Decca Decolaがお嫁入り

やっとこさ入手したDecca Decolaの整備記録

EMT930st について(2)

2017-08-27 14:10:15 | EMT
 Amazonに注文していたオイルが届きました。
 
 30mlで3,832円とかなり高価です。EMTオイルに比べると粘度はかなり低い。ターンテーブル軸受、モーター軸受用のAudio oilでチタン入り。チタン皮膜を形成して摩擦を65%程度減らすとのこと(基準はなんだろう?)古いオイルはしっかりと取り除いた方が良いとのこと。30mlだとターンテーブル軸受けやモーター、アイドラー軸全てに足りる。


 モーター軸周囲にあるフェルトはプラスチックの板で押さえられている。通常は隙間からのオイル補給でいいのだが、今回は全面的に交換なのでこのプラスチック板を外してフェルトも外して給油するつもりだった。しかしプラスチックは脆くなっていて外す時に2つに割れてしまった。。しかし周囲の金属の溝にはまり込むので安定するため支障なしと判断してこのままとします。軸周囲のフェルトは一塊で外せそうもなかったので(板も割れて腰が引けた)古いオイルを拭き取ってからチタンオイルを染み込ませてから板を戻した。

 アイドラー軸はよく掃除して、またアイドラー上部のフェルトもオイルをよく拭き取って再使用する。アイドラーの上下にはベークライト様のワッシャーが入ります。

 一応新品はあるのだが今回は再使用する。戻したフェルトに十分に給油して。

 プラッター軸受はネジ3本で固定されている。ペイントロックされているので多分今まで一度も外されていない様子。オイル交換は軸受のボトムを外してもいいのだがオイル漏れが心配なので軸受ごと外して中を拭き取って交換する。


 フリクションブレーキを外して331/3の定速からアイドラーを解放してどの程度回転が続くかを見るとオイル交換前は6 1/4回転した。(ただしほとんどオイルが入っていない状態だったので参考程度)新たなチタンオイルは溢れるまで入れる。ブレーキなしで同じ様に回してみると17 3/4回転した。止まりそうな低速でもなかなか停止しないのが印象的。チタン皮膜の形成には10時間程度はかかるとのことで楽しみです。

 一連の作業後はアイドラーやターンテーブル内側、モーター軸をよく無水アルコールで拭き取ります。オイルはミスト状となって沈着するので度々この作業は必要。これで試聴してみると、、困ったことが起きました。アイドラーがモーター軸に対して滑るのです。クイックスタートをスタンバイするとプラッターの回転が止まってしまう。プラッター軸の位置は少々遊びがあって調整代があるがオイルの付着で滑っていること以外原因は考えられない。早速無水アルコールで拭き取ってみるもやはり立ち上がりは鈍い。今までこんなトラブルは起こったことがない。やはり高性能オイルの扱いは慎重にする必要があると感じた。拭き取りを繰り返してみます。

 肝心の音は、、アイドラーが滑っている状態では正確な判断はできないわけだが不思議なことに「そういった傾向の音」ではなくとても好ましい。アイドラードライブ業務機の特徴であるゴリゴリ感や溜めがある感じが薄れて素直に滑らかに発音するしモーターの振動の減少や全体の静寂感を感じる。この変化は予想以上だがひょっとするとアイドラーに付着してしまったオイルが一番の要素なのかもしれない。しばらく稼働させてたら(LP5枚くらい)アイドラーのオイル皮膜が切れてきたのかクイックスタートスタンバイ時でも回転は止まらなくなった。静寂感は変わらないので良い方向へ変化したと考えることにします。


 隣町のパーツ屋さんに行ってブラ見していたら店員さんが「お客さん、おもろいもんがありまっせ!」と言って(嘘です)説明してくれたのがこれです。

 名前も説明書も無い袋入り。調べてみるとどうやら話題の製品のようで名前は「LCR-T4」で中華製。抵抗・コンデンサ・インダクタ・ダイオード・トランジスタ・FET等が測定可能というマルチ測定器。
 ICソケットはいっぱい穴が見えるが基本的に1,2,3の3端子しかなく適当にパーツを差し込んで黄色のボタンを押すと測定できるという超アバウトなもの。店頭で見本の周りに散らかっていたパーツをかたっぱしから試してみてから購入した。価格は2000余円だったがネットで調べると送料込みで1000円以下で購入できるらしい。
 ちゃんと使えそうだったので一緒にメタルのケースも買って組み込んでみた。

 懐かしのゲームボーイみたいです。。
   
 トランジスターの選別や私のようなカラーコードの苦手なヒトにはぴったり。表示は自動で消える。マルチメーターは珍しくも無いがこれが数百円(現地では3$らしい)で売られるというのは、、、ちょっと複雑な気分です。安く買えなかった事が気にならないくらい感動的な製品です。

