Decca Decolaがお嫁入り

やっとこさ入手したDecca Decolaの整備記録

Western Electric 49 について(1)

2016-11-23 23:12:34 | Western Electric

 WE49は1928年にPEC(フォト・エレクトリック・セル)用前置アンプとして開発された。使用真空管はWE239Aだが1931年の49Cから264Aに変更になった。またPECが2Aから3Aになって出力が20dB増になるとインターステージトランス246Aを抵抗結合に変えて対応している。また3Aに対応したイコライザーを内蔵したがその後後段へ移設された。その後も改造されながら(6J7なども使われたらしい)長期間生き延びた。これは機械的な構造がとてもユニークで理にかなっていたことと、トランス以外のパーツが平面状に構成されていて改造しやすかったことなどが想像できる。











 

 

 

 数十年間のホコリと我が家のホコリが混ざり合って汚いのなんの。。軽く(?)分解して掃除しながら結線を確認する。回路図の「Ω」は「MΩ」だったりする。


 気になったところはPECからの入力線がかなり傷んでいる。

 フィラメントの電流調整用のレオスタットがバラけていて紐で結んでいる!(結構良いかも)

 真空管はWEでもALTECでもないHYTRON864。これでいいのか??


 最初に書いたように時代によって回路が異なるのと頻繁に改造されているのでまず現在の状態を把握する必要があります。

 ところでWE49が収まるキャビネットがあるのですがキャビネットの底にポールを固定する突起があって自立できない状態




 
 底に大きなゴム足を取り付けてもいいのですが穴は開けたくないし結構重量があるので接着もしたくないのでホームセンターで材料買ってきて木枠を作ってみた。

 建築中の分譲住宅みたい。


 こんな感じです。一応塗装する予定。自立できるようになりました。WE49収めてみる。
 

 WE49に戻ります。パネルを分解してみる。
 
 これで回路を探ると名板は「WE49B」ですがかなり改造があり「E49C」に近い。(赤字が変更された部分)

 入力のPECには電圧が掛かっている。カーボンマイクみたいな構造なのだろうか?とにかくこのままではマズいので初段の抵抗は接地しないといけない。

 電源を用意しなくては、、と色々と考えていました。ヒーター電源12V以外は「WE1086A」から出せばいいのですがちょっと動かすのには不便なのでいろいろ探してみると

 Western Electricの名板がある電源があります。トランスを用いた定電圧電源で「煙がでて壊れた」というものでかなり前に譲ってもらった。名板の裏に回路図が貼り付けてあるのですが

 まったく理解できない回路。1957年製なので60年前のもの。とにかく回路図に沿って調べてみると整流ダイオードは全滅していた。C1コンデンサーも取り替えてダイオードは放熱板が大きいのが付いていてスペースがあるので手持ちのセレン4個でブリッジにして組んでみた。
 

 


 定格は120V 0.8Aで出力電圧は調整できます。この出力を平滑してみることにします。横にあったのはPCの停電時の非常電源の廃棄物を頂いたもの。中にある12Vのバッテリーをとりあえずヒーター電源にします。
 早速取り出したバッテリーを繋いでみると丁度良いくらいの可変域。定電圧電源を25kΩの抵抗を介して接続してみる。入力の抵抗は外しています。

 盛大にハムが乗ります。電源出力に電解コンデンサーを接続するとかなり減る。結構な脈流。
 とにかく音が出て良かった。まだ音質云々の評価は無理な状態。

 簡易A,B電源作って一晩格闘してみたが、やはりノイズを押さえ込むことは難しい。A電源はバッテリーがあるのでヒーターハムからは切り離せるがB電源切ってもノイズが残る。。直接トランスと接続してみるがミノムシ接続なのでそのせいかもしれない。

 出力トランスはWE127Cなのだがこのトランスにはちょっと思い入れがあります。ずいぶん前に入出力を逆にしてアンプの入力に繋いだことがあるのですが音の変化に少なからず驚いた。世間で言われるWEマジックとはこの事かと。以来このトランスにはとても良い印象を持っています。
 
 設定を変えながら休日一日中鳴らしてみる。ソースのノイズも疑ってipodまで繋いでみる。次第に聴きやすくなっていくのは何故?ノイズに人間が慣れて気にならなくなったか?tubeはHytron864からWEとALTEC264Cになっています。この真空管は個体差が大きい(ノイズが多いのがある)という文章を読んだような気がする。特に初段はマイクロフォニックも加わってなかなかデリケートです。普通はシールドケースに収まると思いますがアンプごとケースに収まっての稼働なので成り立ったかと。B電源の電流はドロップの抵抗68kΩの両端が90Vなので90V/68kΩ=1.32mA でやはり極小。整流直後には5kΩ X 4本=20kΩ(と22μF X 5本)入っているので色々とブリーダー抵抗を差し替えてみて25kΩ(電流は3.92mA)にしました。68kΩを外して接続すると90V台となっていて合計約5mAとなります。

