトは発売当初と変わらない(と思う)。

 

 その1

    

 これは珍しいグリーンだがよく見ると本来の青緑が変色してこの色合いになったらしい。webで画像検索するとほとんどが同じ変色具合となっている。台は同色のシンプルな円筒形のもの。この個体はアンテナ、電源コードなどが欠損していた。早速分解すると

   

 裏面を見ると元々の色がわかる。多分長期間開帳されなかったらしく夥しい埃が溜まっていた。電源コードは切断され電源トランスは固定ネジが外されて中で踊っている。球体のブラウン管の開口部の処理はとてもシャープでPhilipsの球体TVを彷彿させる。フード形状のアクリルパーツは美しく全体に精度、質感が高く安っぽい感じがしない。電源コード切断についてはヒューズは切れてなかったが過去に発火、発煙などあった可能性がある。整流用のブリッジダイオードは1本だけ交換されているがハンダ付けが不十分でやりかえた。交換された理由として整流後の短絡による過電流が疑われる。電源コードは適当なものを加工して取り付けた。

 電源部分をチェックするとやはり平滑回路の電解コンデンサーのリークが激しく交換した。以前はスイッチを入れると多分ヒューズが切れたと思う。この状態で通電すると

 

 なんとか受信しているようだが完調への道のりは遠い。素人ができること、ケースを水洗、乾燥し再度組み立てた。ロッドアンテナは現物を参考に代替え品を探します。

 

 条件は本体に収納されることと最下段で角度がついて回転すること。ようやくそれらしきものを入手して基台を製作して取り付けた。

   

 なんとか見つけられて良かったです。再び内部にかかります。回路図と現物から電解コンデンサーをリストアップする。

 

 世界中に愛好家がいるためか資料や画像は豊富。(出典:https://thydzik.com/videosphere/) 

  

基板図はあるが親切にもプリント基板にもパーツが印刷されている。

 

 とりあえず手持ちのコンデンサーと交換して足りないものは注文した。

 

 これで画質を確認するとノイズ、コントラストなどの若干の改善は認めるが不安定で不鮮明。闇雲な交換は如何なものかと毎回思うがついやってしまう。注文していた高耐圧のコンデンサーが届いたので交換した(これでほとんどの電解コンデンサーは交換したことになる)がほとんど画面は変わらない。相変わらず安定せず縦横揃わないし上下に流れることもある。残念ながら闇雲の部品交換では問題は解決しなかった。次行ってみよー!(いかりや長介殿ご発声)。

幸いに回路図の要所にオシロスコープ像が添付されている。基板図もあるので描き出してみよう。

 添付のオシロスコープ像は12ヶ所。基板図の測定する所にチェックを入れた。基板は断面などあまり品位がよろしく無いと思うが部品記号が鮮明に印刷されているのはありがたい。 今回遂に観念して新たなオシロスコープを導入した。

 

 購入したのは「Hantek DSO5102P」実売価格は多分30,000円程度。一番安いところを探して注文したらある雑貨店(!)、さすがに少し心配になったが本国から割と早く特に問題なく届いた。日本語マニュアルはないのでweb掲載の英語版をなんとか読んで接続してみると垂直、水平偏向の発振回路以降は正常なようだが同期信号を振幅分離する回路の出力が綺麗に出ていない気がする。気がするというのは一応はそれらしい波形は出ているのだが他の発信波形と比べて鮮明ではなくこれでいいのかわからない。映像信号を取り除いて同期信号だけにする回路なのだがここが綺麗でないと次の周波数分離回路の出力も当然乱れるはずでこれでいいのか問題があるのか、、。アンテナから映像信号を入れての測定になるがなにか条件の設定があるのだろうか?IF回路のチェック調整を先行させないと意味がないのかもしれない。

       

 12ヶ所ある測定ポイントの見本の正常波形と比べてちょっと怪しいのも混じっているが一応の波形は出ている。にもかかわらず現在の症状は

 垂直同期も水平同期も安定しないしラスターもブラウン管左右に切れ欠きがあって進展がなくさて次の一手は?と考えていた。ところが、、

 測定中にチューナーユニットがショートしてしまい切れたヒューズを交換しても復帰しなくなった。電源のTrが破損したかと思われたがチェックすると問題はなく破損したのは整流のダイオードだった。以前も交換した痕があるので同じような状況だったのかもしれない。4本のうち1本が破損していたので交換した。すると

 