 ところで今回のパーツ屋さん訪店の目的はEMT155stを通さずにカートリッジの出力をダイレクトに取り出すアダプターを作る事。方法は2つあってアームの出力にある7pinソケットから取り出す方法とEMT155stの代わりにコネクターにつなぐ方法。7pin方法だとプレーヤーの裏の作業になるので交換はちょっとやりにくいのとMT7pinプラグは持ち合わせて無いのでもう一方の方法で行きます。EMT930stにEMT155stを装着する時はガイドに沿って滑らすとプラグインするようになっている。同寸法幅のケースは入手できなかったが奥側の壁に沿って押し込めばコネクター接続されるように採寸して組み立てた。肝心のコネクターは以前購入したレプリカ物。
 
 今回はシールド線引き出しとしました。これ以上接点を増やしたく無いため。線材はホントはEMT2121を使いたいところだしピンプラグもEMTロゴが入っていればカッコよろしいのだが何の変哲も無い国産マイクコード。4線コードなのでホット、コールド共にパラにして使う。コールド側はそれに網線が加わるのでなかなか大変。でもずっとこのコード使ってます。



 以前書いたようにEMT155stにOFD25など高出力モノカートリッジを繋ぐと大振幅で歪んでしまいます。EMT155などのモノラルフォノイコライザーが手元のない場合は直接信号を引っ張り出して他の方法で昇圧、イコライズする必要がある。問題なく聴けている場合もあるかと思いますが。。手持ちの昇圧トランスを聞き比べてみた。EMT930stでは初めての試み。

 このEMT930stの程度は普通だと思いますが、ハンマートーンの剥がれが目立つ。アマチュアの憧れ「ハンマートーン」だが手軽なスプレーはほとんど見られなかった(と思います)今回「染めQ」から出ているのをAmazonで購入。

 ハンマートーンでも各色揃っている。まだスプレー塗装していないがまずEMT930stのお化粧直しをしてみた。こんな感じで剥がれてます。デッキは樹脂製。

 小筆でタッチアップして

 結構目立たなくなった。剥がれ部分は塗膜分凹んでいるので肉盛りしつつ行う。

 ターンテーブルの周囲に33 1/3,45,78のマークと謎の凹みがある。
 
 放送で欠かせないレコードの頭出しをする場合に、回転を止めて頭出ししたらレコードの種類に応じた回転数のマークまで針を下ろしたまま手動で戻してクイックスタートのスタンバイをする。ほんのわずかだが定速に達するまでの時間が必要なためで隣の写真の窪みは信号を遮断していたリレーがONとなる位置で回転再開からONになるまでの遅延回路が組み込まれている。クイックスタートは卓のフェーダーとも連動できこれらの機能でストレスなくスムーズに送り出しができる(遅延回路を意識することはなくこの窪みも調整時のマークかと思う)。Thorens TD124では同じくサブターンテーブルを用いるが上方向に持ち上げて回転をストップさせている。Garrard 301でもBBC仕様では何と軸ごとプラッターを上下させて巨大なサブテーブル(ストロボを兼ねる)との接続をコントロールしている。EMT950になるとターンテーブルの逆回転も電気的になりスイッチで行う。頭を決めたらデジタルカウンターをリセットしてから逆回転させるとカウンターはマイナス表示となり、そこからスタートさせると「0000」で回路が繋がる、、というもの。これらは家庭の音楽鑑賞には何の意味もないわけだし各所に負担がかかると言われているが酷使に耐える機構が業務機としての条件だと思うし単純にとても興味深い。

EMT930st について

2017-08-23 08:40:21 | EMT

 EMT930は1956年に発表された。EMT(Elektro-Mess-Technik)はそれ以前にも1950年にドイツ放送技術研究所との共同開発で「R35」、1951年に独自開発で「R80」(50台製造)、同年にEMT927を発表している。EMT930はEMT927のスケールダウンしたものでプラッターの直径は33cm、重量は約半分の23kg。初期の製品にはオルトフォン製RMA229アームが、1971年頃からトーレンス設計のEMT929アームが装着された。搭載されるフォノイコライザーはEMT930のシリアルNo,3588まではEMT139(真空管モノラル)、No,3589〜10949は名称もEMT930stとなりEMT139st(真空管ステレオ)、No,10950以降はEMT155もしくはEMT155stとなる。しかし市場のEMT139stの僅少さから実際には注文によって色々なバリエーションがあったのだと思う。何れにしてもシリアルNo,10750以降の製品には真空管イコライザーは搭載できない。