 B電源がほぼ決まったのでA電源にかかります。バッテリーに変えて制作したのはACアダプターを分解して取り出したもの。最近はスイッチング電源全盛なので昔ながらのトランスが内蔵されたものはかなり安く入手できる。ジャンク箱には適当な物がなく13.5V 0.6Aというアダプターのジャンクを2個で800円で購入。もちろんスイッチング電源でもいいのでしょうが迷ってこうなりました。分解するとブリッジダイオードと2200μFのコンデンサーです。ダイオード1個ずつにセラミックコンデンサーがパラに接続してあり丁寧な内容。とりあえずプリント基板に配置して空きスペースに手持ちの1000μFを並べました。コンデンサー容量は合計7200μFですがこの状態で接続してもやはりハムが多くとても実用になりません。
 コンデンサーはそのままでチョークコイルを2段入れてみます。チョークは適当なのがなかったので手持ちの小型の電源トランスの2次側を使います。0V〜24V 0.3AのものでLを測ってみると100mH程度あります。

 チョークの出口には各々1000μFを仮接続してみるとほぼ押さえ込むことができました。しかしヒーターに繋ぐところにはコンデンサーを接続したくなかったので自作のチョークを入れています。

 これは適当なトロイダルコアにこれまた解いたエナメル線をガラ巻きしたもので約3mH程度です。2個作りましたが1個あたり2時間程度かかりました。やはり効果はありトゲトゲした感じが少なくなります。チョークはホントは+、ー両方に入れたいのですが。この辺りは妥協しないとエンドレスでいつまでも実験装置のままになってしまいます(経験済み)。
 WE49には1個のメーターとレオスタットがパネルに配置されていて顔になっているがバッテリー駆動だと状況に合わせてヒーター電流を調整する必要があったわけで今回のような実験ではとてもありがたい。WE264Cのヒーターの定格は3V 0.3Aだがあくまでも電流で管理する。ヒーター電流で初段のバイアスが確保される。

 メーターの文字盤は250mAに赤印があるがこれ以下ではダメということだと思う。しかし針が勢いよく振り切ると戻ってこない事がある。そんな時は昔の戦闘機のメーターみたいに爪で弾くと回復する。アナログ感いっぱいだ。
 現在接続しているのはWE1086Bでゲインの設定は最低にしています。WE49BとWE86Bの間にアッテネータは必需で直の接続ではノイズが多くて現実的ではない。スピーカーはランドセル箱に入ったALTEC755E。この状態でしばらく聴き込んでみましたがなかなか好ましく思いました。
 「ゲインの大きなアンプ同士を接続して段間部でアッテネートする」のはWEサウンドの肝(キモ)ということは巷ではよく言われますが(ホントか?)やはり納得する気がする。これを私は勝手に「水道管理論」と言ってます。太い管(くだ)の中に水をちょろちょろと流すのではなく高圧の水をバルブで調節しながら勢いよく吐き出させる。結果的に水量は同じなのですが随分と違って聴こえるのではないかと思っています。(「フィーリング」を「理論」と言ってのけるのがアマチュアの特権)

 基板にユニットごとに配線してケースに配置してみる。ネジ止めしています。

 上2/3がA電源、下1/3がB電源。B電源は1階部分でWE487Cで整流しています。WE487Cは比較的流通しているブリッジダイオードですが一般に低電圧、大電流で使われていますがある広告で「高圧、低電流でも使用可」とあったので使って見た。実験段階では発熱もなく使えています。
 この状態で配線してみます。


 仮配線して早速接続してみる。またいろいろと設定を変えて聴き込んでみます。


 グレッグ・レイクが亡くなりました。キース・エマーソンと共にELP(エブリー・リトル・シングではない)の内2人が鬼籍に入ってしまった。


 「恐怖の頭脳改革」今でも愛聴盤です。アナログレコード、CD、PCと変わりましたがほぼ聴き続けています。また私にとってムソルグスキーの「展覧会の絵」はオーケストラでもピアノ版でもなくELPでした。
 今年はこのブログにも投稿してくれていた大切なオーディオ仲間である「Wさん」もお亡くなりになりました。残念です。

 試行錯誤してた電源ができました。
 
 3Pインレットは初めて使った。廃棄されてた非常電源から移植した。気に入ったのはフューズ内蔵なのとスペアフューズまで入っているところ。
 
 出力は2chとした。各々12Vと90V。
 
 外付けでオイルコンデンサーをB電源に入れるつもりなので別シャーシに組んだ。

 端子はサトーパーツ。はじめて使ったが感電防止カバーのアクリル板が付いてるのはいいのだが不思議なことに90V(とアース)にふれてもビリッとこない。

 フロントパネルはのっぺらぼうなのだがパイロットランプは放熱スリットから覗くと見える。これは真空管的イメージを具現化した(ウソです)。

 限られた大きさのケースにコンデンサーと抵抗を詰め込めるだけ詰め込んだ。B電源は9段階のフィルターとなっている。アマチュアはこういう自己満足的な落とし穴を自ら掘って落ちていく。

 。。やはりWE49BのB電源が気になります。というのが定格は90Vなのですが電圧を上げていくと明らかに明瞭度、勢い、が良くなります。これは電源の質が良く無いのかもしれない。AC140Vをブリッジ整流しているので無負荷で200Vくらいの出力になります。これを多段の平滑回路を通したわけですがやはりチョークと抵抗は違うようです。さてどうするか、、。