 なんと不安定な画面は改善してしまった。電圧は出ているので問題ないと思っていたが不安定の原因は整流ダイオードの故障だった。

 電圧は正常だったが故障した電源からノイズが発生して動作を狂わせていたらしくこれは予想外。スピーカーは裏蓋にあって調整中は切り離していて音声による判断がなかったことも原因発見が遅れた理由かもしれない。結局今回も理詰めで原因にたどり着くことができず偶然に助けられたわけで悔しいし道は険しい。

 

 

 その2

  こちらはアイボリーで台がパタパタ時計。

  

 特に台の変色が進んでいる。パタパタ時計にはスリープタイマーとアラームもしくはタイマー機能が付いているのだが残念ながら故障している。本体の接合部も隙間が空いている。

   

 この製品は120V 60Hzでアメリカからの逆輸入品らしい。電源トランスなど上記の製品と異なっている。特に電源周波数に同期するパタパタ時計は60Hzでしか使えない。国産品で50Hzと60Hzの切り替えができたものはどういう原理だったのだろう。前後のカプセルを繋ぐ金具が脱落していたり位置が適当なところに収まっていないので隙間が空いていた。溶着されたプラスチックを外して慎重に修正を試みる。

 本体は掃除して後回しに。台から取り掛かるが

 パタパタ時計は中学生の頃使っていて原理はわかっていた。久しぶりの現物はON,OFFタイマーが内蔵されていて2ヶ所のマイクロスイッチをコントロールして結構複雑な動きをする。故障の原因は残念ながら重要パーツの破損とわかった。時間ドラムを駆動するパイプを切断して修理を試みた跡があるがうまくいかなかったらしい。元の形状がわからないしどうしようもならなかったらムーブメントの入れ替えも検討する。

 修理の材料が揃うまでの間を利用して茶色に変色してしまった樹脂の漂白を行ってみる。webで検索すると

 漂白剤は市販の洗濯用酸素系漂白剤の原液を塗ってラップをかけて紫外線(太陽光)を当てるというもの。どれくらいの時間かははっきりわからないが早速やってみた。

 

 中央の凹んだ部分に本体が収まるのだがこの部分の色を目標にする。唐揚げの下準備みたいにビニール袋に漬け込んで戸外に放置した。真夏のカンカン照りの一昼夜24時間経過したものを取り出して水洗いしたのだがシミ抜きクリームのビフォー・アフターみたいだがまあかなり薄くはなった。長時間そしてお湯状態なので樹脂表面の荒れと変形が心配だったが大丈夫らしくツルツルした感触はそのまま。もう少し漬け込んでもよかったかもしれないがこれでいきましょう。

 注文していた真鍮パイプが届いたので加工して破折した時表示ドラムの軸(この場合はパイプ)に繋いだ。

 

 分表示ドラムとの関係を調整するのにかなり時間がかかったが一応動作するようになった。しかし実働させるとかなり遅れが生じることがわかった。電圧を上げて定格の120V60Hzにしても同じでやはりメカニズムに負担がかかって動きがスムースではないのだと思う。時計はパーツの欠品など他にも問題があるので不本意ながらここまでとして中身のないドンガラの本体を乗せてみる。本来は裏から可動するための半固定ネジでとめられている。

 

 時計が白くなったので本体の方が気になってきた。

 世間ではお盆休みも終わって私も一人帰省先から帰宅した。未練があってこの間オークションで似た構造のパタパタ時計を探していたのだがなかなか見つからない。たいていのものは時間合わせや目覚ましの設定ダイヤルが横についている。この位置はドラムを回す構造なので合理的なのだがVideisphereは設定のダイヤル類は前面にある。ようやく見つけたのは不動、50HzのNationalのオーディオタイマー

 

 早速落札して内部を見ると幸運なことに構造はほぼ一緒で異なるのは目覚ましブザーが無いことくらい。不動なのは50Hz100V仕様のモーターが回らないためでスイッチ関係も一系統省略されている。Videosphereの60Hzのモーターを移植して稼働することを確認した。本体からマイクロスイッチをコントロールするメカニズムも移植しようかと思うがリベット止めになっている。元のフレームにギアなどメカニズムを移植できないか検討したが不具合発生の可能性が高そうだったのでまた妥協してアウトレットとブザーを共通にしてブザーのON OFFスイッチだけ機能させた。

 

 50Hzと60Hzのモーター軸のギアの歯数は一緒なので回転数を一緒にして対応しているらしい。60Hzのモーターは120Vなのだが実際に動かすと100Vでも正確に表示しスリープタイマーと目覚まし(アウトレットとブザー)も機能する。

