Decca Decolaがお嫁入り

やっとこさ入手したDecca Decolaの整備記録

UHER 4400 Report Stereo について

2018-02-12 16:42:38 | UHER

 西ドイツのUHERからはテープデッキが多数発売されていて日本へは当初バルコムトレイディングカンパニーという会社によって、1970年代後半には山水電気株式会社が総代理店となり数種類の可搬型のテープデッキが輸入された。UHERを有名にしたのは可搬型オープンデッキ 4000 Report シリーズかと思うが1976年にはステレオ対応の「UHER 4200 Report Stereo IC」が国内価格179,000円で販売されていた。1979年に代理店は三洋電機貿易が引き継ぎ1980年には後継機としてUHER 4200(4400) Report Stereoが登場した。1980年のドイツでの価格は 1,248DMだった。(1980年頃の無線と実験誌に新製品として写真入りで紹介されていた記憶がある。。当時の無線と実験はとても充実しておりなかなか捨てることができない。改めて記事を探したら1981年2月号の「今月の新製品から」という連載記事にあり価格は248,000円でこの内容なら安い(!)とある。。)

 (出典 https://www.usaudiomart.com/details/649053179-uher_4400_stereo_4_track_report_monitor/images/675107/)


 「4200 Report Stereo IC」とのいちばんの違いは外観でアイキャッチーな大きな丸型メーターが特徴だがこれはSONYデンスケの影響かと思う。モデルチェンジ後も開閉リッドの形などの細かな外観の変更があり、個人的には好ましい変化だった。走行系はReport Stereo ICから引き継がれたが操作性は改善され、また電機系統では2ヘッドから3ヘッドと大きな変化があった。記事ではその違いが詳細にレポートされており飛躍的に使いやすくなっているとのこと。ライターの方は初代の4200 Report Stereoから使い続けているらしく、ディスクリートアンプから出力のみIC採用した4200 Report Stereo ICとなりその後のフルモデルチェンジだったらしい。
 走行系の模式図

 モータープーリーは軸の両方にありキャプスタンとリール軸に振り分けていて4スピード対応。この機構はほとんど変わらなかったらしい。

 拙宅のUHER 4400 Report Stereo
 
 ACアダプターはないので単一電池5本(!)入れて通電するも(当たり前のように)動かない。やはりテープデッキは経年劣化は避けられず全滅(不動率100%)です。照明スイッチをONにすると10秒だけ(美しく)点灯する。(電池が消耗すると消えないとのこと)
 全体の佇まいは(小型なのが効いているらしく)とても好ましくキュートです。

 
 フロントパネルを開けると大きな丸メーターはスプリングでフローティングしている。フィールドでちょっとくらい何かにぶつけても大丈夫、、ということか。裏蓋を開けるとボール紙の仕切りを外して
 
 モーター軸のキャプスタン側のゴムベルトは原型をとどめないくらい溶けている。反対側は無事で材質が異なっているのだろうと思う。レコーディングウォークマンもこんな惨状だった。
 
 丁寧に拾い集めて(すごく汚れる)またプーリーにこびりついたのをアルコールで落として届いたゴムベルトと交換するも19cm/sec以外はうまく動かず。。なぜだろう。

 4スピードの切り替えはダイヤルを回して長いアームを動かすことでフライホイールを回転させる段付きプーリーの位置を変えて行う。STARTボタンを押すとこの段付きプーリーの横にある支点で傾斜してフライホイールに押し付けられる。この押される強さはスプリングによって発生するがどうもこの力が足りない様子。もちろん支点部分の確認もおこなったり接触する部分の掃除もおこなったがスリップは変わらず。速い速度の時はプーリーの大きな径の部分でドライブされるので問題は出ないが2.4cm/secくらいになると非常に細い軸になって接触するまでの距離も長くなる上にスリップもしやすくなる。しばらく観察したがこのスプリングを強くする以外には解決しそうに無いので切り詰めてみたがうまくいきました。スプリングがへたったということだろうか?釈然としない気はする。

 しばらく動かしてみたが支障は出ず快調。内臓されるACアダプターが無く電池駆動だがON時のランプがあるので以前の機種と比べてスイッチの切り忘れが減ったとのこと。「前はよく電池をパーにした」とライターの方が書かれていた。またモーターに弱点があったのか現在でも需要があるらしく純正以外と思われるものが供給されている。

 ドイツ製品といえばLeicaをはじめとする精密機器やBMWやポルシェなどの工業製品が思い浮かぶしバウハウスの流れを感じるデザインも。あれほどの隆盛を誇ったフィルムLeicaが不当なほど安く取引されているのを見ると現実から外れて必要がなくなってしまった製品はいかに優れていても廃れてしまうのか、、と考えてしまう。時計やカメラ、車やバイクなどは本来目的があって存在していた道具だが趣味人は目的を達するまでの過程をも楽しんでいたわけで、フィルムや記録媒体の衰退で銀塩カメラ、テープレコーダーが廃れていくのは仕方ないと思うが匠が設計し当時の高い技術で丁寧に生産された美しい工業製品にはやっぱり惹かれる。一方で動的状態で保存することの困難さも改めて感じた。いずれ寿命を迎えるパーツは現時点では再生が困難な場合が多いが3Dプリンターやスキャナー技術が進歩して気軽にプラスチックやゴム製品、金属製品が再生できる日が来ることを願っています。