 B電源の配線を変更してみました。

 変更点は整流ダイオード直後に抵抗器を入れて突入電流を抑えた。ブリーダー抵抗器(25kΩ)を入れてそれに合わせて(出力90Vになるように)直列に入れていた抵抗器を取り除いた。出力には720μFものコンデンサーがぶらさがることになった。(写真)
 オイルコンデンサーを介して接続すると96Vとなった。これで試聴すると、、まったく冴えません。鈍い音でがっかりです。出力のコンデンサーを半分にしてみても大きな改善は認めない。

 やはり電圧を上げると明瞭度が上がる、、。WE264Cのプレート電圧の上限は100V。オーバーしてしまいます。さてどうするか。。電源以外の要素があるかもしれないので90Vに戻して進めることにします。











ALTECとWE 755シリーズ について(1)

2016-11-19 10:50:05 | Western Electric

 大阪のリティルオーディオ(リティルマネジメント)さんに修理に出していた「ALTEC755A」が帰ってきました。

 相変わらず匠の腕前で修理前後の写真を見比べても区別がつきません。もちろんトラブルも解消されました。いつものことですが修理後の測定結果も同封されています。

 隣町にオフィスがあった時にその作業風景を見学させてもらったことがあるのですが見識の高さと手際の良さに圧倒されました。いとも簡単そうに行うのを見たら「易しい作業かも」と勘違いする私のような素人がきっと大勢いると思う。事実その後はエッジの張り替えや、ボイスコイルの交換、コーン紙の移植などとても敷居が高くてできそうもないと思っていた作業を(無謀にも)行ってきた。うまくいったのも失敗したのもあったがとにかく「駄目元でチャレンジしてみよう」は自分の趣味の世界を広げてくれました。

 しかし今回は何と言っても「高額商品」なので師匠(勝手に弟子入り)にお願いした。トラブルは「ビビリ音が出る」で小入力の時は気づかなかったのですが少し大きな音になると発生するというもの。ボイスコイルが当たっていると思われました。同封されていた修理メモでは「ボイスコイルがバラけて外れていた」というもので修理はその部分の巻き直しという内容。過大入力が原因ということですが心当たりはないので以前から発生していたのかもしれない。オークションはいろんなリスクを伴います。貴重な文化財を素人の手で破壊しなくてホントに良かったです。「ALTEC755A」にはもうしばらくは生き延びて貰います。

 

 出典:Lansing HERITAGE 

 
 「ALTEC755A」は1954年から製造され自社以外でもAR社のスピーカーにも搭載された。その後極短期間に少数のALTEC755B、1963年にはALTEC755C、1968年にはALTEC755Eが長期間にわたって作られました。このパンフレットによれば「ALTEC755A」のインピーダンスは8Ωのようです。どうも某雑誌別冊のALTEC特集で間違った記載があった様子。(実測DCRからやはりインピーダンスは4Ωのようでこれは間違いもしくは途中で仕様変更があったと思われる)

 「ALTEC755A」の源流は有名な「Western Electric 755A」で主に公共の施設などで使われたユニットです。1947年に列車の車内放送用として開発されました。少し前までは米国の病院の取り壊しなどで大量に発見されて輸入されたと噂されましたが最近ではあまり聞かれません。手軽に「Western Electric の音」が味わえるということでとても人気が高く高値で取引されています。建物の壁や天井に埋め込まれていて人の目に触れなかったユニットはとても程度が良いものが多かった。ただ製造されてから70年程度経過していて音質の個体差が結構あると言われています。

 20年ほど前に関東のWE専門店を訪れたのもこのユニットの音を聴いてみたいという目的からでした。お店の人が用意してくれたのはCDウォークマンとアンプは忘れましたがソースは女性ボーカルでとても印象的な音だったと記憶しています。結局その時はKENYONのトランスを2個買って帰った。入手したのはそれからしばらく経ってからですが入手先は長野県のお店で送られてきた段ボール箱には「Western Electric」の文字がある!当時完実電気が再発売したWE300Bの元箱だったと思います。その気遣いに感動して思わずお礼の電話をした。やはりリアル店は「お客に夢を売って欲しい」と思う。口上代が高くても構わない。うまく騙して夢を見させて欲しい。。は暴言多謝。

 発表は1947年で口径の異なる3種類があった。(伝説のWE750Aはその10年前に発表されている。死ぬまでに聴く機会があるのだろうか?)