 搭載されるフォノイコライザーはEMT133を除いて全て同じ寸法、接続となっている。(もしEMT139対応機にEMT155を接続したら壊れるのだろうか?と思って回路図と接続図を確認したら大丈夫なよう)EMT155の標準カートリッジはOFS25とOFS65でカタログではプレーヤーシステムにはカートリッジが2個とも付属されて販売している。「st機」にはTSD15が1個付属していた。(面白いと思ったのは付属の2個はサファイア針ということでこれはコストダウンを図ったのか?このカタログの記述には明らかなマチガイも見受けられるのでミスプリントかもしれないし天下のEMTがそんな事するか?などと思ってしまう)EMT155とEMT155stの違いはモノラルとステレオだけでなく入力レベルが10mv、1mVと感度差が10倍あった。これはOFシリーズの出力はTシリーズの10倍程度あったためでOFカートリッジをEMT155stに接続すると大振幅再生では歪んでしまう。(初めてOFD25をEMT930stに繋いだ時に歪んでしまって慌てたことを思い出します)2台のプレーヤーを納めるコンソールもカタログにあり、1.55Vのライン出力に至る全てのパーツがシステムとして提供されていた。まさに「The 業務機」でユーザーは提供されたものをただ正確に使用するだけ、保守点検の契約も当然あったと思います。
 EMTのモノラルカートリッジは別項にあるようにオルトフォンのOEMのOFD25、OFD65と自社製造のTMD25、TND65。TMDとTNDの出力はTSDと同じでこれはモノラルレコード再生時にフォノイコライザーを交換せずに対応する事が可能で特に78s SPレコード再生には(専用カートリッジは不可欠だったから)過渡期には重宝されたと思われる。しかしOFシリーズとTシリーズは機構の違いから(当然ですが)音質が全く異なる。オーディオファイルはモノラル再生では圧倒的にOFシリーズを支持するのではないだろうか(ジジイの思い込み)。

 このEMT930stは自分にとって3台目。先の2台はお嫁に行きました。
 
 プレクシグラスのサブテーブルの下には円盤状の金属板があるのだがこの個体には欠品している。

 

 

 

  
 クイックスタートのスイッチは3段階の切り替えで卓のフェーダーと連動するリモートコントロールの場合は黒いプラスチック部を上に持ち上げてから後方へ倒すとロックされる。

 

 

 
 60Hz仕様もあるようだが(以前韓国からモーターだけ輸入したことがあったがそれが60Hz仕様だった)基本的に50Hzの軸が付いている。説明書には進相コンデンサーが各々の周波数で指示されている。モーター軸の交換はできない構造なので周波数の変更はモーターの交換もしくは周波数変換機を使うことになる。EMT930のモーターは30Wなので(EMT927は35W)それに見合った規格のもので良いわけだが故障などで今までに数回交換している。100W程度の変換機ではEMT930は賄えるのだがEMT927ではダウンした。扇風機や200Vの大きな冷却ファンを騒音対策のために100Vでゆっくり回して冷却するなど色々と工夫してみたが現在は200W程度のものを使っていてやはり動力の駆動電源の連続運転は結構無理がかかるものらしい。ヨーロッパ製品を西日本地区で使用するにはそれなりの苦労が要ります。この電源の質は回転の質にダイレクトに影響するのは容易に想像できる。それに加えてターンテーブルの回転数の微調整は軸の中心部にあるフェルトリングをプラッターに押し当ててのフリクションでコントロールしているわけでそれを嫌って40Hz台の可変周波数でこの部分をキャンセルすることでS/Nを上げるという製品も存在する。
 この形式のモーターは「適当な負荷をかけることで回転が安定する」という解説を読んだことがあるのでこの方法が最良かどうかはわからない。また周波数変換機は低周波発振器とアンプとトランスがあればできるらしいので以前適当なトランジスタステレオアンプで実験したことがあったが見事に両chとも壊れてしまった。(ちなみにこのアンプは状態を説明して売却したが落札した方は出力段全てのトランジスターを交換して復活されてたらしく大いに感心した)「真空管式の周波数変換機を製作する」と仰っていた方がおられるので発表されたらぜひ追試してみようと思っています。

 EMT930のメンテナンスガイドを見ると「アイドラーは1年で交換」とあって純正部品も提供されていたが最近はどうなっているのだろうか?流石にアマチュアではマニュアルどおり1年毎に交換している人は少ないと思うが、いよいよ寿命が来て購入した純正部品は円筒形の透明プラスチックのケースに本体と共に交換時にはめる手袋まで入っていて(ゴム部に素手で触らないように)感動した。本来黒色のゴムだったがある時から純正で提供されていた飴色ゴムのアイドラーが短命で(硬化が早い)新品でストックしていたモノも使用不能に陥っていてがっかりした事がある。ダメになってしまった多くの在庫を抱えていた販売店さんも知っています。そのうち純正部品はとても高価だったので秋葉原にあった今はなき「K無線」にお願いしてゴム交換だけやってもらっていた。ある時いつものように電話してお願いしようとしたらご主人の娘さんという方がでて「店主はもう高齢なのでお店を閉めることになった。ゴム交換を外注していたF工場を紹介するので直接交渉してください」と親切にも連絡先を教えてくれた。それからはその町工場(だと思う)に度々アイドラー再生をお願いしていた。ところが次第に注文が多くなって本業の合間に行っていた事に本腰を入れる事になったらしくある時から作業料金が3倍!になっててこれには驚いた。今ではあちこちでこの作業を行ってくれる業者がいるし最重要部品なので品質の差が音にも顕著に現れるとは思うが比較できるほど発注していない。一度だけ初期のゴム再生アイドラーを純正のと比較試聴した事がある。居合わせたある方はやはり純正が優っていると言っていたが私は違いはよくわからなかった。EMTのようなメジャーなアイドラー以外でも敬遠していたマイナーなレコードプレーヤーのゴム部品も軸周りがダメになっていなければ再生できることがわかって選択の幅が広がったのは良かったと思う。