   お読みいただきありがとうございました。


 追記 1
 UHER CR210の整備が難儀して3週間くらいは費やしてしまった。メカニズムとエレクトロニクスの両方が詰まっている上にポータブル機は堅牢さも求められるわけで高低温、多湿の屋外使用に耐えらるというのはなかなか大変です。

 追記 2
 やっぱりFayrayについて書いておきたい。吉本興業所属のタレントさんで日本で活躍したのは20世紀の終わり頃からの約10年間だった。大ヒット曲はなかったがドラマやCMのタイアップが多かったので認知はされているアーティストだった。ミスコンに出るくらいの美貌もあってデビューは当時大流行していた小室ファミリーのアイドルだったが次第にセルフプロデュースによるアルバムを発表するようになり、2009年までの間にアルバム8枚を残している。アイドルからの流れは竹内まりやと似てなくもないがその後は米国へ移住して結婚し現在でもニューヨークで旦那さんと音楽活動を続けている。

  
             白い花(2003年)                HOURGLASS(2004年)                光と影(2006年)

 小室ファミリーとしては最初のアルバム1枚でそれ以降はセルフプロデュースとなる。後半は売り上げはなかなか苦戦したようだがとにかくこれだけの作品を出せたことは聴く側にとっても良かったと思う。歌手としての資質とコンポーザーとしての素晴らしさが詰まっているようなアルバム。数年間にスタイルはアイドルからプログレまでどんどん変わっていき、日本での活動は「寝ても醒めても」(2009年)で終わっているが2006年にNYに渡ってからは前述のように「THE PRESENT」というユニットで配信で楽曲を発表している。名前もFayray(吉本興業の社長が命名した)からMina Ohashiになっている。ホントに自分のやりたい音楽にまっすぐに向き合っていると感じる。ポップミュージシャンの旬な時期は一部を除いてとても短いと思っている。その時期にいかに集中して作品を残せるかは運もあるかもしれない。(話は変わるが)昔は作品をレコード(CD)にすることはかなりの高さのハードルだったかと思うがネット社会となって以前なら埋もれていた才能が認知される機会は格段に増加した。世間ではCDは売れてないみたいだが多種多様の音楽に接する機会は増えて好きな分野を深く追っていけるようになった。


 追記 3
 Fayrayのアルバム「HOURGLASS」の一曲目「first time」はコントラバスのピチカートから始まるのだがJBL メヌエットの片方が歪む。ボイスコイルとエッジを交換しているがここに来てボロが出た。もう一度エッジとダンパーを外してギャップを掃除した。しかし大丈夫と思って接着、組み立てるとやはり歪んでいる、、。歪みの原因はボイスコイルの接触と思われたがどうも納得がいかない。センターキャップや引き出し線の共振まで疑ったが違う。意を決っして接着してあったセンターキャップを切り取って改めてボイスコイルの内側のギャップを掃除した。ここの隙間は名刺1枚位しか入らない。するとビビリは消えてくれてやれやれと再度センターキャップを接着すると、、またビビる。今度は正真センターキャップ付近からのもの。接着を諦めてセンターキャップのみ購入した。同時購入のDBボンドでしっかり貼り付ける。センターキャップの裏には共振防止のウレタン片が2個あるのだが古い方から移植する。

 DBボンドをつけすぎて(ここは仕方なかった)見た目はパッシブラジエータとの違いが目立つがノイズはめでたく消えてくれた。







 



 


UHER CR240 stereo について

2018-02-12 10:17:49 | UHER

 西ドイツ製のUHER CR240 stereoは日本国内では山水電気株式会社が輸入、販売していた。
 

 (出典 http://audiosharing.com/review/?cat=102)


 そのサンスイはもはや存在しない。山水電気といえば電気少年にとっては小型トランス「STシリーズ」で子供の科学のかまぼこ板(!)工作シリーズや初歩のラジオの記事で知った。田舎の電気屋では当然のように置いてなかったが通販の「エレックセンター」に現金書留で数百円送ってドキドキしながら待っていた。小さな箱に入っていた宝石は「マブチモーター」と共に遠い記憶の中。「初歩のラジオ」も「エレックセンター」もいなくなってしまったが「子供の科学」はまだ続いているらしく嬉しい限りです。同年代の同好の方々は子供の科学と模型とラジオ見て大きくなった(!)と信じてます。

 UHER CR210 stereoは 210,000円でUHER CR240 stereoは 240,000円とはちょっと出来過ぎだが(このカタログのCR210はさらに値上げして 220,000円になっている)。社会全体が豊かだった70年〜80年代、JBLの代理店だったサンスイは大変な勢いで(と思う)、どれくらいの数を売らなくては、、なんてあまり考えてなかった価格設定だったのかもしれない。また海外製品には独特のオーラがあり高価だったがそれに見合った満足を得ることができたのだろうと思う。国産品は安くて高性能でオーディオの大衆化にうまく乗ったがその終焉も早く専業メーカーはIT産業への転嫁を図った以外は消滅していった。現在はその当時の遺産で楽しむことができていて感謝しています。山水トランスの技術も「橋本電気」に引き継がれていて心からエールを送りたい。