 
 これらもとても魅力的ですがWE755A以外は今の所縁がありません。壁の中の狭いスペースに収めるために配慮した設計になっているらしい。口径20cmのパンケーキと呼ばれた厚みの薄いスピーカーはWestern ElectricからALTECが生産を引き継いだわけですが最終型のALTEC755Eまで続きます。(「パンケーキ」の愛称はフェライトマグネットになってからとも言われている)
 Western Electric 755AとALTEC755Aの間にALTECが生産してWEに納入した「KS14703」というユニットがありこの3種の音色の比較が話題になることが多い。「KS14703」は見たことはあるのですが聴いたことはありません。

 左が「ALTEC755B」で右が「ALTEC755A」




 

 





 並べてみて違いを探すとフレームの塗装、エッジ、ターミナル、引き出し線、コーンの形態(Bが少し深い)、写真ではわからないがコーン紙の表面手触りなどが異なる。 

 「WE755A」は現在KSランドセル(KS12046)のレプリカに入っています。実際にはこの組み合わせは無かったと聞いています。
 
 「ALTEC755E」はヒースキットのバスレフ箱に入っています。この箱はSS-1という2wayスピーカーの箱で、その下にウーハーを増設できるという製品。譲っていただいた時ははっきりいってボロボロだったのですが頑張って塗装剥離してオイル仕上げにした。サランネットは手洗い洗濯して再使用です。
 
 ヒースキットは飛行機までキットで売っていて(ヒースさんはその飛行機の墜落で亡くなったらしい)いかにも合理的なアメリカらしい製品コンセプトだと思います。いずれもっと詳しく調べたいと思ってます。
 左は「ALTEC755E」、右は「ALTEC755B」



 引き出し線はとても細い。ワンタッチターミナル!

 コーン紙は基本的に同じではないかと思うほど良く似ている。

 左は「WE755A」、右は「ALTEC755A」







 ターミナル、引き出し線は同じに見える。「ALTEC755A」をKS12046 ランドセルレプリカ箱に入れて聴いてみます。

 KS12046レプリカは改造してあります。本来はボックス内ボックスがあり、ホントに小さい容量の箱なのですがオートトランスなどを載せるボードを切り取って裏蓋を新設しました。密閉箱の容量は2倍程度になったと思います。オリジナル箱では恐れ多くてとてもできない改造です。密閉度を高めるために工作精度には少々気を使いました。吸音材は現在は比較的多めに入れています。
 アンプは整備したWE86BでCDプレーヤーからアッテネータ経由で。WE755Aと比較してみると、、基本的には同系統の音味だと思います。「ALTEC755A」の方が線が太い感じ。悪く言えば少しピントが甘い写真。
 もう一つの箱(ラックマウント用の金具が付いている)に収まった「ALTEC755A」とも比べてみる。

 2個重なってますが上だけ鳴っています。ランドセル(改)と比べても大きな違いはありません。どちらも過不足なく気持ちよく鳴ります。(この箱のバッフル板は割れています。どうやってリペアするか検討中)
 
 数日間聴いてから「ALTEC755B」に換えてみますと、、。
 私の耳では「ALTEC755A」よりも「ALTEC755B」の方が「WE755A」に近いのではないかと聞こえました。まず音が軽々と出てきます。ひだが深くてしなやかな感じ。ピントも合っている。
 「ALTEC755B」の生産台数はとても少なく入手は困難なようですがこれは要注目かと。私が入手した時は常識的な価格でした。なぜ生産が継続されなかったかですが雑誌の情報では使われているコーン紙は初期の「ALTEC755C」のモノと似ているらしい。そうすると枯渇してきたアルニコ(アルニコV)から次世代のフェライト(インドックスV)への変更だけ、、か。また「ALTEC755A」から「ALTEC755B」の違いで一番大きいのはそれまでのフィックスドエッジからフリーエッジへの変更で以降継承される。目的ははっきりしないがエッジの変更により引き出し線が細くなったりのチューニングが施されていると思われる。

 初めて買ったJBLは「LE8T-H」でフェライトだった。当時すでにアルニコ製LE8Tは製造していなかった。学生の身であったので苦労して通販で並行輸入業者から購入。ずっと憧れのスピーカーだったがたどり着くまでにコーラルの「6F60」をカッコが似ているという理由で使っていた。また今でも続いている雑誌の売買欄にあった中古の「LE8T」(たしか17500円だったと思う)が欲しくて相手に送金するも送ってくる気配が無い。そのかわり下宿に警察が来て詐欺事件だという。「被害届を出されますか?」と。昔から悪い奴は居たわけだがやがて彼の父親と名乗る方からわび状とともにお金を送ってきた。嬉しかったのと同時に親に同情した。「LE8T-H」は手放してしまったがその後「LE8T」は出入りはあるが「LE8」と共に使い続けている。
 自分の先入観からかどうもフェライトのイメージが悪い。特にJBLユニットは前面から取り付けることが多いが磁気回路が大きければそれはムリ。あの大きさで良かったのだろうか?などと思う。

 「ALTEC755B」があまりにも良いので「WE755A」の入ったランドセルと並べて比較してみる。。やはり異なる。。「WE755A」は前にせり出すような凹凸ある音。「ALTEC755B」は奥行きのある凹凸。念のために端子の接続を変えてみて再確認。

 KS12046レプリカ箱ですが板厚は曲面加工している部分はかなり薄い箱です。サイドはデザインのためか10mm程度の板が取り付けられている。またオリジナルは(このレプリカももともとそうだったのだが)裏板が本体と独立していて壁にまず裏板を取り付けてから本体を裏板に引っ掛けるような構造になっています。そのとき上下どちらの向きでも取り付け可能で高い位置の場合は下向きに角度がつく取り付け方もできた。ボックス内には棚がありKSナンバーのトライアッド製のオートトランスが組み込まれていた。館内放送のアンプは電送タイプで各スピーカーでインピーダンスマッチングを行なっている。

