Decca Decolaがお嫁入り

やっとこさ入手したDecca Decolaの整備記録

Collaro 4T.200とDECCA professional arm について

2023-11-20 23:58:28 | レコードプレーヤー

 Decca Stereo DECOLA に搭載されていたターンテーブルは 英国のCollaro製で(そのほかGarrard製品もあった)以前Decca Stereo DECOLA の修復記事の中で紹介した。Collaro Ltd は、Christopher Collaro (1895-1986) によって 1920 年に設立された蓄音機のゼンマイモーターを始祖とする企業で後に電気phono motorを製造していたがその後Magnavox、Philipsに吸収されました。今回の4T.200はDECOLAの補修用としてかなり以前に入手したものだが幸いにも本家が問題なく稼働しているので今のところ出番はない。そこで今回単体のターンテーブルとして仕立てることにした。随分前にCollaroのターンテーブルとDecca MKⅠ arm  の組み合わせでプレーヤーシステムを作ったことがあるがその後知人宅に嫁いだ。今回はDecca professional arm が手元にあったので再び組み合わせてみます。今回の4T.200ターンテーブルはDECOLA搭載の正方形のとは少し形態は異なっているがフォノモーターなどメカニズムは同一と思われる。鉄板打ち抜きの軽量デッキだがプラッターは結構重い。軸の先端は平らで軸受には上下動する可変機能がついた大きなボールベアリングが入る。また最大の特徴はフローティングされたアームベースでデッキの裏にゴムブッシュで取り付けられてデッキやモーターと分離されていてモーターの振動が伝わりにくくなっている。ターンテーブルの軸とリジットな関係にしなかった理由はわからないが重いターンテーブルごとフローティング面に載せるのはサスペンションが大掛かりになるなどの困難さゆえ妥協もしくはS/Nを重要視したのかもしれない。このプレーヤーにはもともと格好の良い専用のトーンアームがあってアーム取り付けの穴もそれに合わせた小さなものになっている。それ以外のほとんどのアームのベースは大きいのでこの機能を活かすにはデッキに大きな穴を開けなくてはならずさてどうするか。。

   

 先にプレーヤーケースを作ることにして構造は先日のThorens TD184と同じにします。ホームセンターで荒くカットされたガサガサの赤松材が目に留まり安かったこともあり購入して(後で後悔した)節を避けて切断。例によってなるべく小さくしたがデッキのサスペンションはアームベースと共にどうするか未定。未定が多いが考えても先に進まないのでとにかく始めよう。

   

 

 相変わらずノコギリ1本で作業してとりあえず枠ができた。ギリの寸法なので回転切り替えのメカニズムが枠の内側の一部を削らないと干渉する。

 

 今回は木目が美しくないのでガサガサの下地を整えて塗装することにします。

 サスペンションをどうするかだが以前モノラルデコラのプレーヤーを分解したら卵ケースのような形をしたクッションが仕込まれていたのを思い出して今回は一番安易な方法でウレタンスポンジをデッキの下に敷くことにした。早速amazonやホームセンターで物色し数種類購入してきた。現在の穴の位置でDecca professional armのオーバーハングはちょうど良さそう。アームの本体部分の直径は実測25.5mmなのでデッキの穴を0.5mm程度拡大する必要がある。ネジ穴も開けて木製のフローティングは取り外してアームレストと共にとにかく仮固定してみる。

 

この写真は先日四国のマニアさん宅にStereo Decolaの調整で伺った時に撮影したターンテーブルボード裏の様子。初めて見たがやはりスポンジ状のクッションの上に乗っていた。水平の調整が難しいと思う。

入手してから通電したことがないしモーターは220V 50Hzで周波数変換器と昇圧トランスが必要。

 

 ようやく塗装が済んだが荒れた材の表面を整えるのに随分手間取ってしまった。久しぶりに砥粉を使って目止めしてクリアラッカーを数回塗って下地を作ったのにも関わらずなかなか満足な仕上がりにならない。結局塗りが7回ほどになってしまったが素人にとって最初の材の選択は重要だ。英国製なので色はブリティッシュグリーンにした。(英国製品の緑色はなんでもかんでもこう呼ばれる。)表面はクリアラッカーで半艶消しで底にはゴム足。