 その他の消耗部品として回転調整用のフェルトリング、これは常に押し付けられながら回転するので当たり前に擦り減る。交換は周辺の金属部品一式だがフェルトをドーナッツ状に切って張り替えている。ストロボは今まで幸いにも切れたことはない。プラッター軸底部にあるボールベアリングもEMT930では交換したことはない。EMT927ではあるのだが、、それについてはまたの機会に。アイドラーの上下にはベークライトのようなワッシャーが入るのだがこの交換も実はした事がない。モーターの進相コンデンサーはMPコンで経時的に容量が抜ける傾向らしくそうなると振動が増える。EMTからも補正用の小容量コンデンサーの詰め合わせセットが供給されていた。かつてEMT製品の代理店をしていた「河村電気研究所」の解説では50Hzの進相コンデンサーの公称値は1.75μFだが実際のベストの値は1.75〜1.9μFの間に存在する(パンフレットより)らしい。ちなみに同パンフレットに付属していた価格表を見ると1975年5月1日の段階でEMT930は950,000円 EMT927は1,200,000万円から値上がりして1,500,000円 TSD15が55,000円 OFD25が30,000円となっていてEMT930の価格が高い事に少し驚きます。EMT927との価格差も現在を考えれば少ない。


 さてプラッター軸とモーター、アイドラー軸への注油だがEMTからはミシン油のような専用オイルが供給されていて定期的な交換、注油は必須。割とご近所の方のEMT930がオイル切れでプラッター軸が錆びてたという話も聞いています。純正以外でもスクワランオイルや他の高性能オイルの使用記を目にする。純正オイルの供給はされているのかもよくわからないが(どこに訊いたらいいのか)無いよりはマシだろうとテキトウなマシンオイル(ミシン油)を使っていた。今回ちょっと反省して純正以外でどんなオイルが入手できるか調べてみてその中の一つを注文してみた。厳密には色々と並べて比較試聴すべきだろうが、ちょっと人間のパワーが足りない。


EMTのカートリッジについて

2017-08-11 00:02:36 | EMT

 EMT社(Elektro-Mess-Technik)はWilhelm Franzによって1938年にドイツベルリンに設立され戦後にはLahrに移転した。1951年にEMT927が1956年にはEMT930が発表されている。これらを含むEMTのアナログプレーヤーと付属したフォノイコライザーについては別項に譲るとしてここではEMTプレーヤーの専用として供給していたカートリッジについて紹介、考察してみます。

 EMTのカートリッジはMONO及びSTEREOがあり曲率半径、機構、チップの種類で分類されている。曲率半径については12μ、15μ、25μ、65μ(後年楕円針が追加された)。機構はTとOF、チップはD(ダイヤモンド)、S(サファイア)。


 (上記の表の一番上の「OF」は「OFS」のミスプリントと思います)

 「TSD」の”T”はTonabnehmer(ドイツ語、ピックアップ)、”S”はSTEREO、”D”はダイヤモンドでステレオ対応の機構としてこの名称が与えられた。同機構のモノラル機には「TMD」「TND」となっている。

 ピックアップの取説
 

  

 「TMD」と「TND」の「M」と「N」は何のことか疑問でした。改めてこの付属の説明書を見ると「TMD」には「fur Mikrorillen,Diamant-Nadel mit 25μm Verrundungsradius」(ドイツ語)とありその下に英語表記で「MONO,FOR MICROGROOVES, DIAMOND STYLUS WITH 25μm(1MIL)TIP RAUIUS」、「TND」には「fur Normalrillen,,Diamant-Nadel mit 65μm Verrundungsradius」(ドイツ語)となり英語表記で「MONO,FOR STANDERDGROOVES, DIAMOND STYLUS WITH 65μm(2.5MIL)TIP RAUIUS」となっています。「M」は「Mikrorillen(モノラルのLPの溝)」、「N」は「 Normalrillen(78s SPレコードの溝)」のことだったようで長い間の疑問が解けてスッキリした。

 「TSD15」が有名でEMTカートリッジのスタンダードだが最初のTSDは「TSD12」でその名の通り曲率半径は12μだった。また初期のTSD及びTMD、TNDシリーズはカートリッジの先端のレンズが円形で「丸レンズ」と呼ばれている。
 この「TSD」だが初期の製品はオルトフォンから供給されていたらしくOrtofonとEMTのダブルネイムとなっている。その後はOrtofonの文字は消えて(時系列ははっきりしないが)EMT単独での生産になったと推測される。また「OF」が頭のモノラルカートリッジも機構がOrtofonのモノラルカートリッジに酷似しており「Orfofon」の文字を製品名としたと考えられる(これも推測)。OFモデルは途中でラインアップから消滅しているがひょっとすると最後までOrtofonからのOEMだったのかもしれない。OFシリーズはTSDより出力が10倍程度大きくEMT155stなどのイコライザーでは入力過大で歪んでしまいモノラル専用のイコライザー(EMT139,EMT155)が必要となる。この辺りも消滅した原因の一つと考えられる。