 


 拙宅のUHER CR240 stereo です。ジャンクを入手してそのままになっている。


 
 CR210と共通のボードもあると思われるがドルビーボードが加わって垂直に4枚のボードが整列している。CR210はオートリバースだったが後発のCR240は一方通行になっていて何か問題が発生したのだろうと思うが走行メカニズムには大きな変更はない。2本あったキャプスタンは1本になったがフライホイールは2個のまま残されていて1個はイナーシャになっている。構造上イナーシャ側についてたキャプスタンはスリップし易くCR210では走行方向で性能差があったと思う。
 
 現在の状況は一切の動作はできない状態で目視ではモーターは回っていてゴムベルトは外れている。分解してみると

 リール軸のセンサーは片方のみになっている。ところでCR210はなぜ両方にあったのだろうか?カセットテープは常に両方の軸が回転しているはずだが、、、。トラブルでテープがキャプスタンに絡まった場合は巻き上げ軸だけ回転が止まるということか。。ソレノイドも1個でかなり簡素な感じだがベルトの走行などは変わっていない。やはりメインベルトは掛け直してもすぐに外れるのでこれも要交換です。

 こちらもベルトが到着するまで待つことにします。

 ベルトが到着しました。
 
 大小これだけ入っています。適当に選択して取り付けるとうまく動くようになりました。しかし再生ボタンの保持ができないし、早送り、巻き戻しも早々に停止してしまいます。CR210もそうだったがwebを見てもやはりこの辺りのトラブルが多発している様子。
 リール軸のプレートにはシマシマの模様があって回転しているのをLEDとフォトトランジスタで検出していて、CR240は片側のCR210は両側のリールに付いています。CR240は幸いにも回路図とマニュアルが入手できたのでこの辺りをチェックしてみる。
 
 センサー基板(コードが切れてしまってますがこのコードが信号の出力。切れたのが原因ではないです)フォトトランジスタの出力は次の基板に接続されていてチェックポイントがあります。
 
 マニュアルでは「MP1」で基板からチェック端子が見える。同じ基板ですがCR210にはこの端子はないのでやっぱりトラブルが頻発したらしくメンテナンスポイントを設置したようです。オシロを当てると方形波が現れるようだが案の定何も出力されていない。そこで低周波発信器を繋いでみると

 40Hzで0.8Vで再生、早送り、巻き戻しは正常動作するようになった。やはり「800」というセンサー基板に問題がありそう。LEDは周囲を暗くしても光っている様子はない(CR210も)この辺りが問題なのだろうか。LEDライトがあったので隙間から照らしてみたが

 やはり反応なし。。

 ところでジャンクのCR240AVがありますのでこちらも参考にしてみることに
 
 

 なんとこの機種はリール軸にセンサーがなくなっている!照明だけになっていてやっぱりこの辺りのトラブルが多発か。不動だがモーターは回っているのでベルトは交換すると問題なく再生する。

 リール軸のセンサーがなくなっているがオートストップはあるのか、、と思いながらカセットの終端まで聞いていたが普通にストップする。。巻き戻しもOK。どうやっているかは不明だし参考にならず。この部品ドリ機は欠品もあるがこれからの展開次第では下剋上もありえるかもしれない。。AVは後発らしいがどこが異なっているのだろうか。音質はとても安定していていい感じです。録音時のボリュームは左右2個に分かれているがその下にあるレバーを操作すると内部でギア接続されて連動する。この辺りはNAGRAと同様でメーターも左右あるしこの機能でこの大きさは必然かもしれない。

 備忘録

 録音ボタンは機構からの推察だが押すときはレバーをストップにするとロックが外れて押し込むことができる。そのままレバーを下に戻すとロックがかかりレバー左右のstart、pauseになる。録音を終了するときはstopにするとロックが外れてボタンが飛び出す。ボタンを取り出すときはこのロック機構を解除しなくてはならず(ボタンの飛び出し防止のロックがもう一段ある)ボタンの根元に極細のドライバーなどを差し込んで横方向にロック板を移動させて取り出す。強力なスプリングでボタンを引き出す方向にテンションがかかっているので(大きいので大丈夫かと思うが)パーツの紛失に注意する。装着するときはその逆だがスライドスイッチとのジョイントは差し込んだだけではされず再録基板を外してスライド部分を移動させて結合させる。

 
 ヘッドブロックの動作のコントロールはこの700基板で行われる。

 右端が800基板にあるフォトトランジスタで左上にある同じく800基板にあるLEDから出てリールにあるシマシマ模様で反射した赤外線を感知して電流が流れる。シマシマ模様は回転するので断続した信号となってMP1チェックポイントでの波形は前図のようになる。光が当たらない時は9.6VだがLEDライトを当てると

 電圧は1V以下に下がる。またLEDライトを一生懸命に振ると(!)再生状態は維持されたのでフォトトランジスタを含めた回路は生きている様子。肝心のLEDを外してみると

 ピンボケですが、、米粒のようなダイオードでアナログテスターで抵抗値を測ってみるとどうもダメっぽい。このLEDを通って700基板に電流が流れているようなのでここを通過する電流を測ってみると0.5mA。startスイッチを入れるとLEDを通してソレノイドに電流が流れる関係で20mAの電流が。LEDが光ってフォトトランジスターによって脈流信号が流れることでこの状態が維持される。スイッチをstopもしくはpauseにすると回路が遮断されソレノイドが切れてLEDも発光しなくなる。LEDは要のパーツのようで破損しているようなら代替えのLEDを探さなくてはならない、、。

 秋葉原の秋月電子に適当な赤外線LED(NJL1104B)とフォトトランジスタ(NJL7112B)を各々10個ずつ注文した。いずれも1個30円(!)
 