 これでDECOLAの220V 50Hzの給電部に接続してみると定速は確保されていて少しホッとした。しかしモーター、アイドラー音は大きくこのままでは良好な再生は難しそう。実はアイドラーにはモーター軸による凹みがあってドリルに咥えて回転させ修正していたのだがもうすこし手を入れる必要があるようだ。そこでボール盤でアイドラーを咥えてサンドペーパー板や鑢を使って側面を削って整えた。

 

 DECCA professional armのmanualによると針圧が即時調節可能。メインウェイトはねじ止めされてさらにその後部にサブウェイトがある。アームにはスライドウェイトがあってこれを動かすことで針圧の変更が瞬時にできる。アームリフターが組み込まれている。時期によって複数のバージョンがあったようでこのイラストはコードが外部に露出していない。

 スライドウェイトを一番軽い位置にあるメモリにセットしてメインとサブウェイトを調整して針圧を0gにする。そしてスライドウェイトを動かすと1メモリ目は1.0g、その後は0.5g毎の荷重がされる。これで針圧計を使わなくてもカートリッジ(同重量)の交換をしても即座に最適な針圧がかけられる。キッチン計りの台は鉄製らしくそのまま乗せるとカートリッジの磁石で吸い寄せられる引力は予想以上でこれではThorens TD124など鉄製ターンテーブルは不都合が出るのも頷ける。適当な台で離して測定してメモリと針圧の関係を確認した。

このキッチン計りはとても廉価なのだが1/100gまで表示され上限も十分なもので重宝しています。アームからの引き出し線のコネクターは英国製らしくTANNOY Monitoreと同製品。信号コードとアース線は劣化していたので交換した。

   

  

 

 MK1 SPカートリッジのバッジと同色だったので(ほぼ偶然)気分が良い。MK1からMK3まで気軽に交換できるが正直言えば針圧は結構アバウトで使う事が多い(概して重めで)。早速試聴すると盛大なハムが乗ってDECCAアームはハム対策に結構苦労する事が多いのを思い出す。モーターが原因かと思ったがモーター止めてもハムが乗る?、、原因は電源の昇圧トランスの撒き散らす電磁波で離すと小さくなった。しかしカートリッジによってはアームとの接触不良もあってアームの接点を少し引きだした。DECCAカートリッジはその独特の構造から長いカンチレバーを持つ他と比べて明らかに異質な発声をする。これを気に入るか否かだが反応がビビットで繊細さが際立ちながらも艶と厚みがある再生をめざすのがこの道だと思っている。DECCA stereo DECOLA はこの矛盾する要素をよくコントロールしている電蓄だと思います。理想とする音をイメージしながらこのプレーヤーと組み合わせる機器を妄想するのも楽しい。

 

 

 

 

 

お読みいただきありがとうございました。

 

雑記1

 今晩(2023/12/4)はよく釣れました。

 波止からの延べ竿の探り釣りなのだがまだアコウが居てくれた。29cmの方は引き上げたが34cmは電話で助っ人を呼んで近くの釣り人からタモを借りてなんとか。タモの持ち主が様子を見にきてくれたのでシメて血抜きもしてもらった。普段は小物ばっかりなのでタモのお世話になることは滅多にない。こんな事もたま〜にあります。アコウ2匹 メバル4匹 ガシラ4匹 チヌ1匹

 


RCA Victor Model 2X61 について

2023-11-04 02:04:39 | 受信機

 1960年の米国の真空管式AMラジオ兼アンプ。後ろにRCAジャックとラジオ⇔フォノ切り替えスイッチがある。構成は高1中2のトランスレス6球スーパー

 回路図によれば電源は115VのAC/DC、筐体は樹脂製(ベークライト)、ダイヤル2個のみのシンメトリーでスタンダードな形態だが上面の選局スケールはライトアップされるなどなかなか洗練されていてデザインはレイモンド・ローウィだろうか。外部からのphono入力はクリスタルピックアップを搭載したモノラルレコードプレーヤーのためのものでRCA Victorということでドーナツ盤専用機の45-J2を接続することを考慮しての製品だった。しかしラジオ部も大きなスパイダーコイル、立派なスピーカー、RF増幅段付きなど豪華な構成となっている。

     

 かなり以前から居るのだが整備するのは初めて。残念ながらベークライトの天板にヒビがあって補修した。通電すると一応音は出る。内外部を掃除してAC115Vで各部の電圧を測定すると

  