 薄い板厚でボックスの鳴きを利用した音創りについてはよく語られる。かつて極厚板、過剰な補強でとにかく共振を排除する設計がスピーカーに限らず流行したがいつのまにかあまり言われなくなった。床に穴を開けて地面からコンクリートブロックを立ち上げたプレーヤー置き場など今見たらちょっと滑稽な光景。でも当時は良い音に対する熱意は今の比ではなかったと思う。薄い板厚のボックスはなんとなく楽器風で手軽なのだが良い音にするには条件があるようで板の硬さが大切だという。これはバイオリンでも一緒で表裏板加工するときの重要な要素とのこと。(加工時に板を硬くするという技)最近ではビンテージバイオリンの解析が進んできて品格はともかく良い音の製品ができているらしい。ちょっと弾かせてもらったことがあるが国産高性能軽自動車みたいだと思った。ちなみにストラディバリウスも弾かせてもらったことがある。なにか蝋人形のような恐ろしい顔をしたバイオリンだった。どういった経歴かわからないがなにかぞっとするものを感じた。(大抵は血統書のようなものがついていて美しい図鑑でストラドをはじめ有名なビンテージ品は把握されている。業者はそれを見ながらオークションに参加する)バイオリンは各国で作られているが面白いことに地域ごとの序列がある。最高位はもちろんイタリアで現在はクレモナの復興が目覚ましい。かつて日本製のバイオリンが世界を席巻して昔からの産地は廃れてしまったのだが。その他ドイツでも有名なそして悲劇的な生涯のマエストロが存在した。次に東欧、アジアと続く。先ほどのバイオリンは実はアジアで作られたバイオリンのパーツを日本で加工、組み立て、塗装して完成させている。社長によれば木材からの削り出しから行なっていてはとても試行錯誤にならず分業することで数をこなすことができてはじめて発見できた事が多かったと。

 バイオリンはいつまでも「選ばれた人だけが操れることができるユダヤの魔法の箱」であってほしいと勝手に願っている。「ALTEC755B」と「WE755A」を聴きながら妄想が広がってしまった。今日は「勤労感謝の日」一日中音楽に浸る事ができて良かった。

 最期に登場する「ALTEC755E」

 同じようにランドセル箱に入れて聴いてみる。作りは簡素だし、フェライトだし、量産型だし、きっと勝負にならんだろう、、と思ってましたがなかなか聴かせます。低音は豊か、中高音も大きな不満はない。「WE755A」との価格差を考えれば健闘していると思う。

 違いは音の手触りというか輝きというか、粒子の大きさ、粉っぽさ、切れ味、実体感、くらいか。もっと言えば同じ系統とは思えないほど異なる音味。「ALTEC755B」と「ALTEC755C」と「ALTEC755E」の違いを聴いてみたいが残念ながら「ALTEC755C」は持っていないので想像の域は出ないがやはり磁石の変化の音に対する影響は大きかったのではないかと思います。バスレフ箱には合わないと言われてますがヒースキット「SS-1」で聴いた時、ようやくその評価が高い事が理解できたような気がしました。ほんの少しツイータで高域を補ったら随分違って聞こえると思います。


 お読みいただきありがとうございました。



 後日談1 
  先日数十年ぶりに東京にあるWE専門店を訪れて念願の「KS14703」の音を聴かせてもらった。直前に「管球王..」の取材で使われたもので1本だったがD氏の匠のチューニングも合わさってとても好ましいものだった。WE,ALTEC755Aとの違いは同一条件で比べてみないとわからないし個体差も加わってビンテージユニットの評価は難しい。入手して音出ししてたとえ気に入らなくとも「◯◯」製品なのだからいい音がするはずだ! という強い信念のもとで粘り強く頑張るしかない。

ALTECとWE755シリーズ(2) に続きます。
 


ロフチン・ホワイト アンプについて

2016-11-15 14:58:13 | オーディオ

 真空管アンプの歴史についての記述には必ず登場するLoftin-White Amp. 古典管をどうやって料理しようと考える時にまず思い浮かぶが回路設計は直結ということもあってハードルが高い。
 真空管アンプのバイブル、浅野 勇著 「魅惑の真空管アンプ その歴史・設計・製作」

 昭和47年7月30日発行 定価1000円
 中学生の身としては大金だった。カラー写真もあってそのカッコ良さに圧倒された。配線の美しさにも。あれから40年以上経ってしまった。
 ロフチン・ホワイトアンプについても詳しい解説と50,2A3での製作記事が載っています。当時2A3は比較的入手がしやすかった古典管で、私も最初に買ったのもこれでした。なんと国産JIMTEC(ジムランとアルテックから戴いた名前!)岡谷製で1本2000円だったと思います。4本あったのですが残念ながら日の目を見ないうちに友人に売却してしまいました。

 ロフチン・ホワイトアンプは1929年エドワード・H・ロフティンとS・ヤング・ホワイトが考案し原回路は電圧増幅管は224、電力増幅管は250が使われていた。

 当時はまだ5極管はなくハムバランサーで貧弱な整流回路で発生したリップルをV1のカソードにフィードしている。高電圧が必要だったので当時の最大規格の81で半波整流していた。