 「Tシリーズ」の最初のモデルと思われるOrtofonとのダブルネイムの「TSD 12」
 

 

 


 カートリッジ表面には「12」の文字はなくEMTのロゴとOrtofonそしてSTEREOの表記がある。(このSTERO表記のあるEMTカートリッジはこれだけ)裏面にはシリアルNo, 12μ diamant LIZENZ(ライセンス)ORTOFON-KOPENHAGEN とある。曲率半径12μmのステレオカートリッジということで「TSD 12」と考えて良いと思う。 


 続いて「TSD 12」


 

 


 中身は無印のものと同じようです。表面にはSTEREOの文字の代わりに二重丸のステレオ記号となる。

 旧型のOFシリーズ、Tシリーズは小さくて素朴なプラスチックケースに入って供給されていた。現場では開封した後はこのケースに入れて保管することはなかったのではと思う。プレーヤーのデッキ上に置かれたカートリッジキーパー
 
 不測のトラブルに備えて常に予備は常備していての対応。EMTカートリッジの横幅は全て共通なのでこのキーパーにはどのタイプのカートリッジでも装着できる。またTシリーズであれば重量、針圧も共通なので素早い交換ができた、、が実際には回転数の切り替え、カートリッジの取り替えや頭出しのターンテーブルの位置などが異なるため放送事故を防ぐためにターンテーブルを複数使って対応していたのではないだろうか。


 続いてEMTカートリッジのスタンダード「TSD 15」
 

 

 
 裏面にはSTEREOの文字。内部の構造はTSD 12とほとんど(全く)変化ないように見えます。


 ここからモノラルです。

 Ortofonとのダブルネイムの「TMD 25」
 

 

 
 このダブルネイムにも表面には名称はありませんがレンズの周囲とモノラル記号が赤色となっている。裏面にはシリアルNo, 25μ diamant LIZENZ(ライセンス)ORTOFON-KOPENHAGEN でダブルネイムの「TSD 12」と同じ内容。マイクログルーブ、曲率半径25μということで「TMD 25」
 内部の構造はラテラルのみのコイルが90°で設定されている。この構造からステレオレコードをかけた場合でもOFシリーズのようなレコードへのダメージは与えない。


 続いて「TMD 25」


 
 これもダブルネイムと構造は同じ。モノラル記号、EMTロゴ、TMD 25が赤色。


 丸メガネの最後は「TND 65」


 
 「TND 65」と四角に囲まれた「N」とEMTロゴが緑色。これらの色はカラーコードに則していると思われます




 Tシリーズは1970年頃から新型のシェルに移行した。当時の価格は全機種40,000円で1999年の時点では140,000円となる。また1990年代のBARCO-EMT時代にはTSD 15はラインコンタクト針となりラベルも金色で識別できる。内部には補正用のコンデンサーが入っていたと記憶する。その後はまたBARCOを離れて現在に至る。


 「OFシリーズ」は1990年代後半まで発売されていた。最後までOrtofonからのOEMだったのかは不明です。後期のシェルの形態は「Tシリーズ」と共通のようですがここでは旧型シェル(角レンズ)を紹介します。

 まず一番古いと思われるOrtofonとのダブルネイムの「OFD 65」
 

 
 赤いほうき付き。チップはダイヤモンドかサファイアかは不明で「OFS 65」だった可能性もある。


 続いて「OFD 25」
 

 
 拙宅のモノラル再生のスタンダードです。深々として艶があってこれに勝るカートリッジは現れませんでした。針交換に至らないように大切に使ってました。

 続いて「OFS 25」
 

 

 サファイア針はダイヤモンド針と比べて摩滅がはやいのでユーザーが交換して使うことを前提にしていて当然交換針も供給されています。
 
 10本入っていて交換のための器具と説明書も同封されている。針交換は慣れないと難しい。一度チャレンジした事があったが見事にコイルを引き抜いてしまって修理に出した事があります。それ以来怖くて触っていません。


 続いて「OFS 15」で未開封。
 


 EMTのロゴの入ったテープで封印されていて恐れ多くて開けることができない。未使用のままダンパーはお亡くなりだと思います。15μmのモノラルは再発売のモノラルレコードなどと相性が良さそう。15μmのサファイア針は入手できていないので針交換の場合は摩滅したサファイアチップを取り除いてダイヤモンドを移植することになる。