 B電圧は80V台とかなり低い。ところが回路図を見ると回路のアースとシャーシアースが分かれていることがわかって回路のアースから再度測定すると90V台だったがそれでも回路図の120Vより低い。2つのアース間の電位差は何を意味しているのかはよくわからない。商用電源がシャーシに落ちていないということでピンプラグの抜き差し時の感電防止に気を遣った設計と思うがトランスレスラジオでは通常の事なのだろうか。終段35L6のカップリングコンデンサーは漏洩してプラスバイアスになっていたので電源部のオイルペーパーコンと共に交換し、また電源部の電解コンデンサーには十分な容量のケミコンをパラ接続すると105Vまで回復しハムも軽減した。

パイロットランプが不点灯でチェックするとシリーズ接続の2個のうちの片方が切れていた。適当なパイロットランプが見当たらなかったので入手できるまで手持ちの麦球を2個パラ接続して代用した。

 

 ラジオ部の動作は良好になったが指向性がありラジオの向きで感度が変化する。選局の文字が薄いのは何とかしたいしちょっと暗い照明に時代を感じる。

 このラジオは当時RCA Victor 45-J2EPレコードプレーヤーと同時に入手した。このプレーヤーを接続するパワードスピーカーとしての組合せなのだが45-J2に搭載されたクリスタルカートリッジは負荷抵抗が十分高ければRIAAカーブに近い周波数特性で出力され出力電圧もプリアンプを必要とせず都合が良かった。しかしロッシェル塩が劣化して使用不能になっているものも多く今回入手したものも出力が取り出せず代替えを検討中。

 現行品でセラミックカートリッジが販売されていたので早速つけ替えて試聴したがやはりアイドラーが原因のワウでうまくいかない。替えの製品が販売されていたので注文して到着を待っています。

 

 雑記1

 毎週日曜日のNHK FM「ディスカバー・ビートルズ 2」は杉真理氏と和田唱氏がDJをしている番組。今日(2023/11/19)は和田氏の担当で11/2に発表されたThe Beatles 「Now and Then」についてだった。この曲のデモは1980年代にJohn Lenonがカセットテープにピアノの弾き語りを録音したもので以前より公開されていた。ただ音質は非常に悪く歌詞なども未完成でJohnの死後にThe Beatlesの3曲目として発表される予定だったが途中で断念されたというもの。その後Georgeも亡くなってしまったが残されたPaulとRingoだけで完成され今年の発表となった。その背景としてコンピュータ技術(AIと言われる)の進歩で一つのトラックから各要素を分離することで修正がしやすくなり今回日の目を見た。同様の技術で以前のThe Beatlesのアルバムも次々と再構成されて発売されている。

  今日の番組では新曲について細かな解説がされたが一番の要素は「元のデモでは存在したBメロが完成品ではばっさりカットされている」という不満だった。なぜそうなったかについていろいろな仮説と考察がなされていたが私が特に印象に残ったのは既に亡くなったGeorgeへのオマージュでPaulが弾いたスライドギターのコード進行が調を変えてまさにこのカット部分(10小節)と同じだった(!)ということ。私自身これには全く気づいておらず唖然とした。和田氏の演奏したBメロを含んだ「Now and Then」も披露されたりでなかなか内容の濃い番組だった。

 

 その後アイドラーが届いてRCA Victor 45-J2EPレコードプレーヤーも無事復活しました。

 

 

 

 

 お読みいただきありがとうございました。

 


RCA Victor 45-J2 について

2023-11-01 00:15:34 | レコードプレーヤー

 1948年に米国コロンビアからLPレコードが発表された。それまでは片面数分の78SPレコードが主流だったがLPレコードは片面で30分、広周波数帯域、ノイズが少ない、落としても割れにくいなどの利点があり瞬く間に78SPレコードに取って代わられた。そして1949年に米国RCA VictorからEPレコードが発表された。EPレコードは直径7inch(17cm)、45rpmで中心には大きな穴があってドーナツ盤と呼ばれた。これはジュークボックスでの扱いを考慮したもので日本ではシングルレコードとも呼ばれていた。LP、EPレコードとも1958年にステレオレコードが登場するまではモノラルレコードのみで針も1mil(マイクログルーブ、78SPレコードは3mil)が使われた。