 今から16年前の2000年に新 忠篤氏が「ラジオ技術」誌に浅野 勇氏の回路をアレンジして発表されています。

 新 忠篤氏は「魅惑の、、」の巻末に掲載された「大座談会」にも登場されています。
 製作記事を完コピして(でもないか)作った「ロフチン・ホワイトアンプ」です。13年前の2003年に製作。











 
 前段のプレートと出力段のグリッドが直結されるのでB電圧がとても高くなる。また安定動作するまでの時間がかかるので一工夫が必要。
 スイッチは2個あってまず1をonにしてヒーターを点灯し、しばらくしてから2をonにする。これをしないとよくわからない表現だが「七面鳥」になるらしい。。(往時の呼び名は「七面鳥アンプ」だったとか)
 肝心の2A3は本家RCA製だが一番量産されたヒーター引っ掛けタイプであまり美しくない。75のシールドケースはバケツの持ち手みたいのが付いていてなかなかのカッコ良さで気に入っています。電源トランスは奮発して「タムラ」、チョークは「ハモンド」、出力トランスは「タンゴ U808」このトランスにはお世話になりました。100mA流せてユニバーサル(2kΩ〜5kΩ)で使える。真空管アンプビルダーでこのトランスのお世話にならなかった人は居なかったのではないでしょうか?今見ても美しい形だと思います。シャーシは今は無き鈴蘭堂。タンゴと鈴蘭堂の廃業(!)のニュースを聞いた時改めて時代の流れを感じた。

 久しぶりに聴いてみますと、、きちっと(変な表現だが)鳴ります。今まで気づかなかった音まで聞こえる。それほど強引でもなく優柔不断でもなく過不足ない。ぴったり収まっている感じ。
 真空管をWE422AからWE274B、RCA2A3を同じくスプリング釣りRCA2A3に変更してみると

 まず電流が10mA近く下がってしまいました。WE274Bは電圧低下がある様子。そのせいかは分からないが音は厚い感じになり低域が充実したように聞こえる。

 整流管をWE422Aに戻してちょっとだけ測定してみます。
 
 ダミーロードは積み木の上に組んだセメント抵抗でクリップで4Ωから16Ωまで切り替えできます。「パーツ屋さんのお祭り」で激安で購入。
 オシロが歪まない最大出力は2.0W 最大入力では4.5W 周波数特性は低域ではほとんど減衰せず、高域では7kHzで-0.5dB、9kHzで-1dB、20kHzで-4dBと平凡な値。ロフチン・ホワイトの特徴である入力の増加に応じた出力増を確認した。古いオシロスコープは「HAM」と書いてあるようにアマチュア無線用らしいが40年近く前に中古で購入。単純な一現象オシロだがとてもコンパクトで手軽に使えるのでなかなか引退できない。低周波発信機とミニバルは隣町にある中古の電子機器を専門に扱っているお店で購入した。このお店の測定器の在庫はとても充実しており地方都市なのですがありがたい。歪率計もあるのですが大きいし棚の上にあるし、、ちょっと億劫。でもがんばって勉強することにします。
 


Bell研(Western Electric) 2Bについて

2016-11-13 17:57:08 | Western Electric

 ベル研究所設計の2Bについては雑誌「管球王国」に掲載されていたことで知りました。1940年に電話設備機器のテスト用として作られたアンプで出力トランスは86Bの流用で166Bを使用しているが真空管はRCA製を使っている。またオリジナルは電源部と2分割だったらしいが現物は残っていないし写真も無い。追試しようと思い立ったのは文章中に(2A3ppアンプとして頂点の音質)という記述があったためで10数年前にほとんど手持ちのパーツで組み上げた。シャーシは当時の頂き物。高さが低いのは気に入っていたが奥行きがあるためどうしても部品配置が3列になる。結構悩んで(楽しんで)配置を決定した。









 出力トランスは当時話題になっていたKENYON T108ユニバーサルトランス。関東の有名WE専門店で購入、常識的な価格だった。初めての訪店だったがそれ以来縁がない。インターステージはたまたま持っていたWE247Bでこれは地元のビンテージオーディオのお店で購入した。多分現在流通している数分の1の値段だった。流通している、と書いたが雑誌の価格で実際流通しているのだろうか?と疑い深い私は思ってしまうほど高値設定です。ビンテージ品はパーツを除いてメインテナンスが必要だからそういったことも加味されているのでしょう。このお店も1980年代の技術雑誌にWestern Electric社製品の解説をしていた。愛好者も少なくまだまだ未知の部分も多かった時代です。世界的なブームの発信元の一つだったことは間違いない。2Bアンプもキットとして発売されていました。

 電源トランスはTANGOの2A3用。ヒーターの中点がないのでハムバランサーを入れたり電源もアレンジが入っている。整流管はもともとWE422だったが現在はWE274Bが入っていて結構豪華な構成。肝心の2A3はRCAのスプリング釣りヒーターのもの。あこがれの1枚プレートには縁がありません。