 製造メーカーはJVCとNationalで異なるがムーブメントは時計メーカーからのOEMと思われた。両者は異なる部分の故障だったこと、欠品だったツマミ類が使えたのはラッキーだった。パタパタ時計はニキシー管時計と同様に郷愁を感じるのか結構人気がある。1分毎に爪から外れる「pa!」という音とともに手品のように表示が変わるのを深夜に眺めていると50年前の中学生の時とほぼ同じ感覚になる。肉体は少年からジジイになったが。

 

 本体にかかります。VHF,UHF共に一応受信しているようだが同調が外れたような画面で乱れている。チューナーの出力を他の白黒TVのIF入力に入れたり他のTVのチューナー出力をVideosphereのIF入力に入れたりするが反応が無い。。調べてみるとIF周波数が異なるようで統一規格ではないらしい。国内の白黒TVの映像IF周波数は26.75MHzが多いと思うがこちらは37.1MHzのよう。この違いは輸出が主な製品だったからだろうか?

 

 左はUHFは不鮮明で垂直同期がとれず、右のVHFは受信はしているようだがこの状態。

 高周波シグネルジェネレータとSWEMARを購入した。どちらもLEADER製なのだが多分40年くらい前の製品。

 

SWEMARの出力はこの同軸コネクター。コネクターにはいろんな種類があるらしいが写真で見てもよくわからない。M型を改造して接続した。SWEMARの学習しつつ観察するが思うような波形が出ずに四苦八苦していたのだがそのうち発信周波数の反応がどうも異なっている。ここでようやく気付いたのは日米の規格は全く一緒ではなく受信周波数が異なっていたこと。例えばVHF2chの映像周波数は日本97.25Mhz 米国55.25MHzとなっていて日本8chから11chと米国10chから13ch(VHF13chまである)の受信周波数が一致している。手元のコンポジット→RFコンバーターは米国chもカバーしているので早速米国2chにすると

 画面の安定は確保されていないがとにかく表示するようになった。この状態を確認してコンデンサーを手持ち分だけ交換した。

 全体の1/4程度かと思う。

 電源回路、偏向回路、その他と分けてその都度動作を確認したのだが交換し終わった時に垂直方向の出力が出なくなり横一線になってしまった。ラスターが出ない状態ということで確認すると垂直発振していない。偏向回路を交換した後の確認はしたのでこれは??だったのだが原因は誤交換ではなく垂直同期VR基板のパターンの断裂でVRの位置からこのトラブルは多分よく発生するのではと思われた。

 今回も何とかまとめることができた。パタパタ時計はタイマー機能、アラーム機能、SLEEP機能(時間設定してシャットオフ)があり良好に機能する。

  

 導入したSWEMARはなかなか思ったような波形が出ずにこちらも課題を残した。古い測定器類は信頼性に難があって当たり前に初心者向きではない。その点現行品のオシロスコープは使いやすく有り難かったがこちらも使いこなすにはもう少しかかりそう。テレビの学習と並行して機器のメンテと使いこなしも進めます。

 

 

 その3

 ちょっと前に来たのだが動作テストすると一応動いたのでメンテナンスが先延ばしになっていた。オレンジ球。

          

 かなり埃まみれだったのでドンガラにしてケースを丸洗いした。透明な前面フードはコンパウンドで磨いて傷が目立たないように。

 

 もともと綺麗な外観だった。内部は全く触ってないがボリュームにガリがある以外は問題なさそう。

 三色ダンゴ三姉妹になった。

 

 

 

 

 

お読みいただきありがとうございました。

 

 

 

 

 


SONY PS-LX550 について

2020-07-18 22:50:52 | レコードプレーヤー

 知人からアナログレコードプレーヤーの修理を頼まれた。SONY PS-LX550なのだが製品についての情報がほとんど見当たらない、、と思っていたら幸いに海外のサイトで有料でmanualをダウンロードできるところがあった。

 

「It's a Sony」我々の世代には懐かしい響きだ。このレードプレーヤーはベルトドライブ、リニアトラッキングというもので外観はTechnicsのSLシリーズみたいだが中身はB&OのBeogram 4000シリーズに近い。プラスチックの筐体でリニアトラッキングという組み合わせはCD前夜と思われる当時数社から発売されていたらしい。

     

ターンテーブルは見事な薄さで重量を計ってみると360gという超軽量。

 

 修理の内容はなぜかACコードと信号線が共に根元から切断してあるというもの。ご本人が切断したらしいが理由は定かでない。。とりあえず此処から

    