 特注で80μm、90μm、100μmなどもあったらしい。78sSPレコード再生は奥が深い。

 この後1970年頃からシェルの変更があり「Tシリーズ」、「OFシリーズ」ともに同じ形状となっていく。「旧OFシリーズ」のDCRはLP用は37Ω、78sSP用では25Ωと異なっていたが新シリーズでは全て24Ωになっていて機構の違いもあった。厳密に言えばチップやサファイア針の交換でLPと78sSPの混用はできないことになる。
 新シリーズを供給していたプラスチック箱は全て共通だったが時代によってラベルが異なる。
 

 アナログ再生が減ってEMTはベルギーの3管プロジェクターで有名なBARCO社に吸収されたが現在はまたその元を離れている。最新の動向はよく知らないがアナログの趨勢に翻弄されてきたであろう同社にエールを送りたい。

 

 

 

 

 

 


 お読みいただきありがとうございました。








 


Nakamichi 700 について

2017-08-06 16:00:24 | カセットデッキ


 Nakamichi(ナカミチ)は1948年に創業し東証2部上場の中堅企業だったが2002年に負債200億円で倒産している。しかし2006年の米国での高級AV人気ブランド調査でB&O,BOSEに次いで3位という成績で海外での評価は国内以上に高かった。Nakamichiの製品で印象的だったのはやっぱり高級カセットテープデッキで世界初のディスクリート3ヘッドカセットデッキ「Nakamichi 1000 Tri-Tracer」は米国で1973年に発表された。これは同年の「Nakamichi 700」とともにシリーズ化されどんどん高性能、高額となって1981年の「Nakamichi 1000ZXL Limited」 に至っては驚きの850,000円だった。ちなみにこの「Nakamichi 1000ZXL Limited」は受注生産、金ピカ仕様でオーナーのネイムが刻印されていた(!)というバブリーなモノ(オーナーの方すみません)。残念ながらお目にかかったことはありません。



 「Nakamichi 700」は「700Ⅱ」「700ZXL」へと進化(?)していきましたが私はこの初代「700」がデザイン面で一番気に入っています。
   

 (メーカーカタログより)

 拙宅の「Nakamichi 700」は戴き物で不動状態だったのを修理したもの。久しぶりに通電してみる。

 想像してたよりずっといい音です。カセットリアルタイム時は生録には縁がなかったので元ソースはLPレコードかエアチェック(いいネイミングだった)レコードは高かったので友人から借りたレコードをコピーして聴いてた。高校生当時はNakamichiのデッキなんて雲の上の存在だったがそれでもTEACのカセットデッキは家にあってせっせとコピーしてタイトルを書き込んでいた。(実はそれ以前の中学時代にもジャンクのオープンテープレコーダーのメカ部分と再録アンプを組み合わせてステレオデッキを自作して聴いていた時期がある。今から思えばよく頑張ってた。The Beatlesの「A day in the Life」を聴きながら調整を繰り返していた。今でもこの曲のオーケストラ部分を聞くと当時の様子を思い出してしまう)

 「Nakamichi 700」は「Nakamichi 1000」と同様に完全3ヘッド(一体どうなってるのか不思議だった)、録音ヘッドのアジマス調整(700Ⅱまでマニュアル、700ZXLでは自動)、ダブルキャプスタンなど当時としては驚きの機能で全く違う目的で開発されたカセットテープから極限まで性能を引き出そうとしたもので勤勉な日本人にぴったりの開発分野だと感じる。4トラック19cm/sのオープンデッキを凌駕して2トラサンパチに迫る(!)と言われて(広告にも書いてある)当時の熱気が伝わってきます。冷静に考えれば「LPコピーするにはオーバークォリティーだろ!」とは思うが当時は誰もそんなことは言わなかったしオーバークォリティーでもなかったと思うけど。カセットテープの改良と相まって独特の世界。

 当時は専業メーカー以外でも普通の家電メーカーからも星の数ほどのカセットデッキが発売されてた(中道研究所は自社以外の開発も請け負っていたらしい)。初期は上からカセットを入れる形態だったがオーディオラックの一番上はやはりアナログプレーヤーを置きたいわけで(ホントか?)システムコンポの一部としてしだいに前面挿入になっていく。「Nakamichi 700」と「700Ⅱ」は前面だが縦に挿入するという珍しい形態(700ZXLでは通常の横挿入なので使い勝手の評判は悪かったのかもしれない)。その関係か縦径が非常に高く独特の形態になっている。横径も大きく大きな銀の壁。奥行きが短いのでカセットデッキの上には何も載せることはできないのでオーディオラックでも孤高の存在感。操作ボタンの凹凸はないがカセット挿入口とアジマス調整窓は少し飛び出して段差があってここはちょっと残念なところだったかもしれない。(「700ZXL」では面一になっている)全体の雰囲気は同時期に発売されたB&O Beogram4000に似ていてとても美しいと思う。有名なマリオ・ベリーニデザインのYAMAHAのカセットデッキのような立体的な造形とは真逆の形態だがソリッドでプレーンも当時の流行だったのかもしれない。