 製作した当時は比較的稼働していて概ね評価も高かった(と思います)。久しぶりにホコリを落として通電してみる。「Marantz Model 9」と交換すると両者の違いが際立ちます。まず感じるのはナローレンジで音の角がとれて丸いということ。とても優しくて聴きやすい。2A3へのイメージがそのままという感じで音味にも魅力を感じる。WEというよりRCA製品という感じでこれはこれでアリだと思う。


Marantz Model 9 について(2)

2016-11-08 14:10:42 | Marantz

 「Marantz Model 9」は通常のタイプ($384)の他に「Model 9R」ラックマウント($414)が知られているがそれとは別に派生機種が存在します。まず「Model 970」と「Model 970R」は70.7Vの電送タイプでこれは完全に業務用で出力トランスも異なったもの。もう一つは「Model 9120」でインターネット情報ではある国家企業からの特注品で21台制作されたとのことで基本性能の優秀さを物語ります。ラックタイプは通常タイプのパネルがラックハンドル分左右に延長されただけ、かと思っていましたがどうやら細かな意匠が異なるようです。一時は少し不人気のこのタイプを入手して業者にハンドル部分をカットしてもらおう(!)などと考えていた事もあったので早まらなくって良かった。パネル以外でもシャーシ上に回路保護用のヒューズボックスが2個、それに伴い3結切り替えスイッチの廃止、内部には半固定抵抗器の設置、スピーカー端子が異なるなどシリアルNo以外でも9Rとの識別は容易です。
 1960年の$384とはどの程度の価値か?$384 X 360 = 138.240円 1960年当時の大卒初任給の平均は13.100円との事なので2台で21ヶ月分になり現在の貨幣価値で400万円程度だったか。


 この機種は結構流通していますが出力トランスの違いによる音質の違いはわかりません。機会があれば聴き比べてみたいですが個人的な好みとしてはラックマウントはその範疇にありません。「Marantz Model 9」はあのカタチ以外考えられない。
 通常のModel 9のシリアルNoは1000から始まっていて3000台程度つくられたらしいが(未確認)私が関わったMarantz Model 9は3000台の内の3セット6台です。すでに4台はお嫁に行きました。

 「Marantz Model 9」のメインテナンス その1
 シリアルNo1500番台です。


 
 外観は良好、動作も安定している。裏をはぐってみるとカップリングコンデンサー類は綺麗に交換されている。基板の4本が0.1μF 600Vでオリジナルは多分GoodAllかと思いますがこの緑色のコンデンサの銘柄は何というのだろう?固定バイアスの電解コンデンサーも黄色いspragueに交換されています。

 V8用のカソード抵抗(24Ω)が22ΩのA&Bに変更されている。A&Bは誤差が高抵抗となっていることが多いのでこれでちょうどよかったのかもしれない。2本のA&B24Ωを実測すると26.6Ωだったので10%程度は普通に異なる値。ロータリースイッチで切り替えてV5〜V8の抵抗器の両端の電圧を測定してメーター表示しています。V8の抵抗が交換されているということは過去に損焼したのでしょう。せめて1%の誤差の抵抗器を使いたいところ。真空管試験機で一応チェックしたEL34を4本差し込んでみると問題なくバイアス調整ができますので正常動作しているようです。入力とスピーカーを接続して音出しするとガリオームが結構ありです。ハイパワーアンプなのでこれは危険。何とかしなくてはいけない。


 「Marantz Model 9」のメインテナンス その2
 シリアルNo2900番台です。


 
 外観は良好だが117Vを接続したらカソード電流のメーター表示が乱れていてそのうち煙発生(!)大慌てでスイッチ切って見ると

 なぜかこちらもV8のカソード抵抗が焼けている。(導通はまだありました)電圧を下げてバイアスを測定すると一応かかっている。固定バイアスも問題なさそう。さて??
 ところがメーター表示しながらカップリングコンデンサーを弾くとメーターが振れる。どうやら要交換のようです。現在はV5〜V7がsprague160P、V8がGoodAll。その他でも160Pが多用されている。(でも4本は統一して欲しかった)1本ずつ外してメグオームメーターで測定してみましょう。

 手持ちのメグオームメーターは最大500Vまで電圧をかけて抵抗値を測定できる。しかしV5〜V8まで4本とも特に問題ない値。再度(形を整えて)接続して通電してみると(振動を加えると)やはり安定しない。メーターが動く。
 そのうち些細な振動でもメーターが触れることに気づいた。ためしに入力信号入れてみるとバリバリ状態。。怖くなってジャンクのスピーカーに取り替える。コンデンサーをドライバーの柄で叩いてみると

 明らかにバリバリいうコンデンサーがあります。メーターもびんびん振れる。静的な測定では問題なくてもやはり不良になっているのがありそうです。交換してみよう。。バリバリ、びんびん、、相変わらず素人メンテ丸出しだ。