 
 LEDの定格は1.2V〜1.5V 50mAとのことで乾電池つないだが光らないぞ!そういえば赤外線LEDだった。。基板にあるフォトトランジスタに当てるとしっかり反応する。ところが基板のLEDと置き換えても反応しない、と思ったらstartにするのを忘れてた。

 この状態でMP1チェックポイントの電圧が下がります。20mA(LEDの順方向DCRは実測25Ωだった)でも機能している様子。ちょっと光明が見えたか?
 
 基板にLED載せてみるもシマシマには反応しない。角度が悪いのかもしれないし、LEDが大きいのでそのままではシマシマに当たってしまう。どうせ加工が必要なのだからとフォトトランジスタも交換した。
 
 やはり各々の角度が気になるが鏡を当ててみると

 一応反応するようなのでこの状態でなんとかしましょう。800基板を少し持ち上げないとシマシマと当たってしまう。あまり上げると反応しなくなるしカセットテープにも当たってしまう。基板裏にスペーサーを入れた一方で今回は基板上にあった麦球は残念ながら撤去せざるを得なかった。
 

 

 これで走行系は正常動作するようになった。
 しかしこのCR240はまだ問題を抱えている。録音再生ヘッドが片ch断線、電池ボックスの端子の破損など。特にヘッドは前出のCR240AVから移植予定だったがどうもあちらの方が良さそうで、こちらのCR240がドナーになる可能性が高い。まあせっかく治ったのだから(片chだが)もう少し聴いてみようと思います。

 UHER CR210 stereoの陰に隠れている(試聴記も見当たらないし)UHER CR240 stereoだが使ってみるとなかなかのモンだと再認識した。この個体の外観が良好なのも手伝ってだが小型、高機能を具現化したようなパネルはとても美しくバルナックライカを彷彿させる、といえば褒めすぎか。カセットテープの能力を限界まで引っ張り出すようなことは日本製品に任せて、向かうベクトルが違うような製品だと感じた。

 

 お読みいただきありがとうございました。


 追記 1
 カセットの終わりの方は巻き上げ軸のスピードが遅くなる関係か途中でシャットオフすることがある。これはセンサーの感度を上げる必要があるということで横着して横からラジオペンチでつまんでLEDとフォトトランジスタが少し向かい合うようにした。ところがスイッチを切り忘れたらしく(それすら忘れた)反応しなくなってしまった。分解してみるとLEDがご臨終。早速付け替えて内側に向けてみた。元々の2つはかなりの角度がついているがスペースの関係でほんの少しの角度しかつかない。

 でも効果は絶大で途中のストップは解消された。
 LEDとフォトトランジスタだがもう少し小型のものが入手できないだろうか?(規格は問題ないのだが)





UHER CR210 stereo について

2018-02-10 20:30:17 | UHER

 UHER社は(当時の)西ドイツのミュンヘンに拠点を置いていた音響機器メーカーで1961年から発売されたいた小型オープンテープレコーダー「Report 4000」シリーズが有名(wikipedia)。UHERは数々のテープレコーダーを発表しているが可搬型のカセットデッキは「Compact Report」として CR124, CR134, CR160, CR210, CR240, CR260, CR1600, CR1601の8種類を発売していたらしい。CR210やCR240が当時の代理店であった山水電気株式会社によって日本国内でも販売されていた。
 表題のUHER CR210 stereoはCR124の後継機として1974年に発表され小型で簡素な機能だったが(かつてのカセットカーステレオみたいな)当時の国内販売価格は210,000円と非常に高価だった。SONYのカセットデンスケはすでに登場していたわけで一桁違うような価格でよく勝負したものだ、、、と思う。

 (出典 http://www.hifi-archiv.info/Uher/CR%20210%20Prospekt)


型式 カセットレコーダー
録音 4トラック
テープ速度 4.7cm/sec(1 7/8ips)
周波数範囲 20Hz〜16kHz(CrO2)
S/N比 58dB以上(CrO2)
ワウ・フラッター ±0.12%以下
消去率 70dB以上
クロストーク 20dB以上
モード モノラル/ステレオ、録音・再生
入力 Mic:0.2mV〜200mV/500Ω
Radio:4mV〜550mV/47kΩ
Phono:150mV〜15V/1MΩ
出力 Radio、Amp:500mV以上/15kΩ
Speaker:2×2V/4Ω
オートリバース 再生時
オートレベルコントロール FET自動式
テープカウンター 3桁
電源 1.5V単二乾電池6個
Z213、Z215専用バッテリー
カーバッテリー(12V)
Z131交流電源ユニット
外形寸法 幅185×高さ57×奥行180mm
重量 2kg