 走行音が大きいので軽く分解して掃除、注油してみた。グリースが硬化していていずれ徹底的なオーバーホールは必要だと思います。
 

 

 

 ところで録音済みのカセットテープは多々あるので試聴には困らないのだが、テープに録音内容が書いてないのが多く適当に放り込んで聴くと完全に忘れていたタイトルが不意に現れて思わず聴き入ってしまう。押入れの上の屋根裏から出てきた古いアルバムを見ているかのようでビデオや写真だけでなく音も昔の記憶を呼び起こすことを改めて感じます。

 どこかに入手してたサービスマニュアルがあったはず、、と探したら出てきました。


 

 英文マニュアルで不動品を頂いた当時探して入手した。その時に入手したゴムベルト類(交換した残骸)も一緒に出てきて封筒の日付を見たら2003年。

 前回修理から14年も経過していてびっくり。その間一度も通電していないはずだが今回ゴム類は全て生きていた。当時不動の原因はなんだったかは思い出せない。操作系だったと思うがロジック回路はよくわからないのに一応治っているところを見ると多分深刻な故障ではなかったのだろうと思います。今回カウンターの動きが悪く桁上がりがスムースではなかったのでメンテしたがメカニカルなカウンターは自動車のトリップメーターもそうだが動作中のリセットは厳禁です。脆くなっているギアや爪に無理な力がかかって破折の原因となる。同様に注油前のメカニズムの長時間運転も慎まなくてはならない。改めてテープデッキのメンテナンスは厄介だと思う。一番の障害はゴム製品。純正パーツの供給が途絶えている場合に代替え品が入手できない時にどうするか。レコードプレーヤーの場合にベルトドライブはなんとか汎用品が使えるしアイドラーも中心部の金属が生きていれば周囲のゴム部は再生してくれる業者さんが居て助かります。テープデッキでは小さな部品、特に樹脂部品の周囲のゴム部の劣化の場合に果たして再生が可能なのか、、これは依頼したことがないがたとえ可能でも多数あった時には再生料金もかさんで現実的でなくなる恐れもある。



 お読みいただきありがとうございました。


Technics SL-10 について

2017-08-05 01:22:37 | レコードプレーヤー

 革新的な方式であるダイレクトドライブによるターンテーブルを発表していたTechnicsからまた画期的な製品が登場した。LPジャケットサイズのレコードプレーヤー「SL-10」で発売は1979年、価格はキリの良い100,000円。画期的だという理由は複数あってまず究極のコンパクトサイズの315mmx315mm、リニアトラッキングアームは蓋にある4個のボタンスイッチでコントロールされる。付属のカートリッジはMCタイプでプリプリアンプ(ヘッドアンプ)が内蔵されスイッチによりパスもできる。光学式のレコード検出機能で回転数が自動で切り替わる(手動も可)。そしてダイナミックバランスのアームとクウォーツロックダイレクトドライブ機能でプレーヤーの向きはどの角度でもOKで垂直でも再生可能。このタイプのプレーヤーは評判を呼んでシリーズ化されしばらく続いたしTechnics以外の他社でもあったように思う。SL-10はそれらの第一号機にもかかわらず完成度は非常に高い。
 

 かの五味康祐氏は最晩年の病室にこのプレーヤーを持ち込んでいたという話を聴いたことがあるが真偽は不明。その時のためにと思って以前に購入しておいたのだが(ウソ)久しぶりにスイッチを入れてみるもアームが動く気配はない。

 
 蓋を開けてターンテーブルの回転ボタンを押すと回転する。問題は蓋に組み込まれているアーム機能のよう。


 早速分解してみましょう。蓋は内側から多数のネジでカバーが留められている。これらのネジを外すとストレスなく外れるのでもし外しづらい時はネジの外し忘れを疑う。中央のレコード押さえやカートリッジもそのままでOKです。その前につっかえ棒を外しておく
 

 現れた基板と左下にアームの水平移動用のモーターが見えますがかけられているゴムベルトが滑っています。


 ここは100%ダメになっているらしい。そのほかが無事であることを願いながら代替え品がないか探しまくるが、、

 探したゴム輪はちょっと幅広なのでハサミで切って試適するも敢え無く滑ってダメ。しょうがないので思いっきり小さいピンクの輪ゴム
 
 これで蓋を閉めると一応動く。。しかし途中までしか移動しない。蓋を開けて眺めると
 
 スライドのレールにあってワイヤーをカバーしているパーツの位置が違っていた。これは非分解で対応できた。些細なことだが裏のネジは大きなプラスドライバーが必要で通常のでは舐める。今回は5回程度着脱した。
 またこのゴムベルトはどうやって調達するか悩ましい。入手できるベルトはいずれも大きいものばかり。