 部品が届くまで一応回路のお勉強をしておきます。
 入力は1/2 6DJ8ですがとても変わっている。200kΩのボリュームで受けた入力信号は切替SWでアクティブローカットフィルターを通る。そして出力には位相切替。はじめて見た回路です。なるほど。。この段のB電源にはツェナーダイオード(150V)が入る。ノイズは発生しないのだろうか?
 1/2 6DJ8の初段を通り6DJ8を用いたカソード結合型位相変換へ。ここで注目はカソードとグリッドを結ぶネオン球でスイッチを入れた直後に光りますがしばらくすると(真空管が動作状態になると)消える。どうやら直結回路を保護するための安定動作するまでの時間稼ぎらしい。
 Marantzのアンプは位相変換はすべてカソード結合型になっている。その後カソードフォロアーでEL34をドライブするが途中には位相補正が入り、極めつけはクロスオーバーNFとなかなかの手強さ。すべて意味がある(当たり前だ!)。もっと勉強が必要。。上下EL34の1本のプレートにはコイルが入っている。出力トランスの2次側にはダンピングファクターをコントロールする回路が相変わらず入っているがやはり回路を切って抵抗器を挿入する方法。オーバーオールのNFBは位相切替後の6DJ8に。特にクロスオーバーNFについてはとても効果的だったらしくシドニー・スミスは「Model 8」の改良バージョンである「Model 8B」を世に送り出す事となる。なぜ「Model 10」にしなかったかはいろんな大人の事情があったのかもしれない。「Model 8」発売からそんなに期間が経ってなかったわけなのでオーナーは悔しかったと思うが出力トランスが異なっているので安価に、簡単には改造できない。(でもバージョンアップサービスはあったのだろうか?)とにかく黄金期のMarantzのアンプはこれで終焉を迎えます。

 コンデンサーが届きました。オリジナルがGoodAllだと思われるので直系と言われるTRWを注文した。

 0.1μF600Vを両者改めて比べてみると、形はほぼ同じ。突起の位置、製造時の型による窪みも一緒。中身も同じかもしれない。
 振動を与えるとバリバリ言ってた初段の0.1μF200Vsprague160P

 外してメグオームメーターで測ってみると問題ない値。測定しながら振動させても変化なし、、。これはいったいどういうことか?あらためて仮接続してみると

 こんどは問題なく稼働する。。その他のコンデンサーを叩いても以前のトラブルを再現できない。。

 でこのまま何も変えずにまた組んで鳴らしてみます。やっぱり問題は出ていない。ハンダ付けは丁寧で接触不良は考えにくい。なぜトラブったかはわからず。取り外し時に加熱したことでコンデンサーが一時的に回復したのかもしれない、など考えるしかないがであればいずれまた再発すると考えます。こんな時やはりメーターで監視できるのはありがたい。
 ところであらためてseirvice manualの写真をみると不鮮明ながらどうも使われているコンデンサーはsprague160PとGoodAll両者のよう。これは今回初段のコンデンサーを取り外す時も感じたことで今までメンテの手が入った形跡が無い。一番不自然なのはV8のカップリングコンだけGoodAllでV5〜V7が160Pという不揃いさだったわけだが、どうもこの写真でもそうなっている!これはいったいどうなっているのか、、。不思議です。
 「その2」はほとんどオリジナルで今まで部品交換されていなかった可能性が高い。
 
 しばらくぶりに聴き込んでみましたがやはり只者でない片鱗が伺える。「WE86A」は美音だと思ったが今の接続では(コンピューターの出力直結)エネルギー感は優っている。周波数帯域全般の均一性やスピード感が感じられ隅までコントロールされているという印象。細かい音が拾われていてさらけ出される。これでモニターしたらさぞかしよくわかる、、という感じ。一方でスピーカーの個性の違いは薄れ「Model 9」色に塗りつぶされてしまったように感じられるかもしれない。Marantzのアンプはよく「F1」などに例えられるがこのアンプが発表された1960年当時に想いを馳せるとさぞかし驚愕のアンプだったのでしょう。組み合わせるプリアンプは「Model 7C」以外には考えられない。

 「Marantz 9」のメンテナンスは基本的な動作をさせる事は私のような素人でもできますが、位相補正など最適な動作点を見つけて長期間安定的に稼働させたり、組み合わせるスピーカーに合わせてDFを変更させるなどはやはり専門の方に調整をお願いした方が良いように思います。数回しかお目にかかったことはありませんが隣町にお住いのご高名な「K先生」の書かれた文章(論文)を読んでその感を強くしました。しかし素人なりの学習する姿勢は持ち続けたいと思っています。

 Marantzのアンプの美しさについては「Model 7」を中心にしてよく語られますが「Model 9」の形状はその後のパネル付きアンプとして亜流が多かったせいか私としては意識をしたことは少なかった。あらためて接してみてやはりそのデザインには感心しました。どの方向から見ても絵になる。シャンパンゴールドのパネルとパンチングメタル、シャーシのブラウン色とのマッチングも申し分ない。大きさも適度で外観の隅々まで目が行き届いた渾身の力作だと思います。「K先生」は「Model 9」を「ソリッド・フィギアー」と仰っておられたがピッタリの表現かと。「Model 7C」と「Model 9」2台を並べておくことは半世紀以上経った現在でも「いつかはクラウン」の名コピーのようなオーディオ趣味の王道なのは変わらない。楽しく音楽に浸れると思います。

 お読みいただきありがとうございました。