 バイアスとイコライザーは自動でセットされること以外には性能的には特筆すべきものはないと思うのだがなぜこんなに高かったのだろう?西ドイツ製だから?もっとも1ドルが300円の時代であります。当時のドイツでの価格は1200DMで1DM=124円だったそうで掛け算すると150,000円ほどとなる。。


 UHER製品にはなぜか惹かれるものがあるのも確かで故井上卓也氏の解説でも「使わなくとも持っていて楽しい製品」というようなことを書いておられたように記憶する(調べて見たらこれはマチガイ。こう書いてあったのはSTELLAVOX の項だった!UHER 製品には「使って楽しい」と書かれてある。何れにしても楽しいことが大切だという氏のオーディオ製品に対するスタンスが伺える。)。ドイツ独特のカチッとした感触や精密機器なのだがあまり神経質になりすぎない骨太さなどがあるように思う。
 本体の魅力もそうだがアクセサリーも豊富で特に革製のバッグの写真には痺れました。CR210にはどのバッグが適合するかもわかりませんがこれはカッコよろしい。。

 UHER CRシリーズとして
    
CR124 CR134 CR160 CR1600 CR1601らは見たことはなく国内の販売はなかったと思われる。シリーズを通じてのボディサイズは大小2種類で操作はレバーからハイブリッドのCR160を経てボタン操作になっていく。大サイズはもはやCRとは言い難く(バッテリー駆動は可能だったようだが)据え置きデッキの様相。CR210は小型、レバー式の完成形、CR240は大型の始まり、という位置付けかと思う。CR124の内部写真を見るとすでに機構は完成されているようで興味深い。個人的にはCR210に一番シンパシーを感じるがCR240との性能の比較が気になる所です。

 拙宅に居る「UHER CR210 stereo」です。

 外付けしているACアダプターZ136は本体の電池ボックススペースに収めることもできますがこの状態はDIN端子の付いた接続コードで外付けしています。
 
 入出力は電源を含めて全てDIN端子でこれは日本の環境ではでは使いづらい!DIN規格とは「ドイツ工業規格(ドイツこうぎょうきかく、Deutsche Industrie Normen、略称DIN(ディン、ダイン))はDeutsches Institut für Normung(ドイツ規格協会)により発行されている工業規格である(wikipedia)」国産カセットデッキにはフィリップスと取り決めがあったのかDIN端子は一応付いていた。しかし「DINコードは音が劣化するから使っちゃだめ!」と偉い先生方は言ってたので日本ではほとんど使われなかったのでは無いだろうか。ヨーロッパでは広く普及していたのでお国柄の違いだと思うが合理性を求めるヨーロッパはやはり遠かった。。仕方ないので変換コードに頼ることになるがDINコネクターを探すのに苦労する。2Pから8Pまで通常のDINコネクターは入手できるがマイク端子のようなロック機能の付いたのは入手が難しい。
 一昔前のメーターみたいな表示はテープ回転方向を指し示しています。テープを挿入すると深く飲み込まれてオートリバース機構もあって(再生時のみ)どちらに進行しているのかわからない。メーターで電気表示されます。なおボリュームつまみを押すとテープを照らすライトが点灯しテープの回転方向と残量を確認することはできるようになってます。

 再生すると一応音は出るが走行は安定しないしモーター音が大きい。早送りと巻き戻しはできる。しばらく聴いてみると徐々に改善したがやはりワウは大きいし再生方向でワウの出方に差がある。仕方ないのでネジ5本外して蓋を開けてみる。
 
 すごい集積度でほとんど限界まで詰め込んでいる。ここに蓋についてるスピーカーも収まります。またボリュームは4連の見覚えのある高級品でさすがの迫力。これでは高価格なのも頷けるし素人のメンテを拒絶しているみたいで。領収書が出てきたので思い出したが16年ほど前に一度修理に出しています。代理店ではすでに受け付けてなかったのでnetで紹介された個人の方にお願いしました。その時にカウンターやゴムベルト、基板などを交換しています。
 手の届く範囲で掃除と給油を慎重に行ったがやはり根本解決には至らない。構造としては1モーターから長いゴムベルトで2つのキャプスタンフライホイールを回している。2個のソレノイドによるアクションと接点切り替えでメカとヘッドからの信号をコントロールしている。オートリバースはこうなっているのか!と感心した。
 ふと思い立って電源が問題なのかもしれないと

 電源パックを開けてみる。この電源には山水電気株式会社とありカタログにはない「Z136」という型番になっている。スイッチング電源ではないので各国の電圧に合わせて代理店が仕立てたものと思う。EMT950ではショートしていたElkoコンデンサーが見えたのでここの不良かもと期待したが動作時の出力電圧を測定すると期待に反して電圧は高い。なぜか手元にもう一台のZ136があるので取り替えてみると、、ちょっとだが改善している。。こちらのコンデンサーは日本製。しかし電圧は大差無い。Eikoコンデンサーにニチコンをパラ接続してみたが変化はよくわからない。改善した方も完全復活かといえばこちらもよくわからん、、といった具合。