 これで通電すると、、幸いに火や煙は出なかった。一応ターンテーブル駆動用のモーターは回転するが異音がある。またリニアトラッキングのモーター音もするがアームは動かない。各々清掃と注油して

 

 リニアトラッキングのベルトは経年変化でほとんどがダメになっているのだが適当な小径のベルトがなかったのでOリングと交換した。軸には強いテンションはかけられないがまあ大丈夫だと思う。ターテーブル駆動モーターのゴムが硬化しているのが異音の原因らしいがここは締付けの調整でなんとか治った。

 実は付属のMMカートリッジの針がなく音出しできない。またレコードが無いときにスタートするとターンテーブルの中央付近に針が降りる。これは仕様なのか不明。

 SONYの製品一覧でも見つけることができなかった機種だが型番からの後継機はDD、レコード無しを検知するなどの説明があるのでひょっとするとこの時代の製品はその機能は無かったのかもしれない。リニアトラッキングアームの制御基板

 

 電源と信号のミューティングリレーがあるが結構単純化されていてB&Oとはかなり様子が異なる。B&Oで苦労したモーターもサーボはかけられていない。ベルトドライブの次の世代のDDとリニアトラッキングを組み合わせたレコードプレーヤーは国内数社から発売されていたらしいがほとんど一緒だったという情報もありひょっとするとこの製品もOEM供給されていた可能性もある。アナログ再生というと物量を投入した重く厳格なイメージだがレコードからCDに移行する時期のアナログプレーヤーに初めて接してみて長く続いたアナログ再生の時代にも当然技術進歩があってそれをアピールした製品が存在したこと、良い音で聴きたいという当時の音楽再生に対する思いなどが垣間見れた気がした。

 一応修理は完了したが針がないので試験運転ができない。薄いターンテーブルの実力は? ベルトドライブ、リニアトラッキングが再生音に反映されているのだろうか?それ以前にちゃんと動いてくれるのか?実際に音出ししないと安心できない。

 

 

 

 

 

 

お読みいただきありがとうございました。

 

後日談1

 オーナーにお返ししようとしたら針を持参されていてまた持って帰って試聴した。

 プリメインアンプはYAMAHA CR1000 スピーカーはALTEC618銀箱にwestern electricのKS14703フルレンジスピーカーを入れたもの。モーターからの異音はなくストロボで回転数も確認した。ワウフラッターは測定できないが許容レベルだと思う。アームの動きもスムーズで問題ない、、と思ったら残念ながら右矢印(戻る方向)のスイッチが反応しない。分解すると密閉されたマイクロスイッチで交換は難しい。接点を回路で操作すると動作するのでスイッチが原因なのは確実、、と思っていたら気がついたら動作するようになっていた。ただしこれは一時的なものかもしれない。その後は正常だが最悪このスイッチが機能しなくてもほとんど支障はなさそうなので此処はスルーさせてもらうことにした。

 早速試聴してみる。再生音は一聴レンジが狭い、高音も低音も不足している、全体に薄い感じで情報量が少ない、音に生気がない。使いこなしにテクニックがあるのかもしれないしカートリッジを交換すればかなり変化はあるだろうが多分根本は変わらない。しかしレコードを乗せたらあとは蓋を閉めてボタンを押すだけ、リピート再生もできるし面倒なことを考えずに純粋に好きな音楽を楽しみたいという人にはぴったりだと思う。大衆オーディオという言葉があるか知らないが当時はこういった製品が溢れていた。アナログレコードが聴かれなくなって数十年眠っていたが久しぶりに日が当たる場所に出てきたわけでまたがんばって働いて欲しいと思う。

 

後日談2

 オーナーさんから連絡があって「音が小さくてボリューム一杯でなんとか(音が)出る」。今日対面してお話を聞くとやっぱりLINEに直接入力していた。アンプは数年前の購入品なので多分Phono入力は無い。プレーヤーを稼働させるにはフォノイコを入手しなくてはならずやっぱりアナログ再生は大変だ。

 

後日談3

 その後フォノイコを入手し無事音が出たとの連絡があった。よかったです。

 処分できないLPレコードを持っている人は結構多くなんとか再生できれば懐かしいジャケットと共に当時の思い出が蘇る。お小遣いをためてやっと買った1枚のLPレコードを繰り返し聴いた世代は濃密な音楽体験がある。一方で今の子供たちのようにサブスクが当たり前の世代はより多くの音楽ジャンルと接するチャンスがありその中から気に入ったものを探し出す事ができる。感性が豊かな頃に聴いた音楽は一生の嗜好を決めるかもしれない。