 EPレコードはLPレコードに比べると再生時間が短い(片面で約5分間)ので専用のオートチェンジャーレコードプレーヤーがあった。発売はこの規格を提唱したRCA Victorからで現在でも海外オークションなどでよく目にする。プレーヤー単体以外でも豪華な家具調電蓄などの筐体に組み込まれることもありまたエンブレムを変えたOEM製品もあった。機構は共通でおもちゃのような小さいターンテーブルの中心の太い柱にEPレコードを重ねてセットすると1枚ずつ下に運ばれて(落とされて)再生が始まり片面が終わるとピックアップが退いてまた次のレコードが落ちてきて、、を繰り返す。最後のレコードは手動で停止するまでリピート再生される(と思う)。長いプログラムは箱の中に数枚のEPレコードが収まった形態で発売されていて重ねてセットしA面の連続演奏後に重なったまま柱から抜き取ってそっくり裏返して今度はB面が連続演奏される。オートチェンジャー用にカッティングされたレコードセットは78SP、LP以外でもEPレコードでもあったわけだが片面5分で忙しなくチェンジする様子は78SPレコードを思わせそれをコンパクトに高性能にしたという位置付けだったようだ。EPレコードのオートチェンジャーはチェンジのスピードが速い(約10秒)のも宣伝材料だった。またEPレコードは中央のレーベル部分が一番厚みがあり重ねても溝どうしが接触せずに傷になりにくかった。

 LPレコードの回転速度33 1/3rpmは3分間に100回転からと考えられるがEPレコードは直径が小さいためLPレコードと匹敵する音質を確保するために回転を速くした。なぜ45rpmに決まったかはわからないが「33+45=78になるからだ!」という説もあってなかなか面白い。いつの時代もユーザーおいてけぼりの規格戦争は勃発していた。

 ポピュラーミュージックのEPレコードは1曲ごとの販売(A面B面あるので2曲になるが)で高額だったLPレコードが買えない若者に支持された。当時の音楽の聴かれ方が垣間見れるがその後LPとEPは共存しレコードプレーヤーも両者が聞ける製品が主流になった。また日本でオートチェンジャーが定着しなかったのはオーディオ装置が一般家庭に普及した時には長尺のクラシックはLPレコードが主流の時代になっていた、また高価なレコードを重ねて傷めたくないという考えの人が多かった(かもしれない)。

 

 RCA Victor 45-J2

  

 かなり以前から拙宅に居るのだがいままで稼働どころか電源を入れたことすらなくずっと気になっていた。佇まいはおもちゃみたいだがオートチェンジャーゆえ機構は結構複雑。当然ワンモーターでオペレーションする。

 

 このRCA Victor45-J2はよく目にする割には稼働している姿をほとんど見たことがなくなにかしらの理由があって修理しずらいのではないかと思っていた。機構は素朴なインダクションモーターの軸でアイドラーを回してターンテーブルを駆動する。このアイドラーは大小2段の構造なのだがこの個体は劣化が激しくスリップしてほとんどターンテーブルを回すことはできない。各部に注油して電源電圧を115V(60Hz)にしたが状況は変わらずターンテーブル駆動部のゴムが劣化しているのとアイドラーにテンションをかけるスプリングの劣化が原因と思われた。アイドラーの再生は外部に委託することはできると思うが特殊な形状なのでそれなりの費用がかかりそう。そこであり合わせの材料で再生してみることにした。

モーターとアイドラーは防震ゴムで吊り下げられている。アイドラーは硬化してひび割れてボロボロ。

 

 各部の寸法を測定して(大小同軸のアイドラーなので寸法の誤差は回転数の誤差になる)劣化して硬化しているターンテーブルに接する小さい方のゴムをカッターで切り落とした。

 

そしてたまたま同寸法だったゴムブッシュを嵌め込んだ。アイドラーを引き寄せるスプリングは引っ掛ける位置を変更して少しテンションを強くした。これでAC117Vで運転してみると

ターンテーブルは回転するようになりターンテーブル軸から伝達されるチェンジ動作もするようになった。しかし動きがスムーズではなく異音も大きい。やはりモーター軸の接する1次減速部分もなんとかしないとまともな動作は難しそうだ。

 アイドラーの金属部分はそのまま使い劣化したゴムをガイドに新たなゴムを加工して接着することにします。まずアイドラー裏面のゴムをカッターで切り取る。中心の金属円盤を挟み込む形なのですべて取り去ると金属部分の厚みの対処が必要でちょっと面倒。金属板と同一の平面で切り取ります。

 

そして5mm厚のゴム板から大まかに丸く切り出してとりあえず両面テープで貼り付ける。

 