 やはり電源が気になるので乾電池(単2X6本の9V)買ってきて装着すると、、ACアダプターよりも安定して鳴っているように思える。電源アダプターに問題がありそうだがyoutubeのメンテナンス画像を見ると内臓のコンデンサーを取り替えよ!みたいなことを言っているらしい(スペイン語(?)なので)。アダプターの出力電圧は18V位ある。


 やはり分解してみることに。備忘録。
 
 開閉リッドは小さいバネが付いているが外すときはいいのだが戻すときはこの形にしてから組み付ける。カセットの搬送ブロックは横のネジ2つだが組み付けるときは下部にあるノブに奥方向へのテンションを加えてヘッドブロックを押し下げるように。

キャプスタンを含むブロックは裏側から△マークのネジ3個で固定されている。
     
 構造を学習しながら駆動系を分解、掃除、給油して組み立てしてみた。回路図は入手できていないのでどの基板がなんなのかはよくわからない。
 モータープーリーから長いゴムベルトが2個のキャプスタンフライホイールを駆動しているがゴムベルトのかかり方で左右方向の状況が異なる様子で片方(モーターに近い側)がスリップしやすい。以前交換したゴムベルトはひび割れていて(キャプスタンを指で押さえて止めるとモータープーリーの部分でスリップする)交換が必要と思われた。メインテナンスは決してやりやすくは無いが機構はブロックごとに整理されていてわかりやすい。しかし挿入されたカセットテープを運ぶ機構は組み立て時に手間取ってしまい、youtubeの動画を参考にしてようやく解決した。またDINコネクターの接続図もなかったので色々と探し回った。
 前回修理(16年前)の明細を見ると故障の内容は「テープ走行の不安定、カウンター不動、再生状態が一瞬で解除される」とあり前2点はゴムベルトとカウンターの交換で解決したが最後の問題は難しかったらしく「ストックしてあった中古基板と交換した」とあった。2ヶ所のリール軸の動きを検出してコントロールしているらしいが回路図もないし機構は全くわからない。プロが修理できなかったのだからこの先壊れない事を祈るのみです。

 ゴムベルトは色々なサイズの詰め合わせが入手できそうなので注文しました。しばらく待つことにします。

 ゴムベルトの詰め合わせセットが届きました。
 
 早速交換して走行系は復旧したのですが再生ボタンがロックしなくなってしまいました。このトラブルは以前も発生していてちょっと厄介そうです。CR210の回路図は入手できていないので同様のトラブルを抱えるCR240を先にメンテしてみることにします。


 UHER CR210のサービスマニュアルを有料でしたが入手することができました。オートリバースを含む駆動系はCR240と比較してとても複雑です。


 CR240の修復は先に行ったのですがLEDとフォトトランジスターの交換だけで済んだが(それでも難儀した)オートリバースはやっぱり難解で見慣れないととても厄介そう。
 現在の症状は「再生レバーを1または2方向に動かすと再生が始まるが手を離すとレバーは戻るが回転も止まってしまう」というもの。レバーが戻っても再生は続かなくてはならないわけですがずっと前に修理に出した時もこの症状があって基板交換したことがあります。
 スイッチを入れるとその状態が維持されるのはフリップフロップということになりますがそのための回路は「双方向マルチバイブレーター」というらしくトランジスタ回路の基礎なのだそうです。。(この辺りが素人の辛いところ)マニュアルには一応回路の解説が載っていますが「よくわからん!」というのが正直なところです。それに加えて800基板で検出した巻き上げ、送り出しリールの回転情報で方向を変える(再生時のみ)という仕組み。またPause時の回路もしっかり設定されているようで全て700基板に収まっているのですがなるほどこれでは不具合があれば基板交換したくなる。

 800基板からはもう一つ「回転している」というパルスの情報が出ていてこの辺りはCR240と同じで回路図でもチェックポイントにパルス波が描いてあります。CR240には親切にもチェックターミナルがあるのですがCR210には無く仕方ないのでひっくり返して基板裏から700基板のコネクター探してチェックするしかありません。(回路図に709とあるので隣の基板の実体図で探して)チェックすると綺麗に波形が出ています。また巻き上げ、送り出し各々の情報はダイオードで整流されて直接ソレノイドに加わってますがこれも問題ないようです。ということは800基板はOKという事になります。
 手元にCR210ジャンクがあってこちらは走行系は一応動いているので700基板を交換してみましたが、、変わりません!ついでに600基板を含むヘッドブロックも交換してみるがやはり変化なし! 

 これには参りました。何かに手違いがあって原因までなかなかたどり着けない。
 
 問題をもう一度整理すると 
 ・モーターは動いていてスイッチを入れるとソレノイドは1,2とも動作する。
 ・早送り、巻き戻しも動作する。
 ・オートリバースの動作は不明だが(ここまでたどり着けない)800基板は正常動作の様子。
 ・リールからのパルス信号は700基板に入っている。
 ・正常動作している700基板、600基板と交換しても解決しない。

 700基板の内部のパルス信号の流れをモニターしないと進まない気がするが狭いところに立っている基板なのでこのままでは容易にはできない。
 そのうち正常と思われた700基板の挙動がおかしくなってしまった。2台のCR210の故障品があるわけだが1台はベルト交換の際に再生状態の保持ができなくなったもの、もう一台は走行が不安定で原因が特定できないもの。とにかく2個イチで1台の正常品を作ることにした。