 ここまでの作業で正常運転されるようになった。startボタンを押すとレコードを感知してまずターンテーブルが回り出す(レコードが載っていないと回らないので故障と早とちりしないようにしたい)、しばらくして定速になるとアームが降りて演奏が始まる。途中でまたstartボタンを押し続けるとアームが挙がり側方(進行方向)に移動し指を離すと止まる。cueingボタンでアームは降りる。なお逆方向への移動はできない(これは後でマチガイと判明)、当然オートリターン付き。

 付属していたカートリッジはMCカートリッジの「EPS-310MC」だがこの個体には「EPC-P30」が付いている。これは同社のSL-QL15の付属カートリッジで単体で市販されなかったとの事。

   松任谷由実 紅雀 1978年
 
 松任谷性になって初めてのアルバム  本人が言うにはユーミン史上最も地味なアルバムだそうで
 一聴爽やかな高音 P30の針はまだ生きている様子 とても聴きやすくワウも感じない。SL-1200よりも滑らかに聞こえるがこれは直接比較ではないので自信がない。動作もおかしな挙動はなく垂直に立てた状態でも大丈夫。MX-1ではローエンドはわからない。

 
 「Technics SL-10」はMoMA(ニューヨーク近代美術館)で永久展示されているそうでこれはB&O Beogram 4002と同様。確かにそれにふさわしい内容だし当時の開発された方々の熱気が伝わるような製品で当時100,000円は決して高いとは思わない。数年後にはCDが現れてレコードは静かに引退していくがその最後を飾るに相応しいモニュメント的なプロダクトだと思います。B&O Beogram 4002との共通点も多いがこの2製品を並べてみて思うことはお国柄の違いなのか性格の違いなのか、、。片や所有する満足感、この品格に生活の質そのものを高めたいと思わせるような説得力、片やハイテクを駆使したおもちゃ箱的なびっくり、、。どちらも音楽鑑賞には何の不満も感じないがこの差は一体なんだろうか?皮肉なのは40年ほど経過した現在でもアナログレコードは生き残っているがこれらの方式のレコードプレーヤーは皆無だということ。今のご時世ではB&O Beogram 4002やTechnics SL-10のような製品は今後は出てこないのではないかと思います。大切にでもしっかり使ってあげたい。


 お読みいただきありがとうございました。


 追記1
 また大ウソを書いてしまいました。まずアームの移動ですがアームが挙がっている場合に「stopボタン」で右方向(戻す方向)に移動できます。アームが降りている場合は文字どおりstopとなって最初の位置に戻って静止する。もう一つ、「start」「stop」ボタン共に軽く押せばゆっくりと、強く押せば速く、と2段階に(ボタンに矢印表示が出て矢印1つがゆっくり、2つが速く)アームがそれぞれの方向に移動するという至れり尽くせりの内容だった。失礼しました。

 追記2
 以前「アストロプロダクツ」で購入していた「Oリングセット」の一番細くて大きなものをなお指で引っ張って(!)伸ばしたものをベルトに使ってみた。思いっきり力を加えても切れないし少ししか伸びない。
 
 直径は引っ張った後で18mmくらいで丁度よくフィットしました。これならホームセンターで売ってるOリングでも十分イケそう。

 追記3
 拙ブログを読んでくださった「Iさん」からベルト提供の申し出がありました!

 「ウレタンオレンジベルト」だそうで熱接着して使うのだが瞬間接着剤でもOK!だそうです。このベルトで修理しておられる記事も見たことがあります。ポイントはいかに正確に接着できるかにかかっているわけで今度チャレンジしてみます。ありがとうございます。

 追記4
 毎日聴いています。動作は安定していて不思議と針のホコリも気にならない。全体がリジット(と思われる)なので脚部のインシュレーターが大活躍する。製品コンセプトから大げさな防振設備は避けたいが今はテーブルに載せているので何かするたびにスピーカーのコーン紙が揺れる。
 レコードを載せて蓋を閉めるのだがこの蓋が重厚で(決して動きが鈍いわけではない)また最後にロックする時は「カチッ」というまでさらに押し込む感じになる。レコードの溝はよく見えない(老眼は否定しないがアクリルには傷は少ないと思う)のでアームを盤の途中まで動かしたい時にはちょっと苦労する。この反省(?)からか廉価版の「SL-7」ではフタの前面がアクリルになって盤がよく見えるようになり高級版の「SL-15」では(数字は価格を表していておもろいネイミング)曲選択がプログラミングできるようになった。そうすると未来のCDプレーヤーみたいでボタン操作=デシタル=夢の未来、、みたいな図式だったのか〜(!)などと思ってしまう。アナログレコードを機械に挿入してあとは外部から操作して音を取り出すという感覚はアナログらしさという(誠に不確かだが)フィーリングからちょっと外れるような気がする。その点ではB&O Beogram 4002はそうは感じない。何が違うのかと考えるがやはり回っているレコードとの距離感のように思う。「Beogram 4002のダストカバー」と「SL-10の蓋」は全く違う役割を持つ。両者の年代は少し異なるので同じ土俵に上げるのも如何なものかとは思いますが半世紀近く時が経って「アナログプレーヤー」というくくりで見た場合です。