Decca Decolaがお嫁入り

やっとこさ入手したDecca Decolaの整備記録

ステレオマイクロカセット について

2024-10-04 10:49:59 | オーディオ

 1980年頃に起こったマイクロカセットブームで各社から多くの新製品が発売されたがその中には音楽再生を目的とするステレオ機があった。そしてオーディオコンポーネントに加わることを目指したマイクロカセットデッキまで出現した。

 まとまった資料は見当たらないので目についたものをメモすると(中途不完全)

1ハンディステレオレコーダー

  SONY M-1000

  SONY M-1PD

  SONY M-80 

  Victor   IDOL MQ-5

  OLYMPUS   SW77

  AIWA  HS-M2

 

2ステレオマイクロラジカセ(分離できるものを含む)

    SANYO  TR-88(飛び出せテレコ88)

    SANYO WMR-CM(コンパクトーマイクロ ダブルラジカセ)

  National  RN-Z600

    AIWA  CS-M1(R)

    HITACHI  FEDISCO FM/AM  TRK-4600M

    FUJINO  FX-3M

 

3ステレオマイクロラジカセにテレビを搭載した機種

   TOSHIBA 4V- MX4(TV、ラジオ、マイクロカセット取り出し可能)

   SHARP CT-5001

 

4ステレオマイクロカセットデッキ

   OTTO(SANYO)   RD-XM1

   VICTOR  D-M3

   Lo-D(HITACHI) D-MC50  1982年 69,800円

  Technics(National)   RS-M212

  Technics(National)    RS-G800(マイクロカセットデッキレシーバー)     

 

 国内で発売していたのはOLYMPUS、SANYO、National(現Panasonic)、AIWA、HITACHI、TOSHIBA、VICTOR、FUJINO の8社、そして各社とも種類は少ない。これは発売はしたがほとんど売れず後続機種が企画されなかった事を意味する。当時のカタログを見るとマイクロカセットオーディオに対する各社の温度差はあってたとえばNationalは音楽再生にはメタルテープ、それ以外にはノーマルテープ、長時間テープなど目的に応じてメディアを使い分けることを推奨していた。メタルテープを用いてマイクロカセットがHiFi再生に対応できると確信していたと思われる。実際にNational以外でもSANYO、HITACHI、VICTORからはオーディオコンポとしてマイクロカセットデッキが発売されていた。

 コンパクトカセットもそうだったがミュージックテープを購入することは稀で大抵はCDやレコードをコピーしたりエアーチェックと称してFMチューナーから録音することが多かった。レコードは高くてなかなか買えず友人から借りたりレンタル店で借りてコピーしていた。1週間分のFM番組表がメインの雑誌も複数発刊されていた。ステレオコンポーネントのカセットデッキで作成した自分だけのミュージックテープをデッキ、カーステレオやWALKMANなどで聴いていたことが多かったように思う。

 余談だが現在の高性能コンパクトカセット機の高騰ぶりには少々驚く。テープ機器の役割は生録を除けば他メディアのコピーが中心であたりまえにオリジナルを越えることはできない。現在は有償、無償に関わらずインターネットからほとんど無制限に音楽が垂れ流されているわけであらためて劣化コピーして保存する必要性は低い。にもかかわらずこういった昔の機器が高騰しているのはなぜだろうかと思う。200万円を超えるNakamichiのカセットデッキや20万円を超えるWALKMANに国産旧車と同じようなバブルの匂い感じてしまう(単純に買えない僻み)。マイクロカセット機器の魅力はほとんど世間から見向きもされないことで取引価格もコンパクトカセット機器と比べて桁が一つ少ない。故障の修理をした後はオリジナルの性能を引き出す工夫をしたりとなかなか楽しめる分野だった。

 現在入手できるものは発売から40年以上経過していることもありほぼ100%故障していた。修理の難易度はさほど高くないと思われたが実は調整はクリチカルでカタログデータを追求するには高品質のパーツを用いて細心の作業が求められる。素人のアバウトな修理ではなかなか音楽再生に必要なカタログデータを再現できなかったのではないかと思う。

 