 詳細は割愛するがリール軸の移植、モーターと基板(センサー基盤も含む)、ヘッドブロック関係を走行不安定(オートリバースは正常)の方へ移植した。ところが、、なんとオートリバースが稼働せず再生状態の保持ができなくなって元の状態と変わらなくなってしまった。唯一走行の不安定は解消されてリール軸のブレーキ関係のトラブルだった可能性もある。リール軸にあるクラッチは操作によって上下するので接触があったのかもしれない。またピンチローラーの劣化、キャプスタン軸の問題なども考えられる(いずれもチェックはしていたと思うが)。

 再生状態の保持はなぜできなくなったのか? CR240の時もそうだったが一番考えられる原因は800基板にあるセンサーではないだろうか?赤外線LEDとフォトトランジスターによる構成だが基板むき出しなので接触などにより破損しやすい。オシロスコープを繋ぐとやっぱり信号がおかしい(出ていない)
 
 特に赤外線LEDは稼働しているのか目視ではわからないので余計混乱する。そこでモニターを作ってみた。
  
 前に買って余ってたフォトトランジスターに電圧計と電池をつないだだけだがとりあえず赤外線LEDのチェックはできる。バラックでもよかったのだが(十分バラックだけど)結果的にこれが非常に役に立った。電圧計は250円で電池より安かった。。同時に小型の赤外線LEDとフォトトランジスターがあったので注文した。10個入りで1個あたり10円と20円。

 

 

 度重なる着脱で基板が傷んでしまってその補修もおこなった。また高性能な素子なので(ホントか?)隣にあるだけで反応してしまう。フォトトランジスターに黒の遮光チューブを被せてみる。
 これで回路図にある信号のチェックポイントに波形が現れるようになってようやく走行が正常になった。

 前回注文したのが大きかったので小型の素子を探して入手したのがそれでも大きいので(一時はアタマを削ろうかと思ったがやめた)基板の位置を持ち上げないと当たってしまう。なんとか納めて完了しました。



  

 肩掛けベルトは欠損なのでほかのカバンのを付けてますがぴったりだ。(でも撮影が済んだら戻します)
 肝心の音ですがとても好ましい感じです。ダイレクトドライブに比べての走行系の弱点は多々言われているが厚みや安定感はなかなかだと思います。古いキカイはやはりコンディションの良し悪しが大きいと思うがもはやカセットテープの性能限界を追求する必要もないと思う。使って楽しければOKです!


 自分の不注意で700基板を壊してしまったもう一つのCR210はドナーとなってしまったわけだがこちらもなんとかならんものか。。苦行の道は続きます。。
 また700基板以外でも録音再生アンプ基板も片chが不良だということが判明して満身創痍状態ということになった。欠品が多いが正常稼働しているCR240のドナーとなるかの瀬戸際。CR240の録音再生ヘッドは片ch断線しているのだがCR210のヘッドはオートリバースなので4トラックヘッドなのです!果たして移植して良いものか、、。ヘッドの比較も気になるところで同一機種でもBogenヘッドと日本製ヘッドの違いがよく言われる。(Bogenヘッドの優秀さをよく聞きます)

 ボリュームつまみを押すと下からカセットを照らしてテープ残量などが確認できるようになっている。しかし現在は電球はついてない状態なのでオークションでムギ球を購入した。

 10個で480円だから1個あたりは送料入れても50円程度。でも残り9個は出番がないのでやっぱり1個500円です!なにか?
 
 なんとか取り付けて白い照明が当たるようになった。これでフルに働くようになったので一応一区切りにしようと思います。



 お読みいただきありがとうございました。






SONY TC-5550-2 について

2018-02-07 14:26:08 | オープンデッキ

 SONYの民生用オープンデンスケTC-5550-2は1975年の発売。当時の価格は178.000円という高級品。




   型式 ポータブルステレオオープンリールテープコーダー
   テープ形式 2トラック2チャンネル
   テープスピード 19cm/s、9.5cm/s
   3ヘッド
   モーター D.D.サーボモーター×1
   SN比 64dB(デュアドテープ)
   周波数特性 30Hz〜27kHz ±3dB(デュアドテープ、19cm/s)
   ワウ・フラッター 0.05%wrms(19cm/s)
   歪率 0.8%(デュアドテープ)
   モニター出力 500mW(EIAJ)
   電源 AC100V(付属ACパック)  乾電池:12V(単1×8)  カーバッテリー(別売DCC-130使用)  充電式電池(別売BP-55使用)
   電池寿命 約5時間30分(エバレディアルカリ AM-1)  約2時間(ソニースーパーSUM-1S)
   消費電力 9W(AC時)
   外形寸法 幅330×高さ136×奥行296mm  重量 6.8kg(乾電池含む)
    別売 キャリングケース LC-30(\6,000)




 (この回路図はTC-5550-2ではなく類似している輸出用のTC-510MKⅡという機種のもの)