そして適当なボルトで軸を作りナットで固定しドリルで咥えて回転させ今までのゴムをガイドにやすりで形態を整える。

 

モーター軸とターンテーブルには常時接触しているのでしばらく稼働させないと変形してしまうのは避けられない。対策としてアイドラーのゴム部分の厚みはEMTに匹敵するくらいに厚くしているが。

これで稼働させてみるとかなり改善を認めた。

  

 回転が安定して異音も小さくなりオートチェンジ、リピート再生動作もするようになりました。 でも音は出ない。針の上げ下げ時には信号回路は短絡させてノイズが出ないようになっている。回路を点検したがモノラルのクリスタルカートリッジ(と思うが)が発電していない様子でさてどうするか。 

 

雑記1 昨日The Beatles の最後の新曲「Now And Then」が配信されそして今日(11/3)ミュージックビデオが公開された。曲を聴いていい曲だなと思っていたがMVを見て不覚にも涙がこぼれてしまった。あらためて同時代に生きたことに感謝します。

 調べてみると高出力のセラミックカートリッジは現在も販売されていることがわかり早速注文した。

 

 日本製でステレオ、替え針も販売されている。価格は2000円台。劣化したクリスタルカートリッジを取り外す。

 

 スタイラスガード(?)をリベットを揉んで取り外してこれを取り付け金具としてセラミックカートリッジを固定する。

 ステレオカートリッジだが並列接続してモノラル出力とした。針圧は様子を見ながら決定します。これで聴いてみると

残念ながらアイドラーが原因のワウがどうやっても取れず自力再生は諦めた。調べてみると替えのアイドラーやリペアーキットなどが複数売り出されていてやはりアナログレコードの復権と関係あるかと思うがこの製品の人気が伺えた。早速注文した。

 しばらくして米国から届きました。

アイドラーの価格は$40だがおまけのマニュアルCD、お菓子、ポストカードなどいろいろと入っている。日本の過剰包装もどうかと思うが米国のサービスぶりもすごい。

早速取り替えてみましょう。

   

 これで再生するとたしかにワウは気にならなくなったがどうもターンテーブルの回転が遅い。115V60Hzの設定にしているがこれはモーターのメンテナンスが必要なよう。

 

軸受を掃除して給油して組み立てた。単純なインダクションモーターだがネジ穴の遊びはほとんど無くしっかり締めると自動的に位置決めがされる。このあたりはThorensのモーターよりよほど優秀かも?

これで聴感上は問題なくなって暫く聴いてみるとアームがレコード内周で止まってしまいオートチェンジのスイッチが入らない。これは針圧が不足しているため。セラミックカートリッジの最適針圧を越してもとにかく針圧を増やすしかない。

 アームの先端付近に両面テープを貼って重りを乗せて様子を伺う。今回はナット1個で解決したのでシェル内に収めた。これでオートチェンジも無事行なわれるようになった。

 

 当時は回転の安定が音質に関わるとはわかっていたと思うがこの製品はそのために慣性モーメントを増加させるという発想は全くなかったようだ。この構造では残念ながらEPレコードの情報を十分に引き出すのは困難だったと言わざるを得ない。線速度は確保しても円盤の直径が小さい事によるトラッキングエラーの大きさからもEPレコード再生は最初からHiFiを諦めていた。しかしオートチェンジャーによる長尺プログラムの再生はLowFiゆえ廃れたがポピュラーミュージックの1曲販売の器として生きながらえた。

 LP、EPレコードが誕生してからCDが登場するまでの35年間はLPとEPが共存しSPレコードを引き継いでアナログ再生の時代が続いた。その前のSPレコードの時代は機械式吹き込み時代を含めると半世紀以上と非常に長い。CDは登場して40年ほどになるがそろそろ終わりが見えてきている。現代においてもアナログレコードは絶滅せずに生き残っているのは興味深いし21世紀になってのLPレコードの復権をだれが予測しただろう。デジタルリマスター版と初期版レコードの比較はよくされる。聴感上レコードの方が好ましいという話もあたりまえに言われる。各々長所があるわけだがデジタルテクノロジーの進歩でいずれ両者が聞き分けできない状態まで達するだろう。レコードは音以外でもジャケットや再生にあたっての作法があって煩わしくも楽しい。もうしばらくは(一生かな)アナログを謳歌しようと思っています。

 

 

 

 お読みいただきありがとうございました。