 SONYのステレオマイクロカセット機器について

 SONYはマイクロカセットデッキは発表しなかったがステレオ対応のハンディタイプを4機種発売した。そのうちの1機種は再生専用機で「micro WALKMAN」という名称で海外で発売されていた。このmicro WALKMANはマイクロカセット型のFMチューナーが付属していてテープの代わりに装着するとFMラジオになるといういかにもSONYらしい機能があった製品だがなぜか国内では発売されなかった(未確認)。

 過去に国内で発売されたSONYのステレオマイクロカセット機は以下の3種類

     SONY M-1000        SONY M-1PD           SONY M-80 

 M-1000以外はメタルテープに対応している。マイクロカセットで音源をコピーして私的なミュージックテープを作る場合のマスター機としてはやはりサイズの制約が少ないマイクロカセットデッキを使いたいがほとんど流通しておらず入手が困難。そこでそれらに準じた性能を持つだろうと思われたSONYのM-1000とM-80を再度整備した。録音時は自動のレベル調整がありPCのヘッドホン出力を直接マイク入力端子に入れた場合は出力を調節した範囲で適正な入力を得ることができたようだ。しかしラインレベルではやはり過大入力で歪むをコントロールする必要がある。私のCDデッキは可変出力があるがマイクロカセット側にVUメーターや表示があるわけではないので適切なレベルは聴感に頼ることになる。MIC入力はローインピーダンスだろうがまあ大丈夫ではないだろうか。音量調節ボリュームは録音時には機能しない自動調節なので多少ガリがあっても不具合はないのだが手を入れて問題ない状態になった。次に個体によってテープの走行スピードが異なっている問題。せめてマスター機のテープスピードは正確に調整しておきたい。どの機種もモーターのスピードコントロールは基板上にある半固定抵抗で行うことができるが校正のためのテストテープと周波数カウンターが必要になる。テストテープはそれ以外でもミラーテープやトルクメーターテープがあるのだがコンパクトカセットもそうだがあっても非常に高額で現実的には入手は困難だし周波数カウンターもない(周波数表示するオシロで代用できそうだが)。マイクロカセットのテープ走行速度は2.4cm/sと1.2cm/sなので時間を決めて走行させたテープの長さを物差しで測ってテープスピードを調整することにした。2.4cm/sの場合30秒間動作するとその間のテープの走行距離は2.4cm/s x 30s=72cmになる。テープの終端から30秒間走行させて取り出したテープを一方を固定しながら終端まで引き出して長さを測定する。

SONY M-80は72cmで2.4cm/sとなり良好     M-1000は74.4cmで2.48cm/sとなり要調整 となった。実際は標準機があればそれとピッチを比較して聴感でほぼ正確に調整できるし曲の長さを比較しても良い。

 

写真は少しスピードが速かったM-1000の調整用半固定抵抗だがマニュアルを見ると正規の回転数±3%まで許容している。測定結果は3.3%の超過だったのでやはりオーバー。でも思ったよりアバウト。。

ヘッドの掃除はあたりまえに重要。カセットが現役の頃は掃除はもちろん消磁を行なってから録音していた。50年前に買った消磁器も久しぶりの登場。

  

 このSONYのシリーズは外部電源は3Vで外径3.5mmのプラグなのだが中心がマイナスというめずらしい規格(SONYはこのパターンが他にもある)。市販品のACアダプターでこの規格は見当たらないので汎用品を購入し分解して内部接続を変更してプラグの極性を逆にした。大抵のアダプターは接着で組み立てられているがこの製品は珍しくネジどめだった。電圧もDC-DCコンバータによる切り替え。

 肝心なアジマス調整はできる構造なのだろうか。バイアス調整と共に高級カセットデッキでは自動、手動による調整ができるものが多かったがマイクロカセットについてはあまり聞かないし正直よくわからない。3機種の再生音を比較すると最初は結構異なっていたように感じたがメンテナンスが進むにつれて違いが少なくなって特にM-1000とM-80は区別がつきずらくなった。M-1PDは低域が少し混濁しているように聞こえ若干情報量が少なくこれはワウフラッターの関係という気がする。