 TC-5550-2といえば長岡鉄男先生ご推薦の「サウンド・ドキュメント 日本の自衛隊」
 なんだそれ?という方もおられると思うが当時の試聴によく使われてたLPレコードで調べてみたら録音は1976年、使用機材は
   TC5550-2(SONY)
   ECM23(SONY)
   D900E(AKG)
   MX650(SONY)
 なるほど。。日本の機材を(AKGも混じってるけど)使ったみたいでカタログに載っている普通の機材でもここまでできる、、と往時のマニアたちは勇気づけられた(と思う)。
 当時可搬型のオープンテープデッキはSTELLAVOXとNAGRAとUHERしかなかった。高価でも頑張れば手の届く価格だった国産のオープンデッキは歓迎されたはず(何れにしても自分には全く縁の無い世界ではあったが)。

 拙宅のSONY TC-5550-2は10年以上前の入手時に一度整備をしています。久しぶりに通電すると

 いろいろと問題が噴出。再生はできているが巻き戻し、早送りができないしカウンターが動かない。

 早速パネルを開けてみる
  
 ワンモーターのフライホイールから巻き戻し軸にはプーリー2個、巻き上げ軸にはゴムベルトで伝達してブレーキと組み合わせて動かしている。モーター直結キャプスタンとヘッドブロックは一体なのでこのブロックをどかさないと伝達機構に到達できない。その度にモーターを引き出さなくてはならず組み直した後に問題が出るとまた分解、組み直し、、と無益なループが続く。続きました。
 整備の詳細は割愛しますが細かい部品を絶対に紛失しないようにしなくてはならず。一例として

 リール軸の止めネジを外すと現れる極小のベアリング。規格品なのかは分からないがうっかり逆さにすると外れて慌てます。。
 

 

 カウンターが動かないのは2個あるベルトのうちの1ヶ所のが伸びていて。熱溶着ベルトが大活躍です。
 

 3時間ほど楽しめました(ウソです。結構苦しみました)。掃除して固着したグリスを除いて給油して先述のように分解と組み立ての繰り返し。5回は繰り返したと思います。

 実はこのTC-5550-2には重大な欠陥があります、というか経年変化でほぼ100%壊れる所です。操作ダイヤルを回して再生しますが、録音時は再生と逆方向に回します。この時にダイヤルを押し込まないとロックがかかり動かすことができません。このロック機構が樹脂でできているために劣化、破損してしまい録音状態を維持できなくなります。多分トラブルが多発したはずなので対応部品が供給されていたかもしれませんが今となっては自分でなんとかするしかありません。簡単な形状なので自作することも可能かと思います。

 操作レバー軸の端に付いている真鍮製のパーツがそれで、元々はプラスチック製。自分で交換したはずだがはて?このパーツはどこから入手したのだったか、、。自分で作った記憶はないので誰かから分けてもらったのかもしれない。

 しばらくラインから録音して聴いてみるがまだ問題が残る。たまに巻き戻し時にモーターが回転しないのとモニタースピーカースイッチがOFFにならず鳴りっぱなし、、かと思ったら録音時はOFFできるのでこれは仕様かと思う。また録音2連ボリュームの片方にガリがある。これはなんとかしないとマズい。。

 まず入力ボリュームのガリから
 
 とても小さなボリュームです。キーパーツのはずだからもう少し奢っても良かったのでは、、。また外すのは結構手間です。爪を起こして分解掃除してガリは解決しました。摺動子は結構しっかりしていて見た目よりも高級品かもしれない。この手のパーツが再生不能だとちょっと悩ましい状況になるので良かったです。

 続いて巻き戻しモードでモーターが回らないことがあることについてはマイクロスイッチの不具合かと思われます。

 モーターを再生時にドライブするTrを乗せた基板。モーターの赤リードには常時+が接続されています。巻き戻し、早送り時には白リードがアースに接続されてフル回転します。やっぱりマイクロスイッチ部分が原因の様子
 
 マイクロスイッチの上に見える白パーツが左右に動いてON,OFFしますがここの遊びが大きいようなので右下に見えるネジロックしてあるネジを緩めてスイッチ台ごと移動させて調整します。ネジロックは緩めた様子は無い。
 これで問題は解消したようでスイッチを探さなくて済んで良かったです。


 しばらくラインからの録音再生をして様子を伺ってみたが、安定して動作しています。
 使ってみての感想は、外装がプラスチックなのとトップデッキが薄板の金属製なこと、デザインなどからだと思うが全体から醸し出すオーラというか高級感はあまり感じない。軽量にまとめるには仕方なかったと思うがこの辺りはNAGRAやSTELLAVOXとは大きく異なる点で(値段が違いすぎるだろうが!とツッコミが、、)。3ヘッドなのでライン入力と録音された音の比較が瞬時にできるが高域が落ちてるなぁ?、、と思って見たらバイアスとイコライザー切り替えが違っていてLOWとNORMALに合わせたら19cm/secでは(当たり前に)違いは分からなくなった。しかし2トラ19cmの性能をきちんと出すにはそれなりの微調整と回路の点検整備が必要だと思う。しかしアナログオープンデッキに求めるのはもはやそうでは無いように思う。テープが回転しているのを見ながら音楽を聴いているとレコード再生もそうだが健気に働いているようでちょっと豊かな気分になる。生録をした経験がほとんどないのでアナログ生録マニアの方々はまた違った想いがあるかもしれない。


 お読みいただきありがとうございました。